色々なIF集   作:超人類DX

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これでエピローグ

いやぁ、ネタ提供から此処までよく膨らませたもんだ!ほ


馬鹿と愚か者と弱い者奴の味方なマイナス

 頭がボーッとしやがる…………てか、此処は何処だ?

 確か俺は悪魔共の茶番劇に付き合い、ミッテルトちゃんの自由を得て上手く逃げられて…………ええっと。

 

 

「覚えてねぇ……」

 

 

 駄目だ、何でかそこから思い出せん。

 知らない高い天井を、これまた値が張りそうなベッドに横になってる状態で眺め、何でこの状況になったのか真剣に考えてみても一切思い出せず、何とか思い出してやろうと頑張ってみるも、今居るこの場所と他人の家の匂いのせいで落ち着けず上手く考える事が出来ない。

 どうしたものかと、取り敢えず自分の身体が特に動かせないといった違和感も無いのでのそのそとベッドから降りると、すぐ横の扉がガチャリという音が聞こえ、視線を向けてみるとそこに居たのは金髪の女の子のミッテルトちゃん――。

 

 

「………」

 

「? だれ?」

 

 

 じゃあ無く、見たこともない金髪の女の子だったので俺は思わず自然とその子に向かってどなた様なのかと尋ねてみる。

 

 

「……………。(じろじろ) 」

 

「え、なに?」

 

 

 しかしこの金髪の子……全く喋らん処か、誰かも名乗らずにじろじろと俺を見てくるもんだから、更に居心地が悪くてしかたない。

 

 

「近くで見たら更に弱そうですわね」

 

「は?」

 

 

 で、やっと口を開いたと思ったら、最早言われ慣れすぎていた言葉を頂戴しました。

 …………。

 

 

「あー……うん。そんな第一声も慣れてる。他には死ねとか気持ち悪いから消えろとかも言われ慣れてるけどね。

それで何なのよキミは?」

 

 

 最近普通に絡んでくれる相手の共通点である金髪。

 それを漫画にでも出てきそうな……何だっけ、ドリル? いや縦ロールか? まあそんな髪型をしとるこの女の子に対し、恐らく同年代だろうと勝手に結論付けて誰なのかとフランクに聞いてみると、金髪縦ロールさんは『ふぅ』とため息を吐いていた。

 

 

「ライザー・フェニックスの妹のレイヴェル・フェニックスですわ。

以後………は無いかもしれませんがお見知り置きを」

 

「………」

 

 

 見てくれからかったるそうに自己紹介をしてくれた……ええっと、レイヴェルと名乗るこの女の子は、何とライザーさんの妹さんらしいく、ジロジロと人間が珍しいのかジロジロと見てくる。

 まだ人間に戻って無いんだけどね。

 

 

「ふーん? キミが俺を此処に運んだの? 何か記憶が飛んでて覚えてないんだけどさ」

 

「覚えて無いのですか? 私も直接見た訳では無いですが、例の胸糞悪いレーティングゲームが終わった後、アナタはサーゼクス様とお会いになり………………………」

 

「あ?」

 

 

 お会いになり……何だよ?

 そこで止めるとか何かしたのかよ? 気になるからはよはよ。

 

 

「サーゼクス様の奥方……の筈のグレイフィア様とアナタみたいなのが接吻をしまして…………らしいですわ」

 

「………………………はっ?」

 

 

 自分で言ってて若干恥ずかしくでもなったのか、ちょっぴり頬を染めながら消えた記憶を補完してくれたレイヴェルさんに俺は多分人生で二番目くらいにアホな顔になってたと思う。

 いや、だってね……うん。

 

 

「待て、待ちなさい、待とうか、待ってください。

何かの冗談だろそれ? えっと、どっちからやらかしたの? 俺じゃないよな?」

 

「兄から聞いた話では……グレイフィア様からと」

 

 

 折角悪魔とのイザコザから逃げられたのに、またしても変な事になってるっぽいと聞かされて、俺はまず一番にどちらがと問うと、レイヴェルさんはグレイフィアって人からと心底ホッとする答えをくれた。

 

 

「……。俺が人妻と……だと……? やべぇ……今更ながら初めてのキッスが人妻とでしかも覚えてねぇとか……………うわぁ」

 

 

 グレイフィアってのはアレだろ? あの銀髪のメイドさんの事だろ? 子持ちの人妻で旦那との仲がグチャグチャだと何と無く察してた相手とその旦那の目の前でやらかしたって……しかも覚えてねぇとか…………せめてそこは覚えとこうよ俺……。

 いや、覚えてても意味なんて無さそうだけどよ。

 

 

「直後にアナタは気絶してしまったようですが、その後は大変でしたわよ?

