知らない方はIt Has to Be This Wayで検索。
ゲームプレイ初見時は熱過ぎて筋肉が火照ったもんだぜ。
封印から解いた怖がりな眷属が、突如来襲したテロ組織により捕まり、宿す神器の力を無理矢理引き出されてる。
その話を……いや、力を直に受けて感じ取ったリアスは憤慨しながらその眷属を取り返そうと動き出す。
だが敵陣ど真ん中に転送した先に見えた景色は――
「ははは! これが真の闘争って奴か! 楽しすぎるぜ、なぁゼヴィ!?」
「ああ、これ程までに高揚する闘いは初めてだ……!」
「な、何よこれ……」
意味不明の筋肉バカと、そんな筋肉バカに奇跡的な好意を寄せるデュランダル使い――そのたった二人の人間によってテロ組織の構成員と思われる輩の死屍累々の山が築かれており、今もまだ誰かと戦っていた。
「キミは本当に人間か? いや、聞くだけ野暮だな!
どうでも良い! 強いし楽しいからな!」
「あぁ、俺もこんなに楽しい闘いは初めてだ!!」
そう……白い龍を宿す少年とインファイトをしていたのだ。
「あ、あれは白龍皇……!? たしか先んじて襲撃してきた禍の団と戦ってた筈なのに、何で彼と殴りあってるのよ!?」
「さ、さぁ……?
(う、嘘だろ? 鎧状態のヴァーリと笑いながら殴りあってるし……)」
「…………。あの人の力……」
「ど、どうかしたの小猫ちゃん?」
「いえ……。(そんな訳が無い。あの先輩が『あの人』と被るなんて……)」
ヴァーリという少年の纏う神々しき龍の鎧を拳一つで所々破壊しながら笑って殴っては殴られるを繰り返す余波が襲撃者の屍を人形の様に吹き飛ばす。
気合いの咆哮を放てば、強烈な衝撃波が地面を抉り飛ばす。
疑いはあれど、正しく人間というカテゴリーの中にいる少年が白龍皇と真正面から互角……いや互角以上にも見える殴り合いを繰り広げているその様はまさに変態の領域であり、唖然としながらリアス達は見てるしかできない。
その中で小柄な白髪の少女が、ダメージを負う度に一誠の周囲に纏わり付く淡いグリーンの光が傷を修復しているのを見て『何か』を疑っているが、ヴァーリという今会ったばかりの少年との殴り合いが楽しくしてしょうがない一誠が気付く筈もない。
「くっ、鎧がボロボロにされるなんてね。つくづくキミは訳が分からない……しかし、それで勝った気になられても困る!」
「おや、まだ死なんか。
今までやって来た連中とは別格だぜお前」
何時果てるかも分からぬ殴り合いだったが、遂に一誠の渾身の拳が全身に鎧を纏うその装甲を完全にぶち抜き、地面へと叩き落される。
「ぐふっ……! くっくっくっ、神器も持たない人間にまさか此処まで追い込まれるとはね。
キミになら全力を出しても良さそうだ……!」
砕けた鎧から覗く血まみれの銀髪の少年が尚も闘志を失わずに獰猛な笑みを見せて全力の宣言をしようとする。
「そうか……くく、やはりゼヴィと一緒にしゃしゃり出て正解だった。
これで俺も今まで積み上げてきた成果をお前相手なら全力でぶつけてぶちのめせそうだからな……!」
勿論一誠がそれを聞いて腰が引ける訳も無く、着ていたワイシャツを破り捨てる様に脱ぎ、血管が所々浮き出ている逞しき肉体を晒す。
「人間として生まれて良かったよ。
貴様等という人では無い強者共を知れて心底良かったよ。
俺はまだまだ強くなれる……!!」
どこまで楽しいのが表れてるのだろうか、その双眼は赤く妖しく輝いてる―――様に見える。
筋肉信仰心に裏打ちされた進化とそれを促す彼の異常性が一誠の精神に完全にシンクロしたかの様に進化の雄叫びを上げ続けているのだ。
「悪いが俺には特殊な力も無いし武器もねぇ、このままだ」
「……。ますます気に入ったよ、名前を聞こうか?」
「兵藤一誠」
「兵藤一誠………イッセーか。
その名前……俺は絶対に忘れない」
膝を付いた体勢から立ち上がったヴァーリが愛しき敵との邂逅を喜ぶ様に微笑むと、全身から淡い白銀の光を放つ。
我、目覚めるは
律の絶対を闇に堕とす白龍皇なり
無限の破滅と黎明の夢を穿ちて覇道を往く
ヴァーリとしての全力。
それは歴代の白龍皇最高の逸材である事への裏打ちとも言える最強の形態。
