色々なIF集   作:超人類DX

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我が強すぎて自分本意なのが人外ペア。



理解されぬ繋がり

 異常(バケモノ)と恐怖された事は少なくない。

 特に人間ではない生物にとっては一誠という人間は存在は有り得る筈がない力を持つイレギュラーみたいなものであり、例外無くその力の前に罵った。

 

 

「全然駄目だな、いくら潰しても全く為にもなりゃしない」

 

 

 むせ返る様な血の香り。

 まるで猛獣が食い散らかしたかの様な屍の山。

 此処が廃棄されたとはいえ、神聖な教会だった場所とは思えないくらいの惨状。

 その惨状のど真ん中でつまらなそうに呟くのは、頬に誰かの返り血が付着している事以外は全くの無傷の少年。

 

 

『だから言っただろう。

いくら数多く潰した所でこの程度の連中では糧にすらならんと。とんだ無駄骨だったな』

 

「全くだったぜ、あの女堕天使の仲間が居ると聞いて良い修行になると思ったのに……ちぇ」

 

 

 戦闘により廃教会は滅茶苦茶になっており、多数の屍達が床に転がっている中を、全く罪の意識を感じてない様子で自身に宿る龍と会話している。

 別に彼――一誠は快楽殺人者ではない。

 偶々先日出会して返り討ちにした女堕天使に仲間が居て、偶々それが堕天使で、更に偶々はぐれ悪魔祓い達が居て、それ等が偶々人にとっては害になる真似をコソコソとしているのを聞いたので、その悪巧みを阻止する―――のではなく、堕天使という普通の人間を遥かに超越する力を持った種族を潰して進化の糧にする為、今頃気づいて此方にやって来てる悪魔達を出し抜いて全滅させただけだ。

 

 

「おや、何で堕天使が誰かから引っこ抜いたと思われる神器を持ってるのかと思ってたが、どうやらこの子の物だったらしいね――――うーん、完全に死んでますな!」

 

『多くの人間を見てきたが、そこまで明るく言うのはお前くらいだな』

 

 

 

 だが龍――ドライグの言うとおり、あまりにも堕天使のレベルが低すぎたせいで無駄骨に終わってしまい、結局やった事は何やら命という名の神器を引っこ抜かれて息絶えた見知らぬ少女の中にせめてもの手向けとして堕天使の頭を潰した際に手にした神器を返して手を合わせたくらいだった。

 

 

「南無南無、見知らぬ女の子よ、運が悪かったとはいえこんな所で死んでしまうとは可哀想に。

せめて成仏して来世に期待するのだ」

 

『お前の幻実逃否で死んだ現実を否定してやれば甦るんじゃないのか?』

 

 

 祭壇の上に眠るように横たわる少女に向かって、教会なのに手を合わせて南無南無言ってる一誠にドライグが割りととんでない事を言う。

 まるで一誠の持つナニかのうちのひとつならこの死んで冷たくなってると思われる少女の命をどこぞの教会神父みたいに甦らせられると、当たり前の様に言ってる訳だが、実のところ可能か不可能かと問われたら答えは可能だ。

 

 だが南無南無と知りもしない適当なお経をラップ口調で唱えていた一誠は言う。

 

 

「ムカつく奴に嫌がらせするか、センパイの為以外に負の側面(マイナス)は使わないよ。

そもそも人は死んだらそれで終わりなんだ、偶々俺はその現実を否定して逃げれば回避できるけど、この――えーっと? 見知らぬ女の子Aさんはそれが出来ない……ならもう大人しく成仏して来世に期待してもらうしかねーだろ?」

 

『そうだったな、お前はそういう奴だったよ。

お前の両親と同類の悪魔小娘以外がどうなろうが知ったことではないもんな?』

 

「おいおい、ちゃんとドライグも入ってんだぜ? そんな寂しいこと言うなよ?」

 

 

 要するにこの少女の死という現実を否定する理由が全く無いからせず、己の力はこんな自分でも愛してくれる両親やソーナ、相棒であるのと同時に一方的ながら親友と思っているドライグにしか使う気はないという、無関心っぷりにドライグは内心『あの小娘と出会ってから余計極端になったなコイツ』と、ため息を漏らす。

 

 生まれついての本能――いや、最早生まれついての病気(シック)というべき進化への渇望と、完全な同類ともいえる悪魔との邂逅は、主人公(ヒーロー)になれる素質があるのに、それを呆気なくポイ捨てする極端な性格になってしまった。

 

 それが良いか悪いか等についてはドライグ自身も割りとどうでも良いし、この宿主なら間違いなくあの宿敵をぶちのめせる。

 なのでドライグとしても下手に今の性質が変わって貰う事は良しとしないのでこれ以上は何も言わなかった。

 

