頼むからこっち寄るな!
感想の多さにビビって二時間で作ったぜ。
あざす!
どう考えてもおかしい。
この世界においてまずリアスは周囲から出涸らしの様な扱いをされてるし、その容姿もグルグル丸眼鏡にお団子ヘアーという、逆に寧ろ萌えポイントじゃないのかとイッセーが心配になる程度に地味な見た目だったし、もっといえば引きこもりだった。
にも拘わらず、何故あの女好きなライザー・フェニックスがまたしても出てくるのか。
イッセーは正直ライザーというよりは誰かが意図的にリアスについての情報を漏らしたのでは無いかというアイカの考えに対して同意していた。
では誰が漏らしたのか? ………地味な見た目のリアスが変装である事を知り、尚且つ本来のリアスが誰が見たって美少女である事を知ってる人物。
そしてそれを同族に流出させられる立場に居る者――
「裏切り者B群ぐらいか、もしくはリアスちゃんの両親がそういう意味とか無くバラしてしまったか。
まぁ、どちらにせよあの頃はどっちも簡単に見捨てたからな――親友だの親を名乗ってる分際で」
リアスの今の両親か、もしくはかつてリアスの親友面した癖にあっけなく裏切ったもう一人の悪魔か。
どちらにせよイッセーの覚悟はとっくに出来ている。
「起きろドライグ、久々に本気で誰かを殺るかもしれねぇ」
『そうかい。まあ俺は構わんよ、久々にお前に使って貰うなら何でもな』
普段は深く眠る相棒を久々に起こす。
それは即ちこの世界で生きる事になってからは封じていたイッセーの本気。
『誰が呼んだか分からん、破壊の龍帝の復活か……なんとも哀れな連中だ』
ただリアスの為だけに同志達と共に掴み取った真の領域。
一人どこかのビルの頂きから月を背に街を見下ろすイッセーの瞳は赤く妖しく輝いていた。
何故此度の縁談に乗ったのか? それは何処からか流出してきたリアス・グレモリーの本来の姿がライザー・フェニックスにとってド・ストライクだったからだ。
グレモリー家の出涸らしと噂され、その姿はお世辞にも良いとは思えぬ地味な姿ではあるし、期待もされてない。
しかし蓋を開けてみればその容姿もスタイルも実に自分好みだし、出涸らしと呼ばれてるお陰で他の邪魔もなく簡単に娶る段取りも出来た。
有り体に言えばライザー・フェニックスはかなり浮かれていた。
「そんなダサい眼鏡や髪型はやめて本当の姿を見せてくれよ、なぁリアス?」
「………………」
「………………」
「うっわー……」
空気の汚れた人間界の学舎の一室。
そこに魔王・サーゼクスの女王であり妻でもあるグレイフィアに案内される形でやって来たライザー・フェニックスは開口一番にこれまで話もしたことが無いのに気安い態度で地味姿のリアスに対して眼鏡とお団子ヘアーをやめろと言い出す。
そのあまりのいきなりさに思わず新人転生悪魔のアイカは引くのと同時に横に佇むイッセーを見てみると、案の定イッセーの顔は虫けらを感慨無くぶち殺す時にでも見せそうな『無』だった。
「何故こういうお話になったのかも、何故アナタなのかも私にはわかりません。
しかし、いくら親の命令だからと言われてもアナタと結婚するというのはハッキリ言ってしまえば――本当に嫌です」
当たり前だがリアスも丁重にお断りするし、流石にライザーも馬鹿では無かったのか、少し頷きながら口を開く。
「キミがそう言うのもわかる。確かにキミと俺は接点もなければいきなりの話だ。
しかしだ、キミも知っての通り、先の戦争で純粋悪魔の数はかなり減ってしまった。
つまりこれは血を絶やさない為にでもあるというジオティクス様とヴェネラナ様のお考えでもあるんだ」
「……」
瓶底みたいな眼鏡のせいで今の言葉に対してのリアスの表情は読めない。
そしてその隣に佇むリアスの将軍らしき少年もまた無表情だし、割りと悪くない顔と身体をしてると思う戦車の少女もそれに倣ってるのか無表情だ。
しかし流石に両親の名前を出せばリアスとて少しは考えたくれるだろう……と思っていたらそうでも無かった。
「そう――父と母がですか。
ハァ……そうですか」
「えっと、どうかしたのか?」
「いえ何でも。しかしどちらにせよ私にその意思はありません。
例え今此処でグレモリーの名を外されてしまおうが、私はアナタと結婚するつもりも無ければ頭の先から爪先まで興味ございません」
「なんだと?」
寧ろどこか落胆したような、結局そうなのかといった納得といった様な――どちらにせよ目に見えてガッカリした様な態度で尚且つ興味の欠片もございませんと返してきたリアスにライザーもむっとする。
