色々なIF集   作:超人類DX

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たっちゃん達に一誠達が送る……『ようこそ人外側へ』


たっちゃん達の進化道

 楽観的な事ばかり考え、ただそのポジションを僻んだからこそ、その存在は手始めに全てを奪ってそこに君臨した。

 

 与えられた力を駆使し、奪い取ったポジションに居座り、自分の周りに集まる女子を奪う。

 それは最早その男を織斑一夏として君臨するに辺る絶対的な要塞を作り上げた。

 

 誰しもが自分を一夏と認める。誰しもが自分を可愛がる。

 そう……奪って投げ捨てて、とっくに死んでいたと思っていた本物が、存在する筈の無い別作品のキャラを背に再臨するまで、織斑一夏は欲をひた隠しながら欲を満たしていた。

 

 存在する筈の無い存在。

 悪魔やら何やらが蔓延り、その中を生きる主人公とその主人公に拮抗できる力を持つ男達と、世界最強の龍神……。

 主人公のヒロインの幼馴染みが何故かその主人公に好意を寄せているという所だけは違ったものの、それでも織斑一夏にとってすれば大いに焦った。

 

 何せ相手はISなんて不必要な程の力を持つ存在であり、何より本物の一夏を弟として育ててきたという実績まである。

 つまり、一夏の話を経て自分が成り代わりであることをバラされているという事に他ならず、現に何故か本物と一緒に居た簪は、自分を本気で毛嫌いしている。

 

 折角手始めに更識楯無とフラグを立て、その後妹の簪ともフラグを立てるつもりだったのに、本物の出現と、その本物の傍らに当たり前の様に居るという現実が、欲深い織斑一夏に逆恨みの感情を抱かせた。

 

 しかしだったらと、姉であり学園の生徒会長である更識楯無と原作を無視して一足早く自ら接触しなければと、『ゴーレムの襲撃に負った怪我が未だに治らない』身体を引きずって接触し、本物の一夏から簪を引き剥がした方が良いとそれとなく言ったのだが……。

 

 

「えっと……引き剥がすだなんて、何の権限があって私がそんな真似をしなくちゃいけないのかしら? 一応兵藤君の人となりは個人的に調べてある上で、簪ちゃんが一緒に居ても大丈夫だと判断したつもりなんだけど」

 

「そ、それは……でも、おかしいとは思いませんか? 兵藤と簪はまるで昔からの仲である様な振る舞いを……」

 

「……。別におかしいとは思わないわ。まあ、私も知らなかったけど、一々妹の交遊関係を洗うなんて真似は失礼だからやらなかっただけだもの。(本当は欠片も私たちが気付けなかったんだけどね)」

 

 

 その更識楯無も楽観的な態度であり、自分の言うことに肯定しなかった。

 今まで転生してからは、何でも自分を肯定して貰っていただけに、先の臨海学校での束からの辛辣な言葉を浴びせられてしまっていたので、自分の思い通りにならない現状に激しく苛立つ。

 

 

「で、お話は終わりかしら織斑君? キミもそんなナリなんだし、大人しく医務室に帰って治療に専念した方が良いわよ?」

 

「くっ……」

 

 

 思い通りに動かない。思い通りに好きになってこない。

 その現状に……。

 

 

 

 

 うーん……最近になって妙に接触してくるわね、織斑一夏は。

 

 

「臨海学校で何を見たのかは知らないけど、放っておいて欲しいわねまったく……」

 

「それもこれも一誠さんが考え無しに『海に行きたいぜ』なんて言って、臨海学校の宿泊先に行くからです。

お陰で織斑先生まで探ろうとしているみたいですし、碌な事しませんよ、あの人は」

 

「まぁねぇ……」

 

 

 織斑一夏を医務室に回れ右させた後、私と虚ちゃんは生徒会室にて、臨海学校の現場に一誠さん達が行った事について若干不満気に語り合っていた。

 

 気分屋なのは良いけど、学園の生徒や教師の見てる前で平然とその人の域を逸脱した力を見せてしまえば、当たり前だが怪しまれるのも当然だし、兵藤くんだってあの織斑一夏と同じ容姿である理由を改めて怪しまれるのもまた当然。

 だからこそ最近は織斑先生は兵藤くんを探ろうとしてるし、織斑一夏も臨海学校が終わってからは何故か私達に絡むようにもなる。

 

