色々なIF集   作:超人類DX

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今までになかった関係……か?


マッチョイズムと転生者

 強さ=筋肉という図式を齢6つの頃になって自分で決め、取り敢えず何かあればスクワットしてたり、腕立てしてたり、腹筋したりと筋トレに余念が無いマッチョになりたい少年、一誠。

 

 そんな彼の朝は早く、某イタリアの種馬のトレーニングを彷彿とさせる肉体作りから始まる。

 少し明るくなり始めた早朝に近所周辺……いや町全体を走り、公園で筋トレをし、家に帰れば庭でバーベルスクワットをし、滝の様な汗を流しながらの卵黄一気のみ。

 

 流石に吊るされた肉をぶっ叩く等という真似はしてないが、このトレーニングを行って早7年目だというのだから身に付いてないなんて事は絶対に無い。

 

 

「むんっ!」

 

 

 その証拠に朝練を終えた一誠のその肉体は仕上がっており、鋼を思わせる逞しい肉体だ。

 本人はもう少し『大きく』なりたいとぼやいてるのだが無駄が全く無く、体重と共にジュニアミドルクラス級の仕上がりだ。

 

 

「まだ筋肉が足りんな……ストロングさが足りない」

 

 

 それでも尚満足しないのは、飽く無き筋肉への執念。

 筋肉=強い。強い=正義。正義=筋肉というアホみたいな思考回路になってる一誠の目指す肉体は、小さき頃夢の中で『見せられた』スポーツマン上院議員の様なはち切れんばかりのマッチョ。

 

 勿論某元コマンドー大佐の肉体美にも憧れるし、某超兄貴もアリ。

 

 ともかく筋肉に対する無限の信仰心は、神を信仰していたゼノヴィアにも通じるものがあり、故に二人の気は割りと早く合ったのかもしれない。

 

 

「朝っぱらから庭で暑苦しい事してないで、早くご飯食べなさい! 遅刻するでしょうが!!」

 

「はーい」

 

 

 まあ、そんな筋肉バカもオッカサンには逆らえず、朝っぱらから庭でマッチョポーズしてニヤついてた所を怒られ、朝のトレーニングを終了することとなった。

 

 

 

 

 という訳で、もしかしたらビルダー星の一員にすらなれそうな筋肉への信仰心が高い一誠君は、優しき父と母と朝御飯を食べ終えると、今日も筋肉に幸あれと訳のわからん祈りを捧げてから家を出て登校する。

 

 何時もなら家から学園までの距離を某燃焼系アミノドリンクCMよろしくに片手倒立で向かうのだが、今日はどうやら違うらしく普通に歩いていた。

 

 

「見ろゼヴィ! ウエイトが増えた事で俺の筋肉も一際パワーアップしたぜ!」

 

「ふむ、確かにますます逞しくなってるな……ふふふ」

 

 

 その理由というのが、ひょんな事からすっかり……というかこれまでの一誠の人生を振り返るにもしかしたら初めてなのかもしれない仲良しとなった女子と登校しているからだ。

 名をゼノヴィアという間違いなしな美少女で、普通なら勝ち組とも言えるポジションである筈なのだけど、会話の内容が殆ど筋肉ばっかりなせいで、残念な二人組になっていた。

 

 

「俺、将来マッチョな双子に兄貴と呼ばれてぇ……」

 

「じゃあ私は姐さんといった所かな」

 

 

 合流してからずっとこんな暑苦しい話ばっかりしかせず、学園に到着してもまだ続けてる。

 お陰で男子比率が圧倒的に少ない駒王学園で美少女と二人きりで歩いてるだけで叩かれる筈が、寧ろ周囲の人間達の目は生ぬるいものだった。

 

 

「ゼノヴィアさんって可愛いのになんであんな残念なんだろ……」

 

「おう、イッセーも普段めちゃくちゃ良い奴だしな……美少女と歩いてても責める気になれないよな」

 

「寧ろあの筋トレバカと馬が合う女の子が居てくれた事に他人なのにホッとするくらいだ」

 

 

 二人目の外国人美少女転校生という事ですぐに学園にてオカルト研究部という部活集団並みに有名化したゼノヴィアは当初、男子達の欲望じみた視線の対象だった。

 

 が、今偶々見ていた男子達の呟きの通り、直ぐにその視線は改められた。

 というのも、その隣を一緒になって歩く筋肉バカと馬が合いすぎてるという残念な面が出てしまってるせいで。

 

 

「鳴瀬や木場は死ねと思うのに、どうもイッセーは逆に嫌われたらどうしようって心配ばっかだぜ」

 

「おう、エロ本かと思ったらボディビル雑誌。

エロDVDかと思ったらボディビルダーコンテストのDVD。

挙げ句の果てには筋トレバカ過ぎでベクトル違いに女子から引かれてるともなればな……普段良い奴なだけに不敏に思えて思えて……」

 

「上手く行くと良いよな、あの二人……」

 

 

