色々なIF集   作:超人類DX

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………。何で書いたんだ俺。

『フラグでしょ?』とか言われたから? ……あれなんでだろ


這い上がる進化

 復讐と言って正当化するつもりは無かった。

 されど親を殺されたから憎いという感情を否定しない。

 所詮俺が此処までになれたのだって、一番は『そいつ等が心の底から気にくわなかったから』という感情があったからなのだ。

 

 だからこそ俺は――

 

 

「ア……………ロォオハァ~!! 俺の顔くらい覚えてるだろゴミ野郎。

いやぁ、お前がバカであの時は助かったぜオイ。おかげでこうして地獄の底から這い戻ってきたぜ?」

 

「お、お前……イッセー!? な、なんで生きて……」

 

「おーいおい、カス野郎。素っ裸で人間じゃねぇ雌と宜しくやってる格好で言っても間抜けだぜ? なぁ、ドライグ?」

 

『今居るだけでもざっと五人以上だが、他にも居るというのだから恐ろしいもんだ。

口だけ番長の一誠が実に健全に思えるぞ』

 

 

 人外の女に拾われた事で『ぶち壊して』やった。

 ソイツも、ソイツに与する奴等も、いや……人間じゃない知的生命体をドライグ以外のほぼ全てをぶっ壊してやった。

 だってどいつもこいつもソイツを殺そうとすると勝手に庇いだして自滅するんだもの……仕方ないというか俺は悪くない。

 

 その過程で俺は喰らい尽くす事で更に進化した訳だけど、結局他の生物を喰って糧としてもアイツには勝てないのだから、あんまり意味のない事なのかもしれねぇ。

 

 まあつまり何が言いたいのかと言うとだ……。

 

 

「さてと、皆さんお集まりみたいだし、俺はそろそろ帰るかな」

 

「兵藤一誠……!? なんで此処に!? そ、それに安心院さ――あ、違う知らない人!」

 

「そうだ知らない人!」

 

「どうして知らない人がここに!」

 

「知らない人に会えて感激です!」

 

「ボンジュール知らない人」

 

「………。君たちバカだろ」

 

 

 なじみでは知り得ない無力感いう悔しさは、誰よりも俺が知っている。

 今こうして時計塔の最上階で待ち受けていた黒神さんの元に集まった生徒会や分身五人もそれは知っているのかもしれないけど、それでも本当の意味での無力感を知ってるのは、黒神さんと小さい頃から一緒に居たあの人であり、今この場に居ない彼こそが……。

 

 

 

 

 

「どうして知らない人とこの男が……」

 

「ちょっとした雑談だよ。君たちが来るまでの暇潰しとしてね」

 

「まあそういう事だ。それにしても兵藤よ、最後まで見ないのか?」

「興味はなきにしもあらずだけど、そろそろかわいい女の子のリサーチもしたいからね、俺はここでドロン」

 

 

 平行世界の人外たる一誠は難関をクリアして時計塔の最上階へとやって来た生徒会達や五人の中学生、そしてめだかと安心院なじみの視線を受けながらもそう返すと、家の階段を降りるかの様な感覚で時計塔の最上階から飛び降りて去ってしまう。

 

 

「何故彼が?」

 

 

 説明会後の面談もボイコットした男と居た事をめだかに問う阿久根高貴。

 ある種一番意味不明な為に警戒しているのだ。

 

 

「そこの安心院なじみの邪魔をしに来ただけらしい」

 

「そうそう、本当に邪魔だったぜアレは」

 

「………邪魔って」

 

 

 その質問に対してめだかは安心院なじみにも振りながら一誠が来た理由を話すと、生徒会も五人の中学生にも微妙な空気が流れた。

 結局『よくわからない』のだ。

 

 

「………」

 

 

 だがこの中で、安心院なじみだけは何となくだけど彼が『何をしようとしているのか』を大体だけど勘づいており『彼を利用すべきかそれとも……』と久々に頭を悩ませていたとか。

 

 

 

 

 オリエンテーション最終関門『めだ関門』。

 それは簡単に言ってしまえば単なる『PK勝負』でしかないのだが、ゴールキーパーとなった相手になるのはあの黒神めだかであり、生徒会メンバーも五人の中学生もある種の死力を尽くした結果となった。

 

 そして結果だけを言うと今回のオリエンテーションを制したのは生徒会会計である喜界島もがなであり、全員して充実感を心に灯して終わったかと思ったのだが……。

 

 

「ふむ、意外だったな。私はこの程度の男を心の底から信頼していたのか」

 

「…………」

 

『…………』

 

