色々なIF集   作:超人類DX

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精神的な意味でも、物理的な意味でも切り離せないよ……みたいな?


切り離せない繋がり

 兵藤一誠はイカれている。

 それは幼少の頃から既に兆候があり、当時の一誠は世界がとてもつまらないものに子供ながらに感じていた。

 

 何故自分は他と違うのか?

 右を見ても、左を見ても、前を見ても、後ろを見ても同じが()()()

 

 自分と同い年の子供と遊んでいても、その違いはわかってしまう。

 容姿や性別という意味では無い明確なる違いが。

 

 鬼ごっこをしても誰も自分の足の速さに並べない。

 かくれんぼをしても誰も自分を見つけられない。

 ドッジボールをしても誰も自分に当てられないし投げるボールを避けてくれない。

 

 少し練習したら皆だって同じになれる筈なのに、全力で遊べるのに、何で皆はそれが出来ない。

 

 何で自分を見て怖がって泣く? 何故皆一度だけしか遊んでくれない?

 

 子供は非力故に、自制を知らない故に制御を誤る。

 だからこそ異常ななにかを持つ少年が全力で遊べば、自然と周りから離れていく。 化け物だと理解されて。

 

 その経験が少年の見る景色を灰色にした。

 自分がおかしいのかもしれないのにも拘わらず、惜しみなき愛情をくれる両親以外の全てがモノトーンになっていく。

 

 

 ――自分は一体何の為に生まれた?

 

 

 自分が自分で居られる場所はきっと見つかる事は無いんだと心を閉ざしかけ、何かを諦めようとした。

 

 

 

  そう――

 

 

「このボール、アナタの?」

 

 

 本当に偶然出会った同類の少女と出会うまでは。

 

 

「だ、だれ……きみ……」

 

「アナタこそ……なんで……今まで見たことなんてなかったのに……」

 

 

 同質を越えた同類。

 容姿も、性別も、種族さえも違うのに錯覚してしまう程の衝撃。

 モノトーンの景色に色が甦った日……。

 

 これが少年(イッセー)少女(ソーナ)の出会い。

 

 

 

 

 

 

「リアス達の二度目のレーティングゲームが中止になったらしいのよ」

 

 

 互いに肉片になってしまおうが気持ちに変化が無いと理解する事で色々と凄まじかった昨晩から明け、完全によそよそしくなった椿姫達以外の眷属達を自由にさせているソーナからいきなりそんな話をされ、ガリガリ君を食べていた一誠はキョトンとした顔をした。

 

 

「それはまた何故?」

 

 

 よそよそしいソーナの眷属を一切意識する事も無く、生徒会室に役員でも無いくせに入り浸る一誠は、先日加勢を断ってやったリアス・グレモリー達の最後のチャンスの中止について理由を聞いてみる。

 別にどうでも良い事なのだが、ソーナから話を切り出したという事は何か無関係とは言えない他の理由があるのだろう……そう一誠は感じ取って、もう3本連続引き当てたアタリと書かれた棒をテーブルの上に並べる。

 

 

「また当たったし。昔っからガリガリ君を食うと絶対当たるんだよな」

 

「そ、そんな、三本連続で当たるなんて……」

 

「不思議よね、一誠のお義母様と一緒に懸賞に応募したら特賞がよく当たるし」

 

「………」

 

 

 ほんの小さな事でも馬鹿げた結果を生み出す。

 完全とはいえないが、覚悟を決めてソーナに遣える事を決めた椿姫は、平然と決して多くない確率を引き当ててる一誠の姿に顔をひきつらせている。

 

 

「話が逸れたわね、えーっと……そう、リアスのゲームが中止になった理由は、何でも天界からの使いが来るからとか何とか」

 

「天界? というと天使勢ですか」

 

 

 そんな椿姫のリアクションをスルーし、話を戻したソーナと一誠。

 純天使という存在を一度も見たことが無かったりする一誠だが、その表情に興味の色は無さそうだ。

 

 

「よくは知りませんが、大変そうっすね~」

 

「そうね、頑張って欲しいわ」

 

「………」

 

 

 本当にそう思ってるのかこの二人は……。

 他人事の様に笑い合ってる二人を見て内心思う椿姫。

 既に貧乳と小バカにしてムキになってたやり取りすら懐かしく思えてしまう程にこの二人はイカれてるのはわかるが、椿姫はそれでも付いていく事を決めてしまった。

 後には退けないのだ。

 

