色々なIF集   作:超人類DX

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もはやサーゼクスさんが主人公な気がしてならねぇ……。


頑張れお兄様

 サーゼクスは覚醒をする前から既に『悪魔という種族を越えた力』を持つと吟われ、超越者と呼ばれていた。

 

 しかしそんな超越者も転生者という存在には太刀打ち出来ず、それどころか一度は転生者に飲み込まれそうになってしまい、転生者に蔑ろにされていた妹のリアスを裏切ってしまった。

 

 しかし安心院なじみという転生者という存在により球磨川禊の大嘘憑き(オールフィクション)却本作り(ブックメーカー)によるダブルの封印よりも強固で抜け出せない弱体化の割りを食わされた人外が現れ、目を覚まさせて貰ったお陰で彼は踏み留まり、妻のグレイフィアの心を転生者により喪ったというショックもあり、妹と妹を守ってくれていた少年に着く決心をした。

 

 例え妹に許されなくても構わない。何を言われても自分はそれだけの事をしてしまった。

 ただ妹と少年の前を歩き、盾となって死ぬことが償いであるなら喜んで命を渡そう。

 

 実際は既に和解していても変わらない男の誓い。

 妻に逃げられ、我が子を守り……転生者を倒す為に集う種族を越えた仲間達との切磋琢磨がサーゼクスの身に修羅を宿す事になったのは皮肉なのかもしれない。

 

 許されざる自分が時を逆行して妻とやり直せるチャンスを貰い、またしても失敗してしまったのは罰なのかもしれない。

 

 だがそれでも報復はさせて貰う。

 許されざる己が今更詭弁を垂れるつもりは無いし、善人面する事も無い。

 だがしかし、愛した我が子の母であり己の妻である女性を何の挨拶も無しに寝取られて誰がヘラヘラ出来るか。

 

 

「行こう……」

 

 

 それ以前に己は悪魔なのだ。

 悪魔らしく、絶望をくれてやる。

 魔王ルシファーとしてでは無く、只の悪魔であるサーゼクスとして……。

 

 修羅を宿した男は動き出す。

 

 

 

 

 何故こうなったか。多分それはグレイフィアと知り合いになってしまったからなのかもしれない。

 原作キャラとは関わらず、不老不死やらその他やらの力も極力使わずに平凡な人生を送る事が当初の誓いだった。

 

 けれど偶々出会ってしまった、偶々見つけてしまったりと、偶々が重なってしまった結果、オレは再会後に一線を越えてしまった。

 

 只でさえ、サーゼクスの嫁として再会したグレイフィアからそれと無く聞いた話の限り、どうにも原作から剥離しまくってる展開となっているっぽいのに、このままグレイフィアに言われるがままズルズルと……最近は黒歌という原作キャラとまで関係を持ち続けたら確実に死亡フラグが立ってしまう。

 

 そんなものは原作主人公のイッセーが全部引き受けて、ハーレム王にでも何にでもなれば良いし、オレはその影で平々凡々な生活を送れさえすればそれで良い。

 けど、何でよりにもよってこの二人はオレを誘惑するのか、そして好いているのか……。

 

 お陰でされるがままに関係を持たされて――

 

 

「やぁ、お取り込み中の所失礼するよ?」

 

 

 死亡フラグが乱立してしまった。

 よりにもよって、謎の痺れ薬を盛られて身動き取れない所を途中で飛び込んで来た黒歌と一緒になって色々やられてしまってる最中にやって来られて見られたなんて……。

 

 

「サ、サーゼクス!?」

 

「な、何で魔王が此処に……?」

 

「………」

 

 

 どう回避すべきか……痺れ薬の効果は切れてて動けるとはいえ――ちきしょう。

 

 

 

 

 

 全員集合。人外を取り戻した・安心院なじみにより種族を越えた同志達はこの日、人間界にあるとある街の隅にポツンと構えられていた喫茶店に集合していた。

 

 

「さて、色々と挨拶したい所悪いが簡潔に済ませるぞ? 綾瀬和正の件で世界を失って以降、また全員こうして再会出来た事を心より嬉しく思う」

 

『…………』

 

 

 普段は殆ど客の来ない喫茶店のテーブルを囲むは、少年・少女・青年・女性計10人程という大所帯。

 悪人顔と並の二人を除けば美男美女揃いであるのだが、放たれる空気はかなり張り詰めていた。

 

 

「話は既に安心院から聞いてると思うが、サーゼクスの嫁であるグレイフィア・ルキフグスが不倫をしている」

 

『………』

 

 

