色々なIF集   作:超人類DX

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本気だして防衛に努めたらそらこうもなる、



過剰防衛システム

 本音を言うと、リアス・グレモリーがどうなろうが知ったことでは無いと思っている。

 ゲームに負けて結婚しなくちゃならないという取り決めがある以上、敗者がガタガタほざく権利なんてありはしない訳で、そもそも何故彼女は然り気無く付いてきたのか……。

 お陰で要らない仕事が増えた気がしてならないし、こんな事なら最初からある程度絶滅させてやれば良かったと後悔しかない。

 とはいえ、朱乃ねーちゃんにとっては友達らしいし、どさくさ紛れに付いてきてしまった以上は、ついでという気持ちはあれど護衛をしなくてはならない。

 

 

「確認ですけど、戻るなら今の内ですよグレモリー先輩。仮に本当に勘当とやらをされてからやっぱり戻りたいなんて言われてもこっちは知りませんし、多分イラッとして殴りたくなるんで」

 

「わ、わかってるわ。きっと今更戻った所で私に待ってるのは自由の無い暮らしだし、気分を悪くさせるかもしれないけど、アナタ達側に居ればあらゆる意味で安心できるから」

 

「変な買い被りはやめて欲しいですね。

ですが、わかりました……ならもう言いません、これからも朱乃ねーちゃんの友達で居てあげてください」

 

「……………」

 

「………なにか?」

 

「いえ、アナタはその……今回の事で悪魔が嫌いになったんじゃないのかしらと思って……」

 

「嫌い? 別に嫌いじゃありませんよ。今でもアナタは朱乃ねーちゃんの友達で主さんだと思ってますしね。

ただ、元々ねーちゃんの周囲に在る面倒さに対する抑止力になるとは思えないと思ってて、それが今回の事でただの信用できない他種族のひとつに認識を改めただけですから」

 

「だからそれは私のせいで……」

 

「アナタがどこの誰とゲームに負けて結婚しようがどうでも良いんですよ。

大事なのは、何故その事でねーちゃんの貞操が危険にならなくちゃならないんだって話なんです。

あの魔王が勝手にアンタの結婚が決まった瞬間ねーちゃんを此方に戻すべきだった、と俺に謝ってましたけど、それもお門違いですよ。

俺が頭に来たのは、ねーちゃんと朱璃さんを保護できるとほざいてた悪魔が何でねーちゃんを危ない目に逢わせたんだって話ですから」

 

「…………」

 

「わかってます? 俺が出張ってこんなオチに収まりましたけど、下手したらねーちゃんの父親のバラキエルのおっさんが直接激怒した状態で来てたかもしれないんですよ? そうなればどうなると思います? あの人自分の奥さんと娘が大好きですからね………………俺以上に只では済まされなかったでしょうね」

 

「バラキエルはそんなに……」

 

「強いですよ。あのおっさんはこの前の状態の俺を真正面から殴り倒して来ますからね……」

 

 

 癪だけど、朱乃ねーちゃんにとって大事なら俺はそれに従う。

 

 

 

 

 朱乃を連れ戻すだけの筈が、暴れっぷりのせいでリアスの護衛もする事になってしまった一誠。

 朱乃の主で友人である以上、ライザー・フェニックスとの結婚式から無断で逃げ出したリアスはきっと冥界から良くない扱いをされるから……というのを朱乃に聞かされて仕方なくのついでで護衛する為に取り敢えず幼い頃からずっと世話になっている姫島家へと帰還した。

 

 

「そういう理由があって、ちょっと俺は向こうでやらかしてしまったらしい。

お陰で悪魔達からは狙われる可能性が高くなり、この人も同じように追われるかもしれない。

従って俺は暫く此処に戻る事になりました」

 

「話は朱乃から聞いてるわ。リアスちゃんも遠慮しないで好きなだけ居なさい」

 

「あ、ありがとうございます……!」

 

 

 姫島家を守る朱乃の母の朱璃が微笑みながらリアスを歓迎し、一誠には『いらっしゃい』では無く『おかえりなさい』と言う。

 

 

「独り暮らしをすると言ってからは殆ど帰ってこなくて朱乃も寂しがってたから歓迎よ。

勿論一誠くんのお部屋はちゃんとお掃除してあるわ」

 

「ありがとうございます……本当はこんな形で戻ってきたくはありませんでしたが」

 

