色々なIF集   作:超人類DX

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ひんぬーさんルートの続きを何となく。

元ネタありきばっかりだぜ。


ひんぬーさん編その2
表裏一体(ひんぬーさん)


 コカビエルが聖剣をどうこうする件はよく覚えている。

 正確にはその件で知った一誠の本当の姿を私は今でも昨日の事の様に覚えている。

 

 あの理不尽で永久の力を思わせる姿を。

 

 その時私は恥ずかしながら怯えた。

 正体を知る前から縁があって彼とは少ないながらも関わりを持っていた。

 だからこそ私は人でありながら、無限の龍神に見初められ、人を超越した力を誇示した一誠が怖かった。

 

 永遠に進化し続ける異常性。現実から逃げて書き換える過負荷性。

 どれもこれも只の悪魔だった私には理解できない精神だった。

 

 けど、私は今一誠と共に在る。

 

 外から見ている神を死滅させ、悪足掻きで過去へと戻った今でも私の知る一誠はちゃんと居る。

 

 私の見ていた狭い世界を広げてくれた一誠が……。

 

 

「クククッ! 強くなったなひんぬー会長? 腕と肋がヤられた」

 

「はぁ……はぁ、ふんぞり返るのは性に合わないのよ……ふふ」

 

 

 傍に居てくれる……。

 オーフィス……一誠が愛したアナタは怒るかもしれないけど、私は一誠の傍に居るわ。

 けど安心なさい……バラバラになってしまった繋がりはきっと元に戻す。

 もっと強く、もっと進化して……アナタを、ヴァーリを、曹操をきっと――――

 

 

「女で加減しないと決めてるのはオーフィスとアンタだけだよ。

ふくくく……! アンタを相手に進化するのは楽しいぜ!」

 

 

 まあ、その時が来たらアナタは二番目になるけど、怒らないでね?

 

 

 

 

 婚厄者(メビウスオブフィアンセ)というスキルと悪循完(バッドエンド)というスキルがある。

 その二つのスキルは悪魔であるソーナが持つ種族としての力の枠を越えた力であり、それぞれ無神臓(インフィニットヒーロー)幻実逃否(リアリティーエスケープ)の対となるスキルだった。

 

 無限に進化する特性に追いすがり、現実を否定して書き換える特性の壁となりうるという正に表裏一体のスキルにて、一誠という人間を追い掛け続ける覚悟を決めたソーナにのみ許された異常と過負荷だ。

 

 故にある意味でソーナは一誠の相棒(ペア)になる資格を持ってるとも言える。

 悪魔でありながら人間(イッセー)を知る事で至りし人間性が、皮肉にも悪魔という種の殻を破って進化するのだから、かつて少年の傍に居た無限の龍神にしてみれば面白くもない事実だっただろう。

 

 

「リアス、それから皆さん。これ以上学園が壊されるのは嫌なので、此処からは私達に任せなさい」

 

「そ、ソーナ……?」

 

「っ!? ま、待ってください! まだ俺は本気を――」

 

「だから、その本気を出されて校舎破壊されたらお前弁償できんのかよ? 言っとくがガキの小遣いじゃ校舎は修理できねーぞ?」

 

「な……! そ、そんな事言ってる場合じゃ――」

 

「ですから、此処からは私と一誠がコカビエルを黙らせます。

どうやら木場君が自身の神器を禁手化させても難しい様ですしね……」

 

 

 黒髪と茶髪の少女と少年の言葉無くしての意思疏通。

 闇夜の学園にて眩く照らされる巨大な魔方陣。

 

 

「ほう、セラフォルー・レヴィアタンの妹とその下僕一匹か。

リアス・グレモリー達でも止められん俺を黙らせるとは大きく出たな」

 

 

 堕天使コカビエルの暴走を止める為に紛争したリアスとその眷属達は、様々な覚醒を見せたがそれでも届かず、空から見下ろす堕天使を黙らせるべく、学園全体に障壁を施していた筈の二人のペアは、見下す様に嗤うコカビエルに対し何も返さず、膝を付くリアス達の目の前で黙って向かい合う。