 楽しそうに筋トレの話しかしないイッセーを嬉しそうに微笑みながら相づちを打ってるゼノヴィアの様子を眺めながら手すら合わせる男子達。

 普段の行いが行いのせいか、女子からは暑苦しいバカと引かれてるのとは逆に男子達からは寧ろ好かれてるイッセーなのだった。

 

 

 しかし、その筋トレバカが高じたギャグみたいな領域の力が露呈したお陰で、それを警戒する密かな集団がチラホラ出て来てしまった。

 例えばそうだ……先程述べたオカルト研究部の部員達や生徒会等、集団を隠れ蓑にしたとある種族達なんかがそうだった。

 

 

「おいイッセー」

 

「む?」

 

 

 ゼノヴィアが然り気無く筋トレじゃなくて普通に男女交際っぽくしないかと提案しながら昇降口の下駄箱で上履きに履き替えていた時だった。

 これもまた先程ゼノヴィアとイッセーに生ぬるい視線を送ってた男子達の話に上がっていた名前を持つ男子が、二人に近寄り話し掛けて来たのだ。

 

 

「お、鳴瀬じゃん」

 

「一人か? 珍しいな……イリナもいないし」

 

 

 名を鳴瀬らしいその男は何を隠そう、美少女で殆ど更生された人気者の集まりであるオカルト研究部の部員であり、その正体は部長であるリアス・グレモリーの下僕として転生した兵士の転生悪魔だった。

 

 同男子部員である騎士の少年と比べると目だった容姿という訳じゃないのだが、女子にどうにも好かれやすい様で今ゼノヴィアが言った通り、何時も美少女と一緒に行動している。

 

 

「いや、リアス部長がこの前の事でお前を警戒してる……というべきなのか? いや、あれは多分勧誘したいって感じなのか? とにかく一度話がしたいらしくてさ」

 

「ほーぅ、悪魔が――」

 

「しーっ! 声がでかいっての!」

 

「おうスマン」

 

 

 なので学園の男子達からは嫉妬されまくりな男なのだが、筋トレバカなイッセーは特に別に思う事も無くネガティブな印象もなかった。

 故に例の事件以降から関わりが多くなってもイッセーの対応は極々普通なものだった。

 

 

「大声で言える事じゃないんだから、少しは気を付けてくれよ。はぁ……」

 

「別に隠しても仕方ないと思うんだけどな」

 

「色々とあるんだよ色々と……まあ、とにかく一度部長が話したいって……」

 

「あぁ、それは構わないがお前の所の部室にはバーベルとか無いのか? 最悪ダンベルでも良いが……」

 

「うちは文化部だよ!! そんなもんあるかっ!!」

 

 

 真顔でオカルト研究部の部室にトレーニング器具が無いかの確認をしてきたイッセーに鳴瀬は突っ込み気味に声を荒げた。

 

 それを受けてイッセーは本気で『えー?無いのかよ?』と残念そうな顔をするし、隣にいるゼノヴィアはそんなイッセーの強そうな肩を叩いてるのだが、鳴瀬は内心思った。

 

 

『なんでこうなった……』

 

 

 と。

 

 

(転生したイレギュラーのせいで、イッセーはオカルト研究部には入らないで、こんな筋トレマニアだし、かと言って一般人かと思ったらコカビエルをぼこぼこにするし、辛うじて木場が禁手化したフラグは回収できたけど、まるで意味がわからんぞ……)

 

 

 まるでイッセーが本来こんな筋トレマニアでは無いのを知ってるかの様な心のぼやき。

 そう、鳴瀬という男は転生者だった。

 

 

(イリナが天使じゃなくて悪魔になっちゃって、代わりにゼノヴィアが転生せずイッセーと……。

いや、良いんだけど……なんか複雑)

 

「む、何だ鳴瀬? 私の顔に何かついてるのか?」

 

「ゼノヴィアが美人だからだろ?」

 

「い、いやそういう訳じゃあ……」

 

 

 複雑な思いを抱きつつゼノヴィアを見ていた鳴瀬は慌てて誤魔化す。

 

 

「なら良いが、私よりももっと美人な連中に囲まれてるのだし、そもそもイリナの事もあるだろ。

浮気という奴なら止めた方が良いぞ? それに私はイッセーに好意を抱いてるし」

 

「う、浮気て……俺別に誰ともそんな関係じゃないんだけど。やっぱり誤解されてるのか………」

 

「ありゃ誰が見たってそう思われるだろ。

クラスの男子に目の敵にされてるし鳴瀬は」

 

「………」

 

 

 そのポジションは本来ならお前なんだけど…と、ゼノヴィアが軽く甘える様に腕に絡み付くのを受け止めながらヘラヘラと笑うイッセーを見ながら鳴瀬は呟きながらますます複雑な顔をする。

 筋トレバカかと思えば変に鋭く、『原作』と違ってスケベじゃない……かと思えば別にそうでもない。

 

 

「おいゼヴィ、お前のおっぱいがめちゃくちゃ当たってるぞ?」

 