 

『何時までそんな何の効力も無い経を唱えてるつもりだ、用が無くなったのなら早く帰るぞ。

そろそろあの――えーっと、誰だったか? 悪魔小娘の親友だかなんだからしい方の悪魔が来るぞ?」

 

「祈った所で結局役にも立たない神はアナタをきっと来世では幸せにするんじゃないのでしょうか――――っと、あーいよ」

 

 

 今そこで拾った空き瓶に雑草を挿し、名前すら知らなずに死んでいる少女の横に置き、一誠はその場を悠々と立ち去る。

 その僅か数分後に到着した悪魔達が、この凄惨な現場を見て驚愕、一体誰がやったのかと騒ぎ立てたり、息絶えた少女に何かを与えて復活させたりとしていたのだが、一誠にとってはまったくもって全てがどうだって良い話だった。

 

 

 

 さて、そんな訳で自然災害の様にコソコソしていた連中を潰した一誠くんは明くる日、何時もの様に起きて、何時もの様に両親と共にのほほんとご飯を食べて、何時もの様に登校し、何時もの様に学園のマドンナ達の凱旋を適当にクラスメートに混じって目立たぬ程度に騒ぎ散らして…………と、昨晩の殺戮モードが嘘だった様に学生をしていた。

 

 

「餌にもならなくて完全に無駄骨でした」

 

「みたいね。

リアス達は大層驚いた様よ? 現場に到着したら吐きそうなくらいの血の臭いがして、中は猛獣に食い散らかされた様な悲惨な光景だったって」

 

「わりと張り切って戦いましたからねぇ」

 

 

 生きるために喰う獣の本能の様に、進化への渇望を制御する気が全く無い一誠の昨晩の暴れっぷりを知ってる上で放置したばかりか、更に云えば同族達に真相を黙っているソーナの実に他人事な言い方に一誠はヘラヘラ笑いながら進化の糧にはならなかった事を明かし、虚に向かって拳を突きだす。

 

 完全な同類にて理解者。

 同じナニかを持ち、同レベルに研ぎ澄ませているという意味では仮に他に同じ者がいたとしても、此処までの意識はしないだろう。

 それほどまでに二人の親和性が高く、強すぎた。

 

 

「あぁ、ちなみにアナタの言っていた死んでた神器使いの女の子だけど、リアスの駒によって転生したらしいわよ?」

 

「は? 死んでましたよ? ゾンビか何かにしたんすか?」

 

「いいえ、多分アナタがやったんでしょうけど、抜かれた神器をその子に戻した時、ほんの僅かだけどその子自身の魂が復活し、それにより成功したのでしょうね」

 

「ふーん?」

 

「近々この学園に転校する形で姿を現すらしいけど……その顔からしてどうでも良いのかしら?」

 

「寧ろ興味を持つ理由が見当たらないっすねぇ。つーか確かシスターだった気ぃしますけど、そんな形で命拾ってもその後が生き辛いんじゃないの? 程度かな」

 

 

 だからこそ他に関心が無い。

 例え目の前で戦争が始まろうが、残酷な殺し合いが始まろうが、両親とソーナさえ居ればそれで良い。

 それが一誠の持つ本質。

 

 

「そんな事より、センパイの所に最近兵士だったかで部下になったのが居ますけど、彼はどうなんですか?」

 

 

 ある種究極の自分本意である一誠は、最後までやっぱりどうでも良かった堕天使連中とのイザコザについてを切り上げ、ソーナに最近付いた同年齢の兵士について、この誰も近寄らずの密会現場みたいな体育館裏にて聞く。

 

 

「流れで転生させたからどうと言われてもね、気になるの?」

 

「いや別に――――と、言いたいけど、最近彼がセンパイに絡む俺が疎ましい様でね」

 

 

 太極拳の様な蹴りの型をしながら一誠は軽く笑う。

 その兵士の少年にしょっちゅうソーナに絡む姿を気に入られて無いらしく、またその理由も何となく察する事ができるからこその笑みだった。

 

 

「純人間の俺とは違って、センパイは悪魔ですからね、普通と違う側面がどうにも彼には魅力的みたい」

 

「逆にアナタは悪魔や人ならざる存在からは魅力的に見える様に?」

 

「そういう事。つまりセンパイはモテモテって事ですよ……くっくっくっ!」

 

 

 見て解る。あの兵士がソーナに何を想っているのか。

 だからこそ――笑えてしまう。

 

 

