色々なIF集   作:超人類DX

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ちょっと間を挟み、ここから三バカ編です。

彼女が内部的に成長しちゃったとかそんな話


三バカ達のだらだら生活
天然寝取り(別に寝てない)


 何の因果か、ゼロのルイズと揶揄される少女により異世界へと召喚された三バカがおったそうな。

 

 その三バカは少し高圧的な少女の事情を知り、暫くは使い魔として異世界での生活を始めた。

 

 その過程で三バカを召喚した少女には、その世界の貴族としてはステータスである魔法の才能がゼロである代わりに、少女すら知り得なかった別の才能がある事を知った。

 

 それは三バカの世界ですらレアとされるスキルで、最高峰の悪ガキと評される三バカを一撃で御せる可能性をも秘めたとびきり大きな才が……。

 

 

「わっかんないわ、これまでは自分の事を知ってたつもりだったけど、改めて知るってこんなに難しいのね」

 

「まぁ言われてすぐに出来たら苦労なんてしないし、今ごろこの世はスキル持ちだらけになってると思うな」

 

 

 そんなゼロの少女ことルイズはその日以降、学業以外の時間を自室に籠って瞑想する事が多くなっていた。

 それは三バカにより教えられた己の可能性の扉を開ける為の簡単な訓練なのだが、やはり可能性があると知ったらかといってその能力を簡単に引き出せる訳では無いらしく、上手くいかずに少しもどかしそうな顔だった。

 

 

「焦ってもしょうがないし、ご主人様は多忙だからじっくりゆっくりひとつずつ紐解いていこうぜ?」

 

「………うん」

 

 

 そんなルイズに対して三バカ中、一番アホな少年イッセーは励ましながら軽く笑う。

 これはルイズがかつて力の無かった自分と重なるが故だったりするのだが、それを語る程アホでも野暮でも無い。

 

 

「それにしてもヴァーリはどこいったのかしら? 曹操には洗濯を頼んでるから行方はわかるけど、ヴァーリはよくわからないわ」

 

「あぁ、最近一人でフラフラするよなアイツ。まぁ昔っからそんな奴だしあんま気にしない方が良いと思うよ。どーせ夕飯の時には戻ってくるんだし」

 

「それもそうね」

 

 

 イッセーに同意するように頷いたルイズは、再び自分の中身を探ろうとベッドに腰かけて目を閉じようとした時だった。

 

 

「ルイズ! ルイズ!! 居るんでしょ!?」

 

 

 誰かがルイズを呼びながらドアを叩くせいで集中できない。

 

 

「チッ、うるさいわね……何なのよ?」

 

「あ、この声ツェルプストーさんじゃね? てか気配的に間違いないけど……」

 

「あ、やっぱり居た! 大変よルイズ!」

 

 

 イッセーの呟きと同時に勢い良く開けられた扉から、予想通りに褐色の赤髪の美女ことキュルケが入ってきたのだが、その表情は結構の焦りがうかがえた。

 

 

「なによ? 静かにして貰えないかしら?」

 

 

 可能性の扉をあける訓練の邪魔をされたのと、普段いがみ合ってるというのもあって、ルイズの声はかなり冷たい。

 しかしその反応を気にする余裕が無いとばかりにキュルケは言った。

 

 

「アナタの使い魔の一人……ほらあの銀髪の子がギーシュから決闘を申し込まれたのよ!!」

 

 

 よりにもよって三バカ中一番の戦い好きなヴァーリに、知らぬとはいえ戦いを申し込んだ凄い奴が居るというキュルケ情報にルイズとイッセーは揃ってポカンとした顔を浮かべた。

 

 

「ギーシュが? 何で?」

 

「ご主人様ご主人様、それ誰?」

 

「この前私に絡んできた奴よ、覚えてないの?」

 

「んー? …………………。あー……女の子泣かせのね、ハイハイ。

で、それが何でよりにもよってヴァーリのバカに決闘とやらを挑んじゃってるの? 下手したら脅しじゃなくて死ぬぞソイツ」

 

「そうよ、何でギーシュはそんな事したのよ?」

 

「私も詳しくは知らないわ。ギーシュが何故か彼に怒ってるって事くらいしか……」

 

「はぁ? あのバカ何かして怒らせたか? 曹操じゃあるまいし……」

 

「ったくもう、早く止めに行くわよイッセー!!」

 