「ここまで言ってるにも関わらず分からないのか? この俺が結婚してやるって言ってるんだぞ?」
「じゃあ私ごときとなど止めて他の誰かとご結婚なされたらどうかしら?」
世の中には他に女なんていくらでもいるじゃない? とライザーの威圧に対して平然と返してくるリアス。
「言わせておけば――」
出涸らしと呼ばれてる分際で――とうっかり言いそうになったライザーだったが、意図したのかそうで無いのか、その言葉を放つ前に第三者の声が部屋に響き渡る。
「そこまでです」
案内人のメイド悪魔のグレイフィアだった。
「こうなることは、旦那様と奥様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も重々承知でした。ですので最終手段を取り入れることにしました」
じゃあ最初からこんな話を成立させようとするなよ……。
イッセーとリアス……そしてアイカの三人は内心面白いくらいシンクロさせながら淡々とした態度のメイドを見据える。
「っ……コホン」
その目を前に――特に全く自分と話もしなければ顔を合わせようとすらこれまで実はしなかった――というより完全に避けられていたグレイフィアは一瞬リアスを前に動揺しそうになるが、誤魔化しの咳払いでなんとか持ち直し、不満気な顔をするライザーに対してこうなった場合の予定を二人に対して示す。
「お……嬢様がご自分の意志を通すのでしたら、ライザー様と『レーティングゲーム』で決着をつけるのはいかがでしょうか?」
これなら白黒ハッキリ付けられるのでは? と相変わらず何の感情も伺えない目をするリアスに対してグレイフィアが言った瞬間だった。
「……くく、クククク!」
それまでずーっと黙っていたイッセーが突然肩を震わせ、小さく笑い始めた。
男の時点で既に眼中になかったライザーも、同じく一言も会話をしたことがなかったグレイフィアも一体何なんだと訝しげな顔をするのだが、やがてイッセーはそれが心底可笑しくて堪らないと言わんばかりに大笑いし始めた。
「ははははは! 最高のギャグいきなり噛まされたら笑うしかないでしょうが! あっははははは!!」
一体何が可笑しいのか、いっそ不気味にすら感じるくらいゲラゲラとひとしきりに笑い続けたイッセーは笑いすぎて流れた涙を拭いながら口を開く。
「こういうのを出来レースってのか? レーティングゲームをする数が圧倒的に少ない……つーか現状三人しか居ない――いや、向こうはまだ二人しか居ないと知った上でそれで白黒だって? おいおい、我が主のご両親は実に慈悲深いグレモリー様で涙ちょちょぎれだぜまったく!」
「……。そうねまったくもって素晴らしい両親の娘で良かったわ私は」
「………………」
これが皮肉である事に気付いたのはすぐだったし、グレイフィアもなにも言えず、ライザーもほんの少し意味を理解したのか、良い顔はしてなかった。
「そちらの方はフルメンバーなんでしょう? いやぁ参りましたねお嬢様、こちとら新人入れて三人だし、こりゃ公開処刑にでもされちゃいますかね?」
「そうね、あーぁ、これでまた無能な私の名前が広まって身に余る光栄だわ」
「わぁ、袋叩きにされるのは嫌ですねー」
「あの、いえ、決してヴェネラナ様とジオティクス様にその様な意図は……」
「まぁ無いのかもしれませんし、なにか別の意図があるのかもしれない。
まぁ良いでしょう、わかりました……自信はありませんがその話に乗りましょうと父と母に伝えて頂けますでしょうか――グレイフィアさん?」
「う……!」
サーゼクスの妻で云わば義理姉であるグレイフィアに対して眼鏡を外し、髪を下ろしたリアスはその美貌も相俟って実に良い笑顔で皮肉をぶつけまくりなリアス。
勘違いされがちだが、かつて陥れられた直後の様な面はあるにはあるが、イッセーと進化した影響かこういう強かな面もちゃんと取り戻している。
だからこそ本来の美貌を前にライザーは息を飲み、グレイフィアはその表情を歪める。
「ちょ、ちょっと待った。ゲームをするのは良いが流石にメンバーがキミを含めて三人だけというのは……」
そんな受けると言い放ったリアスに暫し見とれていたライザーが、驚いた事に自分が有利にも拘わらずフェアじゃないとゲームをする事に渋る様な事を言った。
それに驚いたのはかつての性格しか知らないリアスとイッセーだったりするのだが、ここまで言った以上、そして結局は奴が居ようが居まいが根っこは似たものだと見限り始めていたリアスは首を横に振る。
「いいえフェニックスさん。結婚は嫌ですが、父と母の条件がこれである以上私はゲームを受けますわ。勿論、全力は尽くさせて頂きますので、どうかこの茶番に付き合ってくださいな?」