「でももしもセンパイがその本質を全解放したら果たして――確か匙君だったかな? 彼はどう思うのかな? 俺を異常者(バケモノ)といってそれまでの態度を豹変させた連中みたいなリアクションなのかな? くくく」

 

 

 散々試しても結局はどの種族とてその反応は皆同じだったと知ってるからこそ、一々喚きもしなければ嫉妬もしない。

 いっそ自信過剰とも言えるくらい、誰よりもソーナを理解(ワカ)ってるという自負は揺るがないのだ。

 

 

「そうで無くても好敵手(ライバル)は居た方が張り合いがあるでしょう? それでもし負けても仕方ないと思えるね」

 

「それって私がアナタを捨てると思ってるのかしら?」

 

「いーえ? 単なる自信の表れって奴ですよセンパイ?」

 

 

 ソーナが正面に立つなら自分はその背中に立つ裏を担い、逆に自分が正面に立つなら、ソーナにその背と裏を任せられる。

 二人はまさに表裏一体なのだ。

 

 

 

 

 そこから暫くしたある日。

 時が来たら一誠に転生を持ちかけてみるつもりだったソーナ。

 何せ彼の両親からも『ウチの息子をよろしくお願いします』と三年程前に言われ、まさに公認状態だったのだ。

 見た目で嘗められがちだが、赤龍帝でもある一誠と完全に拮抗してる力を保持するまでに実は進化しているし、転生させる駒の数も然程少なく済むと思っている。

 

 

「良かったよ。このレプリカらしき空間なら100倍でぶっぱなせるからねー―――行くよドライグ」

 

『威力検証か……。

調度良い的もある事だし、遠慮せずやってみろ』

 

 

 問題は果たして自分の同類となる彼が仲間として認められるのか。

 

 

「これであの世に送ってやるぜ」

 

『Fusion Dragon Boost!!』

 

 

 内に宿る龍と融合した姿となり、ひょんな事からとある貴族悪魔と対戦する事になったその相手を殴り飛ばし、更にはレプリカの空間となる月を背に両手を前に出しながら龍帝特有の赤いオーラを球体として溜めている。

 

 

「ビッグバン! ド・ラ・ゴ・ン・波ァァァッ!!!!」

 

 

 そして撃ち放たれた光線はその対戦相手を仲間ごと飲み込み、眩い閃光と共に空間ごと破壊する。

 曰く、幼い頃父と一緒に視聴したアニメの主人公とライバルが融合した姿の戦士が使った技を丸々真似たらしいのだが、龍帝の力も相俟ってその威力は確かに下手をしなくても星を壊せる威力なのかもしれない。

 というか現に対戦相手が完全に消し飛んだ。

 

 

「そこそこだね。まだちょっと溜めに時間が掛かる」

 

『その隙を突かれたらマズイし、今後の課題だな』

 

 

 完全に空間が破壊された場所を前に呑気に会話する龍と少年を信じられないものを見るような目で誰も彼もが見ている。

 それこそソーナの仲間達も、普段ふざけてる男の龍帝としての圧倒的すぎる力に驚き、兵士になって以降、ずっと一誠を疎んじていた匙はショックを受けている。

 

 

「来た、来たぜ……来たぜ来たぜ来たぜ来たぜぇぇ!!! アッハハハハハ!! 今のでひとつまた壁を越えられたぁっ!!」

 

 

 そんな事などお構い無しに、どうやらお蔵入りさせていた技を使ったのと異常性により一誠は笑いながら赤いオーラを全身からバーナーの様に放出し、進化の快楽に笑っており、その性質をソーナの本質を知った上で理解できない家族達は顔を歪めた。

 

 

「あの彼は似てる……」

 

「そうね、一体何処からあんなものをソーナは……」

 

「ソーナちゃんと同じ……」

 

 

 他種族を惹き付ける。だが本質を解放すれば離れていく。

 結局誰も一誠を理解できる者は居らず、進化による快楽でひたすら歓喜の嗤い声をあげ続ける姿をソーナだけは笑いながら見つめ、そして一誠の進化に呼応するかの如く、寄りそう婚約者の如く――ソーナの異常性は自身を引き上げる。

 一誠がその見た目の通りの激しき力をより進化させたのなら、ソーナは水面すら揺らさぬ繊細さと究極の激しさを併せ持った進化をする。

 

 

「終わりね。

さて、これは私達の勝ちで構いませんよね? 魔王様?」

 

「っ……う、うん……そう、だね。

あのソーナちゃん? 彼は一体なんなの?」

 

「私の唯一無二の親友にて、同類ですよお姉さま?」

 

 

