色々なIF集   作:超人類DX

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リアスちゃんは強いよ。

めがっさ強いよ。


オーバーキルと魔王の愚痴

 婚約を決める為にレーティングゲームを提案し、それを両者に飲ませた。

 

 ――――と、いう報告を妻のグレイフィアから受けたサーゼクスは、この時点で一誠もまた『自覚』している事を完全に確信し、まずは中立立場としてその場を取り仕切ってくれたグレイフィアにお礼を言う。

 

 

「そうか、ありがとうグレイフィア」

 

「いえ、これも仕事ですので」

 

「そういう意味じゃないよ。えっとほら……折角だしミリキャスと三人でこれから食事にでも――」

 

「これからジオティクス様とヴェネラナ様にも報告した後にやらなければならない事がありますので、また今度にでも」

 

「……………あ、そ、そう……」

 

 

 リアスに関しては最早心配する要素が無く、ある程度のフォローだけで大丈夫と確信したサーゼクスは、あの日以降急激に冷たくなっていてグレイフィアを誘ってみたのだが、にべも無く断られてしまい、またその原因を所謂前世からの付き合いである人外から調べて貰った為に把握しているので、サーゼクスのメンタルは酷いものであった。

 

 

「お父様……」

 

「あっさり断られちゃって」

 

「フッ、覚悟してたからそこまで悲観しちゃいないさ。

取り敢えず10日後のレーティングゲームで彼とリアスに僕達の事を言っておかないといかないしね」

 

 

 サーゼクスは二度に渡って妻を奪われるハードな人生の真っ只中だった。

 

 

 

 

 

 それは悪夢としか言えない状況だった。

 あの日見たリアスの放つ覇気に油断はすべきでは無いと思ってはいた。

 しかしこれは……。

 

 

「良いでしょう、ならばリアス・グレモリーも全力で応えましょう!」

 

 

 さくっと勝って結婚と思っていた。

 いくらリアスが只者じゃないにしろ、その下僕達が無能なら数で押し切って勝てると思っていた。

 しかしライザーは……いや、ライザーを含めた悪魔達はただ唖然としながら純粋なまでに強大な魔力を躰から放出させるリアスを見た。

 

 

「この、完成体・阿修羅でね!」

 

 

 魔王すら硬直させる程の圧倒的な紅い魔力が、巨大な修験者の様な形となり、レーティングゲームの舞台となった駒王学園の校舎すら見下ろせる程の大きさへと形作られる。

 それだけでも対戦者であるライザー達に『勝てない』恐怖を植え付けるに十二分な力を示していたのだが、事もあろうにその巨大な魔力の塊ともいえる力を完全に安定させようと、巨人の頭部にある頭襟を模した五角形のパーツの中に居たリアスは小さく呟く。

 

 

「まだよ……」

 

 

 定まれ……!

 その言葉と共に、力強く拳を握りしめたリアスに呼応するかの如く、修練者の姿をしたリアスの魔力はその形を変化させる。

 あまりにも強大なその力の前にライザー達は何も出来ず、その変化を見ているだけ。

 

 

「こ、これ程の巨大な魔力が安定した……」

 

 

 ライザー眷属の誰かが絶望した表情を浮かべながら呟く。

 

 

「こ、此処までの差があったなんて……」

 

 

 また一人が今になって感じるリアスとの差に膝を折り、魔力の奔流させていた修練者の姿からより安定した、天狗の仮面をつけた四腕の鎧武者の姿となった巨人の頭部から自分達を見下ろすリアスを見る。

 

 

「私を止められるのは、私の『仲間』だけ」

 

 

 そんなリアスは、震え上がるライザー達に絶望を叩き付けんが為に四つ腕の巨人が持つ巨大な太刀を鞘から抜き出す。

 

 

「けれど、その一人である一誠は今私の眷属が巻き込まれないようにしている為に私を止めない。

それはきっとアナタ達にとっては良かったと言えるのかもしれない」

 

 

 何故なら……。

 

 校舎……いや、山よりも高い巨人が鞘から太刀の刃を半分ほど見せた瞬間、勢いよく抜刀する。

 

 

「!?」

 

「きゃあ!?」

 

 