「かしこまりー、あ、ツェルプストーさん案内よろしこー! あとこれを機に俺と熱い夜を――いたい!?」

 

「アホな事言ってないで早くしろ!」

 

「ふ、ふくらはぎにローキックせんといてーなご主人様……」

 

「ふん!」

 

「……………」

 

 

 

 仕方なしとベッドから降りたルイズがイッセーを引き連れ、案内する為に先導するキュルケに続いて部屋を出る。

 一体全体何故そんな事になってるのか……。

 

 

「ちょっと出てくる」

 

 

 それは曹操が洗濯に……イッセーがルイズにスキルについてを教える役割分担を決めた時にフラフラと何も言わずにヴァーリが部屋を出ていった時まで遡る。

 

 ここ最近のヴァーリは暇をこじつけては一人フラフラと何処かへ行くことが多くなっており、その理由についてもルイズにはおろか、イッセーや曹操にも言わずにいた。

 何故かと言われたら別に特にヴァーリにとっては無いのだが、フラフラと出て行く際に会う者が『何となくそうした方が良いんじゃない?』的な事を言うので黙ってたりする。

 

 トリステイン魔法学院の寮館から外へと出、穏やかな陽気が差す学院敷地内をなるべく目立たぬように歩き続ける事数分、学院裏庭に大きく立つ木の前へとやって来たヴァーリは、既にその木陰に腰を降ろしていた先客を見つめ、声を掛けた。

 

 

「来たぞ、今日も頼む」

 

「ん、早いわね。ルイズに何か言われたりしなかった?」

 

「いや別に、ご主人はイッセーと勉強だし、曹操は洗濯をしに行ったからな。

別に特に何にも言わずに来た」

 

「あらそう、本当に黙ってるのね」

 

「まあ、アンタの提案だしな。それで、今日はどんな本なんだ?」

 

 

 主という事になってるルイズ、義兄弟であるイッセー、曹操以外に対して割りと気安い口調のヴァーリ蒼い瞳に映るは、陽に輝く金髪を巻いてる絵に描いた様なお嬢様ですな風体の少女だった。

 

 

「今日は軽い問題を作ってみたからヴァーリに解いて貰うわ。ほら、こっち座って?」

 

「なるほど、テストって奴だな」

 

 

 この少女……長いので割愛してモンモランシーというのだが、とある事で心を傷つけ、一人泣いていた所を偶々じゃんけんに負けて洗濯をしていた帰りのヴァーリとひょんな事から顔を会わせ、その際全く自覚してない彼なりの元気付けの行動に傷つけた心を持ち直し、文字の読み書きが理由あって出来ないと知って、その次の日以降からこうして御教授していた。

 

 

「……………。終わったぞ」

 

「ん、採点するからちょっと待っててちょうだい」

 

 

 本来ならこのモンモランシーという少女はルイズとタメを張れるレベルで気位が高い事で知れ渡ってるのだが、どういう訳なのか、初めて顔を合わせた際の拍子抜けする元気付けをヴァーリから貰ってからは、ヴァーリにのみその気位の高さが無くなり……なんというか、年下の男の子に対しての接し方をしていた。

 

 年はほぼ同じなのだが。

 

 

「凄いじゃないヴァーリ! 全問正解よ!」

 

「ふっ、アンタの教え方が上手いだけだよ」

 

「だとしても偉いわ! ふふ、偉い偉い♪」

 

「……おい、俺は子供かなにかか?」

 

 

 

 妙にちんまいのから好かれるイッセー

 

 ラッキースケベ率が半端無い曹操。

 

 三バカの内上二人にはこんな特徴があるのだが、末っ子気質のあるヴァーリもまた特徴があった。

 

 

「歳は変わらないけど、アナタを見てるとなーんかね……ふふっ」

 

「……」

 

 

 母性本能をこちょつかせる……という特徴。

 それ故、三バカの中ではもっともモテやすい男で特にイッセーから目の敵にされるのだが、本人にそんな自覚も、まだ自覚した所で興味が無かったりする。

 

 ちなみに二番目にモテるのが意外にも曹操だったりし、ぶっちぎりでモテないのがイッセーだった。

 

 

「基本的な文字の読み書きはこれで大丈夫よ。

後はアナタが得た知識を二人に教えてあげなさい」

 

「うん、ありがとう」

 

「どういたしまして。さて、文字の読み書きについてはこれで終わっちゃった訳だけど……」

 