 死ぬまで離れることの無い、ね……とほくそ笑むソーナに魔王である姉は困惑するしかできない。

 結局の所誰も自分達を理解できないし受け入れる事なんて無い。

 器が大きいのか呑気なのか測りかねる一誠の両親でも無い限りは絶対に。

 

 

 

 

 

 悪魔同士のゲームに勝った筈なのになぜかお通夜状態となってるシトリー眷属達。

 まあ、殆ど何もせず助っ人で出てきた数合わせ的な男一人に全部持ってかれたとなればそうもなろう。

 特に兵士の匙は悔しさで一応この場限りでは仲間ではある一誠をこれでもかと睨んでる。

 

 

「いやぁ、引き受けて良かったー 壁を完全に越えましたからねぇ……清々しくてしょうがないぜ」

 

「調度良い修行話が持ち込まれただけだし、為になれたのなら良かったわ。

ただ、リアスは納得できてないみたいだけど」

 

「は? 何で?」

 

 

 そんな状態となろうとも学園に戻ってもマイペースに会話している一誠とソーナ。

 どうやら互いに本質を隠すつもりが今は無いらしく、おちょくる様な言動が一誠から全く見られない。

 

 

「アナタがそれほどの力を保持してたなら、自分の婚約話も粉々にできたのに……とかなんとか」

 

「はぁ? その話と俺と何の関係があるんだろうか? てかあの人確かこの前部下を三人くらい増やしてませんでした? あのシスターっぽいのと…………そうそう、俺と同じクラスの坊主頭と眼鏡の二人だったかの」

 

「けど負けたのよ。それでめでたく結婚確定だって」

 

「ほーん? お祝いの花束でも送っておこうかな?」

 

「多分送ったらそのまま顔面に投げ返されてしまうでしょうね。本人は婚約自体を相手もろとも嫌がってたし」

 

「あらら……」

 

 

 貧乳とバカにし、ムキになって言い返すというやり取りが全く無いどころか、かなり親密そうに話す二人に取り敢えず驚いてしまう眷属達は、思いきって声を出す。

 

 

「あ、あのー……何時もの兵藤くんと会長のやり取りって嘘だったんですか? 何だか何時もと違うというか……」

 

「ん?」

 

「えーっと、まぁそうなるわ。

そもそもわざわざあんな小芝居して隠す必要があるとは思えないと私は言ったのだけど、彼――一誠くんは『何かそっちの方が隠れてコソコソする変なスリルがあって楽しそう』―――って言うから付き合ったのよ」

 

「そ、そんな……! じゃ、じゃあその……会長はコイツとどんな関係なんすか!?」

 

 

 シレッとカミングアウトするソーナに唖然としてしまう中、気が気じゃない様子で一誠をコイツと言って指差しながらどんな関係かと聞く匙。

 

 

「俺たちを騙してたんでしょう!?」

 

「騙してた――と解釈しても良いわよ別に。

聞かれもしなければわざわざ言う意味も無いから言わなかっただけだけど」

 

「そ、そんなの! だってコイツは赤龍帝なんでしょう!? ゲームを見に来た悪魔達すら驚かれてたじゃないですか! なのに……!」

 

 

 かなり納得できないらしく、敢えて黙ってる一誠を親の仇の如く睨み付ける匙を特に制す事はせず、ソーナはその本質を滲み出しながら淡々と口を開いた。

 

 

「彼とはもう10年以上の付き合いがあるわ。

そもそもの出会いは、家族とすら違うと自覚し、何だか色々と嫌になって家を飛び出して人間界(ココ)に来た時で、そこからずっとお互いにこんなやり取りをしてるのよ」

 

 

 何故か会長席に座って話すソーナの真後ろに背を向けて立つという謎の行動をする一誠と、妙に理解できない異様な雰囲気を醸し出してるソーナ。

 どちらも自分の知らない姿であり、どちらもその距離感が異様に近い。

 

 

「それから………うーん、何かあるかしら他に?」

 

「別に無いんじゃないすか? あー……匙君だっけ? 他に聞きたいことは?」

 

「…………。会長が変なのはお前のせいか?」

 

「おっと? まさかセンパイの本質が俺のせいだと? おいおい、人に影響を与えるほどに見えるのか俺が?」

 

「じゃないと説明がつかねぇんだよ! 答えろよ!!」

 

 

 ヒステリックに怒鳴る匙に一誠はヘラヘラした態度を崩さず、それが余計に相手を煽ってる。

 しかしそれでも一誠は変わらない。

 

 

「違うよ。センパイは最初から俺と同じだ。

だから馬が合うし、何年も親友同士なんだよ」

 

 

 変わらぬ関係、不滅の繋がり。

 理解して貰わなくとも結構だと云わんばかりに言い切った一誠に今度こそ匙は打ちのめされた。

 

