色々なIF集   作:超人類DX

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これ、前回とは関係なくなんとなく一発ネタ的な意味でやっただけ。

ベースはそう……ベリーハード


ベリーハード2周目
※人外イッセーと……


 ただひとつの願いは無惨にも壊された。

 

 自分の事を何と呼ぼうとも構わない。だからたったひとつの願いだけは奪わないで欲しい。

 

 だがそれでも少女は大人になる手前に全てを失い、突き落とされた。

 

 独りになった自分を守ってくれた少年と共に少女は時代と世界の意思によって飲み込まれる様にして消された。

 だからこそ少女はこの奇跡ともいえる状況を前に困惑する前にまず抱いたのは、次こそは自分を守ってくれた少年と共に『穏やかに生き続ける』という小さな夢。

 何もせずとも自分達に目を付けた連中から削り食われるくらいならと、以前と違って無駄に積み上げる事はせずと共に……。

 

 自分を見捨てたかつて居た他の仲間とは一切関わらずに。

 

 それが自分と同じく奪い食われた赤き龍帝との奇跡のやり直し……。

 

 

 

 

 誰がそう呼んだのか、かつて誰かが私へ向けて罵倒する様に言い放った呼び名な――無能姫。

 意味はそのままで、私が無能のグレモリーだから無能姫らしいのだけど、呼びたくば呼べば良いと思っている。

 その代わり、いくら自分を揶揄しようが構わないしアナタ達にとって無害でちっぽけな単なるそこら辺の悪魔として存在してみせる。

 だからどうか、お願いだから私と唯一頼れるこの人には関わらないで欲しい。

 

 私が望むのは、絶望した私を助けて死ぬその時まで守ってくれたその人とただ穏やかに暮らしていきたいだけだから―――――

 

 

 

 

 

 

 それが連中にとって都合の悪いリアス・グレモリーの前世であり、今世の願いであり唯一持つ小さな夢な事は誰も知らない。

 だからこそ今の彼女の行動は周囲にしてみれば少しおかしく思われる。

 しかしそれでもリアスはいっそ他人に対して懐疑的な――怯えた様な様子を見せる。

 そのおかげで今まで他の悪魔達が持つ様な配下――眷属といったものを持たない。

 

 いや、一人だけリアスには眷属が居る。

 眷属というよりは唯一心の底から信じている人間から女王へと転生した少年が。

 

 

「リアス、アナタはグレモリーなのです。

ですので何時までも眷属が一人だけというのは他の方々への示しがつきません。

ソーナちゃんをみなさい、あの子はアナタと同じく人間界の学舎で学ぶ傍ら、きちんと眷属を持ってますよ?」

 

「はい、申し訳ございませんお母様……」

 

「…………」

 

 

 実家へと戻った際、何時も母から小言を言われるリアスは伏し目がちに頭を下げる。

 昔から周囲に壁を作って関わるのを拒絶する娘に対して母は小さくため息を吐きながら静かに娘の傍らに立つ唯一の眷属である少年に視線を向ける。

 

 

「………」

 

 

 このただひたすらに沈黙している少年が唯一の眷属にて最高戦力であるのは分かる。

 そして娘のリアスが親や家族である自分達よりも余程この少年を頼って―――いや、違う。依存しているのもヴェネラナ・グレモリーは知っている。

 

 それが何故なのか、そして家族である自分達にリアスが昔から時折怯えた様な反応をするのかはわからない。

 今もこうして他の悪魔からの評判があまりよろしくない娘に対して現グレモリー当主の夫人として檄を飛ばした訳だが、本当の所はこの唯一心を娘が許している少年に託しても良いとすら思ってるし、わざわざ無理に娘に強制させるつもりだってない。

 

 

「お小言はこれまでにするわ。イッセーくん、リアスをお願いね?」

 

「はっ」

 

「………」

 

 

 リアスが無意識にだと思うが、ずっと傍らに佇むイッセーと呼ばれる少年の服の袖を掴んでいるのがバレバレだったがヴェネラナは敢えてそこには触れない。

 それは以前、リアスがまだ小さかった頃、どこからかこの少年を連れてきて女王・・いや、男子なので将軍として傍に置き始めた当時、あまりにもリアスがこの少年に対して依存し過ぎてるのを知って注意した時に見せた反応が異様だったからこそヴェネラナは何も言えないのだ。

 

 

「あの様子ではやっぱり無理そうね……」

 

 