 

 寧ろここからが始まりだったのかもしれない。

 何があろうとも人吉善吉を信頼していた筈の黒神めだかが起こした行動が……。

 

 

「最下位のペナルティとして時計塔の後片付けは貴様一人でやれ。やりたくなければやらんでも良いがな――――――人吉庶務」

 

「っ……!」

 

 

 今まで善吉と呼んでいためだかが、善吉を張り倒し、それまでの信頼関係が無かったかの様な言い方でさっさと背を向け去っていくのを、声が出せずにいる生徒会達や中学生、そして善吉。

 

 それまであった空気は全て凍り付いたのは云うまでも無く、そうなった原因が屋上から見下ろしていることも知らない。

 

 

「はーい出来上がり。不安要素はあるけどこんな所かな」

 

 

 屋上からめだかと善吉の仲となる核が消え去る様子を見ながら安心院なじみは言葉を紡ぐ。

 

 

「何でめだかちゃんの様な完全に近い人間が人吉君の様な普通の人間を側に置いてるか――――

 

 

 

 

 

 ――――なんて事は君たちは当然知ってるか」

 

 

『…………』

 

 

 そしてその声は彼女の後ろに佇むは五人の善吉と所縁のある人間。

 

 異常者だったり過負荷だったりと、善吉と戦った、善吉に好意があるといった五人の面々。

 その五人が何故安心院なじみの元へと集まっているのか。

 それは五人が五人ハッキリと善吉の味方だからに他ならない。

 

 

「名瀬ちゃん、真黒くん、宗像くん、江迎ちゃん、半袖ちゃん。取り敢えず僕は人吉君を口説き落として見せるが、問題は彼だ」

 

 

 それもこれも安心院なじみの手の平の上であるのだけど、ひとつだけ手の平には決して収まらない存在が不安要素だった。

 そう……めだ関門前にさっさと姿を消してしまった未来の超越者である一誠だ。

 

 

「正直彼は厄介過ぎてね。なんでも僕が困る顔になるのをケタケタ笑って見続けたいという悪趣味極まりない目的で動いてる。

邪魔になる様なら殺すべきなんだろうけど、未来の僕が直接傍に置いてるだけあって…………いや、フラスコ計画が擬人化した男だけあってそう簡単にはいかないんだ」

 

 

 めだかを加えての話し合いの最中に語られた一誠という存在の意味合い。

 それは今尚完成しないフラスコ計画の完成形となる存在であり、その気になればこの世の生物全てを主人公(めだか)へと引き上げられる人外。

 

 何時どのタイミングで未来の己が拾ったのかはわからないが、その未来の自分の差し金で送り込まれた一誠はとことん自分の邪魔になる真似しかしない。

 

 故にこれから安心院なじみは善吉を『口説き落とす』為に彼の前へと姿を現す訳だが、仮に口説き落とした所で彼の邪魔が入ったら意味すら無い。

 というか、未来の自分からこの件を聞かされてる可能性の方が大きいのだ。確実に邪魔をしてくるに決まってると彼女は踏んでる。

 

 故にこんな経験は有史始まって以来無かったのだが、善吉の味方である五人に邪魔をする彼の邪魔をして貰いたいと思っていたのだ。

 

 

「要するに兵藤一誠ってのの足止めをしろってか? アンタが人吉を引き込む間に」

 

「骨がおれますね。アナタでも止まらない相手の足止めとは」

 

「5分でも足止めしてくれたら十分なんだけど――――」

 

 

 既に何度か牽制でスキルをぶつけてみた結果、その悉くを『ヘラヘラ』しながら耐える時点で、完全に戻らないと勝負にすらならないと考えている安心院なじみからの依頼に五人の味方達は難しそうな顔をする。

 

 だがその難しそうな顔もまた――

 

 

「……………。やってくれたなあの野郎」

 

「? 何だよ安心院さんよ、何が――アレは……」

 

「例の彼ですね……人吉君の前に現れてます」

 

 

 師が師なら弟子も弟子。

 似た者同士になるのは半ば必然だったのかもしれない。

 安心院なじみが珍しく顔を歪めたその視線の先にあるのは――

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんは人吉さん、何かありました?」

 

「っ!? お、お前は兵藤一誠!」

 

 

 

 どこかで買ってきたのだろう。たこ焼きが乗せられた船を片手にその男は平然と驚く善吉の前にへと現れていたのだ。

 そればかりじゃない……

 

 

「…………。見てるぞオレ達を、てか指まで指してるんだが」

 

「普通にバレてるね」

 

「………」

 