「?」

 

「ねぇヴァーリ? やっぱりこれが終わったらもうこうして一緒にのんびりとか出来なくなるのかしら?」

 

「? いや別に、文字の読み書き以外でも知りたい事があればアンタに聞くし、別に何もなくても会いたくば会いに行くぞ俺は? 変な事聞くなアンタも?」

 

「! い、いえ別に……ふふ、アナタってホントおかしな人……うふふ♪」

 

 

 多分イッセーが知ったら即学院裏に呼び出すだろう、むず痒いやり取りが大きな木に見守れる形で二人の間に展開される。

 尤もヴァーリはそこら辺の自覚が全く無いのだが、モンモランシーはヴァーリのこういう天然なところが気に入っていた。

 

 この天然さのお陰で浮気をされた事による失恋も吹っ切れたし、何よりこのヴァーリという男は身分こそ平民であのルイズの使い魔の一人だが、それを感じさせない何かを感じる。

 だからこそ今はこうしてバレないようにコソコソしてるけど、何時かはもっと陽の当たるところでのんびりしてみたりしたいなぁ……なんて絵本を真剣に読んでるヴァーリの横顔を見つめていたモンモランシーだったが……。

 

 

「も、モンモランシー……?」

 

 

 出来れば顔どころか声も聞きたくなかった声で、自分の名前が呼ばれて現実に引き戻されてしまった。

 

 

「…………。何?」

 

 

 一瞬脊髄反射的に出そうになった舌打ちを我慢し、ヴァーリとはうって変わっての冷たい表情で、自分を見ている少年……つまり浮気された末に疎遠確定となったギーシュを睨む。

 そのあまりにも凍える表情にやっと声を掛けるタイミングを得て意気込んでいたギーシュはすっかりと尻込みしたのだが、真剣に子供向けの絵本を読んでるヴァーリを気にしながら勇気をもって声を出す。

 

 

「け、ケティとはその……」

 

 

 あの日以降、前後の記憶が何故かすっぱり抜けているとはいえ、モンモランシーが激怒したのだけは覚えていたギーシュは再びやり直そうという胸を秘め、二股相手のケティなる少女とはもう何でもないという趣を伝えようと口を開き掛けたのだが……。

 

 

「あら、あの一年生の子とはその後仲良くしてるのかしら? それともま~た浮気でもして怒られたのかしら? どちらにせよ私にはもうどうでも良いことだけど」

 

「ま、待ってくれモンモランシー! 僕はもうケティとは別れたんだ! もうキミだけしか見えない! だ、だから――」

 

「おあいにく様、私はアナタにまっっっったく! 興味が無いわ」

 

「………」

 

 

 ハッキリと言い切るモンモランシーに『ガーン!』という擬音が聞こえそうな程にショックを受けるギーシュ。

 ヴァーリはそんな彼とモンモランシーのやり取りを耳に我関せずに徹しようとしたのだが……。

 

 

「さ、さっきから疑問なんだが、その男はひょっとしなくてもゼロのルイズの使い魔の一人……だよね? 何故そんなのとモンモランシーが二人きりで居るんだい?」

 

「それ、アナタに何の関係があるの?」

 

「か、関係はある! 何故なら僕はキミを真に愛して――」

 

「あーはいはいはい、そういうのはもう良いからやめてギーシュ。

私以外の女にでも吐いてて頂戴」

 

「んなっ!」

 

 

 とりつく島が全然無いとはまさにこのこと。

 言い分の全てを切り捨てまくるモンモランシーにギーシュはちょっと半泣きになったのだが、それをこらえて遂に絵本を読み続けていたヴァーリに八つ当たりの矛を向け始めてしまう。

 

 

「き、キミ……使い魔の癖に何故()のモンモランシーの傍らに腰掛けてるのかな?」

 

「…………」

 

 

 大なり小なりこの使い魔が何かしたんだと踏んだギーシュのひきつった言い方に、モンモランシーはまるで養豚場の豚を見るかの如く冷めた目をしており、ヴァーリはといえばそれまで読んでいた絵本を静かに閉じると、ひきつった顔をしたギーシュを真っ直ぐ見据えながら口を開いた。

 

 

「ひょんな事から知り合ってね。文字の読み書きが出来ない俺に親切にも彼女は教えてくれたんだ」

 

「ほ、ほほぅ? それで……?」

 

「それで? それだけだが?」

 