 只の抜刀……。

 言ってしまえばそれだけの行動だが、巨人の起こしたそれはそんな生易しいものでは無かった。

 レーティングゲームの為に作り上げた駒王学園のレプリカ空間の運動場にて出現させた巨人の抜刀は、運動場の地形を破壊し、その余波で校舎までも粉々に粉砕する。

 当然その衝撃は凄まじく、人形の様に吹き飛んだライザー達が体勢を何とか建て直して目にしたのは……。

 

 

「なぁっ!?」

 

「私一人分なら、このレプリカ空間が消え去る程度で済みそうだわ……」

 

 

 見事なまでに再現されていた駒王学園のレプリカ空間の校舎が消し飛び、土台となった空間になっていたという理不尽なものだった。

 

 

「う、嘘だろ……レーティングゲームの為に堅牢に作った筈の会場が……消えて……!?」

 

「ら、ライザー様! む、無理です! あんなのに勝てません!」

 

「り、リザインを!!」

 

 

 かつてリアスと一誠が互いに高め合う事で到達した領域。

 森羅万象を砕くという想いと共に作り上げた破壊という概念の擬人化。

 

 

「どうするのライザー・フェニックス? 続けるの?」

 

「…………」

 

 

 最早ライザーに勝利のヴぃジョンは存在しない。

 あるのは只の絶望。

 

 

「り、リザイン……」

 

 

 ライザー・フェニックスはこの日を境にリアスに対するトラウマを持つことになった。

 

 

 

 

 

「完成体なんてオーバーキル処じゃ無いじゃんよリアスちゃん」

 

 

 リアスがライザーの心をへし折ったその頃、運動場の隅っこから、『リアスの紅よりも若干濃い赤』の巨人の上半身の像を展開させ、その中に呆然としてるリアスの眷属達を入れで攻撃の余波に巻き込まれない様守りながら、物凄いオーバーキルを噛ましてるリアスに苦笑いしていた。

 

 

『何時見てもリアスの小娘の完成体はデカいな』

 

「だな、真似した俺のこれなんて豆粒みたいなもんだぜ」

 

 

 山すら越える巨体を生成させる魔力は、一誠すら敵わないと思わせる程の力であり、また『自分ではあの大きさは作れない』と改めて成長進化したリアスに惚れ惚れした表情だ。

 

 

「あ、あの……前々からリアス部長は魔力で先輩と似たものを纏って攻撃するのは知ってましたけど、あれは何なのですか?」

 

「は、初めて見ました……。あんな大きいの……」

 

「あれ? 魔王様より強く見える気がする……」

 

「ふぇぇ……」

 

 

 リアスの眷属達もまた、主の示す圧倒的な力にただた凄まじいという感想しか浮かばず、ただただ拾って貰ったのがリアスで良かったと思うのだったとか。

 

 

 

 

 わざわざオーバーキルした理由は、仲間だったサーゼクスにそれを見せる事だった。

 もし保持しているのであれば、サーゼクスと合流出来るし、今後とも色々と動きやすい。

 何より信用できる……そう思ったからこそのオーバーキルだったのだが、同時にそれはグレモリー家のリアスのレーティングゲームを観戦した他の悪魔達に力を知られてしまうものでもあった。

 

 

「まさかサーゼクス様の妹にこれほど強力な力を……」

 

「誠に将来が楽しみですなぁ」

 

 

 等と、ゲーム後には観戦者達が次々とリアスに期待する声を挙げ、その姿を眺めている。

 しかしリアスにしてみれば、悪魔の未来などというものはどうでも良かった。

 

 繁栄に勤しむつもりも、身を粉にして働くつもりも無い。

 あるのは只、一誠とのほのぼのした日々を送れればそれで良い。

 今回の事でますます自分が純血の悪魔と結婚させられる様に縛られてしまうかもしれないが、それならそれで地位も名も捨てれば良い。

 自分には既にグレモリーとしてでは無いリアスを見てくれる人が傍に居るのだから……。

 

 

「お疲れ様。さて、当初の取り決め通り、リアス側の勝利で婚約は破棄という事になるけど、フェニックス卿もそれで宜しいですね?」

 

「それは勿論。寧ろこれでライザーも少しは懲りるでしょうし」

 

「異論はありませんわ」

 

 