 

 

「オーフィスの時には背丈の差で出来なかったけど、私なら出来る」

 

「面白冗談半分で作ったアレをわざわざやる意味は無さそうだけど、虚仮に出来るならなんでも良いか。

良いぜ――」

 

 

 そして互いに笑みを浮かべ合った後、一誠がソーナに向かって膝を付き、その手を取ると。

 

 

「俺と一曲どうですか、ミス?」

 

 

 何がしたいのか意味が分からないリアス達やコカビエルを挟み、ダンスのお誘いをした。

 

 

「喜んで……」

 

 

 それに対してソーナは微笑み返す。

 それが合図であり、一誠は立つと取ったソーナの手を優しく握り、背にもう片方の腕を回す。

 それはまさしく、ていうか社交ダンスのそれだった。

 が………。

 

 

「「双戦舞(ダブルアーツ)……スタート」」

 

 

 後ろ戦が付くダンス。

 面白冗談半分で作ってみた二人三脚の戦闘方。

 

 この夜。一誠とソーナはそんな面白冗談半分で作ってみた戦い方でコカビエルを……。

 

 

「がふっ!? き、貴様等……ふざけるのも大概に―――」

 

「ブレイクダンスの方が得意なんだけどな」

 

「まあ、公の場で見せるダンスでは無いわね」

 

「ぐはぁ!? こ、この―――ぎゃっ!?」

 

 

 文字通りに手玉に取っていた。

 

 

 

 

 

 

 とても無垢な悪魔の姫がいました。

 

 

 その姫は人間の男の子に恋をし、姫は人間の男の子と同じになりたく進化しました。

 

 

 ところが男の子は姫に振り向かず、他の女の子ばかり見ます。

 

 

 だから姫は、ある日どうしても欲しいその男の子を振り向かせる為に食べてしまいました――

 

 

 

 

「……………。悪魔の言語でなんつーもん歌ってんだアンタ」

 

「さぁ? 私の心に秘めていることかしら?」

 

「あ、そう……」

 

 

 ワルツを踊りながらの踵落としを二人で決め、遂にコカビエルを叩きのめした一誠は、最後辺り悪魔の言語で他人事には思えない歌を歌って締めたソーナに果てしなく微妙な顔をしたという軽いオチはあったが、ともかく戦いは終わった。

 

 

「う、嘘……本当に勝っちゃった……」

 

「………」

 

 

 リアス達を唖然とさせる結果を残して。

 

 

 

 

 

 単なる社交ダンスでコカビエルは撃墜したオチに御劔赤夜は焦った。

 赤龍帝としての力も無い一誠がソーナの女王的なポジに居る以上に、あきらかに原作離れした力を持っていた事に。

 それはソーナの駒で転生したからという理由では片付けられず、またソーナ自身もおかしな領域に既に立っている事もまた同じく。

 

 

「あー恥ずかしかったー」

 

「私は楽しかったわよ?」

 

「そりゃそうでしょうよ……」

 

 

 白目を剥き、全身がボロボロになって意識を失っているコカビエルの首根っこを掴みながらソーナと談笑している一誠が何者なのかがますます分からなくなった御劔赤夜は、一瞬自分と同じである事を疑った。

 でなければあんな力をどこで獲たのかの説明が付かない。

 

 

「ま、待てイッセー。お、お前はまさか俺と同じ――」

 

 

 トドメでも刺すつもりなのか、コカビエルをつるし上げる様に持ち上げた一誠に向かって御劔赤夜はそう問い掛けたが、その言葉は背を向けたまま振り返った一誠の『嫌悪』した目によって失われた。

 

 

「同じが何だ? お前も都合の悪い事が起きるとその本人に訳のわからない仮説を押し付けてくるタイプなのか? まったく、どいつもこいつも……」

 

「……っ!? な、何か知ってるのかお前は……」

 

 

 心外だと云わんばかりの言い方をする一誠に御劔赤夜は自分の抱える秘密を知ってるかもしれないと思い、気圧されつつ問い掛けた。

 するとその質問に答えたのは――

 