アナタのお友達の堕天使は笑ってるのか泣いてるのかよく分からない形相で勝てもしないのにグレイフィア様に飛び掛かり、兄と眷属の皆さん総出で止めたり、サーゼクス様は――――あ……」

 

「なに? まだ何かあるの?」

 

 

 この時点でビッグな事件だってのに、どうやら何かを思い出した様な顔をしてるレイヴェルさんを見るに、まだ何かあるらしい。

 正直、そのグレイフィアって人との過ちを否定して何もありませんでしたな幻実に逃げたくなってる中、レイヴェルさんは初めて同情的な視線を向けてきながら口を開いてしまう。

 

 

「今……この部屋の下、つまりこの城にサーゼクス様とグレイフィア様がおいでになられてます。

それで、アナタの意識が戻り次第サーゼクス様から『お話がしたい』との事ですわ」

 

「Oh shit!」

 

 

 おいおいおいおいおいおいおい!? 俺もしかして美人局的な感じで嵌められてんじゃあなかろうな?

 妹裏切って不意討ちしたのを間近で見せられて檄おこしてまーす的な意味合いでよ。

 やべぇ、だとすると折角自由になれた意味が無くなってしまう…………やはり俺の運はマイナスなのか。

 いやでも待て……こうなりゃ幻実逃否(リアリティーエスケープ)で――は、最後の手段だな。

 正直、あのグレイフィアって人があんまりにも俺と似てるのが気になるし……。

 

 

「まあ、どう転ぼうと私には関係ありませんので、さっさと身なりを整えてサーゼクス様とお話しなさいな」

 

「つ、冷めてぇ……」

 

「当たり前でしょう? 私とアナタは今此処で会っただけの他人ですもの。ま、精々死なない様に頑張りなさいまし」

 

 

 ツンとした態度で素っ気なさ過ぎる……いやまあ、言われてみりゃあ当たり前な態度を見せるレイヴェルさんの言葉から分かったが、どうやらこの子はライザーさん達とは違って悪平等(ノットイコール)では無いらしい。

 それならまあ、仕方ないっつーか……………あー………それにしても真面目に嫌だなぁ。

 

 

「…………。どうやら今の所は『普通』ですわね」

 

 

 

 

 

 

 

 モニターから見ていた。

 どんな男なのか。兄が言うだけの男なのか。それを見定める為に私は彼を観察した。

 そして知る…………過負荷(マイナス)という存在が何故過負荷(マイナス)と呼ばれるかを。

 そしてどれ程に負けを前提にして生きているのかを。

 兄やその眷属の皆の様な悪平等(ノットイコール)とは違い、どう頑張っても最終的には誰かに譲る形でしか生き残る事が出来ないのが過負荷(マイナス)なんだと。

 

 

『変な人だ。何を怒ってるんですか? 最初に俺言いましたよね? 『俺なんか仲間にしてもロクな目に遇いませんよ』って。

それを無視してミッテルトちゃんを使って脅しくれたのはアンタであり、今のこの様だって全部キミ等がライザーさんより弱いからだろ? つまりぜーんぶ自分達の自業自得。

ほら、どう考えても―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺は普通に被害者であり』『俺は一切合切0から100まで悪くない。』

 

 

 大きいモニターに映る彼は、裏切り・そして傷付けた己の主の反り血で全身を染めながら、それでも笑って言い切っているのが観戦していた私、父と母……そして他の上級悪魔達まで挑発している様に錯覚する。

 主を裏切った挙げ句不意討ちで傷付けた……見ている者の中ではそうやって怒りを見せていた者も居れば、裏切られる真似をした挙げ句転生した元・人間の攻撃すらかわせない等王として疑う。

 そんな言葉も出ていた中、私と父と母はその隣にフェニックス家三男としてではなく、悪平等(ノットイコール)としてのライザーとして過負荷(マイナス)・兵藤一誠と肩を並べている様を黙って眺め……自然と思った事をそのまま口にしていた。

 

 

「そうか……彼がそうなのか。

はは、天然の能力保持者(スキルホルダー)とは驚いた」

 

