学院長とコルベールに色んな意味で警戒されている事などどこ吹く風である三バカ――の内の一人である一誠は、血の繋がりは無いけど実の兄弟の様に切磋琢磨してきた曹操とヴァーリにイライラしていた。
「ご主人様も飯抜きなだけだなんて甘いぜ。人間サッカーの刑とかにすりゃあ少しは反省するってのによ」
「…………」
「つーかよ、こっちはご主人様に色々と教えてるってのに、テメー等は呑気にカワイコちゃんをハントしてるってのがムカつくぜ。
別に貧乏くじとは思わないにしても、何か納得できねーぜ」
「………………………」
「なぁ、そこの所どう思うよ?」
「…………………さぁ?」
余程昔からそういう事ばかり経験してきたのだろう、異世界に来てまで妙に女性と仲良しになりやすい二人と義兄弟に対してブツブツ文句を言っていた一誠は只今二つの月が照らす学院の小広場に居た。
ルイズも部屋でスヤスヤ寝てるというのに、一体全体どうしてそんな所に居るのかというと、小石を拾っては地面に向かってポイポイしていた一誠がその地面から視線を移した先に丈の長い杖を抱えながら突っ立っていた青髪青眼の少女が理由であった。
「さぁ……か。まぁキミにしてみれば知ったこっちゃないわな」
「ごめん……」
「いや別に謝る必要は無いぜ。単なる愚痴だし」
少女の名前はタバサ。
ルイズよりも下手すれば小柄で、しかし性格は正反対というべきレベルで黙認なこの少女が、そもそもその性格上絶対的に合いそうもないイッセーと共に就寝時間を過ぎてるこの時間になってこうして外に出てるのか。
それはタバサ自身が一度異世界に来たばかりで若干イラついてしまってたイッセーに完封で負けたからだった。
「さてと、昨日の晩はキミの運動能力を見せて貰った訳だが……まぁ何だよな、普通以下だったな」
「………」
「加えてご主人様と比べるまでも無くキミにこちら側のものが無い。
だからこそ、この前言ってた呪いを解く為の魔法力的なものを伸ばすべきなんだろうけど」
「ルイズにしたのと同じ指導が欲しい」
「………。キミさ、今の話聞いてた? ご主人様にしてるものをキミにした所で無意味なんだってば。
キミはアレなんだろ? 魔法の方の才能は一定以上のものがあるみたいなんだから、そこを伸ばすべきだよ。
アレコレ浮気して伸びるもんも伸びなくなったらそれこそ本末転倒だぜ?」
理不尽という概念を真っ向から捻り潰すだろう圧倒的な超暴力の片鱗。
その片鱗をよりにもよってイッセーの中から特に強く感じ取ってしまったタバサは、それまではある種の『諦め』の気持ちを抱いていた人生に小さな火が点いたの如く、ルイズが召喚する事で現れた可能性にすがりたかった。
「やってみなければわからない」
「やってみなきゃって……」
「お願い……」
力があれば争いは起こる。しかし力が無ければ奪われて喪う。
タバサが抱える心の闇は頑なに力を欲して突き動かす。
感情が乏しいとルイズやキュルケから聞いているイッセーもまた彼女がそこまで力を求める理由を触りの程度には聞いていたので、その眼差しに小さくため息を吐きながらも了承する。
「大事な何かを取り戻したい……だったっけ? 敢えて深くは聞かないけど、こんな知りもしない他人にすがるんだからそれは相当大切な何かなんだろうな。
オーケーわかった、そこまで覚悟してるんだったらもう否定も拒否もしない」
理解されない異常があるから捨てられた経験と、認められたい一心で今の領域にまで達したイッセーもそんなタバサの言わんとしたい事は何となくわかったので、あんまりぞんざいに出来ずに、出来る限りにタバサの潜在能力を引き抜く様努めると約束する。
「起きろドライグ」
『おい待て……俺まで使うとなると下手したらこの小娘死ぬぞ?』
「死んだらそれまでだったって事であの世で諦めて貰うさ。
その覚悟があるんだからな……この子は」
ただし、その過程が壮絶で、それこそ死んだ方がマシだと言えるレベルの試練になってしまうとしても。
「レッスン1 明け方まで俺に殺されるな」
「っ……!」
声が聞こえる赤い何かを左腕に纏う少年により、少しずつタバサは変化していく……。
「反撃しても良いぜ? 寧ろ反撃しろ……俺に傷を付けてみろ!」
「くっ……!」
「そらそらァッ!!!」