「イリナにアドバイスして貰って当ててみたんだ。

男は女の胸が好きなんだろ?」

 

「極少数に嫌いな奴は居るかもしれないが、俺は少なくとも好きだな。

しかしゼヴィよ、この前も言ったがな男としてはそういうの結構辛いんだぜ? ましてや俺たちゃヤりたい盛りな高校生だし……なぁ鳴瀬?」

 

「ま、まぁな……」

 

「その割にはイッセーは何時もその先はしないじゃないか……」

 

「そりゃゼヴィ、この前あれだけかっこつけたんだぜ? 我慢しなきゃただのアホだアホ」

 

 

 寧ろ成り代わりのせいで失ったせいか原作を別の意味で超越したパワーを持ち、その強さがゼノヴィアを惹き付けたと、ナチュラルに目の前でイチャイチャされて更に微妙な気分になった鳴瀬。

 

 というのも……。

 

 

「何だよ鳴瀬? お前ならイリナやらあの悪魔達に頼まれなくてもして貰えるんだろ? 私がイッセーにこうしてるのがそんなに珍しいか?」

 

「いや……」

 

「モテモテだからな鳴瀬は。羨ましくないといえば嘘になるくらいだぜホント」

 

「大丈夫だイッセー、望むなら私はなんでもするぞ? それこそこの前の続きだろうとね。

いや、寧ろして欲しいな?」

 

「もっと強くなってからじゃないと筋が通らねぇんだよゼヴィ。

うーん、しかしお前って今更ながら変わってるよなー? 何故俺?」

 

「ふふ、イッセーのお陰で私は可能性を見せてもらえたんだ。それに、私はお前の様な清々しい奴が大好きだ」

 

「おほほ、照れるねぇ」

 

 

 

(良いなぁ……転生前からゼノヴィアが好きだったから余計に……)

 

 

 実の所、この鳴瀬はゼノヴィアが好きらしい。それが複雑にさせる理由だった。

 

 

 

終わり

 

 

オマケ。

 

 

マッチョを目指した結果。

 

 

 己を過小評価しているイッセーだが、その実己に宿る異常性もあってその力は既にヤバイ所にいた。

 

 シンプルに殴る蹴るといった戦闘方法でコカビエルを倒したのもそうだが、何より訳がわからないのが……。

 

 

「ぬぅぅぅ…………ウラァァァッ!!!」

 

「なっ!? 地面を殴ったらマグマが―――――ぎぇ!?」

 

 

 タックルをすれば炎が吹き荒れ、地面を殴れば衝撃波の如くマグマの柱が飛び出す。

 修行という事で許可なしにはぐれ悪魔狩りをしているイッセーは、この日もゼノヴィアを連れてながらの討伐にて地面を殴ってマグマを出現させ、はぐれ悪魔を消し炭にした。

 

 

「気合いが足りんな!」

 

「…………」

 

 燃えカスになったはぐれ悪魔にそう言い捨てたイッセーは、キラキラした眼差しを向けていたゼノヴィアの元へと戻る。

 

 

「すごいぞイッセー! 今のはなんだ!? 魔力も何も無いのに地面殴ったらマグマが出てきたぞ!?」

 

「おう、鍛えてたらある日出来る様になったんだ。

原理とか知らないけど、まあ、出来るんだからしょうがないよな」

 

「私もこのデュランダルを使いこなしたら出来るかな?」

 

「イケるだろ。俺が出来るんだ、ゼヴィなら絶対にできる。頑張ろうぜ!」

 

「あぁ! やはりお前は最高だよイッセー……ますます惚れてしまうぞ」

 

 

 とにかく滅茶苦茶なイッセーにはしゃいだゼノヴィアが頬を上気させながら飛び付き、逞しき胸板に頬擦りする。

 

 

「ふふ……イッセー……」

 

「軽いなゼヴィは、まあ、女の子だし良いかもしれないけど……よし帰ろう」

 

 

 滅茶苦茶過ぎて逆に清々しい。

 ゼノヴィアはどうにもますますイッセーに惚れ込んでしまった様だ。




補足

別に何もされてないので転生者との関係は可も不可もない。

ただ、転生者からしたらイッセーの謎過ぎる強さは地味にビビるのと、ゼノヴィアさんとイチャイチャしてるのが羨ましいらしい。


その2

某上院議員はナノマシンで最新鋭のサイボーグをボコボコにした訳ですが、何故か地面を殴ればマグマが出てきたり、ダッシュをすると炎が吹き荒れたりと、ナノマシンでは説明不能な現象を持ちます。

勿論イッセーは筋トレの果てにその領域に侵入してます。

異常性の進化といえばそれまでだけど、一番の理由はやはり筋トレです。

その3
難聴でもないし、のらりくらりと逃げてる訳でもない。
寧ろゼノヴィアさんのからの好意は素直に嬉しいらしい。

筋トレバカのせいで女子の多くから煙たがられてたので。

それと、おっぱいは普通にお好きらしい。

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