 その張り詰める空気の中、場を仕切るは堕天使のアザゼル。

 彼は表向きは堕天使の現総督として活動しているが、その実、転生者であった綾瀬和正を殺す為に全てを捨てた同志の一人だ。

 

 組織の長の経験、そしてこの世界でも堕天使を纏める立場であるが故に仕切りをやっており、アザゼルの言葉に同志達は無言で頷く。

 

 

「名は御劔氷牙、安心院の調査によるとグレイフィアとの付き合いは長いらしい。

最近まで死と偽り、傍観気取りで人間界に潜伏、時期は不明だがグレイフィアと再会し、ついでにリアスの戦車の姉であるはぐれ悪魔の黒歌とやらとも何やら楽しくやっている様だ」

 

 

 苦いコーヒーを口にしつつ、一誠とリアスがかき集めた御劔氷牙……つまりフック男とグレイフィアのツーショット隠し撮り写真をテーブルに広げる。

 

 

「銀髪・オッドアイ・日本人離れした容姿。

種族の程はわからんが、恐らくは『まとも』な人間では無いだろう。

俺達もよく知る綾瀬和正の様にな」

 

 

 無言のサーゼクスとミリキャスを気に掛ける様に視線を送りつつ、アザゼルは話す。

 

 

「しかしどうも安心院の話によれば、綾瀬和正が持っていた宗教じみた洗脳力は持っていないらしいのだが……」

 

「サーゼクス君やミリキャスちゃんにとっては腸が煮えくり返る事実かもしれないが、どうもそうみたいだ。

彼は洗脳というキャンセル技の代わりに永い時間という手法でグレイフィアちゃんの心を持っていった様だよ」

 

「とすると何だ、グレイフィア・ルキフグスは洗脳では無く正真正銘この男に惚れていたと?」

 

「言いにくいけどそうだね」

 

 

 アイスロイヤルミルクティを飲むコカビエルの質問に安心院なじみは頷きながら緑茶を飲む。

 するとその事実に不満そうな表情と共に銀髪の少年が口を開く。

 現白龍皇であり、旧ルシファーの血縁者のヴァーリ・ルシファーだ。

 

 

「信じられないな俺は。そもそもどうやってこの男はサーゼクスの嫁と出会ったんだ?」

 

「『偶々』らしいぜ? 何処かの誰かに力を授かり、送り込まれた時代が旧悪魔政府にサーゼクス君達がクーデター起こす更に前の……グレイフィアちゃんがまだ幼少の頃からみたいだぜ」

 

「分類上人間が旧時代に隆盛を誇った悪魔と何処で出会うというのだ。

まあ、そこら辺は綾瀬和正と同じ徹なのかもしれないが」

 

 

 コカビエルが不意打ちで殺されてるせいで、転生者という輩に一切良いイメージを持ってないヴァーリの嫌悪を垣間見る目と一言に全員が無言で頷いた。

 この同志達の共通する箇所は全員一度は転生者により『奪われた』者である。

 

 

「背後には気を付けないとな。また後ろから心臓を握り潰されては叶わん」

 

「大丈夫よコカビエル。そうなる前に私が叩き落としますので」

 

「今度は私と藍も居るし、そう簡単にはやらせないわ」

 

「………」

 

「おい、俺とアザゼルを忘れないでくれよ」

 

 

 その復讐の為に集い、力を付け、報復した同志達。

 それが彼等の持つ秘密であり、ある意味結束力は同じ種族同士のそれを越えている。

 

 

「僕としては現場をまず押さえたい。もう飽きる程吐きまくったし、取り乱す事は絶対にしないさ」

 

「と、なると俺と一誠が脇を固めた方が良いな……。

一誠はどうだ?」

 

「当然。けどミリキャスちゃんとリアスちゃんには見せたくないものになるんだけど……」

 

「いえ、私も行くわ。

グレイフィアは私の姉だったし……」

 

「ぼ、僕も……前に見たことあるから……」

 

 

 この世界ではその共通さ故に記憶を持つという事になり、今度は平和にのほほんとしようと思っていた連中だ。

 今回の事は全員して我が事の様に動きが速い。

 

 

「分かった。それなら僕とヴァーリ君と一誠君で押さえ、ミリキャスとリアスはそのバックアップ。

安心院さんとコカビエル、アザゼルとガブリエルと紫さんと藍さんは『暴れても影響の無い空間』に全員を転送できる様にしてください」

 

 

 そしてその被害者であるサーゼクスもまた、覚悟を決めた強い目で全員に言い渡し、同志達も頷く。

 こうして同志達の再会と共に始まる報復は、綾瀬和正という例を経験しているせいか、異常なレベルのオーバーキルの予感がヒシヒシと感じるものに昇華するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんは~ そこいらのチンケなチンピラでーっす」

