色々なIF集   作:超人類DX

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な、なんでこうなるんだ……


恐怖

 センターの確保へと向かわせた眷属達がまとめて潰されたのを知った瞬間、今回のゲームに違和感を感じていたライザーはやはりと確信した。

 

 

「やはりそうか。公開処刑の様な真似をさせられてると思っていたが、向こうがそれなりに抵抗できるだけの力があってからこそだった訳だ」

 

 

 本陣に座するライザーが難しそうに唸る。

 

 

「やったのはリアスのジェネラルか。

あの戦車はまだ眷属になったばかりだから戦闘経験は皆無と考えれば先ず潰さなければならないのはジェネラル」

 

 

 明らかに不利だと分かっててもこのゲームを受けたリアスの余裕の理由が分かったライザーは、数の有利さに慢心していきなり本陣へと突撃させずに良かったと、ジェネラル=イッセーにやられた眷属達の犠牲を憂いつつも、傍らに待機させていた残りの眷属達に指示を送る。

 

 

「狙うは相手のジェネラル一人だ。

全員で足止めないし潰し、俺がリアスに詰みを掛ける」

 

『はっ!』

 

 

 これでもレーティングゲームでは連勝し続けているライザーは、イッセーという最大にしてたった一人しかいない戦力を落とす方向に狙いを定め、予め待機させていた眷属達と運動場付近に待機させていた眷属達に指示を送ると、普段はソーナが座る生徒会室の椅子からゆっくりと立ち上がる。

 

 

「誰かに利用されているのはやはり気に入らないが、それでも勝たせては貰うぜ。

悪いけどこれもゲームなんだ」

 

 

 向かうはリアスが居る本陣。

 多くの悪魔達が見てる前で、弱い者苛めの様な真似になってしまうかもしれないが、勝負である以上手は抜かないし、油断はすべきではない。

 

 ライザーのこの判断はある種間違いでは無い――そう、間違いでは無いのだ。

 

 

 

 

 

「で? 俺一人を潰すために戦力投下させつつ本陣のリアスちゃんを自ら襲撃して詰みってとこかな? それは普通に間違いじゃないし、割りと見くびられてなかったのは意外だったなぁ」

 

 

 リアスのアキレス腱ともいうべき男を潰すのは間違いでは無い。

 だがそれは数の暴力で潰せる程度の相手であるならの場合であり、アイカの偵察とリアスの指示により呑気に運動場へとやって来たイッセーの、ライザー眷属達を前にしたこのヘラヘラした態度は果たして幸か不幸か……それはまだ、ライザーの指示の下立ちはだかる眷属達にはわからない。

 

 

「仮にも雪蘭とミラとイルとネルを撃破したジェネラル殿だ。

その強さは本物だと我が主が判断されたのさ」

 

 

 剣を携える女性がヘラヘラしているイッセーに対して不敵に笑う。

 

 

「だからこそ惜しい、剣を使う者であるなら良い一戦を期待できたのに!」

 

 

 イッセーは名前も知らなければ興味の欠片も無いが、騎士の駒であるカーラマインが剣撃でも楽しみたかったのか、帯刀していた剣を振り回しながら惜しんでいる。

 

 

「この剣馬鹿は、油断するなとライザー様に言われたばかりだというのに」

 

 

 剣? とイッセーがカーラマインを見ながら首を傾げると、仲間の突進的な性格に辟易した様な声を出す女性が前に出る。

 

 

「別に嘗めてるつもりは無いし、だからこそこの人数で挑ませて貰うけど、卑怯とは言わないよな?」

 

 

 あくまでもライザーの指示に忠実になりたいといった様子でその女性の言葉通り、イッセーを鋭い目付きで各々が見据える。

 だがイッセーは先程カーラマインが言っていた剣という言葉に何故か引っ掛かってるのか、うーんと一人唸り……。

 

 

「チャンバラがやりたいのか? しょうがない、少し付き合ってやるよ、問答無用で袋叩きにしないアンタ等にそれなりの敬意とやらを持ってな」

 

『は?』

 

「なぬ!?」

 

 

 ポンと手を叩いたイッセーの言葉に全員がポカンとする。

 だがある意味でそれはふざけている様にしか見えなかった。

 

 

「えーっと……あぁ、ちょうど良い枝がこんな所に」

 

『…………』

 

 

