匙元士郎にとって一誠はある種のトラウマの対象だった。
何を考えてるのかも理解出来ない、取り巻く対人関係も滅茶苦茶。
そして何より恐怖したのは、その異常過ぎる力だった。
人でありながら人でなしと吟われる力。
無限に進化するという生物の概念を無視した特性。
そして何より彼は他人を引き上げて同類を作り上げる事も上手かった。
その第一号は恐らく、その時までは普通だったソーナだろう。
何時知り合ったのか、気づいたらコントじみたやり取りをする一誠に当初妬みの感情を抱いたりもしたのは最早懐かしき記憶であり、よりにもよってソーナを彼の領域側に引きずり込んだ時は妬みやら悔しさでおかしくなりそうだった。
だがしかし、結果的に……客観的にものを見て考えればそれも良かったのかもしれない。
だってソーナは彼の影響により、悪魔としては完全に逸脱した進化を体現したのだから……。
「なぁ一誠、首筋辺りに無数に付いてる虫刺されみたいな痣って……」
「……。半端無くしつこい虫にやられんだよ」
それこそ、大元である異常者や無限の龍神と渡り合える程に。
そして少なからず己もその影響を受ける事でソーナ程じゃないにせよ進化を果たす事が出来たのだ。今となっては元士郎にとっても人生のターニングポイントだったと思い出として抱えられていた。
「ふーん、何でも良いけどいい加減会長からのらりくらりはやめろよな」
「るせっ! レヴィアたんとイチャコラしてからって余裕かましてんじゃねーぞボケ!!」
「そういうつもりじゃねーよ。のらりくらりしたって会長が簡単に諦める訳がねーだろって言いたいんだよ。
そもそも前の時代で、あのよくわからん神をお前がぶっ壊した時だって会長はオメーとオーフィスと並んで闘ってたろ? 釣り合えるという意味ではオメーしかいねーんだよ」
「チッ……」
龍から獣へ……黒炎の狼としての進化を。
匙元士郎もまた一誠に真正面から啖呵を切れる超越者なのだった。
前の時代とは大きく違う状況の今世を、まるで誰かに対して抗うかの如く生き様とするは二人の純血悪魔と二人の転生悪魔。
魔王とその妹、暗黒騎士と自称人間だった異次元生命体。
世界を滅ぼしてやるなんて大それた野望なんて無いし、力で無理矢理支配する欲望も無い。
あるのは只、平和にのんびり……縁側でお茶飲んでのほほんと出来る日々を送りたいという思考。
それ故に前はどうだったかも記憶の外である騒動の事なんてどうなろうが知ったことじゃない。
少なくとも一誠はそう思ってるらしいし、ソーナ会長もどちらかと言えばそっち側の考え。
となると後は俺とセラフォルー様だが、セラフォルー様――じゃなくてセラさんは魔王業務で忙しく、そもそも堕天使のイチ幹部が勝手にやらかしてる騒動に巻き込まれる謂われなんてありゃしない。
となると一番動けるのはこの中で一番したっぱである俺だったりするのだが……。
「何だ、俺は生徒会の仕事で一誠と花壇の花の植え替えの仕事があるんだけど」
俺も俺でどうでも良い思考に染められてるのか、頭数の多いグレモリー側が何かするんじゃねーのか的ないい加減さで放置する予定だった。
そう――だった筈なんだよなぁ……。
「まあまあ、折角だし同じ兵士同士仲良くしようよ?」
結論から言うと、俺は今学園の外……つまり町中に連れ出されていた。
今俺に如何にも人が良いですって笑み浮かべてる御劔だかなんだったかの赤龍帝に呼び出されたせいで。
「仲良くね……」
この展開にデジャビュを感じるのは気のせいじゃない。
というのも、この流れからして俺が呼び出されたのは今この場に居るこの御劔ってのと、グレモリー眷属の戦車、僧侶の三人の中に居ない騎士……木場祐斗の捜索に協力させられてしまうのだろう。
前の時も確か戦車か誰かに拉致同然に捜索の協力をさせられたのである意味よく覚えてんだ。この御劔ってのは欠片も存在しなかったけど。
「さっき探すとか何とか言ってたけど、誰か探してるのか? もしかして木場?」
「それもあるけど、その前に教会の使い二人組を探す」
「あ? 何で」
「匙達も聖剣の話は二人の使いに聞いてるだろ? その使い二人を探して聖剣捜索の協力をとね……」
ほらやっぱりな。
知らん風を装ってはいるが、やっぱり前と似た流れになってやがる。
「教会の使いにって……冗談じゃねーよ、滅されたらどうするんだよ」
薄情と思われるかもしれないけど、ぶっちゃけ正直俺にとって何のメリットにもならない事に巻き込まれるのはちょっと遠慮したい。
大体前と違ってオーフィスにちょっかい掛けるという自殺紛いな真似して八つ裂きにされて殺されたのとは違う赤龍帝が居るんだから、俺が協力したってなんの意味も無いと思うんだがね。
この御劔って奴、一誠がやたら警戒してたが、何考えてんだ?