 

「お楽しみの最中だったかな? まあ、謝るなんてしないがね」

 

 

 そんなこんなで独り暮らしするには少々贅沢に見えなくもないマンションの一室の扉をヤクザ顔負けに蹴り破って侵入した一誠、ヴァーリ、サーゼクス……と、遅れてリアスとミリキャスは、寝室にて情事の最中っぽい現場を発見、顔色が真っ青になってるフック男、目が泳ぐグレイフィア、そして魔王という存在の出現にパニック寸前の黒歌が共にする大きなベッドの前に立つ。

 

 

「おーおー、楽しそうな事してんじゃねーかニーちゃんよ? おー?」

 

「お、お前イッセー!? な、何でこんな所に、しかもお前はヴァーリ……!?」

 

「へぇ? やっぱり俺の事も知っていたか……」

 

 

 突然の来訪者に顔を真っ青にしつつ、原作キャラの……それも本来ならあり得ない組み合わせに驚くフック男。

 だがそれよりもヤバイのは……。

 

 

「言い逃れ出来ない上で聞かせて貰うけど、キミ、人の奥さんに何してるのかな?」

 

「お母さま……」

 

「ミ、ミリキャス!? そ、それにリアスお嬢様まで!? どういう事よサーゼクス!」

 

 

 どう見ても殺意を滲ませた冷徹な表情で己を見据える魔王サーゼクスの存在だ。

 ハッキリ言って赤龍帝と白龍皇が既にここまで和解してる空気を放ってるとかよりも、マズイのだ。

 グレイフィアが自分を庇う様にしながらサーゼクスに食って掛かるが、それも却って逆効果にしかならない。

 

 

「グレイフィアこそ……お兄様が居るのにその人と何をしたのよ?」

 

「こ、これは……」

 

「どうしてお母さま?」

 

「ミ、ミリキャス……。くっ、何でこの場に連れてきたのですかサーゼクス!」

 

「………………」

 

 

 所謂開き直りの逆ギレだが、サーゼクスは全く取り合おうとせず、静かに殺意を滲ませる。

 

 

「色々と調査したんだよグレイフィア。キミがこの男と何をしていたのかとか、何を想っているのかを。

あぁ、心配しなくても僕はキミに何もしないから安心して良いよ。過程や理由がどうであれ、僕よりそこの彼が好きみたいだしね」

 

「う……」

 

「ま、待ってくれ! 言い訳はしないから話を――」

 

 

 淡々と能面の如く表情でグレイフィアを黙らせたサーゼクスを見て命の危険を感じたフック男がいきり立つ様に声を張り上げようとしたが……。

 

 

「おいニーちゃん、言い訳は別に良いって言ってんだろ? サーゼクスさんはもう知ってるんだよボケ」

 

「というか、言い訳のしようも無いだろその姿は」

 

 

 三下のチンピラよろしくにフック男のベッドの端に蹴りを入れた一誠とヴァーリにビクッと小さくなってしまう。

 

 

(な、何だこのイッセーは? キャ、キャラが違うだろ。まだこの時期は天敵同士のヴァーリと何でこんな……)

 

 

 その性格の違いにフック男は一瞬一誠が憑依の転生者では無いかという懸念を抱く。

 それはある意味間違い無いのだが、フック男は知らないのだ。一誠が……いや一誠達が『転生者によって豹変せざるを得ない世界から逆行した』存在である事を。

 

 

「そ、そうよ。氷牙とはアナタと出会う前からの仲よ。

ずっと好きで、死んだと思ってたのに生きていたのを知って止まらなくなったの!」

 

「そうか……。それなら情けないけど、僕はキミを止められないし止めないさ。好きにしたら良い」

 

 

 そんなフック男の焦りとは裏腹に、開き直ったグレイフィアの叫びにサーゼクスは無表情でグレイフィアには何もしないと宣言すると……。

 

 

「ただし、キミにはケジメを付けて貰うけどね」

 

「っ!?」

 

 

 よく見たら瞳孔が完全に開ききった目でフック男を睨み、そう宣言するや否や、その言葉に呼応するかの如く寝室だった部屋の景色が歪む。

 

 

「な、何だ!?」

 

「こ、これは転移……!」

 

「え、え? ちょ、ちょっと……!?」

 

 

 強制転移の式にどうすれば良いのかわからず混乱する三人を他所に、寝室だった場所は月明かりだけが照らす、地平線まで広がる平原へと変わる。

 