 今でも忘れない、ヴェネラナや家族達がリアスからイッセーを引き離そうとした時、危うくグレモリー領土全域――いや冥界全土が滅びてしまうだろう強大な力を暴走させる様に放ちながら取り乱したリアスを。

 

 バアルの力を持って生まれた長男・サーゼクスと同じ――いやひょっとしたら抱える魔力の許容量はそれすらをも超越してるのではないかと恐怖すら覚える力の奔流をただ優しく止めて見せたイッセーという少年を。

 

 

「リアスが彼にだけしか心を開かないのであれば、あまり口酸っぱく言っても却って逆効果なのかもしれないわ」

 

 

 今居る部屋の窓から見える城の中庭を歩いてるリアスとイッセーの二人を見下ろしながら、ヴェネラナは深くため息を吐く。

 あれ程の力を持ちながら周囲に怯え―――いや、周り全てに対して懐疑的でさえなければ今ごろリアスはグレモリー家の次期当主として堂々と振る舞っていたかもしれない。

 でもあの様子からして本人にやる気は無いだろうし、強制させたらまたあの時の様に暴走してしまうのかもしれない。

 だから周囲は自分を含めてなるべくリアスの事はイッセーに任せていた。

 

 リアスが心底幸せそうな笑顔を唯一向ける龍帝の少年に……。

 

 

 

 

「いっそ適当に見放しでもしてくれたら、後は事故死か殺されるを装えるんだけどねー……あんまり上手くいかないもんだ」

 

 

 さて、そんなリアスはというと、中庭から自室へと戻って鍵を閉めるとそのままイッセーに飛び付きただひたすらに甘えていた。

 

 

「ごめんなさい、あの時私のせいで……」

 

「大丈夫だよ、今のところ周りがリアスちゃんに悪意を持ってる事は無いし、リアスちゃんのお母さんも本気で案じてる様だから」

 

 

 これでもかと身体を密着させて抱き着いてくるリアスの頭を優しく撫でてその場に座り込むイッセーは、先程のリアスの母の話を思い返しながらリアスがこうなってしまった()()()の苦い思い出が頭を過る。

 

 

「今の所はまだ全員変化は無いみたいだからね……」

 

 

 両親を失い。

 立場を失い。

 伴侶を失い。

 母を失い。

 愛した者を失い。

 師を失い。

 

 

 其々が何かを失い、そして復讐したあの思い出は鮮明に頭の中に残っている。

 その全ての大元との決戦において集まった同志達をバラバラに引き裂かれた記憶も。

 

 

「奴も必死だったのか、俺とリアスちゃんは以前の思い出を記憶したままやり直している。

俺達を嘗めてるのか、それとも単に誤算だったのかは知らないけどそれならそれで構わない。

静かに、目立たず、誰かが英雄的な行動をするのを横目にただひたすらひっそりと生き続ける」

 

 

 余計な冒険をするくらいなら地道に生きた方が良い。

 幸いこの世界は両親を殺されていない。

 

 

「向こうに戻ったらウチに来なよ? 父さんと母さんが喜ぶからさ」

 

「うん……」

 

 

 リアスをこれ以上不幸にさせる訳にはいかない。

 イッセーの生きる意味はまさにそこへと集約されていた。

 

 

 リアス・グレモリー

 種族・悪魔

 無能と罵る連中に陥れられ、仲間に裏切られ、それでも掴んだ幸福の為に他を一切望まなくなった人外領域に踏み込んだ悪魔。

 

 

 イッセー

 種族・人間ベースの転生悪魔

 備考・リアスと出会えた事で人外へと辿り着いた赤龍帝。

 

 

 これは二人の静かな幸福へのお話。

 

 

 

 

 

 人間界を学ぶために実家から命じられたリアスは、正直嫌な思い出しか無くて行きたくは無かった人間の学舎――駒王学園の生徒である。

 

 以前の陥れられる前まではその美貌で注目を集めていた訳だが、今のリアスはそれをひけらかす気は毛頭無いし、いっそ神経質なまでに隠そうとしていた。

 

 

「その見た目って逆に目立つんじゃないの?」

 

「それが意外とそうでも無いのよ」

 

 長い赤髪をお団子に結び、牛乳瓶の底みたいな丸眼鏡を掛けたというなんとも典型的な地味スタイルを初めて今年で三年目。

 本来ならこんな姿にならずにただ登校するだけで周囲からキャーキャー言われてたのだが、今のリアスはその燃えるような髪の色以外は色んな意味で目立たず、唯一信じる眷属である一誠と並んで歩いてても周りは全く注目せずだ。