淡いグリーン光が一誠を包み、赤黒いオーラが更に増した一誠は危険を知らせる本能のアラームが先程から喧しく己の中で鳴り響いているのを無視しながら笑い続ける。
「ゼヴィ、言うまでも無いが今から俺が奴に殺されそうになっても手を出すなよ?」
「…………………。わかってるよ、手は出さない。だから死ぬな……勝ってくれ」
「あぁ、ゼヴィと友達になれたんだ……くたばってたまるかよ」
最早この場所を襲撃した連中なぞどうでも良かった。
それすらゴミと思える程の濃厚な馳走が目の前にある……それだけなのだから。
デュランダルを仕舞うゼノヴィアに手出しは無用だと念を押した一誠は、自身の身体を何時の日か取り囲む様になったグリーンの光をありったけその身に取り込む。
我、無垢なる龍の皇帝と成りて
汝を白銀の幻想と魔道の極致へと従えよう
全力への詠唱を終えたその瞬間、ヴァーリは再び龍の化身をその身に宿す。
そのオーラは鎧の時とはまるで比べ物にならず、その場に居た全員を強制的に平伏させる程の圧力を放つ。
『白銀の極覇龍(エンピレオ・ジャガーノート・オーバードライブ)』
「が……ぁ……アァァァァァァッ!!!!!」
対して一誠は何も纏う物は無く、再びの雄叫びと為す統べも無く見ていたリアス達を吹き飛ばす激しい衝撃波を放つだけ。
何も無い、ひたすら筋トレした結果至ったマッチョ形態。
そう……強いて言うならアームストロング。
『行くぞイッセー!!』
「来るが良い!!」
憧れし上院議員が乗り移った様なイッセーは、その場に姿を変えたヴァーリを迎えうたんと全身の筋肉を流動させる。
赤き龍帝では無き宿敵と認めた白き龍皇との最終決戦。
It Has to Be This Way,
暴力の理不尽さと、結局はそこに行き着いて初めて分かり合うという、自由を求める男と雷の化身と呼ばれた男の闘争の境地へと二人を誘った。
「死にやがれ!」
『!』
まず動いたのは一誠だった。
原理不明の金色の光を全身を放ちながら鋼を超越した固い拳を地面に叩きつけ、それを中心に戦う場所となっていた運動場全体に天高くそびえ立つマグマを噴出させる。
それを見て即座にヴァーリは上空へと待避し、地面を殴って隙だらけなイッセー目掛けて魔力の塊を投げつける。
「甘いぜ!!」
『っ! ふふ、だろうな……!』
だがその魔力は只の拳一つに殴り飛ばされ、イッセー目掛けて放たれたそれは運動場の端まで飛んで大爆発を起こす。
その規格外過ぎる対応の仕方にヴァーリはそうでなくてはと心を震わせ、自分目掛けて弾丸を越えたスピードで飛ぶ――いや、跳んできたイッセーを迎え撃つ。
「くたばりやがれ!!」
『それはお前だァっ!!!』
二人の拳が激しい衝撃の波を放ちぶつかり合う。
会って間も無く、互いに名前しか知らない間柄。
しかし両者は互いに奇妙な友情を抱き、理解し合っていた。
こんなに楽しい戦いを与えてくれたお前に感謝しかない……と。
「ぐふっ!? くく、この前の堕天使とやらより何百倍も楽しい。
もうモラルなんてどうでも良い! お前を殺すだけだァ!!」
『ガッ!? ふふ、それはこっちの台詞だ! 無限の龍神に近づく為に妙な勧誘に乗ってみたが、それももうどうだって良い! こんなに愉しい闘いは本当に初めてだ!!』
校舎を守る為に張られていた魔王達の結界が悲鳴を上げても尚止まらない殴り合いの応酬。
血塗れになろうと、皮膚が抉られ様と止められない闘いへの楽しみ。
全力を互いにぶつけられる最高峰の好敵手。
『どうした! 傷だらけだぞイッセー!』
「お前もな!!」
本当は己の好敵手の宿命を持つ赤い龍帝に勝利する為に至ったこの境地。
それを只の人間にカテゴライズされている男相手に存分に奮える。
この時に至ってのヴァーリは己の生まれも、宿命も、目的も忘れてただ純粋に闘いを楽しんだ。
(見てるだろう鳴瀬アキト?
戦慄し、恐れるアキトという赤龍帝の気配を間近に感じながらヴァーリはイッセーの拳を受け止め、がら空きになった脇腹に渾身の拳をめり込ませながら敵になってくれと懇願する。
(ゼヴィ……コイツ強ェよ、気を抜いたら負けちまうかと思うくらいに。しかし見てろよ? 俺は勝つぜ……! お前と会えた事で夢の中で見た上院議員みたいにはなれないけどな!)