「多分あの人吉君の睨む様な顔からして、安心院さんの企みもバラされてますね」

 

「………。ニヤニヤしやがって、ヤバいな。久々にカチンと来たぞ僕」

 

 

 善吉に自分達の存在をバラしつつ、安心院なじみに向かってであろうニヤケ顔を見せる一誠に、久々にマジで頭に来たらしい安心院なじみなのだった。

 

 

 

 

 

「て事は安心院なじみが何かして俺とめだかちゃんを……?」

 

「ええまあ、大まかに言っちゃえばそうっすね。

この時代のアイツって相当刺々しいですし、多分この後直接アイツが人吉さんの前に出てきてごちゃごちゃ語って焚き付けるとかでもするんじゃありません?」

 

「あの野郎……!」

 

 

 山盛りに盛られたたこ焼きをハフハフとしながらアッサリと安心院なじみの企みの一部をバラしまくる一誠に、すっかり警戒心と敵意を抱いてしまった善吉は、屋上にポツンと見える人影達を睨み付けていた。

 

 この際この兵藤一誠が信じられないとか云々抜きにしても、話を聞けば聞く程今さっきめだかに向けられた対応がある為に信憑性が増してしまっているのだ。

 

 

「でも何でアンタがそれを俺に? 言っておくが安心院なじみ並みにアンタも信用できねぇ」

 

「そりゃそうでしょうね。俺なんか本来存在しない筈の癌みたいなもんですし。ですが俺はその癌である事を自覚した上でアナタに提案がある」

 

「提案……?」

 

 

 小さく『やべ、この世界のたこ焼き超うめー』と食べるごとに呟きつつ警戒バリバリの善吉に対して一誠は本当に軽い調子で切り出した。

 

 

「人吉さん、今まで黒神さんと肩を並べたいと思ってたでしょう? だからさ、それを証明してやりません? 企んでるアイツをもびびらせる程の『進化』が出来るんだ

ってさ?」

 

「……………は?」

 

 

 それは安心院なじみと同じ口説き文句なのかもしれない。

 しかし小難しい前置きも無く、ただただシンプルに追い掛けてきためだかと肩を並べられ、尚且つ今回の真似をしくさった安心院なじみをビビらせてやろうじゃねーかという一誠からの誘いは、警戒心を持って対話していた善吉の精神を大きく動揺させた。

 

 

「な、何言ってんだよアンタ。俺がめだかちゃんと……?」

 

「そう。今回のオリエンテーションを一門もクリアできず、仕込みがあったとはいえ黒神さんを失望させてしまったという人吉さんの抱く『無力感』は計り知れないものだと俺は知ってるつもりです。

だからこそ、あの女の企みを嫌がらせで邪魔したいという意味で、俺はアンタに提案するんです。黒神めだかが逆にアンタにゾッコンになって追い掛けてくる立場へとアンタを進化させたいって」

 

「めだかちゃんが俺を追い掛けてくる……」

 

「そうです。あの黒神さんって人は少し話してわかりましたけど、タイプ的に『信頼できる仲間よりも立ちはだかる敵』の方が多分素になれる。それはアナタも身に覚えがあるのでは?」

 

「……!」

 

 

 何故か善吉にだけは敬語であるのはさておき、そう言われて善吉はハッとする。

 異常者である都城との件しかり、球磨川の件しかりと、あきらかにめだかは『敵となる相手』との方が楽しそうに見える事に。

 

 

「黒神さんの気持ちが本当かどうかは俺にだって当然わかりませんよ? 所詮俺なんかいちファンでしかありませんからね。

ですが、その兆候があるというなら敵となる相手……否、自分の壁となる相手を好むというならアンタがそのそびえ立つ壁となって構えられる男になれば良い。

俺にはそんな相手は居ませんが、少なくとも『壁になってくれる女』は知ってます。だからこそ安心できる」

 

「…………………俺が、めだかちゃんの壁に……」

 

「勿論立ちはだかる壁としてだけじゃなく、大きく飛び込んで来るのを受け止められる器も必要ですけど、今のアナタでもその器は十二分に備わっている。

だからこそ、俺はアナタに進化をして欲しいと思ってるんですよ…………あの性悪女が悔しそうに半べそかくのを見たいし」

 

 

 それはある種の誘惑なのかもしれない。

 あれだけ追い掛けても置いていかれていた大切な幼馴染みを今度は待ち受ける。

 そしてそれを可能にしてくれるだけの得体の知れなさを持つ男からのお墨付き。

 

 

「本当に、めだかちゃんと肩を並べられるのかよ……?」

 