 

「昔似たようなのと戦った事があるってだけよ御劔君? まさかアナタは一誠がアナタみたいなのと思ってるのかしら? だとしたらとんだ見当違いよ」

 

 

 ソーナであり、また彼女も『知っている』様な言い方である事に御劔赤夜は絶句した。

 

 

「ま、前だと……? それに知ってる……?」

 

「ええ、姉も匙も私も一誠も……アナタみたいなタイプの存在を知っている。

そしてその元凶の神も……」

 

「っっ!?」

 

「な、何の事を話してるのよ三人は?」

 

「いえ、ただの世間話よリアス。

それよりこのコカビエルの後始末はアナタにやって貰いたいのだけど……そうね、アナタ達が捕まえたって事にでもしてくれたら助かるわ」

 

「え!? な、なんで――」

 

「地位や名誉に興味無いのよ私達は。

そんな事より庭でボーッとする毎日の方が好きだし」

 

 

 絶句する御劔赤夜を放置し、白目を剥きながら死にかけてるコカビエルの後始末を然り気無く押し付けるソーナにリアスは戸惑うが、意識を失っている仲間達の事が気掛かりだったので渋々従い、さっさと校庭から去っていく二人を見るしか出来なかった。

 

 

「突然で済まないが、コカビエルの身柄は此方で回収しても良いかな?」

 

 

 ――まるで、この後すぐにコカビエルを回収する為に現れた白龍皇から逃げる様に……。

 

 

 

 

 コカビエルの件をざっくばらんに説明すると、撃退したのはリアス達という事になった。

 どうやらソーナ達が根回しをしたらしいのだが、当然リアスはそれを否定し、あくまでも倒したのはソーナとその将軍(ジェネラル)だと主張した。

 

 だが悪魔の上層部はそれを聞き入れず、あくまでも聖剣との因縁を断ち切り、聖剣を越えた神器使いへと覚醒した騎士あってのものだとリアス達を祝福した。

 

 結局推される形と手柄の横取りみたいな形でリアス達は評価される事になったが、勿論本人達……特にリアスは納得出来なかった。

 

 ソーナとは幼馴染みでありライバルだ。

 そんな彼女の手柄を手も足も出せなかった自分達が貰うなんておかしいと思うのは当然だし、リアスは何度もソーナと話し合った。

 

 けれど決まってソーナからの返答は……。

 

 

「偶々手が開いて、偶々やってみたら偶々倒せただけだし、そもそもあの時点でコカビエルはそれなりに疲弊してたじゃない。

私と一誠が横入りしなければ普通にリアス達で倒せてたわ」

 

「そんな……」

 

 

 興味無いから寧ろ代わってと主張し引っ込もうとする。

 思えばソーナは出会った頃からこんな……異常に大人びたというか冷めた所があった。

 それこそソーナが人間界から拾ってきたあの一誠という少年を手にするまで本当に冷めていた。

 

 今でこそ、その一誠相手に変な事ばかり言う子になったが。

 

 

「アカヤが納得してないのと、どうもイッセー君に何か言いたいことがあるみたいなのだけど……」

 

「え、俺っすか? えー……? 俺モテる奴は平等に敵だと思ってるんで喧嘩になりそうっす」

 

 

 その将軍……自分達でいう所の朱乃の位置に居る一誠もコカビエルの件……いや、その前から異常な強さを持つ事は知っていた。

 成熟前で未だに眷属がその一誠と兵士の匙の二人しか居ない現状で多数の悪魔からは『上に立つ資格に欠けている』と陰口を叩かれる事もあったりするが、その二人の眷属だけで既に戦力としては完成しているのかもしれないと、今回の事でリアスは悟った。

 

 だからこそ勿体無いと思ってしまうのだ。

 それほどの力を持ちながら、常に自分の先に居るライバルであり幼馴染みのソーナのその日暮らし思考が。

 

 

「今からでも遅く無いわソーナ。真実を訴えてアナタのイメージを払拭させましょう? 私、アナタが陰口言われるの聞くのが嫌なの……」

 