「ええ、一京という途方もない数のスキルを持つ彼女に比べたら微々たるものですが、彼女曰く……『その気になれば僕を千年は封印出来ることかもね』とすら言われている程の凶悪なスキルと聞いています」

 

「……。どんな力なのでしょうか?」

 

 

 フェニックス家は上級悪魔貴族だ……というのは一般的な話だが、実は悪平等では無いに拘わらず家の者達は皆彼女を知っている。

 彼女が如何に――純血悪魔がどうとか今時にもなってまだ言ってる連中達が小さき蟻以下にしか見えない程強大な存在なのを知っている。

 そんな彼女自身に千年は封印されるだろうと言わしめる兵藤一誠が、人間であるにも拘わらずどれ程に危険なスキルを持っているのかは理解出来る。

 

 レーティングゲームが始まる前、兄に対しては助ける価値があるのか? と言ってみたが、此処に来て初めての分かった。

 こうやって見ても弱そうな見た目にしか見えない……恐らく誰と戦っても負けるだろう。

 

 

『兵藤一誠様の謀反がありましたが、ライザー様がトドメを刺したのでルールに問題なくリアス・グレモリー様がリタイアとなりました。

よって勝者はライザー・フェニックス様となります』

 

 

 ただ、負けても只では負けず何かを強制的に失わせる……そんな怖さが彼にはある。

 私は『一瞬にして浴びていた反り血が消え』、実に褪めた顔付きをしながら、不気味な程に巨大な釘と杭をそこら辺にポイ捨てしてる様が映されている彼の姿から目を離さずに居た。

 

 

『結局、茶番は茶番だったな……。何が面白いんだこのゲームとやらは?』

 

『最近の悪魔社会のトレンドだからしゃーないさ。

まぁ…………ショージキ言って俺もくだらねーと思ってたりするんだぜ?』

 

『でしょうよ。ライザーさんは眷属の人達と楽しく過ごしてぇってだけですもんね?』

 

『そゆことそゆこと。だから……ええっと、リアス・グレモリー? 興味の欠片もねーわ。

結婚とか笑えねぇわ。こんな小娘なんぞキミとミッテルトを助けるって理由がなければ相手にもしねーぜ』

 

 

 

 

 

「あらあら、ライザーと彼はちょっと似てますね……フフフ」

 

「うーむ……。聞けば問答無用の回復・蘇生能力――だけでは絶対に無いにしろ、我等の一族に近いスキルを持っているとなると……………ふふん」

 

「その前にグレモリー家の方々が物凄い顔してらしてるので、それ以上の挑発は止めて欲しいですわ……」

 

 

 ただ、意図してるものなのか、それともわざとなのか。

 兄は絶対にわざとだと分かりますが、モニターにハッキリ出ている状態で煽るのはどうかと思いましたわ。

 父と母は何処か楽しそうにモニターに映る兄と彼を眺めていますけど、私達から少し離れた場所で見ていたグレモリー卿とその奥方が偉い剣幕となってます。

 これは後々面倒な事になりそうですわ。

 ……。まあ、それも後々グレイフィア様がやらかした事に比べれば微々たる面倒事でしたがね。

 

 

 

 

 あーもうヤダ。

 あーもうミッテルトちゃんを連れてさっさと家に帰りてぇ。

 ウザいのが消えてすっきりした矢先に災害とかもう嫌すぎる。

 

 頭の中でループの如くそんな様な言葉を流しながら、レイヴェルさんに連れられて下の階にやって来た訳だが、予想以上にこのお家は広かった。

 なんかもう、ダンスパーチーとか出来そうなくらいにだだっ広いホールみたいな所に着いたかと思えば、ライザーさんと……………多分この家の人なんだろうダンディーなおっちゃんと気の強そうな目付きしたマダムさんやらが、俺が現れるなり一斉に見てきやがるぜ。

 その視線の中には俺を御呼びだししてくれちゃった例の魔王とか、事の発端とも言えるメイドさんとか、目を真っ赤にしてるミッテルトちゃんも入ってました。

 ……………。

 

 

「あの、ミッテルトちゃん……えーっと……」

 

 

 確実に目を真っ赤してるのは俺のせいだってのは分かるし、100パー泣いてたのも分かる。

 だから俺は、見てくる連中を丸無視してミッテルトちゃんの元へと近付き、とにかくペコペコと頭を下げる。

 

 

「すん……へーきっす……そこの中古女が無理矢理やったって分かってますから……エグ……悔しいっすぅ……」

 