しかしそれでも、学院の外まで首根っこ掴まれて連行された挙げ句、平野のど真ん中でいたいけな少女を追いかけ回すというのは、画的に犯罪チックな気がするのは果たして気のせいだろうか……。
メイジや平民とは全く違う闘い方をする男の名前はイッセーという。
そんなイッセーに私はハッキリと才能が無いからキミには教えるものが無いと言われた。
逆にルイズにはあるらしく、こうして魔法とは違うらしい魔法らしく光弾を手に作っては投げつけて追いかけ回される私の訓練とは逆に、ルイズの訓練は見てて妙に優しい。
曰く『こういう古典的な事をしなくてもご主人様はキミの倍は早く進化できる』って事らしいけど……。
「はっ、はっ……はぁ! ひぃ……!」
「陽が出てきたか。よーし、今日はこれまで」
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……」
「一応生き残れたのは褒めてあげる。
まあ、死なないように極限まで手加減したからなんだけどさこっちは」
一晩中走り回った私の身体は疲労でガタガタ。
でも私は逃げていただけのに、追いかけて攻撃までしてきたイッセーは汗ひとつかかす、倒れ込む私を見下ろしながら朝日を眺めている。
化け物としか思えない体力と改めてルイズが召喚した使い魔は凄いと思ってしまう。
「あ、歩け……な……い……全身が痛い……」
「みたいだね。筋肉痛だと思うが、運動不足だぜキミは」
「う、運動してても今日の訓練をやれば誰でもこうなる……」
「何だ何だ、魔術師――じゃなくてメイジってのはどいつもこいつも貧弱かぁ? 魔法を使うのに杖を媒体にしなきゃならないってのを考慮したら、杖を奪われたらアウトだし、弱点だらけじゃんか」
「…………」
ちょっとガッカリした言い方をするイッセーに私は疲労もあって言い返せない。
イッセー達みたいな存在からすれば、メイジと相対してもまず何もさせる事なく首を跳ねられるだろうし、杖だって簡単に奪える。
現に私が最初そうだったのだからまず間違いないし、渾身の魔法も真正面から受けて無傷だった。
「そろそろ帰るけど、歩ける? てかまずたてる?」
「む……むり」
その域に私がなれるのか……。イッセーにメイジの才能はあるけど、自分達側の才能はヒト欠片も無いと言われてるので難しいのかもしれない。
けど諦める訳にはいかない。
「しょうがないか。
よいしょ……もっと食ったら? 信じらんないくらい軽いぞキミ?」
「…………」
今の状況から抜け出せる鍵をやっと見つけたから。
タバサを適当に抱えて朝焼け照らす学院へと戻ったイッセーは密かに彼女に対して赤龍帝として会得した技術を使って自分の気力の一部を譲渡して部屋へと送り届けた。
「また今夜……」
「あ、やるんだ。もうやりたくないって言うと思ったのに」
「失望はさせないと誓った」
「別に失望する程深い仲じゃあ無いけどね……。んじゃ」
軽い会話を終えてタバサの部屋を後にするイッセー。
この後の彼の予定は低血圧気味のルイズや抜け駆け二人を叩き起こす為に部屋へと戻るだけなのだが、この日は少しだけ予定外な事がやって来た。
「おはようルイズの使い魔くん?」
「あ、ツェルプストーさん!」
寮の廊下の曲がり角に待ち受けるかの様にして立っていた褐色の女子に呼び止められたイッセーは、即座に反応すると、タバサの時には無かったアホ顔のデレデレなそれを見せる。
「今日もまたふつくしいですねぇ。いやいやもうこの健康的なお肌といい、素晴らしきスタイルといい……うへへへへ!」
「ありがとう、それより見てたわよ? 今日もあの子と一晩を過ごしたみたいねぇ?」
「へ?」
どう見てもスケベ心丸出しな視線のイッセーを慣れた様子で流したツェルプストーことキュルケは、この前から毎晩の様に友人の少女――まあつまりタバサの事についてを話す。
「アナタ達三人――特にアナタが現れてからタバサが結構活発的になったの」
「はぁ……確かに引きこもってパソコンばっかやってそうな子はありまさぁね」
「その"ぱそこん"というのはよくわからないけど、あの子が一人に対して執心するなんて今まで見たことなかったから、最近のタバサを見てると少し驚いてるわ」
「執心?」
「ええ、微熱っぽくね?」
そう意味深に笑みを深めてウィンクするキュルケにイッセーは首をかしげる。