 

「そろそろグレモリー様が教会からの使いと会合し終えて我々の所に来るかと思います会長」

 

「もうそんな時間? 別に私達の所にまで来なくてもいいのに」

 

「? 会うんすか?」

 

「そうなのよ、向こうが何を言ってくるかはまだわからないけど……あー、かったるいわ」

 

 

 どうやらその教会の使いとやらが来るらしい。

 それを知った一誠は部外者だから邪魔になると席を立つ。

 

 

「じゃあ俺は先に帰ってますわ」

 

「え、帰るのですか? てっきり会長に付くのかと……」

 

「だって親友ってだけで基本部外者ですからね。センパイの眷属でもありませんし」

 

 

 至極真っ当な正論に椿姫は少し驚いた。

 ソーナのゲームに出て対戦相手を消滅させたり、自分が男だったら八つ裂きにしてやってたと真顔で言うくらいにはソーナに執着してる癖に妙な所では弁えてるのに今や違和感しか無い。

 

 

「じゃあセンパイ、うちのお母さん曰く今晩はすき焼きらしいんでなるたけ早めに帰ってきてくださいね?」

 

「わかった、適当に話聞いて適当に頷いてとっとと切り上げるわ」

 

 

 呆気なく生徒会室から出ていった一誠の背をソーナと見送る椿姫はやっぱり一誠という人物がよくわからないのだった。

 

 

 

 

「しまった、傘持ってきてない」

 

 

 一人先に帰ると校舎を出ようと昇降口まで来た一誠は外が雨になってることをうっかり忘れていた。

 

 

「結構強いしな……うーんどうすっかな――ん?」

 

 

 しとしとと降り注ぐ雨を眺めながら濡れてまで家に帰るべきかを悩んでいると、自分の視界を横切るずぶ濡れの男子を発見する。

 

 

「隣のクラスのイケメン君じゃん、どうしたんだ?」

 

 

 リアス眷属の騎士がずぶ濡れになって門の所へと走っていくのを見て呑気に首を傾げる。

 

 

「ま、いっか、走りたいお年頃なんだろうきっと」

 

 

 だが考えた所でわかる訳も無く、また興味なんてやっぱり無いため直ぐに忘れる事にした一誠はそのまま濡れて帰る覚悟を決め、雨に打たれながら歩き出した。

 

 

「~♪」

 

 

 雨に打たれながら歩き続ける一誠。

 昨日からかなり気分が快調であり、その理由は言わずもながらだ。

 その為雨に多少打たれようがへっちゃらだし、何なら今ここで誰かに街角アンケートを申し込まれても笑顔で受けてやれる気分だ。

 

 

「この前のゲーム以来だね赤龍帝くん」

 

 

 空から降りてきた魔王だろうと、一誠は気分よく応対できる自信があった。

 例え降りてきた女魔王の格好が奇抜だろうが、ソーナの姉だろうが。

 

 

「親方~ 空から不思議すぎる姿した女の人が落ちてきたぜ~」

 

『誰が親方だ……。そんな事よりこの女は確か……』

 

 

 どうポジティブに見ても友好的では無い表情で一誠の前に降り立った奇抜な格好をした女。

 その姿にドライグは見覚えがあるし、一誠も一応見覚えがあった。

 

 

「センパイのお姉さんでしたよね確か? わざわざどうかしたんですか?」

 

「…………」

 

 

 気持ち悪い……どこまでも同じ過ぎる。だかこそ気に入らない。

 妹のソーナの影がちらつく程に中身が似すぎている少年の言葉に反射的に目付きを鋭くさせた奇抜な女悪魔――いや、セラフォルー・レヴィアタンは、傘も差さずにずぶ濡れになってる少年に対して遠回しな真似はせず言い放った。

 

 

「単刀直入に忠告するね? ………。私の大事な妹――ソーナちゃんから離れて」

 

 

 それでも大事な妹――と思っているセラフォルーの目的は自分でも理解できない面を持つ妹を呆気なく理解できるこの少年をソーナから引き剥がす。

 その為の()()()の準備も既にしてある。

 

 

「ソーナちゃんにやっと仲間が出来たのに、キミという存在のせいで分解しそうになってるの。……覚えはあるよね?」

 

「何となくは……」

 

 