 ほぼ破壊されたレプリカの空間から戻ったリアス達は、ライザーの両親や観戦した悪魔達に囲まれながら、魔王であり兄でもあるサーゼクスから婚約の話は取り消しになったという確約を貰う。

 その瞬間、末端に立っていた兵士の一誠が露骨に小躍りしちゃったりして、他の眷属達に止められたりするアクシンデントに見舞われたのだが、一誠にしてみれば些細な事だった。

 

 

「リアスは既に想い人が居るとライザーが漏らしていたけど……確かそこで小躍りした兵士の」

 

「兵藤一誠ですわ」

 

 魔王サーゼクスの問いにリアスは傍らに一誠を招き、数多の悪魔が見てる中一誠を紹介する。

 

 

「なんだと?」

 

「リアス嬢が転生悪魔にだと?」

 

 その際、一部の悪魔の顔があからさまに歓迎していないものになって一誠を見下すような声を出す。

 

 

「グレモリー家の長女でありながら、何故あの様な下僕悪魔を……」

 

「ライザー・フェニックスはダメにしても、もっと他の良家の純血と子を残さないとならぬだろうに……」

 

 

 事情を知らない悪魔達にしてみれば、リアスの才能と血は今回の事で価値を高め、より良く残すべきという考えにシフトしていた。

 故にあの様な下僕悪魔なぞとは……そんな考えを持ち、また露骨に一誠に聞こえるように話す悪魔達にリアスと一誠の関係を知る朱乃、祐斗、小猫、アーシアが顔を曇らせた。

 

 

「少し静かにして貰えますか観戦者の皆様?」

 

 

 しかしそんな声を、笑ってるけど笑ってない目で黙らせたのはサーゼクスだった。

 

 

「リアスの才能を見て騒ぐのは結構ですが、彼女の未来をアナタ方の物差しで決めつけるべきじゃない。

でなければ、今回の様な事も無いのですからね」

 

『………』

 

 

 良いから黙ってろ? そう言外に聞こえる威圧的な笑みを浮かべながら黙らせたサーゼクスは、そのままリアス……そして一誠に向き直ると。

 

 

「阿修羅はオーバーキルなんじゃないかな? しかも完成体なんて、レーティングゲームの会場用の空間だから良かったけど、普通の場所だったら島国ごと消し飛んでたよ?」

 

「………!」

 

 

 『知っている者』しか知り得ない事と共に、二人に『久しぶり』と笑みを見せた。

 

 

「アンタ……」

 

「ん、此処じゃあ大きな声で話せないから後でまた話そう。取り敢えずリアス達はお疲れ様。後は僕達に任せなさい」

 

 

 復讐の同志がまた一人合流した。

 妻を奪われた事で目を覚まし、贖罪を込めてかつて二人を支えた兄であり魔王。

 

 

「ちょっと僕、また情けない事になってるから……愚痴らせてくれ」

 

「はい?」

 

 

 サーゼクス・ルシファーは抑揚の無い表情で佇む妻を横目に儚く微笑むのだった。

 

 

 

 

 

 ショックだったのは、兄が兄である事を知ってから直ぐに個人的に話をする為に合流して静かな喫茶店に入ってからだった。

 

 

「う、嘘ですよね? グレイフィアがまた……」

 

「嘘だったらどんなに良かったか……あはははははは」

 

 

 またしてもグレイフィアとお兄様の仲を引き裂いた輩が現れたという話に、私と一誠はショックを隠せない。

 

 

「え、ちょっと待ってください。つー事はあれっすか? この世界にもクソ野郎が……」

 

 

 目付きを鋭くさせる一誠の質問に私も無言でお兄様を見つめる。

 すると、お兄様と一緒に合流したミリキャスの頭を撫で、全部を取り戻して完全な人外になった安心院さんが相変わらず耳触りの良い声で言う。

 

 

「綾瀬和正に比べたらカスだけど、似たようなものかもね。いや、ある意味でサーゼクス君にとっては綾瀬和正よりも厄介かもしれないけど」

 

「何だよそれ? どういう意味だよ?」

 

「その彼には洗脳じみたものは無く、素でグレイフィアちゃんを惚れさせたらしいんだ」

 