確かに自分達側の領域に興味を持ってしまってるという点ではキュルケの言うとおり執心してると言えるが、どうも彼女の言いたい意味はそれと別のものを感じる。
一体何が言いたいのか……たわわに実るキュルケの果実をガン見しながら考えてると……。
「あらタバサ?」
「ん?」
「…………」
キュルケの視線がイッセーからイッセーの後ろへと移り、その視線の先にある存在の名前を口にしたので思わず振り向くと、さっき送り届けたばかりの筈のタバサが無言でキュルケを見上げていた。
その目はどことなく睨んでる様にも見える。
「どうした? 忘れ物?」
「違う」
「あらら、さっきまで楽しい夜を過ごしたのにもう彼に会いたくなっちゃったのタバサ?」
「…………違う」
明らかに茶化してるキュルケに対して若干時間を掛けて否定するタバサ。
どことなく殺気混じりの眼力だが、キュルケは寧ろ面白い玩具を見つけた様な顔だった。
「否定なんてしなくても良いじゃない? どうだったの? 彼は優しかった?」
「だから違う」
どう見ても遊んでると察したタバサが黙れという意味を込めて睨むけど、それは却って逆効果といった様子だ。
「ふーん? なら今晩彼を借りても良いかしら? 私も『運動』したいし?」
「え!? キミが!? 良いよ良いよ! 寧ろ手取り足取りなんでも教え――」
「っ!? だ、だめ!」
わざとらしくイッセーに腕を絡めようと手を伸ばしたキュルケを見て超反応したタバサが体格差や体重差も何のそのでイッセーを慌てて引っ張って接触を阻止する。
当の本人のイッセーは何のこっちゃ分からずにキュルケに対して教える気満々だったりするが、タバサはそれが何となく嫌だった為、驚くくらいに必死になった。
「い、イッセー……! ちょっと見て欲しいのがある……私の部屋に来て?」
「見て貰いたいものって何だよ? ここで言えないものか?」
「う、うん……」
「くくくくっ!!」
目論見通りと言わんばかりにイッセーの後ろから笑ってるキュルケがムカつくが、少ししかない自分に対する意識がキュルケに塗りつぶされたくなかったタバサは、別に見せるものなんて無かったのに、咄嗟に出てしまった出任せでイッセーを何とか自分の方に意識を向ける。
「ふふ、へぇ~? あのタバサが自分のお部屋にねぇ? これは事件だわ~?」
「う、うるさい……やめて……」
言われて自分が何をしてるのかハッとしたタバサは途端に妙な恥ずかしさで顔が赤くなる。
しかし言った手前、しかもイッセーに向かって『やっぱり嘘』だなんて言える訳も無く……。
「もう少しで朝食の時間だからほどほどにしないよ~?」
「えっと……何が?」
「い、行こイッセー、早く……」
「おっとと? 何だよ自分で歩けるから引っ張るなよ。
あ、ツェルプストーさんまたあとで~!」
適当な置物を見せて誤魔化す事を即座に思い付いたタバサは、ぐいぐいとイッセーの手を取り、ニヤニヤしっぱなしのキュルケから逃げるように部屋へと戻るのだった。
ちなみに、何でキュルケがこんな事をしたのかというと……。
「イッセーはどこに行ったのよ! もう朝なのに!」
「さぁ、女教師でもナンパしてるんじゃないか?」
「で、見事に玉砕してるとかな」
「あ、あのバカ犬……! アンタ達より少しはマシだと思ってたのに!」
「あ~らルイズ、朝から元気ねぇ?」
「げ、何よ……今私は忙しい――」
「イッセーくんを探してるみたいだけど、私、彼を見たわよ?」
「!? どこよ! さっさと教えない!」
こういうシチュエーションを楽しみたいから――である。
そんな事など全くわかってないイッセーはといえば、タバサに引っ張られた形で同じ道を戻り、再び彼女の部屋にまで来ていた。
「で、見せたいのって?」
「え、えっと……」
「キミの言ってた毒物の解毒について自力じゃ難しいって話か?」
「…………………そ、そう……かもしれない」
「なるほどね、そりゃ確かにさっきの状況じゃあ言えないわな。
オーケー、外様の俺が見てどうにかなりそうも無いけど一応拝見させてもらおうかな」
「う、うん」
タバサが力を求める理由のひとつについて端的に知ってるイッセーは寧ろこちら側の理由についてはかなり協力的で相当に親身な為、一切疑う様子が無かった。
それがまたタバサに罪悪感を抱かせてしまう。
「文献か何かか? 悪いけど俺難しい文字はまだ読めないぜ?」
「ほ、本じゃない……」