「そうね……けど心配はしてないわ」

 

 

 家を飛び出し、餓えて死にかけていた子供だった一誠を迎え、今日まで親代わりとして育てた朱璃にとって一誠もまた大事な子であり、後はあの事件以降ギクシャクしてしまった娘と夫の仲が戻れば良いと考えてる。

 

 まあ、朱乃本人はまだバラキエルを許せない様子だが……。

 

 

「それともう二人程先輩の護衛に付かせます。

俺だけでは四六時中という訳にはいきませんので」

 

「それはわかったけど二人? 誰かしら?」

 

「一応先輩も知ってる人です」

 

 

 姫島家の周囲にトラップを仕掛け、無断で侵入した者が居た場合直ぐにわかる様に仕込みをする一誠の言葉に首を傾げるリアス。

 一体どこの誰なのか……一誠の人脈がイマイチ掴めないリアスは軽く不安になるのだが、色々な対侵入者用のトラップを仕掛け終えたそのタイミングで姫島家の敷地内へと入って姿を見せた二人の人物にリアスは目を見開いて驚愕する。

 

 

「悪い、遅くなった」

 

「もうトラップを仕掛けたの?」

 

「さ、匙君と真羅さん……!? な、何故アナタ達がここに……!?」

 

 

 大きめのボストンバッグを片手にやって来たソーナの眷属である筈の二人にリアスはどういう事だと一誠を見る。

 

 

「言う必要なんて無いので言ってませんでしたけど、この匙と真羅先輩は昔馴染みなんですよ。

で、今回の事について協力を要請しました」

 

「そういう事です。

暫くはイッセーに協力してグレモリー先輩と姫島先輩の護衛をさせて頂きます」

 

「よろしくお願いします。あ、それと久しぶり朱乃ちゃん」

 

「いらっしゃい二人とも」

 

「………………」

 

 

 ソーナの眷属とまさか知り合いだったなんて……と言葉を失ってしまったリアスは然り気無くその二人と朱乃も親しそうにしているのを見て愕然としてしまう。

 自分の知らないところでこんな繋がりがあったなんて……いや、そもそもこの話についてソーナはなんて言ってるのかが地味に気になる。

 

 

「そ、ソーナはなんて?」

 

「えーっと、一応グレモリー先輩の監視をする為にとか適当言っておきましたので大丈夫です」

 

「イッセーくんと朱乃ちゃんと昔から繋がりがあるとは会長も知りませんので」

 

「で、でもそれってソーナに嘘を言ってるんじゃ……」

 

「いや、監視したついでに振り掛かる火の粉を払うだけの話ですし嘘では無いですよ」

 

「それに会長はリアス様をご心配なされてますから」

 

「………」

 

 

 悪びれない様子の二人にリアスは護衛をされている身もあってかこれ以上は何も言えなかった。

 

 

「それともう一人護衛に来ますんで。

ある意味グレモリー先輩はラッキーっすよ。姫島先輩のついでとはいえイッセーに続いてあの人も連れてくれば、ほぼ鉄壁ですから」

 

「ま、まだ誰かが来るの? それって私の知ってる人なのかしら?」

 

「えーっと、どうなんすかね?」

 

「多分初対面じゃないかしら?」

 

 

 匙が言う更にもう一人の護衛役が誰なのか……。

 それはリアスにとって――いや、リアスの兄にとってはかつての敵同士の存在であることをこの時まだ知らなかった。

 

 

 

 何だかどんどんと大事になってきた気がしてなら無い……等と思いながら敷地内と周辺にトラップを仕掛ける手伝いをしたリアスは家に戻ってイッセーが幼い頃から使っていたらしい部屋に集まってUNOをやっていた時だった。

 

 

「あ、来たみたい」

 

 

 家の呼び鈴が鳴り、朱乃が席を立って玄関へと行く。

 その間勿論一旦UNOは中断されたのだが……。

 

 

「ちょっとお茶菓子を選ぶのに時間が掛かってしまって遅れてしまいました」

 

「なっ!?」

 

 

 朱乃が部屋に戻り、それに続いて部屋に入ってきた人物を見て最初は『はて、どこかで見たような……』と違和感を感じたリアスは徐々にその人物が何者であるかを思い出し、盛大に狼狽えた。

 

 