 

「そ、そんなの……ありえない……! ありえる訳がない! お前みたいなのが会長とだなんて……!!」

 

「だってさセンパイ?」

 

「残念ね。でも納得しなくても別に構わないわ。そもそも周りに同意を得る理由が無いし」

 

 

 ドライな言い方で締めたソーナに他の眷属達も匙に同情してしまう。

 しかしそれでもソーナの本質の一部を知ってたせいか、どこかこんな反応だと納得してしまう。

 

 欲が無く、夢も無く、そもそもこの主が自分達を眷属にしたのだって、そうしなければならない状況を前に仕方なくといった状況ばかりだった。

 それでも付いていく理由は大なり小なりソーナに恩義を感じてるからであるし、まずそれが無かったら関わることは無いだろう雰囲気を醸し出してるのは身を以て知ってる。

 誰も好んではぐれ悪魔にはなりたくないのだ。

 

 

「理想でも抱いてた様だけど、私に限っては持ちつ持たれつよ。

去るものは追わず、まぁはぐれ悪魔として登録されずに配慮するくらいしかしないけど」

 

 

 ただ一人に認められているのならそれで良い。他は望まない。それがソーナの価値観であり、他人からの好意は必要ないのだ。

 一誠のように……。

 

 

 

 

 

 

 

 その内全員逃げ出すかもしれないくらい、本質を完全に隠さなくなった途端眷属達から壁を作られたソーナ。

 所詮眷属システムなんてお飾りでしか無いと最初からわかっていたソーナにとってショックにもなりはしない。

 唯一付き合いがある程度深い女王はそうでも無いが、それでもやはりソーナが求めるのは真の繋がりだ。

 

 

「やっぱりこうなるか……。

みーんなそうだ、ちょっと自分を見せるとすぐ居なくなる」

 

「最早慣れちゃったせいか、平気になったわ」

 

 

 ちょっとソーナに惚れてた匙ですら、本質を見た途端ソーナと壁を作るようになり、一誠は言わずもがな毛嫌いすらされている。

 別に他人からどう思われようが知ったことじゃないにしても、同じパターン過ぎて辟易してしまう。

 

 

 一誠という存在が冥界の極一部に流れて以降、ソーナ自身もその本質を隠さなくなったけど、代償に仲間となる者達が明らかに距離を置いている。

 昔から二人のお決まりだから軽く流してる辺りは淡白だと言われるかもしれないが、だからといってゼロから説明しても理解して貰える事は無いのも知り尽くしてる為、結局頼りになるのは同類であるお互いだけなのだ。

 

 

「そういえば近々リアスが婚約者相手にもう一度ゲームをするらしいわ。

勝てば婚約破棄って聞いたけど、恐らく一誠くんを引き込むつもりね」

 

「はぁ? この前から思ってたけど何でそんな事になってんすか?」

 

「私の時にアナタの力を知ったからじゃないかしら?」

 

「頼めば助っ人するとでも思われてるのか俺は……赤の他人の為にする訳が無いのに」

 

 

 普通に家に遊びに来たソーナを迎え入れ、両親に無理矢理背中を押されて外へと連れ出した一誠は、投棄された神社のお堂の前にある縁石に腰掛け、何故かリアス・グレモリーにマークされているという話にめんどくさそうな顔をする。

 

 

「来ても断るぜ。そんなものに時間を割くなんて勿体ないですからね」

 

 

 当然性格上、一銭の得にもならない事はしない一誠は断るつもりだ。

 それで何かごちゃごちゃ言っても聞き入れるつもりはゼロだし、そんな事に時間を割いたらソーナとのんべんだらりとする時間が減るのは確実だ。

 

 

「そろそろ帰りますか。ご飯食べていくでしょう?」

 

「ええ、でもその前に忘れてる事があるし、お義母様の意図はちゃんと汲まないといけないと思わない?」

 

「でもここ廃棄されたとはいえ神社のお堂っすよ?」

 

 

 そんなもの認める訳がない。

 ソーナが進化すれば一誠も、一誠が進化すればソーナも……互いに離れられない関係となっているせいで周りの反応などくそ食らえだ。

 ソーナに手を引かれて廃棄されて埃っぽいお堂の中へと連れていかれた一誠は魅入られてるのだ。

 

 

「勿論ご飯を食べてお風呂に入った後もするけどね……ふふ」

 

 

 同類であり、異性である悪魔(ソーナ)に。

 

 

 




補足

ビッグバン・ドラゴン波。

効果、撃たれた相手は消滅する。


元ネタ、お察しのビッグバンかめはめ波。



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