 許せないのだ、血の繋がってる自分を差し置いてソーナから心底心を許されてるこの少年が。

 どれだけ導こうとしても変わらないソーナから絶対的な信頼を置かれてるのが。

 ソーナの笑顔を浮かべる理由であるこの少年が。

 

 

「私の妹をこれ以上変な所に連れていかないで」

 

 

 だからこそこれ以上ソーナを訳のわからない場所に連れていかれる前に手を打つ。

 凍える様な眼差しと裏打ちする魔力を向けながらセラフォルーはヘラヘラしていた表情をやめて下を向いた一誠に忠告というにはあまりにも強制的な命令を下した。

 

 

「……」

 

 

 勿論言った所でソーナから離れると思ってないセラフォルーは断った時点ですぐにでも第二の作戦を決行するつもりだ。

 あくまで事故として……運悪く退場してもらう為に。

 

 だが、雨に打たれて冷えたからなのか、それとも別の意味があるからか、微かに肩を震わせた一誠はゆっくりと顔を上げ……。

 

 

「………………」

 

「っ!?」

 

 

 ポロポロと涙を流した。

 ある意味予想外の反応をされて思わず本能的に身構えてしまうセラフォルーが訝しげな顔をする中、一誠は涙を流しながらも喜びに満ちた声を放つ。

 

 

「勘違いしないでくださいね? これは決してセンパイの家族に存在否定されて悲しいから泣いてる訳じゃないんです。逆に嬉しいんです」

 

「……は?」

 

 

 嬉しいと微笑み出し、意味がわからないと思わず声が出てしまうセラフォルーに一誠は続ける。

 

 

「俺は待ってたんですよ、センパイをダメにしてる自分という存在を叱ってくれる人を。

間違いだと言ってくれる第三者を心から待ってたんですよ。

ええ、とっくにわかってましたよ、俺がセンパイをダメにしちゃってるのって、でもそれでも離れられなかったんですよ――大好きだから」

 

「な、何を言って……」

 

「でもセンパイのお姉さんに言ってくれたお陰で目が覚めました! 本当になんて嬉しいんだ! ありがとうございます貴女のお陰です!」

 

 

 涙を拭いながら少年らしく笑う姿にセラフォルーは絶句する。

 だがそれ以上にゾッとしたのは、はにかみながら嘯いたこの言葉だった。

 

 

「だから――センパイを失ったこの悲しくて痛い心の憂さ晴らしは、センパイのお姉さんに迷惑が掛からない様に、冥界に住む貴女とは何の関係も無い適当な悪魔に何かして晴らさせて貰いますね!」

 

「なっ……!」

 

 

 あまりにも爽やかに笑いながら言い切っただけに、一瞬セラフォルーも反応できなかった。

 しかしその言葉の意味を徐々に飲み込む内にこの少年の言ってることがあまりにも終わっていると理解してしまう。

 

 

「あれ? 何を驚いてるのですか? …………まさかそのまますんなり俺がセンパイから離れてやるって性格してるとでも思ったのか?」

 

 

 性別も、姿も、立ち振舞いも、全てが違う筈なのに、どこまでもソーナが幼少から浮かべた笑い方に似すぎてる一誠にセラフォルーは改めてこの赤龍帝は消さなければならないと思い知る。

 

 

「甘いな魔王さん? 身内権限を使って俺を消したがるのは理解してやっても良いけど、それ相応の代償は覚悟して言ったんだろ? 心配しなくても暴力なんて使わないよ……ただ愚痴るだけさ……」

 

「ふ、ふざけないで! 何で私じゃなくて無関係の人を――」

 

 

 消さなければならない、今ここで!

 ソーナの為とかではなく、将来確実に悪魔にとって癌となると魔王として理解したセラフォルーが魔力を解放する。

 

 

「戦うつもりなんて俺には無いんですけどね。

はぁ……やっぱりどんな種族だろうが同じなんだな――少しだけセンパイの家族だからと期待してみたけど」

 

「き、効いてない!?」

 

 

 魔力の塊、氷へと変換させた力をぶつけたセラフォルーは驚愕する。

 避けもせず、迎え撃とうともせず、たたその場に突っ立ってるだけの一誠の身のどこも凍りついた形跡も無ければ傷ひとつすら負ってないのだ。

 

 力の程はソーナのゲームの際に見た。

 甚大な攻撃力を持っているのも知っている。

 しかしそれでも魔王としての自負もあり、よくて互角と踏んでいた。

 にも拘わらずセラフォルーの攻撃は何もしていないだけの一誠に届いていない。

 まるで蟻が恐竜の爪を噛むだけでそのまま踏み潰されるかの様に……。

 