 恐らく簪ちゃんの身内だからってのもあるのかもしれないけど、それにしたって私と虚ちゃんと本音ちゃんは、巻き込まれたにすぎない。

 

 

「さてと、人払いも済んだし、そろそろ連絡してみるわね?」

 

「畏まりました。

はぁ……実際身になってるから我慢してますが、本当ならお嬢様をあんなセクハラ男の近くになんて……」

 

「まぁまぁ。現状今の簪ちゃんをちゃんと理解できる様になれる手段があの人達だけなんだから……。

それに言うほどセクハラなんてしないじゃない」

 

「それはそうですが……」

 

 

 とはいえ、価値の差を比べるとするなら、私は個人的でしかないものの、一誠さん達にこそ価値があると思っている。

 まあ確かにISは動かせないけど、そんなものなんて等しく無駄に思える程の力を持っている人達であり、簪ちゃんを変化させた元凶なのだ。

 

 ちょっと……いやかなりスケベな性格だけど、実力自体は本物だし、押し掛けた私達まで鍛えてくれ、そしてその結果はちゃんと身に付いている。

 

 だからこそ私は不満そうにしながらも何だかんだで一誠さんの教えにはちゃんと耳を傾ける虚ちゃんと同様に、毎週の休日は一誠さんと所に行って鍛えている。

 

 

「連絡しましたので、もうそろそろ――」

 

「お待たせしました」

 

「来る――あぁ、もう来ましたね……」

 

 

 それは今日もまた同じであり、虚ちゃんに連絡させてから数秒もしない内に、生徒会室の入り口の扉から、最早見慣れた形の魔方陣が出現すると、その中から眼鏡を掛けた黒髪の……私達と歳の変わらない見た目の女の子が現れた。

 

 

「ソーナさん……?」

 

「てっきり一誠さんかと思ってましたけど……」

 

「彼なら今ご飯を食べてます。

なので私が代わりに……」

 

 

 ソーナ・シトリー

 これが信じられないかもしれないけど、悪魔って種族だから異世界っていうのは摩訶不思議なものだと思う。

 一誠さんの古い知り合いらしく、知的な雰囲気漂うけど、一誠さんが絡むと色々と残念になる気がする。

 

 

「ありがとうございますソーナさん。正直あの人よりソーナさんの方が安心です」

 

「……。あぁ、良い乳してるって自慢したいんですか?」

 

「へ? あ、いえ……で、でもソーナさんだって別に無いわけじゃ……」

 

「一誠が満足しなければ無意味なのよ。

まったく……同じ眼鏡属性の分際でなんでこんな差が……」

 

「……ご、ごめんなさい」

 

 

 だからこそ、ソーナさんは若干私と虚ちゃんを――というよりは胸を僻んでる気があり、今も虚ちゃんの言葉に物凄い冷たい目をしながら、自分のと見比べてブツブツ言ってる。

 まあ、初めて顔を合わせた時も、明らかに一誠さんがソーナさんよりも私と虚ちゃんばっか贔屓してた気がしたので、そのせいなのかもしれない。

 

 

「ふん、どうせ歳食ったら垂れてだらしなくなるだけ。

精々若い今を楽しむことですね」

 

「ぅ……」

 

「あ、あはは……」

 

 

 ただまぁ、本気で敵意を向けられてないだけマシだと私は思うわ。うん……。

 

 

 

 

 で、胸の事で若干嫌味を言われたまま、ソーナさんの転移魔法で一誠さんの自宅のリビングまでワープした私達。

 然り気無く魔法という概念を受け入れてる私達だけど、数ヵ月前までならまず信じて無かった事を思い返すと、随分とこの人達に毒されてしまったなぁと思う。

 

 

「連れてきましたよ一誠」

 

「うーい、いらっしゃい虚ちゃん、本音ちゃん、たっちゃん」

 

 

 リビングに到着するや否や、オーフィスちゃん、簪ちゃん、一夏君……そして臨海学校以降何と住むことになったらしい篠ノ之博士が、一誠さんを加えてテーブルを囲みながらプリンを食べており、ソーナさんの声にスプーンをくわえた一誠さんが、軽く微笑みながら私達に向かって手を挙げて出迎えてくれた。

 

 うーん、普通にしている分には普通なんだけどなぁ。

 

 

「うーん、何時見ても抱き心地の良さげなスタイルしてて何よりだね」

 

「………」

 