「だ、だが……流石に弱いもの苛めとなる事は……」
ていうかグレイフィア様に対してこんな他人行儀だったのか……と、グレモリー家の複雑な内部事情を垣間見た気がしたライザーは少し様子が変わり出したリアスに尻込みしながら、それでもやはり三人を相手にこちらはフルメンバーという誰が見ても弱い者苛めにしかならないゲームを受ける気にはなれなかった。
だが実際ライザーのこの考えは実に好ましい考えだし、間違ってはいないだろうが……その三人の内の二人の本質が既に反則な訳で……。
良いからガタガタ言わずに受けろこの野郎とでも言いそうなくらい急に活発化したリアスを前にライザーが何かを言おうとしたその時だった。
「お、お待ちください!」
空き教室の扉の向こうから聞こえる大きな声にライザーとグレイフィアの視線が自然と向けられる。
一体何者だ? と考える暇もなく勢いよく開けられた扉と共に入ってきたのは。
「そ、ソーナ様?」
「な、何でキミが……?」
もう一人の純血悪魔のソーナ・シトリーだった。
いきなりの訪問に面を喰らうライザーとグレイフィア。
そして……
「………………」
「………………………チッ」
明らかにテンションが下がり、能面の如く無表情へと変貌するリアスと舌打ち混じりのイッセー。
関わる機会を完全に断ってたのにも拘わらず今になって突然やって来たかつての裏切り者の一人は、目を泳がせながら口を開く。
「け、眷属が足りないのであれば日にちさえ頂ければ私がお手伝いして彼女をフルメンバーとまではいきませんがレーティングゲームになる様な人数まで眷属の数を増やします…………と、いうのはどうでしょう?」
「はぁ?」
「何を申されているのかイマイチわかりかねますが……」
チラチラとリアスを伺いながら突拍子が無さすぎる事を言い出すソーナにライザーもグレイフィアも意味がわからないと訝しげな顔だ。
「…………」
そしてこの時点でイッセーはある程度察知した。
どうやらこの裏切り者も記憶を持ってて、しかもこの茶番を仕掛けた疑いが強いと。
「まったくそうですね、いきなり現れて何を申されるかと思えば、貴女の手助けとやらは必要ございませんよソーナ・シトリーさん?」
「う……」
そしてリアスも悟る。あぁ、コレが何やら勝手な事でも言ったのかと。
元眷属が何故集まったのかのも含めて全て。
「何やら話が逸れましたが、とにかく私達は三人でゲームに参加します」
「そ、そこまで言うなら言わないが……えっと、良いのか? ソーナは……」
「は? あぁ、さぁ……? 知りませんわね。
そもそも彼女と私は上の兄弟が戦友同士の妹ってだけで親しい訳じゃありませんから」
「はぁっ!? そ、そうなのか!? し、知らなかったというか、俺は何故彼女に睨まれてるんだ?」
「さて……自分の思い通りに何かいかなかったからとかではありませんか? 私には図りかねます」
思いの外ライザーのキャラが真面目だったせいで上手くいかなかったと内心毒づくソーナに今まさに物凄く睨まれて微妙に居心地の悪いライザーは、友でもなんでもないと平然と言い切るリアスと、それを聞いて死にそうな顔へと変わるソーナを見て何やら複雑なものが絡み付きまくってる事を悟る。
「えっと、じゃ、じゃあゲーム当日に……」
「ええ、精一杯戦わせて頂きますわ先輩?」
「お、おう……」
「そ、そんな……リアス……」
にっこりと笑うリアスに見送られて取り敢えずグレイフィアと共に冥界へと帰ったライザーは知らない。
「……………アナタが今回の騒動の切っ掛けね? ソーナ・シトリー」
「!? ち、違うわ! わ、私はただアナタに謝りたくて……! それにアナタの仲間達だって……!」
「そう、そんな事を思ってたの。わかったわ、アナタ達の事はとっくの昔に許したわ。
だから………私に二度と関わらないで」
「な……なんで……?」
「私とアナタは単なる同族というだけ……それで良いんじゃないかしら? 私は私、アナタはアナタ、過去の事は水に流してこれからは自由に生きれば良い―――――私の関係の無いところで」
「私だったらあの言葉を先輩から向けられた時点で死にそうだわ」
「さてと……どうやって暗殺すっかなぁ……」
強すぎる本質を。
補足
基本的にリアスさんも言う時はかなりきついです。
その2
何かもうソーナの突撃のせいか微妙にまともになった鳥さん。
なんつーか、やはりレイヴェルたん並みにライザーさんを優遇させる悪癖が……
その3
ステンバーイ ステンバーイ ステンバーイ