「出来る。

ただし、途中で弱音を吐いたり、あの女のアプローチに引っ掛かりさえしなければの話だけど」

 

 

 そう言いながら今頃突然『動けなくなってる』だろう安心院なじむが居る校舎屋上付近を見ながら一誠は断言した。

 

 

「俺が居るのが過去のアイツへの嫌がらせですからね」

 

「………」

 

 

 クククッと笑う一誠は無力を知っている。

 知っているからこそ、当初はちまちまと安心院なじみの邪魔だけをするつもりだった。

 

 しかしめだかとの信頼関係を壊され、無力に打ちのめされる善吉を遠くから見て気が変わった。

 

 

「アンタを黒神さんと同じ――いや、それ以上のステージに進化させる。

そうすれば何かがあっても彼女を守れる……破壊の男との戦いでも」

 

「……は?」

 

「いや、こっちの話です。どうします? 俺は別に断って貰っても結構ですよ。

この嫌がらせが失敗しただけという事になるだけですし」

 

「……。俺に道なんか残ってないのはさっきでわかった。良いぜ、壁にでも何にでもなってやるよ」

 

 

 善吉をめだかの敵になぞ絶対にさせやしない。

 幼い頃、師に聞かされたお伽噺とは違うのかもしれないけど、大切な者を一度失っている経験があるからこそ、一誠は真面目に動いたのだ。

 そして差し出した手を善吉が取った時点でこの世界の安心院なじみに対する特大の嫌がらせは完了した。

 

 

「ところで、その安心院なじみは何で現れないんだ? アンタと敵対してて俺を引き込むのが目的だったんなら来ても良いと思うんだけど……」

 

「あぁ、それはっすね……俺が事前に『仕込んで』アイツのスキルの殆どを『消した』からっすよ」

 

「は!?」

 

「まあ、時限性なんでその内それも無かったことになりますのでそこは安心して良いっすよ」

 

「無かったことにって……あんた球磨川が持ってた大嘘憑きでも持ってるのかよ……?」

 

「似て非なるものですね。俺は無かったことにじゃなくて、現実と自分の思い描く夢を入れ替えるスキルを応用しただけですし」

 

「……それ反則じゃないのか? じゃあもし俺が存在しないという夢と存在するこの現実を入れ替えたりとかしたら……」

 

「さぁ、出来なくはないと思いますけど、試した事なんてありませんから何とも。

まあでも出来ないと思いますよ」

 

「………」

 

 

 チーム・ドラゴン。

 しめやかに結束。

 

 

おわり

 

 

 

 人吉善吉は独り他所の人外によって安心院なじみをも干渉不可能な状況での進化の手解きを受けていた。

 

 

「知ってます? スキルって結局は『精神力の爆発』で発現だったりもするんですよ。つまり合致さえすれば後天的ながらもアナタとて不可能ではない」

 

「な、なんだと!? それじゃあフラスコ計画の意味は……」

 

「さぁ? この時代のフラスコ計画の詳細なんて知りませんから? でもまるっきり無意味って事も無いのでは? さて話を戻しますが、まず黒神さんと肩を並べたいのなら、黒神さんの内部をも知り尽くさなければなりません。

黒神さんの見る世界も、黒神さんの気持ちも」

 

「めだかちゃんの見る世界……」

 

「そう、だからこそアナタには自分の精神を知り、その上で『獲て』貰う」

 

 

 それは自然と身に付いた赤龍帝の特別レッスン。

 ノーマルである善吉をめだかの領域へと進ませる、簡単に言えば究極の根性論。

 それは善吉の肉体も精神もボロボロになってしまう程の極限の鍛練だったのかもしれない。

 

 しかし善吉はめだかへの想いを糧に至る……。

 

 

「高々二日程度で蚊トンボを獅子へと変える。

進化とはそういうものだと教えたのは未来のお前だぜなじみ」

 

「………。あの時僕に刺さっていた球磨川くんの螺子を抜き刺しして遊んでた時に何かしたな? お陰で今までスキルの殆どが封印じゃなくて消え去ってた」

 

「あぁ、アンタの困り顔の為に少しね。でも安心しろよなじみ。過程はどうであれ、ある程度お前の思惑通りにはなるんだぜ?」

 

「………………」

 

 

 スキルを一時的に消されて文句を言いに来たなじみの目の前にあるのは。

 

 

「俺はずっとめだかちゃんを追い掛けて来た。

そしてめだかちゃんが敵を好む性質なのも、さっき敵になると宣言したその顔でわかった。だから今、お前と戦った。

結果は……勝ったのは俺だ」

 