「はぁ? いやいやいや、何時そんな事になったのか知らんけど、既にサーゼクスさんの嫁さんなのに?」

 

「それがそうでも無いみたいでね。

というのも、その男は一誠みたいに分類上は人間なんだけど、僕の一京分の一のスキルである死延足(デッドロック)と似た性質の力を何処かの誰かに貰って転生したらしいんだ。

んで、調べによればサーゼクス君がこの世界でグレイフィアちゃんと出会う前からの『知り合い』らしい」

 

「…………………」

 

 

 安心院さんの話に私と一誠は多分鏡を見ずとも何とも言えない顔をしていると自覚する。

 だってお兄様と会う前からの知り合いって……。じゃあ何でお兄様とグレイフィアは結婚したのよ……。

 

 

「何でもグレイフィアちゃんはその彼がとっくに死んだと思ってたらしいんだ。

で、ミリキャスちゃんを産んだ直後に『偶然』再会し、かつて抱いた熱が再燃しちゃった…………的な三流ドラマ以下の事情があったんだとよ」

 

「…………………」

 

 

 横目でガクッと項垂れるお兄様を伺いながら話す安心院さんと、心配そうにお兄様を見るミリキャス。

 何なのそれ……本当に何なのよ。

 

 

「よしわかった、ソイツぶっ殺そう」

 

 

 話を聞き終えた瞬間、一誠が激怒した顔で椅子から立ち上がった。

 

 

「大体数百年以上生きてる時点でクロでしょう? ていうか、夫居るのに不倫ごっこだと? もう殺すしかないでしょ」

 

「本人は自称『傍観者気取り』らしく、キミ達には干渉しないつもりみたいだけどね? 僕の存在も知らない様だし」

 

「いやサーゼクスさんの嫁さん寝取る時点で傍観者気取りも糞も無い。やっぱ八つ裂きにするしか……」

 

「いや良い。洗脳されてるとか、されてないとかこの際どうでも良いよ。

どうせ僕なんて前世でもお嫁さんに見限られる馬鹿な男なのさ………あは、あはははは」

 

 

 諦めた様に……半分心が折れた様に力無く笑うお兄様に止められ、一誠は見てられないとばかりに目を逸らしながらも座り直した。

 私や一誠がこうして平和っぽく生きられてる背景で、まさかお兄様が前と同じ事を味わってるなんて……。

 

 お兄様が一体何をしたからこんな目に……。

 

 

「問題ないよ。今回の事は僕が直々に色々とやってやるさ。一応前でもサーゼクス君とは不倫返しごっこをしたしねー?」

 

「もう僕、安心院お姉さんがお母さんになって欲しい。お母様が怖くて……」

 

「程度は違えど前と変わらないって……アンタ一体前々世じゃ何をしたんすか?」

 

「わからない……けど相当酷い事でもしたんだろうなぁ……あははは」

 

 

 安心院さんが直々に動く時点で、彼女も相当……まぁ安心院さんって何気にお兄様がお気に入りだったからある程度納得できる展開だけど。

 

 グレイフィア……どうしてそんな事に。

 

 

「……。まさかとは思うが、サーゼクスさんのその嫁さんって、俺達と同じなんて事は無いよな? 途中で『思い出した』からとか……」

 

「や、やめてくれよ一誠君。流石にそれはゾッとしないぜ僕も……」

 

「しかしありえない話でも無いかもね。だって僕達がその証拠だし」

 

「う……そうだとしたら僕、ますますお母様が怖い……」

 

 

 何とか出来るのかしら……これ。

 

 

 




補足

元ネタ……某完成体 須佐能乎。
モデル・柱間ァ!! の人。

悪魔なのに何かジャンル違うのは、スキルによりあらゆる可能性を吸収して悪魔という種を乗り越えた領域にいるからです。

ちなみに一誠も使えたりしますが、リアスちゃんと違って少し小型らしいです。


その2
自称傍観者に徹したいタイプ。
ちなみに洗脳とまではいかないけど、それに準ずるフラグメイカーのせいでこうなってしまった。


その3
数多のIFサーゼクスさんが泣くかもしれないが、この世界のサーゼクスさんは安心院さんが気に入ってるという奇跡。

不倫ごっこ返ししても別に良いぜ? と誘うレベルに。

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