 テクテクと運動場を歩き回り始めたイッセーに、全員が不意打ちかもしれないと臨戦態勢になる中、足下に転がってきた小さい枝を拾い上げる。

 そしてニヤニヤしながらカーラマインに向けてその小さい枝の先を向けながら言った。

 

 

「シャッキーン、見つけてラッキー名刀・枝雨。

さぁ、どこからでも掛かって来るが良い!」

 

『……………』

 

 

 ニタニタとしながら面を喰らった顔をする面々に対して挑発にしか聞こえない声を放つイッセーに眷属達は逆に困惑するのと同時に気付く。

 コイツひょっとしたら只の馬鹿なのでは? と。

 

 

「いや、うむ……それ枯れた枝だろ? まさかそれを使って私達と戦うのか?」

 

「そうですがそれが?

あぁ、まさかこの枝が単なる枯れ枝とか思っちゃってる系? 言わなかったかな、これは名刀・枝雨なんだよ。

どんなものでも切れる最強の枝刀だぜ?」

 

「……。こいつ、ひょっとして馬鹿なのか?」

 

「いや、もしかしたら油断させる方便なのかもしれない……?」

 

 

 ヘラヘラとさっきからこの数を前に嘗めてるとしか思えない態度を崩さないイッセーに段々イライラしてきた眷属達は今すぐ袋叩きにして思い知らせてやろうと思った。

 

 

「良かろう、剣に生きるこの私を嘗めた罪は重いぞ!!」

 

「あ、馬鹿!」

 

 

 そんな中を剣を馬鹿にされたと解釈して怒ったカーラマインが剣を抜きながらヘラヘラしっぱなしなイッセーへと一人で突っ込んだ。

 それを止めようと声を張り上げた仲間の誰か……しかしある意味でこれはイッセーという存在がどういった者であるかを知る意味では正解だったのかもしれない。

 

 カーラマインが怒りと共に振り下ろしたその剣が……。

 

 

「あ……ぇ……?」

 

 

 枯れ枝によりカーラマインの右肩ごと剣を切断したのだから。

 

 

「え……」

 

 

 刀身がバラバラに切断され、肩から先から噴水の様に血が吹き出てる事に斬られた本人が理解できずに間の抜けた声が出る。

 

 

「げっ……! もっと加減しないとダメだったのかよ。

ちくしょう、リアスちゃんと全力で手合わせし過ぎて上手くいかなくなっちまったぞ……」

 

 

 そんなカーラマインに対して斬った本人は加減する度合いをまたしてもミスしたという反省をするだけで斬った相手に対してどうとも思った様子は無い。

 

 

「は、ははは……嘘だろ……?」

 

 

 肩から先を失い、イッセーの足下に転がる自分の腕を見て漸く何をされたのかを理解したカーラマインが大量失血による影響か、死人の様に顔を青ざめさせ、思わず笑いながら倒れ伏す。

 

 

『ら、ライザー様の騎士……リタイアでございます……』

 

 

 脱落のアナウンスがゲーム盤全体に響くのと同時に腕を失ったカーラマインが転送される。

 

 

「あ、おい、転送するんだったらこの腕も持っていけって。まだくっ付けられるんだから」

 

 

 声が出せない残りの眷属達を前に腕を拾い上げたイッセーが空に向かって――というより、今のアナウンスをした者に向かって語り掛けるとカーラマインの腕が消える。

 

 

『…………』

 

「さてと」

 

 

 残されたライザー眷属達は声がまだ出せない。

 そんな中をカーラマインを斬り伏せた枯れ枝を適当に投げ捨てたイッセーはコキンと首を鳴らす。

 

 

「フェニックスの大将は運が良いよね。

俺と違ってリアスちゃんは手加減するのがホント上手なんだからさ」

 

『!』

 

 

 首の関節の鳴る音でハッとなる眷属達が全員、敵どころか化け物だった男を前に震えながらも構える。

 

 

「ど、どうする? か、カーラマインが呆気なくやられたぞ? あ、あんな枯れ枝ひとつに」

 

「ど、どうするたってやるしか無いでしょう? ライザー様が詰みを掛けるまで何とか時間を稼いで……」

 

「レイヴェルだけは逃がさないとまずいよね?」

 

 