「サーゼクスの妹を護衛すると聞いたけど、まさか私にもその一端を担わせるとはかなり皮肉が効いてるわね」

 

「か、か、カテレア・レヴィアタン!?」

 

 

 金髪の褐色肌に眼鏡を掛けた大人の女性。

 その人物は現悪魔政権が設立される際の闘いに敗れて冥界の隅へと逃れた一派のトップの一人の筈であり、先代レヴィアタンの血族者。

 

 つまり此処に――人間界に居る筈の無い存在なのだ。

 

 

「な、なな、な、なな……!」

 

「落ち着きなさいサーゼクスの妹。レディがそんなはしたなく狼狽えるものではなくってよ?」

 

「う、狼狽えるなと言う方が無理よ! な、何で旧派のアナタがここに居るのよ!?」

 

 

 UNOの配り直しをしようとする朱乃とそれを手伝う一誠と椿姫ののほほんとした態度よりも、匙の隣にちょこんと普通に座り出すカテレアのインパクトが大きすぎて思わず声が荒くなるリアス。

 

 

「シャルバやクルゼレイ達の事かしら? なら安心なさいサーゼクスの妹。

私は連中とは10年以上前には切れてるわ、今はレヴィアタンの名も捨てたただのイチ悪魔として元士郎の所で世話になってるだけ」

 

「は、はい!?」

 

 そこで匙の名前が出て来て尚驚いたリアスがどういう事だと、呑気にしてる匙を思わず睨む。

 

 

「そういえばカテレアさんって今の冥界の政権と敵対してたんでしたっけ? 俺そこら辺の話はそんなに知らないっすね。死にかけていたから思わず拾って手当てしたのが出会いなんで」

 

「旧派って何だそれ、初耳なんだけど」

 

「あら、カテレアさんはレヴィアタンの血族者でしたのね? 何時もお母さんにお料理を教えて貰う為にいらっしゃる悪魔さんなだけとばかり」

 

「年上のお姉さんって感じですからねー昔から」

 

「………………」

 

 

 旧派で旧レヴィアタンの血族者――という事実をそんなに把握してなかったらしいのか、匙に続いて一誠も朱乃も椿姫も若干驚いた顔をしている。

 その顔に嘘が全く伺えなかったリアスは二重の意味で驚いてしまうのは仕方ないのかもしれない。

 

 

「し、知らないのに仲良くしてたの?」

 

「匙が信用してるからまぁ俺も疑う理由はないかなーって……現に今まで普通に何にもしてませんし」

 

「最初は再起を計る為に利用しようと思ってたのだけど、人間界で元士郎達のお世話になっている内に、この方が性に合ってると気づきましてね。

安心しなさいサーゼクスの妹のリアス・グレモリー、元士郎達がアナタを護衛し続ける限りは私もアナタを護衛するわ」

 

「こ、この事実をソーナ達は知ってるの?」

 

「え、知りませんよ? わざわざ言うことなんすか?」

 

「…………………………」

 

 配り直して仕切り直したUNOの手札を見ながら悪びれもせず言う匙にリアスは開いた口が塞がらなかった。

 

 

「ソーナが知ったら怒るわよ絶対に」

 

「え、マジっすか? ふーん、じゃあしょうがない、黙って怒られるしかないっすね」

 

「だからセラフォルーの妹の眷属になる時に私の事を言うべきだったのよ。

それをイッセーみたいに『微妙に信用できるかわからない』なんて言うから……」

 

「だってカテレアさんって訳アリそうだったから……」

 

「まあ、時が来たら一緒に挨拶をすれば良いわ。その時まではこのままで構わないでしょう」

 

 

 何故一誠が悪魔をそこまで嫌ってないのかが何となくこれで理解できたリアスだが、理由が理由だけに何とも言えない気分だ。

 処でリアスは途中で気が付いたのだが、先程から妙にカテレアと元士郎の距離が近い気がする。

 

 

「へーいD4の青!」

 

「ならば私はD4の黄を……」

 

「む、中々やりますねカテレアさん」

 

「そう簡単に上がらせないわよ……ふふん」

 

「…………」

 

 

 いや近い、近すぎる。

 手なんて繋いでるし、二人から醸し出される空気が独り者には辛い何かを迸っている。

 

 匙元士郎という兵士について以前ソーナから聞かされた事のあるリアスは、意を決して質問してみた。

 