「本当はイッセーにも協力して貰いたいんだけど、連絡できない?」
そんな俺の疑惑の念を知らないで御劔がイッセーにまで協力をして貰おうと俺に言ってきた。
言っちゃなんだが、この御劔ってのは一誠を知らなすぎだな。アイツがこんな事にわざわざ協力なんてする訳が無いだろ。寧ろ耳ほじりながら舐め腐った顔で『嫌どす』って言うに―――――いや待てよ? 此処で御劔と一誠を対面させたらどうなるんだろうか? さっきの通り、一誠はどうも赤龍帝が嫌いらしいし、一誠らしからぬ勢いの警戒心を抱いてる。
なので敢えて会話させて一誠に御劔の何かを掴ませるってのもアリなのかもしれない。
別に悪い事とは思ってないが、真羅副会長が副会長じゃない理由でもあるしなコイツは。
「………。はぁ、一応聞いてはみる」
「助かるよ匙」
うん、試すか。そう思って俺は携帯を取り出しアイツに連絡してみる。
口上としてはそうだな――
「あ、一誠か? 会長の目盗んで今から言う場所に来れるか? いやさ、セラさんが新しい衣装を見せて感想が聞きたいって――――――あ、うん、◯◯のコンビニ前だから」
セラさんの新作衣装のお披露目会と嘯いてやったら簡単に引っ掛かりやがった。
なんつーか、アイツって異次元生命体だけど単純だよな。
「来るってさ……」
電話を仕舞い、御劔達に一誠が来ることを告げる。
これで嘘だったらとわかったら即座に帰っちまうかもだが、御劔が協力して欲しいと言ったんだから後はコイツに任せれば良い。
俺は悪くな―――あん?
「セラさんって誰の事だ?」
一誠を呼び出したと話した俺に、御劔が目の色を変えて俺にそう質問してきた。
そういえば一誠がセラさんがちょっかい掛けられないように気を付けろなんて忠告を俺にしてきたが……。
「セラさんはセラさんだよ。
お前達にわかりやすく言うならレヴィアタン様」
「!」
レヴィアタン様がどんな人なのかをまるで知ってるかの様な反応に、俺は一誠の言うことが強ちオーバーでも無い予感を感じる。
「レヴィアタン様って、匙先輩は随分あの方と距離感が近い呼び方をするんですね?」
「まあ、『餓鬼の頃から会長の兵士』やってるからな。よく目を掛けて頂いてるのさ……」
「餓鬼の頃? え、匙って最近転生したんじゃ……」
おっと、何で最近なんて話になってるんだ? んな話一言もしてないぜ俺は? まあ、惚けるがな。
「何だその最近ってのは? 俺が兵士になったのは小学校上がる前だぞ」
「なっ……!?」
不思議だな、何故そこで御劔は驚くんだろうか。
確かに前の時代は今頃の時期に悪魔の存在やら何やらを知って転生したが……。
「じゃあレヴィアタン様とも……」
「やけに気にするなお前? まあ、それなりに良くして貰ってるけど」
「! そ、そうか……」
俺の言葉に御劔は動揺を隠しきれてない様子だ。
なるほど、なるほど……こりゃ確かに警戒しないといけないかもな。
「何お前、セラさんの事しってんの?」
「い、いや……話だけというか、なんというか……」
「ふーん……セラさんと会ってみたいとか?」
「!? あ、会えるのか!?」
そしてこの食いつき様。コイツまさかとは思うが、マジでセラさんに何かしようってのか?