 

 

「まあ、三年もその見た目でやって来て成功してる訳だし、それ全部外したら絶対騒がれるから俺としてはそのスタイルで居て欲しいんだけどさ」

 

「何で?」

 

「わかるでしょ? 掌返したみたいに本来のリアスちゃん見てキャーキャー騒ぐ奴見たら多分俺頭に来て暴れるぜ?」

 

 

 以前は両親を失ったせいでまともな義務教育すら受けず、当然高校生なんてやってすらいなかったイッセーも今生では失わなかった両親の元で育って学生となっていた。

  ある意味で念願だった両親との普通の生活はとても幸せだし、そこに『同じ』だったリアスも加わってくれたともなれば最早他に何も要らない。

 どこから連れてきたとも両親にしてみれば分からないリアスを快く受け入れてくれ、人間界におけるリアスの実家は最早イッセーの家だった。

 

 

「や、お二人さん、今日も仲が良いですねぇ?」

 

「へ? えっと、アナタは確かイッセーと同じクラスの……」

「はい、桐生ですよグレモリー先輩?」

 

 

 そう、以前とは違って両親は生存している。

 そして以前とは違ってイッセーは正式にリアスの女王――将軍という位置に居る。

 以前女王だった姫島朱乃や、その他の仲間は――故に居ないし、この世界では一切リアスは関わらなかった。

 

 いくらリアスでも転生者という男に好意を持ち、挙げ句言われるがままに自分を殺そうとまでしてきた連中を仲間とは思えないし、今の時代に悪魔へと転生しなかった連中がどうなってしまったのかも考える事はなるべくしなかった。

 

 なので駒王学園にそれ等は居ない筈だった。

 

 

「わざわざ俺達に話し掛けて来たって事はだ桐生さんよ、もしかしなくても――」

 

「ええ、そうよ。ほら、向こうから見てるでしょ?」

 

「………う」

 

 

 同じクラスという理由と、ひょんな発覚を経て実はリアスとイッセーという周りにしてみたらよく分からないコンビと親しくなった、変装リアスと違ってほんまものの眼鏡っ娘である桐生なる女子がクイッと向こう側を顔を傾けて差す。

 

 その先に何があるのか? 固まるリアスの代わりにイッセーが視線を辿ればそこには居るのだ。

 

 

『………』

 

 

 関わらなければ間違いなくこの学園に入ることは無いとリアスが前に言ってたにも拘わらず、何故か駒王学園の制服を着たかつてリアスを呆気なく裏切った者達の今世を生きる姿が。

 

 

「……。ちっ、またか」

 

「前々から思ってたけど、あの学園人気者の人達グレモリー先輩は何か関係でもあるの?」

 

「無い。前も言ったけど100%リアスちゃんとは無関係だ。寧ろこの学園でまともに会話出きる相手と言えば俺を除いて教師かキミくらいなもんなんだよ」

 

 

 女王だった姫島朱乃、戦車だった塔城小猫、騎士だった木場祐斗。

 僧侶二人は片方がこの時期会ってもおらず、片方はその出生のせいで封じられてたという理由があってまだ見たことは無いが、それにしてもリアスの眷属でなければこの学園に入る理由なんぞない筈のリアスの裏切り者共が居て、しかも此方を見ているのか。

 

 ハッキリ言って嫌な予感しかしないし、かなりイッセーは気に入らなかった。

 

 

「ふーん、私だけねぇ?」

 

「あ、アナタのおかげで目立たぬ行動というのを教えて貰えたし、本当に感謝してるわ」

 

「いえいえ、私は別に。気にしないでくださいな先輩?」

 

「まあ、キミのおかげで謎の連中達を知れた訳だからな。そこはマジで感謝したいかもしれなくもない」

 

「そう言うならトモダチにして欲しいわね。

なんていうかさ、二人の絶妙な関係を見てると加わってのほほんとしたくなるのよね?」

 

「なんじゃそら……」

 

 

 リアスをリアスとわかってる上で見ているとするならば、もしかしなくてもあの連中は自分が知る裏切り者共なのかもしれない。

 ならば消すべきか? いや、変に動いてもしあの裏切り者共の後ろにあの転生者みたいな奴がいたらマズイでは済まされない。

 

 