「会っていきなりそれですかアナタは? 最低ですね」

 

 

 これさえ無ければ虚ちゃんももうちょいツンツンしなくて済むのに……。

 

 

「兄ちゃんはそればっかだな」

 

「それが生き甲斐なんだから仕方ねーだろ。

お前は良いよな、どっちもポヨンポヨンな女の子ゲット出来てよ」

 

 

 苦笑いの一夏君に対して、一誠さんはふんと鼻を鳴らしながら愚痴る。

 そうなのよね、簪ちゃんはもう解ってたけど、まさか篠ノ之博士が一夏君の事をというのはかなり驚いたわ。

 今も週一で会えてる事が本当に幸せですとばかりに簪ちゃんと一緒になってくっついてるし……。

 

 

「ほらオーフィス、口開けな」

 

「あーん……んっ……甘くておいしい……♪」

 

「一誠、私には? 口移しでも可ですよ?」

 

「朝からんな生々しい話すんなよ……胃がもたれるわ」

 

 

 オーフィスちゃんを見てソーナさんが一誠さんの隣に座ってくっつき始めるのを見てると、世界の国々やら怪しい勢力が何も知らずに篠ノ之博士の居場所を突き止めて身柄を押さえに襲ってきたらと思うと、相手側に同情すら覚えるのだけど……。

 

 

「たっちゃん達も食べなよ、ほら焼きプリン」

 

「………あ、はい……いただきます」

 

 

 何でかしら……最近一誠さんが二人にくっつかれてるのを見てるとザワザワする。

 

 

 

 

 

 

 修行は別に良い。ハッキリと身に付いているから。

 しかし、最近は少しお嬢様が変です。

 

 

「セイッ!!」

 

「ははは~」

 

「このっ!!」

 

「おぉ……」

 

「当たれ!!」

 

「おほっ!」

 

 

 基本的に修行というのは、一誠さん相手に私達が全力で当てに行くというもの。

 今日も恒例に小説片手にニヤニヤしながら熟読しているムカつく姿に対して一矢報いてやろうと私、お嬢様、本音は三人掛かりで挑んでいるのだけど……。

 

 

「すると、俺の特大あかべこが、彼女の【ピーッ!】に【ピーッ!】して【ピーッ!!!】となり――」

 

「なっ!? 何てものを読んでるんですかアナタはっ!!!」

 

 

 あまりにも実力の差がありすぎるせいで、私達は文字通り遊ばれており、今だって熟読していた本の内容を急に朗読するのを聞かされてしまい、固まってしまう本音とお嬢様を代表して、全身から湧き出る灼熱の様な怒りと羞恥心を爆発させてしまう。

 

 

「んー? 官能小説だけど?」

 

「そ、そんなのはわかってます! こ、子供の前で恥ずかしくないんですか!?」

 

「べっつにー?

というか内容で大体察せてる辺り、もしかして虚ちゃんはムッツリ――――とーい!?」

 

 

 挙げ句の果てには私に対してニヤニヤしながらムッツリだと言ってきたので、私は思わず胸元に隠していたナイフを取り出して思いきり斬りかかる。

 

 

「おっとと……?

そんな玩具取り出すなんて危ない子だなぁ」

 

「う、うるさいうるさい!!

アナタにムッツリだなんて言われたくない!!」

 

「ほ、ほんの冗談だっての……。

まったく、昔のひんぬー先輩みたいにからかい甲斐のある子だよ虚ちゃんは……けけけけ!」

 

 

 だけど悉くを避けられながら、余裕そうにニヤニヤを止めない一誠さん。

 暗部の従者の人間として訓練して培った自信を簡単に打ち砕く程の差……。

 悔しいですが、未熟でしか無い私達ではこれが限界なのです。

 

 

「はぁ、はぁ……うぅ……!」

 

「ん、少し休憩しよう。

虚ちゃんが張り切り過ぎてバテちまった」

 

「あ、はい……」

 

「お、お姉ちゃん大丈夫?」

 

 

 結局かすりもしないまま私のスタミナも底を尽き、それなりの広さを誇る家の庭の真ん中で膝を付いた私を見て、一誠さんは休憩とだけ言うと、縁側の椅子に腰かけて官能小説の続きをまた読み始める。

 

 本音とお嬢様が心配して駆け寄ってくれたけど、私は目の前でセクハラをしてきた人相手に何も出来ない自分に悔しくて、二人の顔を直視出来ないでいる。

 