 『えーっと、この程度で良いのか?』と徐にシャドーボクシングをし始めるイッセーを前にどう攻めて良いのかわからず足踏みする眷属達は取り敢えずその中に居る僧侶の少女だけは逃がそうと話し合うのだが。

 

 

「取り敢えず起きろドライグ」

 

『ZZZ……んが? な、なんだ? 折角寝ていたのに……』

 

 

 左腕に纏う鮮血を嫌でも連想させられる赤い装甲を纏うイッセーはもう待ってはくれない。

 

 

「あ、あれは……見間違いで無ければ赤龍帝の籠手!? 馬鹿な、あの人間が赤龍帝だというのか!?」

 

 

 観戦の場から誰かが驚愕した声を出すが、その声がライザーの眷属達に届く事はない。

 神器の類いなのかもしれないというのはわかってたものの、それがまさか二天龍と呼ばれる力を内包させた神滅具であるだなんて思いたくもない。

 

 

「直接ぶっ叩くよりはこうした方が加減できそうだからよ」

 

『折角気分よく寝ていたのに……』

 

 

 その身体から身震いする程の巨大な力が吹き荒れ、髑髏の上半身の様な形に変質するのだって本当は見たくもないし知りたくもない。

 

 

「っ!? な、なにアレ!?」

 

「む、向こうの本陣から巨人が……!?」

 

 

 旧校舎から山よりも巨大な人の形をした何かが出現したのだって出来れば永久に知りたくなかった。

 

 

「あーあ、完成体かよ。リアスちゃんも激しいねぇ?」

 

 

 その正体を知るイッセーだけがニヤニヤ笑い。

 

 

「ぎゃ!?」

 

「ひっ!?」

 

 

 近かったからという理由でもう一人の騎士と戦車を纏った髑髏の両腕で掴み、地面に叩きつけ、続け様に髑髏の拳が兵士達を虫を潰すかの如く潰していく。

 反撃しようにも髑髏に守られたイッセーに傷ひとつつけられず、次々と叩き潰されていき、やがて残ったのは……。

 

 

「あ、あぁぁ……」

 

 

 明らかに戦意が無くなった金髪碧眼の少女だった。

 

 

「み、皆が呆気なく……」

 

 

 全員の骨が砕け、血塗れの屍の山と化した運動場にて、尻餅をついた状態で恐怖に顔をひきつらせた少女は、赤い髑髏を纏う少年に対して完全に怯えている。

 

 

「チッ、これでもかよ。こう、もっとスマートに勝ちたかったんだけど、どうも脆いというか……」

 

「ひぃっ!?」

 

 

 シュッシュッと手加減の調整が未だに上手く行かずに不満げな顔をしてシャドーをするイッセーが恐ろしくて仕方ない少女は短い悲鳴と共に腰が砕けて立てずに後退る。

 

 

「よし、こんな感じかな? うんうん、これくらいなら肋骨へし折る程度で済みそうだぜ」

 

 

 だが化け物は見逃してくれそうに無く、一人満足した様に頷くや否や、全身から放っていた髑髏の形をした魔力を引っ込めながら少女へと近づく。

 

 

『完全に戦意を失ってるんじゃないのか?』

 

「ん? あぁ……どうなんだろ? まぁでもここまでやっといて見逃すってのも変な話だから皆仲良く退場させてやるのも慈悲ってやつだと思うぜ?」

 

『そんな慈悲なんて聞いたことがないぞ』

 

 

 何やら左腕に纏う装甲から放たれる声と会話しながらパキパキと指を鳴らして近付いてくる恐ろしい男に、ライザーの妹だったりする少女は最早泣きながら戦意が無いと伝えようとその場に頭を伏せる。

 

 

「こ、降参ですわ! 仲間を倒された以上、私にアナタを倒せる手だてはございませんわ! で、ですからどうか……! どうかお慈悲を!」

 

 

 最早プライドなんてどうでも良く、ただ助かりたいと少女は地面に額を擦り付けながら懇願する。

 だが暴君みたいな男はそんな少女に対して言った。

 

 

「もし逆に俺がキミ達に袋叩きにされて、助けてくれと言ったらその通りにしてくれたのか?」

 

 

 つまり見逃さないと呆気なく少女の懇願を切り捨てたイッセーは絶望する少女に向かって手を伸ばすと、無理矢理立たせ――

 

 

「ぶっ!?」

 

 