「まさかとは思うがキミ、レズ思考じゃねーよな? だったらひっぱたくぜ俺は?」

 

「極端過ぎるっつーの!」

 

 

 そこら辺の苔の様に無害を振り撒きながらリアスとのんびり生きるからこそ、不安要素は消さないといけない。

 されど無駄に動けば危ない……。

 イッセーはただリアスの為だけに深く慎重に桐生を軽くおちょくりながら考えるのだった。

 

 

 終わり。

 

 

 

 裏切り者共を仲間にするつもりも、ましてや関わる気も無い。

 何を思って地味アンド地味スタイルに変装してるリアスを見ているのかは知らないけど、イッセーはその独占欲もあって番犬の如くリアスの周囲を守りまくる。

 

 そんな中、確かに一般人である桐生藍華の身に危険が降り注いでしまったので、取り敢えずリアスと共に助けてしまった。

 

 

「な、なによこれ……ふ、二人も……」

 

「………記憶消した方が良いよな?」

 

「そうね……この子を巻き込むべきじゃないもの」

 

 

 とあるはぐれ悪魔に危うく食い殺されそうになった彼女を目の前でその化け物をバラバラにして助けたイッセーとリアスに桐生は納得するのと同時に眉唾と思ってた存在がこの二人だったと理解してしまう。

 だからこそ彼女は記憶の取り除きをしようとした二人に対してノーを突きつける。

 

 

「待った! せっかく妙な同類意識を実は感じてた二人を知る事ができたのに、その記憶を消したらまたいたちごっこみたいに二人に私は近付くのよ? だったら絶対に他には漏らさないと今ここで誓うし、何なら二人の役にでも立つからトモダチになってくれない?」

 

「キミさ、何を言ってるのかわかってる? 下手したら食い殺されてたんだぜ?」

 

「でも生きてる。二人が助けてくれたからね。

それに、例え二人が普通じゃないにせよ、私は寧ろアナタ達に同じものを強く感じたのよ。

それが何なのかはイマイチわからないけど……」

 

「……それってまさかこの子……」

 

 

 何故そこまでイッセーとリアスが気になってたのかは本人にもわからないけど、本能的に同じ何かを感じると尻餅状態でパンツ丸見えなのにどこか楽しげに話す桐生藍華にリアスはハッとする。

 かつてイッセーから教えられる事で覚醒した、種族を越えた心の繋がりを具現化させた力を。

 

 

「能力保持者……か。桐生さんがか?」

 

「わからないけど、もしかしたらって……」

 

「なるほどね、まあ確かにこの子は妙に俺達に拘る所があった事だし、妙に悪意は無かった訳だが……うーん」

 

 

 悩むイッセー。しかし結局イッセーとリアスは桐生に自分達が悪魔である事を教えてしまった。

 理由はわからないし、知った本人は寧ろトモダチになりたがってたというのもあってかかなり喜んでいた。

 しかも挙げ句のはてには――

 

 

「へぇ、兵藤が先輩の右腕ポジって訳ね。

で、私は――」

 

「勘で戦車って所かな」

 

「オーケオーケー、よっしゃあ! これで私も二人にコソコソせず会える訳ね!」

 

「………。オカルト研究同好会でも作ろうかしら」

 

 

 なにか運命じみたものを感じて引き込んだ。

 

 

「ひょ、兵藤ったらとんだ鬼畜だったのね。

あ、あははは……お、お尻と腰が痛い……」

 

「自衛の手段くらいは覚えて貰わないと困るんでね」

 

 

 本来無かった真なる繋がりを獲て。

 

 

「神器は無いが、キミは持ってる。

俺とリアスちゃんと同じなにかを」

 

「これがそう、なの? 不思議……なんだか自分を本当に知った気持ちになるわ」

 

「それがスキルの元なのよアイカ」

 

 

 

 

 

「…………………。私の位置があの眼鏡の人に……」

 

「私の位置はあの赤龍帝に……」

 

「………………やっぱりダメなのかな今更……」

 

 

 桐生とイッセーに嫉妬する元裏切り者達の影がちらついたまま。

 

 

続きません




補足

何時だったかやってたベリーハード→ノーマルとは違い、前世的記憶を持つのはリアスさんとイッセーで味方側だった者は持ってない。

代わりに転生者側に行った元仲間とか辺りが持ってたりします。


そして、何故か桐生さんが完全レギュラー化します。
果たしてヒロイン化するか……までは知りませんけど

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