 

「り、理不尽な程の差が悔しい……」

 

「うん……三人掛かりでもこれだからね……」

 

「かんちゃんといっちーが強い理由が本当によくわかるよ……」

 

 

 本音の言葉に私は息を整えながら内心同意する。

 簪お嬢様の異常な成長の背景には、長年一誠さんという人の常識を半笑いで踏み越えた人が居たからこそであり、また嫌という程に納得させられた。

 

 私達もまた、簪お嬢様の事を理解したいが為に一誠さんからのセクハラも我慢してレクチャーを受けているけど、これでは本当にその領域を知ることが出来るかどうか……自信が無くなってしまう。

 

 

「……。簪も最初の頃は――いや、今のキミ達より酷かったもんだ」

 

「え?」

 

 

 そんな私達に何を思ったのか、スケベな小説に視線を向けたままの一誠さんが、昔の簪お嬢様についてを語り始めた。

 

 

「あの子は引っ込み思案に加えて、キミ等にかなりの劣等感を抱いていたからな。

囚われ過ぎて自分の事を完全に見失ってた」

 

「簪ちゃんが私達に……ですか?」

 

 

 私達に劣等感を抱いていたと聞かされ、少なからずショックを受けている様子のお嬢様。

 いや、勿論私と本音も同じ気持ちでした。

 

 

「自分には何も無い。だからあんな家に生まれた自分が嫌になる……とすら一時期は言ってたぐらいだ。

相当居心地が悪かったんだなと俺は当時思ったね」

 

「「「……」」」

 

 

 官能小説から目を離さないで、然り気無く心に刺さる事を言ってくる一誠さんに、私達は何も言えずに視線を落としてしまう。

 確かに、幼いながらも大人達はよく楯――いや、刀奈お嬢様と簪お嬢様を比較していたから。

 

 

「そう、だったんですね。じゃあ簪ちゃんは私達の事を……」

 

 

 それが劣等感を刺激し、強いコンプレックスを抱かせたとなれば、簪お嬢様を変えてしまったと当初兵藤君を疎ましく思っていた自分達こそが……。

 そう思い、ますます心が沈んでいくのを感じていたのだけど……。

 

 

「まあ、一夏の奴があの手この手で簪を腐らせない様に頑張ったから、今はああいう子になったけどな。

あと勘違いしてるかもだけど、別にあの子はキミ達の事を恨んじゃいないぜ?」

 

「え……」

 

「というか、劣等感抱いて不貞腐れるくらいなら、俺はあの子に技術を教えるなんて真似はしないよ。

アレだアレ、簪も最初は色々と大変だったけど、折れずに居たからこそ今があるって言いたかっただけだ」

 

 

 パタンと本を閉じる一誠さんは、ヘラヘラと笑う。

 

 

「キミ達ならこんな程度で折れないだろ?」

 

「「「………」」」

 

 

 …………。あ、一誠さんなりに私達をフォローしようとしたのですか。

 簪お嬢様の昔を引き合いに出せば、私達が折れずに食い下がると……。

 

 ……。

 

 

「当然、私達は今の簪ちゃんを理解したいから此処に来ているんですもの……!」

 

 

 本当に、私の大嫌いなタイプの人だ。

 スケベだし、ヘラヘラしてるし、ニートだし、ロリコンだし、スケベだし、変態だし。

 

 けど……。

 

 

「さぁて、休憩は終わりだお嬢ちゃん達。

くくく、此処からは少しばかりおっさんのマジを見せてやるぜ?」

 

 

 だからこそ、私達の道しるべになってくれる人だという信用がある。

 それまで暢気な雰囲気をガラリと変え、遥か天空から私達を見下ろしているが如く圧倒的な威圧の籠った獰猛な笑みを浮かべる一誠さんに、私達の心はそれでも折れなかった。

 

 

 

 

 相手を鍛えるという点に置いてのみ、一誠は妥協をしないタイプだった。

 それが例え胸の大きな女子だろうが、その者のレベルに合わせた厳しい鍛練を課すというのが、一誠の持論だった。

 

 

「たっちゃーん、おじさんに酌してけろー」

 

 

 が、修行も終われば只のスケベ男に戻るのが一誠クオリティ。

 修行終わりの晩御飯に三人を招待し、増えた人数でテーブルを囲って始まる席にて、おっさんみたいな事を楯無に頼もうとする一誠に、虚は当然突っかかる。

 