「へぇ、赤夜先輩はレヴィアタン様に会いたいんですか? へー?」
「その方って女性ですか? そうなんですか……」
「い、いやそういう訳じゃなくて……」
なるほど、なるほど……もしそうなら笑えねーな? っと……。
「匙! レヴィアたんどこ!? 新作衣装ってエロいのか!?」
御劔達が揉め始めたタイミングで鼻息荒くした一誠がデカい声と共にやって来た。
「ひんぬー会長には勿論内緒だぜ……グゥェヘヘヘヘ―――――へ?」
そして御劔達が居ることに気付いた瞬間、一誠の顔は何かを悟った――そう、ブラフだと。
「おいコラ匙、レヴィアたんは?」
「新作衣装のお披露目にお前を呼ぶわけねーだろ? こうでも言わないと来ないと思ったからブラフ噛ましたんだよ」
揉める御劔達に視線を向けながら、一誠の声が低くなる。
首に一眼レフのカメラが掛けられてる辺り、マジで信じてたらしいが、残念だったな――ぐぇ!?
「て、ててて、テメー匙ぁぁぁっ!! 男の純情弄んで楽しいのかよボケぇ!! こちとら気合い入れてキャメラまで持ってきたんだぞボケカス!!」
「か、会長に頼めよ! セラさんじゃなくて!」
「うるせー! あんなド貧乳にレヴィアたんの衣装なんてフィルムの無駄だアホ! ふざけんじゃねぇぇぇ!!」
よ、予想してたけどやべぇ、コイツやっぱバカだけど普通に強ぇ……!
「わ、わかった! あ、後でセラさんに頼んでみるから!」
結局ヘッドロックされて死にかけた俺は、何とか一誠を説得する事に成功はした。
代わりに別な意味で怒られる事になるのが確定しちゃったけど……クソ。
そんなこんなで初めてまともにグレモリー眷属とシトリー眷属が介する事になったのだが……。
「イッセーがソーナ先輩の女王って本当か?」
「は? それが何だ? そんなに不思議なのか? あ?」
一誠の機嫌は匙の嘘八百のせいでかなり悪く、何かを確認する様に訊ねて来た御劔赤夜の質問にも若干オラついていた。
「いや別に……」
「ふん!」
セラフォルーのちょいとエッチな撮影会と、そんな話を匙がした訳じゃないのにも拘わらず、勝手に期待に胸膨らませていただけに、裏切られた反動がもろに態度に出ているせいで御劔も若干引きぎみだった。
「何時から眷属なのかなーって……」
「何時から? それ言わないと何かあるの?」
「いや、匙と違って神器とか持ってないのに何で彼女の女王なのかなーって……」
「おい、お前は俺が弱いとでも言いたいのか?
おいおい、お前何? 喧嘩売ってんの?」
聞けば御劔が呼んで欲しいと言い出したと匙から聞いていた一誠は、いきなり喧嘩売られる様な発言を受けて割りとイラッとしてしまう。
「い、いやそうじゃなくて……」
「あのすいません、赤夜先輩が失礼な事を言ったのは私達も謝りますので、許してくれませんか……?」
「ご、ごめんなさい」
「む……金髪シスターちゃんに言われちゃしょうがねーな」
やばいと思って小猫とアーシアがペコリんと頭を下げた事で一応落ち着きはしたが、然り気無く小猫じゃなくてアーシアに言われて矛を納めたという辺り、中々彼も辛辣だ。
「んーで、匙に続いて俺まで呼び出した理由は何なの? 一応この後俺はこのクソリア充野郎をぶちのめさないといけないんで、早いとこ用件を言ってくれや」
「やっぱりそうなるんだな……はぁ」
「リア充? え、もしかして匙ってソーナ先輩と……?」
匙を指してリア充と呼ぶ一誠に、御劔がまたしても反応して質問する。
どうも彼は匙の女性関係が気になる様子らしい。しかも色々と予測が間違えまくってる組み合わせだ。
「いや何で俺が会長? 違うから」
「え!?」
「ほーぅ、さっきからやけに驚くなぁお前? そんなにこのリア充野郎がよりにもよってあのレヴィアたんとチョメチョメしてるのが意外か?」
「……………はぁ!?」
一誠の何処か棘のある言い方に御劔が今度こそ心底驚いた顔をした。
「れ、レヴィアタン様と匙が!? な、なんでだよ!?」
「んなもん俺が聞きてぇわ! こいつ、こんな……羨ましんだよ!!」
「……。お前然り気無くバラすのやめろよ。シトリー家にしか知らないんだからこの事……」