「ぉ、ぉぅ……」

 

 

 お、おふ……生まれて初めてかも、罪悪感ってのに蝕まれるのは。

 何かもう、ただただミッテルトちゃんに申し訳ねぇ。

 別に恋人同士じゃねーのに何かもう、ハートがやべぇ。 

 

「だからイッセーさん……結婚してほしいっす」

 

「いやそれは無いわ」

 

 

 まあ、だからと言って無理な要求を飲むつもりは無いけどね。

 前から言ってるけど、性犯罪はアカンよ。

 

 

「なっ!? そこはオーケーって流れでしょうが!」

 

「ごめん結婚とか重いわ」

 

 

 生温い視線を周囲から感じつつキッパリと断る俺に、ミッテルトちゃんはキーキーと怒っていた。

 何時もの調子に戻ってくれた様でちょっと安心だ。

 

 

「ちくしょう……泣き落としが失敗するとは……」

 

「おいこら、さっきの罪悪感を返せ」

 

 

 終いには演技だったと分かって、罪悪感を感じてたのが一気に馬鹿馬鹿しくなってしまった。

 まあ、ミッテルトちゃんなら俺と違って折れるなんて事無く敵陣のボスキャラレベルの人相手に啖呵切るような子だからな…………ハートの強さなら最強かもしれねぇ。

 んな事よか、そのミッテルトちゃんとこれからのんべんだらりと生きていく予定が今まさに壊れそうになってる元であり、何か意味深に笑ってこっちを見てる魔王さんをどう回避するかだよ。

 てか、その隣に居るグレイフィアって人をまともに直視できねーぞ。いや、あんな事があったんなら仕方無いだろ? 俺は悪くないから怖い顔しないでよミッテルトちゃん……。

 

 

「色々とあったけど、先ずは謝罪をするよ。

済まなかったね……妹が」

 

「え、あぁ……」

 

 

 ふと気付くと、ライザーさんやらレイヴェルさんやら、多分だけど二人の両親っぽいお二方が席を外して居なくなってた中、魔王さんは俺……そしてミッテルトちゃんに向かって頭を下げてきた。

 別に身内だからって直接関係ない人に謝られてもどうも思わないってか、過ぎた事は忘れる主義なんで蒸し返されても困る。

 ほらミッテルトちゃんも、どうでも良げって顔しとるし。

 んな事よか、アンタの目的は別だろうがどうせ……。

 

 

「うん、まあ……そうなんだけどね」

 

「でしょうよ。で、何すか? 言っときますがね、さっきの騒ぎについての記憶は飛んでますし、そもそも俺は無理矢理された側だ。怒るのは筋違い――」

 

「んーん? グレイフィアとの事はどうでも良いよ。一ミリとて何とも思ってないし、寧ろお礼が言いたい気分だったし」

 

 

 

 本気で気にしてないと……あっけらかんとした顔で宣う魔王さんに、分かってた事とは言え、俺もミッテルトちゃんもしょっぱい気分になる。

 ていうか隣に居るのにハッキリ言うなよ、この異常(アブノーマル)化物野郎め。

 

 

「只ねぇ……一応……本当に仕方無い話、便宜上は僕の妻って事になってるんだよね彼女。

でさ、そんな彼女が一応夫の僕の目の前であんな真似されたらもんだから……………ね、分かるでしょ?」

 

「俺は覚えてねーでげす」

 

 

 ニタニタと、心の底から『この時を待ってました』と一切隠す気の無い歓喜の表情でチマチマ言ってくる魔王さんに、俺は一応すっとぼけてみる。

 覚えてないのは本当だしね。

 

 

「そっすよ。イッセーさんは覚えてません。そして無理矢理されただけっす。だから悪くない。被害者ッス!」

 

 

 惚ける俺に続きミッテルトちゃんも、必死そうに俺の援護をしてくれる。

 間違いなしの確かで俺は被害者だし、それでも脅しをくれる様なら幻実逃否(リアリティーエスケープ)を久々に本来の使い方として使ってやるぜ。

 

 

「そうだね。僕から見てもキミは完全に被害者だったと分かるし、そこでイチャモンを付ける気は全く無い」

 

 

 む……そうなのか? 何だ、だったら早く帰してよ。

 家に帰って缶ジュース片手に枝豆摘まみながら『NEWS18』と『なじみボックス』ってアニメ見たいんだけど……。

 

 