 

「気は済みました? センパイの家族だから俺も下手な真似はしたくないんですよね。それにほら、お互い雨に濡れすぎると風邪ひいちゃう」

 

「…………」

 

「ん? 何で効かなかったって顔してますね? 簡単ですよ、鍛えてますからね俺は」

 

 

 ソーナと同じだ。

 一度だけ見てしまったあの異質さすらも同じ。

 どれだけがむしゃらに攻撃しても、まるで幼子が父親に全力でぶつかっても一蹴される程の――いや、それ以上の差。

 

 

「センパイにも俺と同じ事を言ってみて欲しいですね。

それでもしセンパイが頷いたら言われた通り、本当に二度とセンパイとは会いませんから。

もっとも、そんな事になったら頭がおかしくなって妙な事でも仕出かしそうだけど」

 

「………」

 

「ん、じゃあそういうことで」

 

 

 雨に濡れながら下を向くセラフォルーの横を薄く笑いながら一誠は通りすぎる。

 一度も振り向く事無く、やりたきゃやってみろと云わんばかりに堂々と背中を晒しながら。

 

 

「相当俺は嫌われてるらしいなドライグ? わかってた事だけど、どうすっかなぁ」

 

『ごちゃごちゃとあの小娘の精神を揺さぶってたが、会わない選択肢なんぞ無いだろお前は?』

 

「当たり前だろ? ていうか、センパイと別れるだなんて俺には無理だ。

くく、あぁ……センパイに甘えてぇ」

 

 

 血の繋がった者だろうが、自分の方がソーナを理解できるという絶対的な自信があるからこそ一誠は止まらない。

 

 

「それにしても、誰か余計な事でも言ったんだろうなぁ。

俺がセンパイから離れる様に言えとかさぁ? 誰だろうなぁ―――――クククッ!」

 

『誰かなぞ知らんが余計な事をしてくれる……めんどくさい』

 

 

終わり

 

 

 

 誰かの決めた法や正しさに興味なんて無い。

 

 私が欲するは、全てを共有できる彼との生。

 

 それ以外がどうなろうと知らないし、また私から彼を奪うというのなら全部捻り潰す。

 

 

「私がそんなに貴女の知る誰かに似てるでしょうか?」

 

「っ!?」

 

「貴様、本当にただの悪魔か?」

 

「いきなり失礼な使いの方々ね、どこからどう見ても単なるそこら辺の悪魔じゃない? 貴女方が嬉々として滅しようとするね」

 

 

 私を見て驚く悪魔祓いの片割れが誰かなんて知らない。

 

 

「お願いだからソーナちゃん! あの赤龍帝の子とは金輪際会わないで! 危険だから!」

 

「いきなり来て何を言うかと思えば……そうですかお姉様、唯一の宝物すら私から取り上げるんですね?」

 

 

 姉の言葉なんて知らない。

 

 

「……………。既に言ったんですねお姉様は、一誠に……!」

 

「ま、待って! わ、私は――」

 

「私から彼を取り上げられるものなら取り上げてみろ!! 誰だろうが許さない!

散々私を欠陥品扱いしておきながら何故一々干渉する!!」

 

 

 私にとって彼は全て。

 だから彼が居なければ私は生きる理由などない。

 

 

「同類を背に持つ者同士の戦いだ。

依頼なんぞ知るか、今までにない楽しい殺し合いが楽しめたらそれで良い!!」

 

「………と、いう訳でこの人に付き合ってください。はぁ、昔から変わらないんだからこの戦闘フェチ。だから未だに子供もできないし……」

 

「ですって一誠くん?」

 

「良いね、センパイと組んで全力出せそうな奴ははじめてだ……あはは、これが終わったらセンパイを寝かせるのは無理っぽいぜ!」

 

「そうね、私のお腹も一誠が欲しいって疼いてるわ」

 

 

 傍に立ち、そして寄り添う。

 共に進化をし、求め合う。

 

 誰にも邪魔はさせない……愛しき人との全てを。

 

 

 

……END?




補足

ソーナさんの事になると、取り敢えず笑いながら相手方をへし折る性格の悪さが全開になり、最悪デデーンするかも……。


その2
もう一組の同類ペアも――多分ねっとりしたご関係なのかもしれません。多分……

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