「ぜ、ぜんきち……?」

 

 

 二日前とは何もかもが進化し、混乱した様に膝をつくめだかを見下ろす善吉だった。

 

 

「これがお前の言ってた他人を進化させる性質という事か? 確かにこれじゃあフラスコ計画なんて必要ないのかもしれない……お前、何時僕と会ったんだ?」

 

「餓鬼の頃、ゴミカスが目の前で他種族引き連れて俺の親を殺しやがった日の夜」

 

 

 主人公(めだか)をも超越させる進化の手解きを見せた一誠との出会いの時期を知りたくなる安心院なじみに曖昧に答える。

 

 

完成(ジ・エンド)に挑戦して進化する。

俺は所詮完全とは程遠い存在だ、でもそれで良い、お前を越せるなら生ゴミ喰ってでも生き永らえてやる。

挑み、戦い、進化する……それが俺の超戦者(ジ・エンドゼロ)だ」

 

 

 

「超戦者とは言い得て妙だな。お前が与えたのか?」

 

「そんな訳無いだろ。俺は切っ掛けに過ぎない。掴んだのは善吉さんだよ」

 

 

 その手解きを解析したいなじみのアプローチを受けた一誠だが、悉くを受け流すと、勝利をもぎとった善吉へと近寄り、その肩をポンと叩く。

 

 

「善吉さん、取り敢えずこの辺にしましょう」

 

「ん……あぁ、そうだ俺が『黒神めだか』に勝ったんだから焼き肉奢れよな」

 

「「「「「「「!?」」」」」」

 

「勿論、金だけならあるからめっちゃ食わせてやりまさぁ」

 

 

 膝を付くめだかも、見ていた者達もあれだけ慕っていた善吉から飛び出た言葉に驚愕する中、善吉はショックを受けた顔をするめだかに『遥か上から見下ろすような目』をしながら一言……。

 

 

「俺はもっとショックだったよ、色んな意味でな。

お前が『この程度』だったなんてな」

 

「ぜ、善吉……! ち、違う! わ、私はまだ―――ぐっ!?」

 

「なぁ、見苦しいぜ黒神めだか? お前は敵が好きなんだろ? だから望み通りになってやったんだ。もっと喜べよ? 都城先輩の時みたいに、球磨川の時みたいによ?」

 

 

 オリエンテーションの時とは真逆の立ち位置でめだかを突き放すと、そのまま一誠を引き連れて去っていった。

 それはある種のラスボスをも越えた裏ボスを思わせる程の風格だったとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良いんすか善吉さん? 俺的にはこの後握手して和解と思ってたんすけど……」

 

「良いんだよ。こうしたら『めだかちゃん』だって悔しいをバネに這い上がる筈だしな」

 

「そりゃそうかもですけど……あんな言い方までしなくても良いんじゃないすか?」

 

「……………。あ、やっぱり一誠もそう思うのか? あ、あぁ……やっぱ言いすぎたかぁ~! いや俺だってめっちゃ途中で泣きそうになったんだぞ!!」

 

「ま、まあ取り敢えずそこら辺の反省会も含めて食べましょう……ね?」

 

「お、おう……やばい、何か不安になってきた」

 

 

 まあ、全部只の善吉発案の演技で嘘なんだけど。

 しかしその結果……。

 

 

「善吉ィ!! リベンジだ! 今日はお前に勝つぞ!!」

 

「あ、物凄い効果抜群っすよ善吉さん」

 

「みたいだな……え、演技止めたら意味ないよな?」

 

「いきなり止めるのは流石に無理なんで、取り敢えず昨日の感じを続けるしか……」

 

 

 ある意味今のめだかの心は善吉一辺倒になっていた。

 

 

 

「さてと、過去のなじみ。悔しい? ねぇ悔しい? 仕込み全部ぶっ壊されて、あの二人も前より強固になって立ち入る隙をも失っちゃったけど、悔しいっすかぁ?」

 

「………………」

 

 

おわり

 




補足

善吉くんをラスボス化させまっしょい。

しかも裏ボスクラスにしましっしょい。

結果、安心院さんがぐぬぬ顔して一誠くんは写メまくりだぜ。


その2

超戦者の元ネタはアレなんではしょりますが、ぶっちゃけ、コカビーのより色々と凶悪化してます。


その3
これにより周囲が自然と善吉……というか善吉と一誠に標的が定まってるのを二人は知らずにマイペースに進化修行する事になるのだった。

特にこの時代の安心院さん並びにめだかちゃんはそれぞれ一誠と善吉に対しての執着が……。

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