こんな自分を初めて慕ってくれた友を想い、イッセーは最早己が上院議員みたいにはなれないと悟りながらも尚勝つと闘志を燃やし、脇腹から響く骨の砕けた音を無視しして頭を突き出し、ヴァーリにヘッドバッドする。
「ガハッ!?」
『ぐあっ!?』
天地、あらゆるステージを高速で行ったり来たりしながらの闘いは互いに致命傷となる傷を与える事で緩む。
最早互いに力を出しきり、生身へと戻ってしまっているがそんな事はお互いに関係ない。
「ははは、痛いじゃないか!」
「それはこっちの台詞だ!」
手出し出来ずに呆然としていたリアス達もまたこの戦闘に魅せられており、その中には赤龍帝として、本来なるべきだった赤龍帝を見ていたアキトも含まれていた。
「ま、魔王様同士の闘いみたい……」
「すげぇ、すげぇよイッセー……俺なんか、お前から全部奪ったのに……」
「……? 何か言ったアキト?」
「い、いえ……」
互いに血まみれで、とっくに力を出し切ってるのに尚も止めない殴り合いの生々しい音が学園全体を響かせる。
襲撃者なんてとっくに全滅して居ない。
拐われたリアスの眷属の一人もちゃっかり救出されてる。
にも関わらず二人の少年はボコボコになった顔で笑いながら殴り合う手を止めない。
何故か? 愉しいからだ。
「お前、ヴァーリっつたか? 今まで気付かなかったが、お前も『そう』なんだな?」
「あぁ、俺も気付かなかったよ。お前が『そう』だって事が。
だとしたら俺もお前もまた『同類』であり宿敵に為りえた訳だ」
そして何よりイッセーとヴァーリは同じだったのだ。
二天龍同士の宿命を更に越えた……同類として。
「「オォォォォォォッ!!!!!!」」
兵藤一誠。
筋肉信仰者。
備考……無神臓
ヴァーリ・ルシファー
戦闘快楽者。
備考……超戦者。
共通事項・・・宿命を越えた同類。
「く、ぐふ……」
「ぐっ……ぐぅ……」
全てを互いに出しきった果ての拳がクロスし、互いの顔を力無く叩いた。
それが最後の力だったのだろう、互いにハグをするかの様にもたれ掛かり、そのままうつ伏せにノックダウンした。
「う、動けねぇ……こんなヒョロヒョロにここまでやられるなんて、まだまだ筋トレが足りなかったか……」
「お、俺も動けない……。只の人で神器もなにも無い奴にここまで追い込まれるなんて……」
倒れたタイミングもほぼ同じで、戦闘続行も互いに不可能。
つまり二人の勝敗はまごうことくの引き分けであり、ひとつの闘いは一旦の終息を迎えた。
「テメー等何をしとんじゃぁぁっ!!!」
そしてそのタイミングで現れた堕天使の男の怒号。
「な、なんだアザゼルか……何を怒ってるんだ?」
「つーか、誰だよ」
「そんなもんキレるわ! 俺はお前に禍の団の構成員を沈めろって言ったよな!? なのに何で例の人間とやりあってんだ! しかもお前! 覇龍化までしただろ!? 危うく此処等が完全に消し飛ぶ所だったんだぞ!?」
うつ伏せに倒れてるヴァーリの頭をゴチンと拳骨し、ついでに一誠も拳骨したアザゼルという男の堕天使は滅茶苦茶怒っていた。
それもそうだろう、何せヴァーリが引き出した全力は本来人間相手に使うものじゃないし、解放しただけで周囲に絶大な被害をもたらすものだ。
それを躊躇無く、アザゼルが協力を乞う事で展開された三大勢力トップ達の全力結界で被害はかなり抑えられたが、それでも駒王学園の運動場は隕石の大群が降り注いだ様な荒れ地になってしまってるのだ。
「こんなタイミングでコカビエルを倒した人間と話せるとは思わなかったが、クソ、奴がズタズタにされる訳だ」
「いてて、いやだから何だよアンタ? 誰だ?」
「堕天使のアザゼルだ。この前お前がズタズタにしたコカビエルの同族だ。もっとも、奴とは同族なだけだがな! おら動くな!」
「いででで!? な、何だよ!?」
「ウチん所のヴァーリの全力と殴り合ってこの程度に済んでるんだ、少しは我慢しろ! それとこれはただの傷薬だ! ったくもう……!」
初対面の子供相手に甲斐甲斐しくヴァーリと同じように治療の薬を塗りたくるアザゼル。
「お前等あとで覚悟しとけよ、ミカエルとサーゼクスとセラフォルーから呼び出しだ。無論拒否権なんかねぇぞ?」
「へー? 魔王や天使のリーダーがねぇ?」
「いやだからさっきから誰――」
「イッセー! 大丈夫か!?」
「お、ゼヴィ! どうよ、勝てはしなかったが生き残った―――だだだだぁっ!?!?!」
個人レベルの戦争……一旦終了。
補足
二天龍としての宿命は転生者にあるけど、中身……つまり異常性としての宿命が代わりにある。
その2
このヴァーリは原作より飛び級で強いです。
故に退屈だったんです。
んで、今回同類であり最高峰の闘い相手と出会えて、まるで恋する乙女みたいに…………アーッ!
※これは冗談です。
その3
某雨の化身……もしくはムラサマ使い化しかけてる……それはつまり他のIFでゼノヴィアさん自身が持っている異常性と完全リンクしてしまうのかもしれない。
斬奪モードという意味で。