 

「セクハラで訴えますよ?」

 

 

 基本的に虚はこの状態の一誠が生真面目故に嫌いだった。

 決して嫌悪とかでは無いものの、嫌いだった。

 ソーナとオーフィスが隣に居るのに、楯無に絡もうとするのも相俟って余計にであり、それ以上に気にくわないのが……。

 

 

「あ、は、はい……私で良ければ……」

 

「お嬢様!?」

 

 

 最近の楯無がそれに乗っかってあげてるという一点だった。

 ちょっと前までなら素っ気なく断ってた筈なのに、ここ最近の楯無は、一誠の冗談じみたフリに対して借りてきた猫みたいな態度で応じようとする。

 

 

「オーフィス……」

 

「嫌だ。お前となんか組みたくない」

 

「ですがマズイですよ……! もしかしてあの子は……」

 

「うっ……で、でもお前となんて組みたくない」

 

 

 ひそひそとソーナがオーフィスに何かを焦っている様に話しているが、一誠は当然聞いちゃいないで、楯無からの酌にテンションを上げている。

 

 

「へへへ、たっちゃんからお酌して貰っちった~ 羨ましいだろ一夏~」

 

「あーそうだねー」

 

「お兄ちゃんったら、弱いくせに飲むから……」

 

「ちーちゃんが勝てる要素が一個だけ見付かったかもね」

 

 安い酒でご機嫌になる一誠に、慣れている弟と妹は若干めんどくさそうな対応で誤魔化している。

 そう、一誠……いや、ついでにヴァーリと曹操も酒を知れる年齢だが酒にべらぼうに弱かった。

 

 

「うぇへへ、お礼にハグハグしてあげようじゃないか、たっちゃ~ん?」

 

「え……?」

 

「「っ!?」」

 

「なっ!?」

 

 

 そして弱いからこそ変態度も急激に上がる訳で……。

 傍らに座ってお酌した楯無に向かってニヨニヨした一誠が、両手を広げ出したその姿に楯無は面を食らった顔をして固まってしまう。

 

 

「え、えっと……」

 

「お嬢様に何をする気ですか! 絶対にだめです!」

 

「流石にそれはダメよ一誠、タテナシが困ってるわ」

 

「そう、一誠……めっ」

 

 

 当然、楯無をこのチャランポランから守ると意気込む虚も、余計な事して余計な事になって欲しくないソーナとオーフィスも一誠の襟首を掴んで阻止に動く。

 

 

「皆必死になってまぁ……くくく」

 

 

 見ているだけの簪と束と一夏と本音は、何となく楽しい気分でそれを見ている辺り、結構良い性格をしてるのかもしれないのだが……。

 

 

「あ、あの……手を繋ぐくらいなら……」

 

「ほぇ……?」

 

「お、お嬢様!?」

 

「「っ!?」」

 

 

 

「あ、これアカン奴かも」

 

「お姉ちゃんって良い趣味してると思うよ」

 

「あーぁ、これは大変だね~?」

 

「もぐもぐ」

 

 

 面倒見の良さがプラスになる時もあれば、逆に余計なオプションもついてしまうのかもしれない……。

 

 

「手なら良いの? わーい、じゃあ繋ご繋ご~」

 

「は、はい……ど、どうぞ……」

 

「おぉ、柔らかくてスベスベだぁ」

 

「一誠さんは男の人らしい手……ですね……あ、あははは」

 

「や、やめてくださいお嬢様! どうなされたのですか!?」

 

 

 

「だから言ったのよオーフィス……! どうするのよ、どう軌道修正するつもり!?」

 

「い、一誠は酔ってるだけ、だから……」

 

 

 

 

 ちなみに次の日。

 

 

 

「んぁ? 俺がたっちゃんの? …………全然覚えてねーし、そんな事言ったの?」

 

「言った、で、更識先輩も拒まなかったから結構拗れた」

 

「ふーん? でも酔っ払いの相手を適当にしてくれたって事だろうし、騒ぐ事でも無くね?」

 

「…………。兄ちゃんが一定の人物にしか好かれない理由が何となくわかったぜ」

 

「え?」

 

 

終わり




補足

ヴァーリきゅんと曹操は別行動です。
といっても、休日の殆どは元の世界の時みたいにお邪魔して冷蔵庫漁ってジェイソン・イッセーに追いかけ回されてますけど。


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