それを否定しない匙の態度もまた然りであり、何やら予想したのと全然違うといった態度の御劔。
「あ、あの……本当にレヴィアタン様と?」
「……。ノーコメントと言っとく。あと、この事は黙っててくれ。俺の悪魔としての地位が一定まで上がるまでは秘密にしたいから」
「あ、は、はい……ほ、本当なんですね」
どこか匙を睨んでる……様な気もしなくも無い中、小猫達に釘を刺す。
すると然り気無く匙に地味な嫌がらせの如く肘打ちしていた一誠が、御劔に対して口を開く。
「つーかお前よ? レヴィアたんと会ったこともない新人の転生悪魔なのにまるで姿から何まで全部知ってますな風なのは何でだ?」
「あ、いやそれは……一応悪魔の事は転生前から知ってたんで……」
「ほほぅ? そーかい、ふーん?」
「な、なんだよ……」
「いーや? そういやお前ってムカつくくらいモテモテ気取ってるなぁと思ってさぁ? なぁ?」
「木場と二分してるとは良く聞くな」
「いやそれは……只の噂だと思ってるけど俺は」
「はい出たー! ちょームカつくんすけどー? じゃ何か? 見るたんび違う女の子に囲まれてるのにモテモテじゃないと? 良い度胸通り越して笑うぜ俺は?」
見るたんびに違う女の子……それはつまりリアス達と椿姫達の事であり、わざと一誠は突っついたのだが、御劔は目を泳がせるだけで反論はしなかった。
「そんな奴がなんですか? 天下一の可愛さ誇るレヴィアたんにまで唾つけるってか? おいおいおい! 欲張りだね御劔くーん?」
「う……」
「おい、お前……まさかマジか?」
「ち、違う! そんなんじゃない!」
否定しようとする御劔だが、どう見ても動揺しまくりであり、小猫とアーシアはジト目だった。
「そんなんじゃないならまぁ良いけど、一応言ってやろう。レヴィアたんは悔しいがこの匙が一番だ。
そりゃあまあ、仮にお前がレヴィアたんを落とすなんて意気込み持つのは勝手だが、まあ無理だな」
「な、何故」
「んなもん決まってんだろ、お前は赤龍帝らしいが、そんな程度じゃコイツには百万年掛かろうが勝てやしねーって事だ。精々食い殺されて終わりだ終わり」
「それは匙が五大龍王を宿してるからか? だけど俺だってそれなりに――」
「あれ、冗談で言ったのにマジでレヴィアたんに何かするつもりなの? あっちゃー……だってよ匙。何かコメントは?」
「今なら笑って済ませてやるが、もしあの人にしつこくするんだったら、俺も笑って済ませてやるつもりは無い」
まるで歴戦の戦士を思わせる覇気を放つ匙に御劔達は息を飲む。
「まぁ良いじゃん? お前モテモテだし、ほら、横の子達とも仲良さげじゃないか? それ以上求めるなよ…………なぁ?」
「っ」
そして見透かす様な目で見下す一誠を思わず睨む。
こうして完全な牽制と忠告を成功させた一誠は、これで懲りなければ匙に八つ裂きにされて終わりだなと、鼻で笑う。
かつてオーフィスを無理矢理連れていこうとした赤龍帝を自分が八つ裂きにしたように……。
「で、何の話だっけ?」
「何か木場を探すとかで、教会の二人組みを探すのに協力して欲しいんだと」
「はぁ、教会ねぇ?」
そしてやっと本題に戻る頃には御劔は一誠も匙も嫌いになっていたとか。
終わり
オマケ……元ちゃんだけに見せるお披露目会。
元の時代では邪龍戦役辺りから完全なパートナーとなった元士郎とセラフォルー
奇跡的にやり直しをしても記憶を保持していた為、再会と同時に即座にパートナーへとなった現代でも、一誠が暴れたくなるくらいの仲の良さが光っていた。
「じゃーん、これが新しい衣装だよ☆ 元ちゃんと二人きりだけの特別衣装!」
この日セラフォルーの自室に来ていた元士郎は、何べんやっても飽きないどころか寧ろ燃え上がるらしいセラフォルーの衣装変えを眺めながらドキドキしていた。
「ん、ほら……良いよ元ちゃん?」
あれこれ着替えてはドキドキしまくる元士郎。色んな衣装に着替えて見せれば分かりやすいリアクションなのが愛しくてたまらないセラフォルー
故に時が過ぎるにつれて距離は狭まり、ついには衣装のお披露目もそっちのけでセラフォルーが元士郎を抱き締め、そのまま引き寄せるようにベッドに倒れる。