「僕はこのグレイフィアが大嫌いでね。周りの連中のせいで結婚させられたんだけど、どうしても別れたい。

けど、立場がそれを許さなくて別れたくても普通には別れられない……。

一誠君、キミとグレイフィアはどうやら似た者同士らしいし、今回キミにキスまでしたって理由を使って別れてやろう思うんだ。

そこで、この離婚を成立させる為の有力な手として、キミとグレイフィアがしてる最中のこの映像を使わせてほしいんだ」

 

「…………………あ゛?」

 

「な゛!?」

 

 

 ペラペラと語りながら、サッと取り出して見せたのは技術の進歩で手に収まるサイズまで小さくなったビデオキャメラ。

 そしてその中に記録されていたのは…………。

 

 

「う……わ……ま、マジでやってたんだ……」

 

「ふ、不愉快っす! 止めろッス!!」

 

「……………フフ」

 

 

 漫画やドラマとかで見てイメージしてたのをぶっ壊す勢いがヒシヒシと伝わるレベルの……なんちゅーか、大人なキッスを、今になって急にクスクスと笑い始めたグレイフィアって人にされて意識が飛んでる俺の姿だった。

 

 

「ふ、ふざけんなコラ! いくら魔王なんて偉そうな奴でもこれは許さねーッス!!」

 

「そう言われても……。

安心院さんの分身とも云うべきキミに楯突きたくは無いが、僕としてはグレイフィアをこのまま一誠君に引き取って貰いたいんだよ。あ、それとミリキャスも」

 

「あ、アンタ……嫌いでも何でも自分の嫁さんと子供をそんな簡単にほっぽり投げるとか最低野郎っすね!! おい中古女! アンタはそれで良いのかよ!!」

 

「一向に構いませんが、何か? 私もこの女々しくてしょうもない男が大嫌いですから」

 

「ぐぎ!? し、しれっと言い切るのはやめろっす! イッセーさんはウチの旦那さんになるんです! オメー等なんぞ御呼びじゃねーんだよ!!」

 

 

 おお、頼もしいぞミッテルトちゃん。

 キミの旦那になる予定は今の処一切無いし、ゴタゴタを一切向けてこないって条件とその他込み込みを飲んでくれるなら、別に引き取りでも何でも構わなかったりするんだけどな。

 

 

「そういや『お兄ちゃん。』達はどうなるの?」

 

「ん? あぁ……然るべき罰を与えるつもりだよ。

リアスは眷属を持つ権利と今ある地位を剥奪させるとかね」

 

「ふーん? じゃあもう人間界の学校とかは……」

 

「キミが望むならリアス達を冥界の外から一切出さ無いようにと厳命するけど?」

 

「いや、別に良いっすよ。俺とミッテルトちゃんに一切絡んで来なければと約束出来るならどうでも良い連中なんで」

 

 

 そもそも余計に絡んできたからこんなゴタゴタになったのだから、2度と絡んで来ないように根回ししてやれば良いのさ。

 それで絡んでくる様なら…………もう、過負荷の俺でも救いようがないお馬鹿さんで処理するもの。

 

 

「分かった、ならそう言っておくよ」

 

「うぃー」

 

 

 なーんてね。学校に通わせる権利を残させたのは、連中の悔しがる顔が見たいだけさ。

 いやぁ、恐らくこれからは俺を見て逆にストレスの溜まる日々が待ってるでしょうね……かわいそー(棒)

 

 

「うむ……そうなると、キミ達を護衛させる者が必要になるね―――――あ、そうだ、そんな時こそグレイフィアはどうだい? 一応強いよ彼女」

 

「……。どんだけ別れたいんだよ。顔も良いし、贅沢な事言いやがって……何かムカつくなアンタ」

 

「仕方無いだろ。実を言えば僕の方こそキミとは馬が合いそうに無いと思ってるんだぞ? 安心院さんのお気に入りと聞かされて、どれだけキミに嫉妬してるか……」

 

 

 ギラリとした目で俺を見据えて言ってくる魔王さん。

 その微弱な殺気を受け流しながら俺は思った。

 

 

(ああ、だからこの異常野郎は悪平等になれねぇのか。

基本的に畜生な奴でも隔てなく接する安心院なじみが鬱陶しがる訳よ)

 

 

 大信者過ぎて引かれてるって気付いてねーのか……まあ、そのウザい性格を直さんと無理だな。

 ていうか、あの飄々ババアの何が良いのやら……。

 