 

「こ、ここは……」

 

「僕の仲間が特別に作った空間さ。

ビッグバンクラスの衝撃にも耐える頑丈な作りでね。

ここならキミと思う存分やり合える」

 

 

 全裸にシーツを巻く姿のまま飛ばされた三人にサーゼクスは此処に来て初めて薄く嗤う。

 

 

「ま、待てよ! ち、近々アンタにケジメを付けに行くつもり――ひっ!?」

 

 

 殺される……という生存本能の警告が頭の中で鳴り響いたフック男が何かを言おうと再び声を張り上げようとした。

 

 しかしそんな叫びは、サーゼクスの殺意と共に放出させた異質な魔力により最後まで声を発する事は叶わない。

 

 

「僕はね、グレイフィアが大好きだったんだよ。

キミの事を彼女は想っていたのは素直に理解するし、今もキミが想われてるのも悔しいが認めよう。

けどね、どうであれ僕は彼女とちゃんと籍も入れてたんだよ、子供だってこの通り居るんだよ。

それを今更ノコノコ出てきて、コソコソと不倫だって? …………………嘗めるのも大概にしろよこそ泥が」

 

 

 超越者と吟われた魔力はサーゼクスの周囲を覆い、骸の上半身を思わせる形へと変質する。

 そしてその骸の上半身の中に居たサーゼクスが軽く腕を振るうと、それに呼応して骸の上半身が固まっていたフック男の身をガッチリと掴みあげた。

 

 

「ギャァァァァッ!?!?」

 

「氷牙!? や、やめてサーゼクス!」

 

「こ、殺すことなんて……」

 

 

 そして間髪入れずに万力の如くフック男を握り潰し、全身の骨を粉々にすると、ゴミを捨てるかの如くその場に落とした。

 

 

「く……そぉぉぉっ!!!」

 

 

 激痛と内臓の一部を破壊されたせいか、口から血を吐く全裸のフック男は漸く逃げないと死んでしまうと悟ったのか、開き直るかの様に叫びながら唯一無事だった右手をサーゼクスに向かって突き出すように翳した。

 

 すると木場祐斗の魔剣創造を彷彿とさせる無数の刃がサーゼクスを取り囲み、その身を貫かんと一斉に襲い掛かるのだが……。

 

 

「………………」

 

「なん……だと……?」

 

 

 その刃はサーゼクスを取り囲う骸の上半身により届く事は叶わなかった。

 

 

「がばっ!?」

 

 

 それどころか、骸の上半身から放たれた拳の一撃をまともに喰らってしまい、残った右腕も粉々に粉砕されてしまった。

 

 

「やめてサーゼクス! お願いだから……!!」

 

「…………」

 

 

 そんな想い人の無惨な姿に耐えきれなくなったのか、グレイフィアと黒歌が倒れ伏すフック男を庇う様にサーゼクスに懇願した。

 その行為はかつての綾瀬和正の時を思い起こさせるものであり、サーゼクスも黙って見ていた一誠、ヴァーリ、リアス、ミリキャスの表情を苦々しいものに変えるに十分な素材だった。

 

 

「もう良いよ。そこまで彼が好きならもう止めるさ。

ただし、今日限りでキミとは離婚させて貰うよグレイフィア。勿論ミリキャスの親権は僕のものだ」

 

「………」

 

 

 安心院なじみの言うとおり、想定していた以上に手応えが無さすぎてこれ以上は只の虐めになると思ったサーゼクスが瞳術を解除し、グレイフィアに冷たく言い放つ。

 

 

「ミリキャス、お母さんに最後の言葉を言いなさい」

 

「……。産んでくれてありがとうございました……お母様」

 

「み、ミリキャス……」

 

 

 『娘』からの落胆を通り越して諦められた目と共に放たれた言葉にグレイフィアは心の中にあった何かを両断された面持ちで何も返せない。

 

 

「傷は治療する。精々グレイフィアの事よろしく頼むよ御劔くんとやら。

キミは不老不死みたいだしね」

 

「ぅ……」

 

 

 そんなグレイフィアには最早一瞥もくれなくなったサーゼクスが、全身をズタズタにされて倒れ伏すフック男にグレイフィアを頼むと懇願する。

 激痛で気絶もできないフック男はその言葉に『許されたのか?』と一瞬の安堵をしたのだが……。

 

 

「まあ、不老って概念は取り除かせて貰うけど」

 

 

 それ以上の絶望を本人とグレイフィア達に叩き込む言葉を送った。

 

 

「え……?」

 

 