「う、嘘だ!!!」

 

 

 まるでどこぞのなく頃にみたいに目を見開いて叫ぶギーシュだが、ヴァーリの顔は本当だからこそシレっとしたものだった。

 

 

「本当なんだがな……。そうだろ?」

 

「ええ、そうね。確かに間違いないわ……………今のところは」

 

「ほら見ろほら見ろ! 貴様! 僕のモンモランシーに何をした!!」

 

「僕のって言うの止めてくれない? 寒気がするわ」

 

「も、モンモランシィィィッ!! キミは騙されてるんだ! ゼロのルイズの使い魔なんだぞ!? 身分の差も遥かに――」

 

「それが?」

 

「そ、それがって……それがだって!?」

 

 

 あまりにもこの前までのモンモランシーと違いすぎる彼女の返答にギーシュはさらに興奮するが、それを封殺するのはやはり彼女だった。

 

 

「私は彼に文字の読み書きを教えただけで何にもないし、そもそも縁も切ったアナタに一々文句を言われる筋合いもない。

この前までアンタに逆上せてた自分が実にはずかしいわ」

 

「そ、そんな……」

 

「ほっといて貰える? 私は今忙しいのよ……さぁヴァーリ? これは何て読むかわかる?」

 

「ええっと……も、ん、も、ら、ん、しー……かな?」

 

「はい正解♪ ふふ、これからはアンタじゃなくて名前で呼んで欲しいわ」

 

「? あぁ、ならありがたく呼ばせて貰うよ――モンモランシー」

 

「!? ふ、ふふ……くふふふ……!」

 

「……………。何故また撫でる……」

 

「が……ぎ……けげ……!」

 

 

 目の前で展開される非常に居たたまれないやり取りに、ギーシュは遂に壊れ始めた。

 やり直そうと意気込んだら、相手にもされず遥か下の身分の男に取られたとも思えばギーシュの反応は当然ともいえる。

 しかもモンモランシーもまた今まで見たことが無い……言ってしまえばギーシュもドキリとするような穏やかで心の底から楽しそうな笑顔なのだか……。

 

 

「ヴァーリの事について教えて? ルイズの使い魔になる前は何をしていたのか、残りの二人とはどんな関係なのか……」

 

「そんなの聞いてもアンタ――『モンモランシー』―――失礼、モンモランシーにとっては面白くないと思うぞ?」

 

「そんな事は無いわ。ヴァーリの事はもっと知りたいもの!」

 

 

 その結果……。

 

 

「け、決闘じゃぁぁぁあっ!!!!」

 

 

 ギーシュは退くに退けなくなってしまった。

 

 これが一連の流れであり、これを機にイッセー、曹操、ルイズにモンモランシーと実は密かに会って色々と教えてもらってた事を知られて大騒ぎになったりするのは云うまでもなく……。

 

 

「錬金の類いか? それにしては脆いが、そろそろ攻撃しても良いかい?」

 

「な、ななっ、何者だお前!? ぼ、僕のワルキューレを、ゆ、指だけで……!?」

 

「ご主人の使い魔の一人ってだけの男だよ……この地ではな」

 

 

 ギーシュの決闘は寧ろ片手間だった。

 

 

「モンモランシー! あ、あああ、アンタ人の使い魔に何してるのよ!?」

 

「何って、文字が読めないから教えてあげたのよ?」

 

「じゃあ何で一々距離が近いのよ!?」

「さぁ? 何でかしらね?」

 

「う……な、何か何時ものモンモランシーじゃないわ……」

 

「テメーこの野郎! おんにゃのこと密会しやがって! 羨ましいんじゃボケ! つーか曹操もだゴラ! 何でそんな可愛いメイドちゃんと仲良しなんじゃい!!」

 

「い、いや俺は洗濯した時に……」

 

「モンモランシーの言った通りの事になってしまった……面倒な」

 

 

 しかしこの散々な決闘の果て、ヴァーリくんは更に目を付けられてしまうとはこのとき思いもしなかったとか。

 

続く?




補足

そこら辺の花引っこ抜いて元気つけようと頑張った姿がモンモンちゃまにとってドツボだったらしい。

お陰でヴァーリくん相手だと包容力が五倍増しになる。
とはいえ普段はそうでもない。

その2
まあうん………白龍皇だぜ? 勝てるわけないわ。


その3
モンモンさんレギュラー化するかも。流れ的に

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