 

「イッセーさんはロリ萌えなんす! 中古女は帰れ!」

 

「へぇ……? それなら今晩彼に聞いてみましょうか……ベッドの中で」

 

「ふ、ふざけんなっす! 何でアンタが家に来る前提なんすか!?」

 

 

 ミッテルトちゃんとグレイフィアって人は何か言い合っとるし……あーもう早く帰りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 で、だ……結局どうなったかと言うと……。

 

 

「改めまして、グレイフィアと申します。

一誠様の身の回り……特に性欲処理のお世話に自信があるますのでこれからも末永く可愛がってやってください。

そして此方は実子のミリキャスです……ほら、挨拶なさい」

 

「ミ、ミリキャス・グレモ……あ、違う、ミリキャスです……よろしくお願いします」

 

 

 フェニックスのお城やらグレモリーのお城やら何やらに比べればダニみたいなボロボロアパート……その部屋に住んでる俺の元に現れ、ペコリと頭を下げて挨拶する銀髪の元メイドさんと紅髪の子供さんに、俺は単純な疑問を口にしていた。

 

 

「え、あれ? …………あら? 俺了承したっけ?」

 

「ラチが開きそうに無かったので、ほぼ家出の状態で来ました。

まあ、あの男の事ですし、探そうともしないと思いますのでご安心ください一誠様……………と、ついでにミッテルトさん?」

 

 

 そんなに嫌だったのかね……まあ、夫婦仲がぶっ壊れてるってのはあの日知ったけどさ……。

 

 

「あ、あっそ――」

 

「ベッドはウチとイッセーさんが一緒に使う! お風呂もウチと! 性欲処理もウチだけっす!! オメーは適当に家事でもやってろッス!!」

 

 

 すっかりグレイフィアさんを敵視してるミッテルトちゃんが半泣き顔で俺の頭に抱き着きながら吠えてる。

 てか、性欲処理とか子供の前で言うなよってのもあるけどさ。

 

 

「……………。俺よりハードな人生だなキミは。

なあ、キャッチボールとか出来る?」

 

「は、はい……お母さんとやった事がありますので一応……」

 

 

 一番の被害者はこのミリキャスって子なのは誰が見ても分かる。

 生憎グレイフィアさんはちゃんとこの子の事を守ってあげてるらしいけど……………チッ、それでも胸くそ悪い。

 

 

「こんなボロ家じゃ無くて、キミが居た家には帰りたくはないのかい?」

 

「……。帰りたくない……です」

 

 

 受け答えがハッキリしているミリキャスって子の目を見るに、否が応でも逃げたくなる人生だったんだなと感じる。

 俺以上に不運に好かれてる体質と考えると、グレイフィアさんと同じくやはり他人には見えなく、ミッテルトちゃんに怒られ覚悟で受け入れてしまっていた。

 

 

「なら好きなだけ居なよ。

キミを見てると昔の自分を思い出して、ほっとけないみたいなんだ」

 

「……ぅ」

 

「ん、泣きたきゃ泣いちゃえ。誰も怒らんさ」

 

「うん…………うん……」

 

 

 この子に俺は勝つ方法は教えられない。

 しかし、逃げる方法なら教える事が出来る。

 嫌な事から逃げずに立ち向かえ……だなんて幸せ者共は何も知らねぇ癖に好き勝手ほざくだろうが……俺は違う。

 逃げて……逃げて………逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて逃げ続けてきた。

 それが悪いことだなんて一度たりとも思わない。

 この世に居る奴全てが逃げずに立ち向かえる程に強い奴は多くない事も知ってる。

 だから俺はこの子に逃げる手段の全部を教えてやろうと思うんだ。

 

 

「嫌なことからはぜーんぶ逃げちゃいな? 俺がそのやり方を教えてあげるから」

 

「……………。(こくん)」

 

 

 何より俺を気色悪がらないしね、この子。

 

 

「ミリキャス……これからは一誠様がお父さんに――」

 

「寝惚けんなよ中古女!!」

 

 

 

 

「うるせーな……。

取り敢えずキャッチボールは止めて風呂入ろーぜ?」

 

「グスン……うん」

 

 なぁに、俺と似てるグレイフィアさんのお子さんだ。

 切っ掛けさえ与えたら直ぐに俺みたいになれる。

 

 




補足

彼は自分より弱い奴を見ちゃうと、全力バックアップする癖がありました。

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