 少女の横っ面に向かって張り手を噛ます。

 

 

「ぶぶっ!」

 

 

 強烈な衝撃を頬を貰って地面をスライディングしながらひっくり返る少女。

 

 

「よーしよし! 今の感じなら首がもげる事も無い! やっとこさ調整が上手くいきはじめたぜ」

 

「い、いひゃいぃ……!」

 

 

 痛くて本気で泣き出す少女を気にも止めずにやっと調整が上手くいったと一人喜ぶイッセーは、景気付けと再び少女を無理矢理立たせてビンタする。

 

 

「ぎゃん!?」

 

「この感覚だな!」

 

「も、もうひゃめひぇ――ひぃん!?」

 

 

 アッハッハッハッ!! と余程調整が上手くいけて嬉しいのか、頬が痛すぎで呂律が回ってないまま倒れてる少女を踏みつけ出すと、まるで靴の底の泥でも落とすかの如くグリグリとし始める。

 

 

「やっと上手くいけた、今度からはこの感覚でやらないとな。

あくまでゲームだからよぉ?」

 

 

 何故わざわざそこまで加減することに拘ってるのか。

 それは今回のゲームにサーゼクスが関わってリアスの為に動いてくれたからに他ならず、もし関わってなければ此処まで気を使うこともなく今ごろライザー眷属達は血祭りになっていた。

 もっとも、ここまで来るのに調整が上手く行かなすぎて半分以上血祭りなのだが。

 

 

「おや、フェニックスの大将と――ありゃ女王かな? 必死こいてリアスちゃんから逃げてるみたいだけど――無理だなぁ。リアスちゃんの完成体は一番デカくて一番攻撃力があるからねー……っと」

 

「ぐぇ!?」

 

 

 しかし仲間の犠牲の甲斐あったお陰でイッセーは今上手く行った調整に舞い上がり、リアスがわざわざ本気を出して相手の王と女王を追い込んでるのを見られて気分でも良くなったのか、少女の背中に座って椅子代わりにし始める。

 

 

「おーおー、逃げてるねぇ大将さんは? くくく……っとと? おいおいキミ、ちゃんと踏ん張れよ?」

 

「は、はいぃ……!」

 

 

 本来なら打ち首にしても気なんて全く晴れないくらいに腹が立つ事案だが、あいにく相手は化け物で何だか知らないけど兄と仲間の女王がリアスに追い込まれてる様子を見て機嫌良くなってるお陰で椅子にされてる程度済まされてる。

 

 だから少女――レイヴェルはひたすらに言われた通り椅子になった。

 少しでも機嫌を損ねて八つ裂きにされない為に椅子になりきった。

 

「あ、撃墜されてらぁ」

 

(私は椅子……私は椅子。

機嫌を損ねて殺されない為に椅子になる……)

 

 

 屈辱といえば屈辱だけど、死ぬよりはマシだとレイヴェルは自己暗示の如く自分は椅子だと言い聞かせ続けていく。

 

 

「んっ……」

 

「へー、再生するんだ? 何時まで続くのやら」

 

 

 元々母に似た気の強い性格をしているレイヴェルにとってこの状況は耐え難い屈辱。

 しかしどういう訳かその身は僅かな変化を与えていた。

 

 

(う……? な、何故こんな辱しめを受けてるのに……)

 

「ん? おいちょっとキミ、あんまり動かないでよ」

 

「あ……も、申し訳ございませんわ……!」

 

 

 屈辱を受けているのに、何故か下腹部が熱い。

 そればかりか疼く……何故か。

 

 

『げ、ゲーム終了です……。勝者はリアス・グレモリー様です……』

 

「あ、終わった」

 

「…………」

 

「しまった、リアスちゃんを見てるのに夢中で始末してなかった……まぁ良いか」

 

「……」

 

「じゃあね、もう二度と会わないと思うけど」

 

 

 兄のリザインで上手いこと死なずにゲームが終わり、興味を持たない目で自分を一瞥した後さっさと去っていくその暴君の背中を見つめながらレイヴェルはホッとするけど、死なない代わりに何か大事なものを失った感がすごかった。




補足

本当は彼女も容赦無くグシャアされる展開だったのに、なんでこうなった……。

その2
ちなみにこのゲームを元仲間達も観戦してましたが、イッセーを見てトラウマ再発してました。

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