 

「あ、あの匙くん? アナタって確かソーナに一目惚れして眷属になったのよね?」

 

「は? 何ですかそれ?」

 

「え? い、いやだって言ってたから……ソーナがそうだって……」

 

「はい? え、副会長、俺そんな理由じゃないですよね?」

 

「ええ、私が然り気無く会長に推薦したから元士郎君は会長の兵士になったのですよ」

 

「本音だと確実な寿命の獲得がありますけどね」

 

 

 椿姫と元士郎の会話にまたしても絶句するリアス。

 という事は何か、あの時ソーナが悪い気がしない様子で話していたのは全部勘違いで……。

 

 

「あら、元士郎もやはり若い子が良いのかしら?」

 

「い、いやいやいや違いますって! 俺はチビの頃からずっとカテレアさんの事がですね………ちょっとグレモリー先輩! 変な事言わんでくださいよ!」

 

「あ、あぁ……ごめんなさい」

 

 

 勘弁してくれと言う元士郎にリアスはソーナに向けてという二重の意味で謝るのだった。

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 そんなこんなで表向きはリアス一人にアホみたいな過剰戦力の護衛が付けられのだが、敵よりも内側におけるイザコザが大変になってしまった。

 

 

「な、何で、どうしてなのよ!? どういうことよ匙! それと椿姫も!!」

 

「えーっと、それはカテレアさんの事ですか?」

 

「全部よ! 何故言わなかったのよ! 兵藤くんと友人どころか幼馴染みって……私聞いてない!」

 

「だって言うタイミングなんて無かったし、わざわざ自分はイッセーと幼馴染みですなんて言う理由なんても無いし……」

「申し訳ありません会長、私も同じ理由です」

 

「ぐっ……な、なら匙と一緒にカテレア・レヴィアタンが暮らしてるのは……!」

 

 

 自分の事が好きで眷属になったと思ってたのが思い切り勘違いだったと発覚して、プライドやら何やらが粉々にされて悔しいソーナが、軽くカテレアに嫉妬する。

 

 

「セラフォルーの妹、私に敵意はありませんよ……と、言っても信用はできないでしょうが」

 

「あ、当たり前です! アナタは旧派の……!」

 

「なら信用しなければ良い。だけどこれだけは覚えなさいセラフォルーの妹。

元士郎は最初から私と共に在るのよ? ふふん」

 

「ぐ、ぐぬぬ! 匙ィ!!!」

 

「な、なんすか!?」

 

 横から抱かれて豊満な胸にデレデレしてる匙を見てイラッとしちゃうソーナ。

 何故かその矛先が一誠に向けられるのだが……。

 

 

「あ、アナタが匙と椿姫に何かしたのかしら?」

 

「何かって何を? あのー……自分の思い通りにならない展開だからって人のせいにするのはどうかと思うんですけど」

 

 

 一誠はどうでもよさげに切り捨てる。

 それにより怒りそのままに冥界に告げ口をしてしまったからさぁ大変。

 

 旧派のカテレアが人間界に潜伏して良からぬ事を企んでいると変な解釈をされ、それまでどうリアスを取り戻すかで悩んでいた悪魔の一部が勝手に暴走し、一誠達へと襲い掛かる。

 

 

「俺がやるイッセーは姫島先輩を守ってろ」

 

「おいおい……まあ良いけど……」

 

 

 それにイラッとしてしまった元士郎は、告げ口してここまで騒ぎが大きくなるとは思わずあたふたするソーナ含めて見せ付けるように隠していた本来の力を解放する。

 

 

『喰らえ! 我が煉獄の刃―――業火炎破!!!』

 

「さ、さじ……?」

 

「あ、あれが本当に元ちゃんなの……?」

 

 

 鎧に食わせ、無限に強くなる漆黒の狼の鎧を纏い、敵を焼き尽くすという知らない面の仲間に戸惑う。

 

 

『少しだけ見せてやるよ……カテレアさんのお陰で至った境地――――

 

 

 

 

 

 

 

 

―――黄金騎士・呀!!』

 

 

 闇の殻を破り、金色の狼へと変わるその神々しい姿に。

 

 

以上・似非

 




補足

ソーたんェ……。
全部ただの勘違いだったという……。


その2
黄金騎士・呀はググればビジュアル確認可能。

出現した瞬間勝ち確なのだ。


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