「じゃあ何だ? 効果は折り紙付きだけど、扱いが難しい薬草か?」
「そ、それでもない……」
「じゃあなんだよ? 待っててやるから持ってきなよ」
「な、中で見せたいから入って……」
内心かなり焦ってしまったが、それでも勢い任せにイッセーを自分の部屋へと招き入れたタバサ。
その部屋というのは本棚にベッドだけというルイズの部屋並みの色気無しなテイストだった。
「ご主人様の部屋より殺伐としてんなぁ……まあ、寝るだけの部屋だしこんなもんか」
「…………」
不躾な感想を口に出すイッセーに対して気を害す事は無かったタバサは寧ろ逆にそれまでどうとも思わなかった筈の事でドキマギしている自分に戸惑っていた。
「それで何? ここまで勿体つけたんだからさぞ表に出せないようなものなんだよな?」
「そ、その……ご、ごめんなさい……見せたいものなんて無い……」
「…………はぁ?」
そんなドキマギの状態で遂に観念したタバサは正直に謝罪し、見せたいものなんて何にも無かったと話す。
「無いって、じゃあ何でわざわざ……」
対象外の相手の気持ちやら何やらを一切察する事が出来てないイッセーが少し気分を悪そうに俯くタバサを見据える。
「だ、だってキュルケがアナタに鍛えて貰う話をしようとしたから……。
アナタはキュルケみたいなのにデレデレするからすぐに引き受ける、そうしたら私は無視されると思ったから……」
「じゃあその時点で言えば良いじゃんよ。
んだよ、折角ツェルプストーさんの朝おっぱいで今日も一日ご主人様の為に働けると思ったのにさー」
「ごめんなさい……嘘言って」
「まあ、理由はわかったから良いけど。
ったく、一応約束はしてるんだから途中で投げ出しゃしないよ。確かに信用に値するほどキミと親しいわけじゃないから信じられんかもだけど」
ファーストコンタクトがフルボッコにされたという、最悪なものだったのと、鍛練が厳しい通り越して鬼であるのもあってか、そんなに怒らないイッセーの態度にタバサは意外に思うのと同時にホッとする。
「こんな時にアザゼルさんが居りゃあ良い案とかくれるんだけどなぁ……」
「アザゼル……?」
「あ、うん……俺達の親父。
まぁ血の繋がりは無いんだけどね」
「本当の親は……?」
「さぁ? ガキの頃に捨てられたっきり会っても無いから知らないな。
どこかで元気でやってるんじゃねーの?」
「…………………そう」
その流れでイッセーが捨て子だった事を知り、普段は表情が死んでたタバサの表情が少し悲しげになり、その表情を少しだけ察したイッセーはわざとらしくヘラヘラ笑い出す。
「同情なんかしてくれなくていいぜ? 別に悲しくねーし、情も無いしな」
「………」
「何にせよ、今度から言いたいことがあったらちゃんと言えよ? さてと、今度こそご主人様の所に戻らないと怒られ――」
「イッセー!!!!」
心底どうでもよさげに語り終え、今度こそタバサとお別れしようと部屋の外へと出ようとしたイッセーだったが、自分の名を怒声100%で放ちながら蹴り破る勢いで扉を開けた小さな人影によってちょっとどころじゃかい厄介な展開へと発展してしまった。
「あ、やっべご主人様……」
「ルイズ……」
桃色の髪をした目付き鋭い少女が、どう見ても自分を見て激怒してる姿にイッセーは少しマズったといった顔をする。
「本当に居た……! 本当に居てくれちゃったわ……! あ、アンタ何してるのよ!?」
「えーっとだね……話すと短いようで長い理由があって……」
実の所タバサに色々とやってることは黙ってたイッセーは言い訳を考えながらルイズを宥めようとするが、すっかりキュルケに煽られ、曹操とヴァーリにも普段のお返しとばかりに進言した為、ルイズの目にはあれだけキュルケみたいな女が好みと宣っておきながら、自分より下手したらちっさいタバサと逢い引きじみた事をしでかしてるイッセーの言い訳をはね除けた。
「よりにもよってタバサになんてことしたのよ!?」
「なんてことって何さ? 言っておくけど俺は今この子に騙されてだね―――」
「うるさいうるさいうるさいうるさーい!! 言い訳するなぁぁぁっ!!」
「流石ロリコン、口では何とでも言っておきながらやはりこうなるか」
「ミッテルトに始まり、お前は妙に小さいのとばっかり遊んでたからなぁ?」
「……………テメー等、ご主人様に何言ったんだコラ?