「あ、あの……」
「ん、大丈夫だよ元ちゃん。あの時だって最期はこうして一緒だったもん、だから遠慮なんてしなくて良いんだよ?」
「だ、だけと俺はまだ未熟で……」
「もー……皆はそう言うかもしれないけど、私はちゃんと元ちゃんが立派な男の人だってしってるんだらね☆」
抱き締められて緊張する元士郎にセラフォルーがよしよしと優しく微笑みながら頭を撫でる。
「でも元ちゃんが納得できないなら、私はずっと待ってる。だから今はこうさせて?」
「……はい」
優しい声にほだされ、元士郎もセラフォルーの身体を抱き締めると、そのまま互いの体温を感じながら眠る。
互いを必要とするかの様に……。
終わり
おまけ2……ソーナさんからソーたん。
魔が刺したと言われても疑われてしまうのは仕方ないとも言える状況は多い。
例えば前の時代で一誠はオーフィスと共に居て、衣服なんかも一誠のセンスというか趣味というか……まあとにかく疎いオーフィスの代わりに選んでいた。
故についうっかり、一誠が珍しくソーナの服を選んじゃったりしたら……。
「オーフィスが着てたのと殆ど同じですねこれ」
それは多分、言い訳もクソも無いのかもしれない。
「フリフリですよ一誠」
「……。今めっちゃ後悔してる……」
オーフィスの衣服に関しては自作する程の謎な気合いの入れ方までしていた一誠は、この日偶々コンビニで目にした雑誌に触発され、久々に衣服の自作をした。
が、着て貰うにもオーフィスはもう居ないので、途中でナーバスになってやめようとしたのだが、偶々そのタイミングで外から帰って来たソーナに折角だから私のサイズで作ってみたら? と言われ、既にソーナのスリーサイズから何から全部把握していたのもあって本当に作り上げてしまったのだが……。
「アンタ、割りと似合うな、そういうの」
「ぁ……きゅ、急に不意打ちは卑怯よ一誠……。今きゅんってなっちゃったじゃない……」
センスがオーフィスによってアレ化してた為、出来上がったのが黒を貴重としたフリフリのゴスロリ衣装だった。
勿論出来上がった瞬間一誠は後悔して破棄しようとしたのだが、その前にソーナが待ったを掛けてその場で着替えて見せ、それがまた妙に似合ってるのを今になって知ってしまった一誠は色んな意味で凹んでいた。
「最初はオーフィスに用意するつもりで身に付けた無駄技能だったんだけどなぁ」
「なら私にもその技能を使って欲しいわ。
アナタと二人きりの時だけ着てあげるから……」
「うーん……」
思わず割りと似合うと口から出てしまった際、ソーナが頬を上気させながら照れるその姿も妙に絵になってる。
やはり黒髪なのが大きいのかもしれない……とぼんやりと考える一誠。
「…………あれ?」
それが何に作用したのかは知らないが、この時一誠の心の底にひとつ何が芽生えたのかもしれない。
「? どうかしたの?」
「あ、いや……あれ、おかしいな目がイカれたか? 何かアンタが妙に可愛く見えるんだけど……あれ?」
「え……あ……え!?」
「いや気のせいだと思うけど――――む、どうしたんすか?」
「い、いえ、べ、別に大した事じゃないのだけど。
あ、あははは……あ、アナタに普通に誉められることが殆ど無かったから、そうストレートに言われるとドキドキしちゃって……」
「は? ……な、なんだよやめてくださいよ。変な空気になるでしょうが……ひんぬーの癖に」
それが果たしてどんな方向に行くかは未だわからないが。
終わり
補足
怪しき御劔君は、なんとセラフォルーさんを狙ってる疑惑。
まあ、仮に本当だとしてもマジで無理ゲーですけどね。
ちなみに一誠がこうも態度がアレなのは、やはり前の時代に赤龍帝の男がオーフィスたんを無理矢理アレしようとしたせいで、本来は一誠な筈の赤龍帝という存在がめっちゃ嫌いてのが大きいです。
その2
一誠が妬みまくるのもわかるやり取り。
そして今更誰の横やりも不可能。それがこのお二人。
その3
実はストレートに言われるとひんぬー状態から少女状態になってドギマギしちゃう可愛らしさもあるのさ。
ゴスロリ衣装だけどな。