 一瞬何を言われたのかわからないフック男は、目線だけをサーゼクスに向けて言葉を待つ。

 するとサーゼクス………いや、サーゼクスの背後に一誠でもリアスでもヴァーリでもミリキャスでもない人影が文字どおり影の様に現れる。

 

 誰だ? そう思うフック男とグレイフィア達だが、その人物は……魅力的な容姿に笑みを浮かべながら、これまた魅力的な声で一言……。

 

 

「グレイフィアちゃんとそこの猫妖怪なら三ヶ月弱で不能になる程老化するキミを愛してくれる筈だよ。だから安心して不死だけの人生を送りたまえ。

あ、僕は安心院なじみ。皆は親しみを込めて安心院(あんしんいん)さんと呼んでくれるだけの人外なんだけど、君達とはもう会う機会も無いから呼ばなくて良いや」

 

 

 一京ものスキルを持つ、人外……それもこの世界では存在しない筈の存在からの生きる屍宣言に、三人は訳が解らないと思いつつも、絶望を覚えさせられるのだった。

 

 

「キミはメイドなんだし、そこの黒猫ちゃん共々好きな男に奉仕できるんだから万々歳だろ? ボケ老人になってしまっても愛せるか見ものだね」

 

 

 その後転移先から元の場所へと戻ったサーゼクス達は、安心院なじみからの治療を受けて見た目は全快したフック男達の元から去った。

 去り際に一誠がフック男にペッと唾を吐きつけてたりもしたが、何にせよサーゼクスによるケジメは終わったと言えるだろう。

 

 何せこの先、数ヵ月でフック男はヨボヨボで下半身も不能化するレベルの老化に見舞われ、不死のせいで死ねない生を送るのだ。

 グレイフィアと黒歌が居るだけマシな人生かもしれないが、果たしてその愛とやらは何時まで持つのやら……。

 

 終わり

 

 

 そんなこんなで離婚調停も済ませ、騒ぐ冥界を黙らせて、軽く女性不信気味になってしまったサーゼクス。

 そんなある日、小うるさいテロ組織とやらを気晴らしに同志達と返り討ちにしてやった後くらいに、かつて生還してきたコカビエルと共に居たスキマ妖怪の計らいにより、同志達による慰安旅行が始まった。

 

 気晴らしのつもりでサーゼクスもミリキャスを連れて参加したのだが、慰安旅行先となる幻想郷はコカビエルが軽く説明した通りの世界だった。

 

 

「…………!? ぐ、グレイフィア!?」

 

「…………はい?」

 

 

 そんな旅行先にてサーゼクスは偶然出会ってしまう。

 

 

「あの、どなたと勘違いされてるのか存じませんが、私はグレイフィアという方ではありませんが……」

 

「え? ……………………あ、そ、そうか。あ、あはは、そうだよね、そんなわけないよね……あははは」

 

 

 離婚した筈の妻にクリソツな少女。

 

 

「うん、人違いだった。

僕が間違えた人の方が胸あったし……」

 

「…………………………………」

 

 

 テンパって胸の大きさで間違いだったと謝る異界の魔王。

 

 

「ふーん、ヴァンパイアか」

 

「そういう貴方は人じゃないわね?」

 

「まあ一応、君達の言う『外』で魔王やってる者だけど」

 

 

 めっちゃ赤い館に何故か連れていかれた魔王。

 

 

「あの……そろそろ帰っても良い? 友達と僕の子供が待ってるから……」

 

「あらそう、久々の外来人の話は面白くて残念だけど仕方ないわね。

咲夜、彼を送りなさい」

 

「かしこまりましたお嬢様――――え?」

 

 

 

「グレイフィアァァァッ!!」

 

 

 クリソツメイドに癒えない傷が抉られる。

 

 

「何で泣き出したのよ彼は?」

 

「えーっと、お話によると何でも私とグレイフィアという方が似てるかららしいです」

 

「いや、胸はグレイフィアの方が大きい―――――ってのは冗談だよ、あはははは……」

 

「………」

 

 

 慰安旅行は大変だ編……やりません。




補足。

三ヶ月で老人化。しかし不死の部分だけ残されてるので死ぬに死ねない。

お陰で永遠の介護をしないとダメ。

まあ、愛があれば関係ないよね、愛があれば。


その2

なんか最早サーゼクスさんの再起の話になってる気がしないでもない。
慰安旅行したら元嫁にクリソツなメイドとか見たらビビるしか無さそう。

でも胸――じゃなくて体型の違いで『あ、違う』って気づけば何とでもなるかも……思わず声に出してしまわない限りは。

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