後でぶっ殺してやるからな」
「おいおいヴァーリよ、ロリコンが八つ当たりだとさ?」
「自分の性癖がバレたからって八つ当たりなんて酷い話だよ」
「そんなに死にたきゃ今すぐぶち殺してやるぞボケ――あいた!?」
「この犬! 覚悟は良いわね!!?」
「ちょ、待てご主人様! あのバカ共見ろ! ご主人様騙したのは奴等だって! 第一そもそも俺別にこの子にそんな興味無いし! ほらキミも言ってよ! 誤解だって!」
癇癪の様に喚き、靴の履いた踵で思いきりイッセーの爪先を踏みつけるルイズにたまらずタバサに助け船を求める。
ロリコン扱いまでされればそりゃ助け船を求めるのも仕方ないのだが……。
「ルイズ……」
「う、な、なによ。アンタも人の使い魔に手を出して何を考えてるわけ!?」
ジッとルイズを見据えるタバサに一瞬気圧されたが、それでも持ち前の気の強さで威嚇していると、フォローを期待した眼差しを向けているイッセーと目を合わせ、一回頷いてからルイズに向かって口を開いた。
「イッセーを部屋に招いたのは私だけど、別に何もない」
「そうそう、そもそもある訳がないぜ」
「そ、そんなの信じられるわけないじゃない!」
うんうんと頷くイッセーをギロリと睨みながら信じられないと話すルイズ。
しかし考えてみればあのタバサがそういう類いをするとは思えなかったのも少しあった為、ちょっと冷静になろうと怒りを収めはじめたその時だった。
「ルイズの思ってるような事にはなってない。けど多分、そうなったら私は抵抗しない」
「そうそう、そうなったらこの子は抵抗せず―――――あれ?」
おい何か違くね? と途中まで流れで頷いてたイッセーはビックリするくらいまっすぐ堂々とルイズを見据えるタバサを見る。
「それだけイッセーにはお世話になってるし、その恩を返せるなら、そういう事になっても私は構わない」
「な、なんですってぇ!?」
「いや違くね!? それ山火事現場にロケット燃料ぶちこんでるんだけど!」
「ルイズには負けない……!」
「いや今そんな宣言されても困るんだけど!? この状況で急にひっつかれてもワケわからんのですけど!?」
「や、やっぱり……! あ、アンタなんか去勢してやる!!」
「!? ま、ままま待て待て!!!? 杖先を俺のマイサンに向けてロックオンしないで! 俺一回もまだ使ってないのに不能なんて嫌だ!!」
ちんまいのに何故か懐かれるイッセーはちんまいのに挟まれて軽く修羅場になる。
「やっぱりロリコンか……」
「あんな大人しそうなのもああなるだなんて余程だろ……アンタの言った通り確かに面白い光景だよ」
「でしょう? でもまさかタバサがあんな宣言をするとは思わなかったわ」
「アナタが思ってるほどイッセーはスケベじゃない。
親身になってくれるし、面倒だって見てくれる……」
「ふ、ふん! そんなの前から知ってるわ! 私がご主人様なんだから!」
「ま、待て待て待て待て!! 杖をしまってくれまずは! 後キミも無意味に引っ付くなって! さっきから変だぞ!?」
「ルイズに負けたくないから……」
「それと何の関係があるんだよこの状況に!?」
終わり
補足
三人が仲良しだと何故かロリコン疑惑がつくイッセー。
こう見るとアレですが、フォローするならイッセーらしい包容力にやられちゃったのがたまたまちんまい子達だっただけなんです。
その2
悪辣的ですが、三人の中で一番お人好しだし、割りと他人に同情しやすく、親身になりやすい。
タバサちゃまの事情も何気に知ってからは寧ろかなり真面目に解決方法を考えてあげてたりする。
…………だからロリコンなんて言われる。
その3
少なくとも恩を返す為に自分を差し出しても良いと思ってるレベルにはイッセーに懐きだしてる。
てのも、修行は鬼ですが、それ以外だと結構マイルドだし何も言わずとも動けない自分を運んでくれたりとかチマチマポイントが稼がれてたので。