「嬉しいわリアス。けど、それでも私は興味が無いの。

いくら眷属が集まらなかろうとも、私には匙と……何より一誠が居ればそれで良いし」

 

 

 ね? っとソファに座る後ろに控える様に立つ一誠に向かってウィンクするソーナにリアスはため息が出てしまう。

 

 無気力――とまではいかないが、無関心であるソーナの態度がリアスには余裕という気持ちを感じさせ、それが微妙に悔しいのだ。

 

 

 

 

 

「リアスには悪いことをしちゃったかしら」

 

「まあ、グレモリー先輩からしたらいい気分ではありませんね」

 

 

 リアスが退室した後の生徒会室にて、ソーナはほんの少し罪悪感を覚え、一誠もそれに同意する。

 何せ面倒な事のほぼ全てを押し付けてやったに等しい行為である。

 御劔赤夜は別にどうでも良いが、リアスは完全に今回の聖剣とコカビエルの件に巻き込まれただけなのだ。

 

 

「でも下手に注目されるのもかったるいし……」

 

「アンタって段々怠惰になってるよな。昔は無垢なまでに真面目だったのに」

 

「仕方ないじゃない。アナタに多大な影響を受けちゃったんだから」

 

 

 椅子に座るソーナの後ろに立ち、櫛を使って彼女の黒髪をとかしながらすっかり変質しきってしまったソーナの考え方に否定も肯定もしない様子の一誠は、時折ソーナの髪を指で撫でる。

 

 

「俺もすっかり召し使いみたいになっちゃったし。てか、オーフィスとその日暮らししてきた経験がこんな形で生きるなんて皮肉だぜ」

 

 

 異様に女性の髪の手入れに慣れてるのも、かつてオーフィスの髪を手入れしてあげていた経験からであり、それを皮肉に思う一誠は苦笑いを浮かべる。

 

 

「オーフィス、とまではいかないがアンタの髪質も悪くない。

大事にした方が良いぜこれ?」

 

「大丈夫よ、一誠がお手入れしてくれるから。

それより、コカビエルを回収しに来た白龍皇の事は聞いてるわね?」

 

「………」

 

 

 白龍皇という言葉に髪を撫でていた一誠の手が一瞬だけ止まり、そのまま何もなかった様に再開させながら小さく『うん……』と言う。

 

 

「顔は見せなくて良かったの? 確かに私達の知ってるヴァーリでは無かったけど……」

 

「良い。前にも言ったけど、この世界に俺の知ってるヴァーリや曹操――――それからオーフィスは居ない。

だから会ったとしても俺は多分自分のイメージを押し付けてしまう」

 

「けど……」

 

「良いんだって! あの時の時点で代償は覚悟して外の神を殺したんだ。こうして俺がこういう形で生き残ってる以上、アイツ等だってどこかで生きてる。

それに匙やレヴィアたん……それとアンタと今こうして探り探りで生きてるんだ。

少なくとも孤独死だけは免れてる」

 

 

 ポンポンと座ってるソーナの頭を軽く撫でながら、声だけは気丈に聞こえる。

 けどソーナは知ってる。どうせなら全員してやり直しがしたかったと思う一誠の本音を。

 

 

「……。ホント儘ならないわね、人生って」

 

「まったくだ。けれど互いに悪運だけには恵まれてる……でしょ?」

 

「そうね。

オーフィスの妨害が無い今をチャンスと思ってアナタにお腹がたぷんたぷんになる程に孕ませて貰――」

 

「ちょっと真面目かと思ったらそれかよアンタは!? だからひんぬーなんだよ! 拗らせた三十路みたいな事言いやがって!」

 

「フフ……それもお互い様よ♪」

 

 

 本当の意味で取り戻せるのか……それはまだわからない。

 

 

終わり

 




補足

ソーナさんがダンス中に歌い出した件は、アレクシアの子守唄っぽいメロディで脳内再生でもしといてください。

別に深い意味もないですけど。

その2
ダブルアーツって知ってる……人いるかなぁ。

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