色々なIF集   作:超人類DX

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銀の福音? そんなの粘れる要素が無いよ。


結束するバグ達

 最初は物凄く煩わしいと感じたものだが、慣れというのは一誠の言う通り、自然と勝手に感じてしまうらしく、今じゃそれが普通と思っている自分が居る。

 

 アザゼルの奴が今の俺を見たら何と言うのやら……。

 

 

『DIVINE』

 

「よし、俺を中心に半径数キロ程度の一回きりだが、アルビオンの力を浸透させたぞ。

これであのISの力は元の半分だ」

 

「うむ、流石私の嫁、神々しさも相俟ってますます惚れたぞ」

 

「なら俺も何かしないとな。

そらシャルロット、黄昏の聖槍だ」

 

 

 お前も親心ってのが分かるようになったか? とでも言うのかな。

 …………それとも、一誠に影響されてロリコンにでもなったのか? と笑うのかな。

 

 後者の場合は殴るが、どちらにせよ想像しやすいのが俺の義父(チチオヤ)の単純な所だ。

 

 

「左だシャルロット!」

 

「わかってる! せーのっ!!」

 

『!? ――武装パターン不明。機体ダメージ……じ……ン……だ……い……ガガ……ガッ……!』

 

 

 

「母親を失って泣いてばかりの子が、実に立派になったものだ……ぐすっ」

 

 

 ノロマになってる暴走機に攻撃するラウラと、一時譲渡で黄昏の聖槍を手にしているシャルロット。

 そんなシャルロットを見て、曹操が急に泣き出しながら成長を喜んでる様子なのだが、コイツってこんな性格だったのか……。

 

 

「そういえば、あのシャルロットという娘は父親が居ると聞いたぞ? ほら、デュノア社とかいうフランスの企業が」

 

「ずずっ……あ、あぁ……居るには居るが、彼はもうシャルロットとは関係無いし、もっと言えばデュノア社の社長でも無いぞ?」

 

 

 ラウラから聞いた話を今更ながらに思い出したので聞いてみる。

 見た限りじゃどうも曹操が保護者をやっている様にしか見えず、もっと言えばシャルロット親父の事はこれまで一度も聞いた事がないのだが、ポケットティッシュを取り出した曹操は嗚咽混じりに言った。

 

 

「どういう意味だそれは?」

 

「あくまで表向きは奴が代表だが、実際はシャルロットに社の全ての支配権がある。云わば奴は傀儡さ」

 

 

 ぐしゅぐしゅさせながら、シャルロットの実父についてちょっと嫌そうに話す曹操。

 様子からして曹操自身は一度会っているみたいだが、それよりも傀儡という言葉に俺は反応する。

 

 

「曹操お前、まさか乗っ取ったのか? それもかなり強引に……」

 

「アザゼルとお前の関係とは違って、シャルロットの父親は利用してるという腹しか無かったからな。

ふん、一誠のせいで変な甘さが移ってしまったよ……ちーん!」

 

 

 鼻をかみながら、アザゼルとは真逆のしょうもない人間の男だと言い捨てる曹操に俺は血の繋がりがあっても幸せとは限らないと、ふと祖父……リゼヴィムとの殺し合いの果てに抱いた感情を思い出す。

 

 

「………」

 

 

 一誠と曹操がたまに羨ましがるレベルで父親をやってくれたアザゼルという男。

 ……。叶うならラウラについて話してみたいものだな。

 

 

「それにしてもヴァーリは何でビデオカメラなんか回してるんだ?」

 

「ん、あぁ……ラウラの戦う姿を残して後で動きの反省会をするのさ。

あと、あの子を慕う部隊の連中に送る為だ」

 

「…………。まるで子供の運動会にやって来た親父みたいだな」

 

「否定はしないさ……一誠には言うなよ?」

 

「別に馬鹿にはしないと思うが、わかった」

 

 

 ラウラの戦う姿を撮影してクラリッサ達に送る為のビデオカメラ納めつつ、俺はぼんやりと考えるのだった。

 

 

 

 おかしい。当たり前の様におかしい。

 私はこれでもラウラ・ボーデヴィッヒという少女……そして所属していた部隊の教官を一時期やっていた。

 

 その時のラウラの様子は、一言で言うなら危うく、出自の複雑さもあって繊細な子供だった。

 

 なのにどうしてだ……。

 

 

「ちーちゃんが面倒見てたラウラって子、中々やるじゃん。シャルロットって子も同じくらいに動けてるし~」

 

「………」

 

 

 束が現れ、『折角だし衛星をハックして二人の様子を見てあげよう』なんて言うから、ラウラとデュノアと銀の福音の戦いの様子をモニター越しに見ていたが、一体何があればあれほどの戦闘力を手に入れられるのだ。

 

 

「これなら弟君にじゃなくて二人と箒ちゃんを組ませるべきだったかなー

あ、でも箒ちゃんは弟君しか見えてないから無理かぁ」

 

「………」

 

「――――で、銀の福音を1分で黙らせた二人への感想は?」

 

「…………」

 

 

 妙に機嫌の良い束が、隣で煽るかのように聞いてくるが、私は何も答えられずに只撃墜した銀の福音を回収するラウラとデュノアの様子を見ているだけしか出来ない。

 

 ラウラとデュノア……それ以外は周りに誰も居ない様には見えたが、私はひょっとしてと思っていた。

 あの、怪しい5人の誰かが密かに――と。

 

 

「……束よ。

お前は何故兵藤に対して……その、なんだ……普通以上の態度なんだ?」

 

「はい?」

 

「こんな事は言いたく無いが、兵藤は一夏と名前と容姿が同じという信じられない姿だが、大きく考えれば同じなだけだろ? なのにどうして……逆に一夏には何故他人行儀で……」

 

「それってさー…………言わなきゃ親友絶交なの?」

 

「っ……い、いや……」

 

 

 束に聞いて探ろうとしてみたが、途端に表情が冷たくなる束に圧されてしまって深く聞けない。

 私の弟である一夏に他人行儀で、兵藤一夏には逆に私や箒の様な柔らかさを見せる。

 

 それが逆なら分かるが、実際私は目の前で兵藤に対して顔を赤らめすらし、更に言えば先程も一夏に対して何かを言ったのか、勝手に部屋を飛び出した一夏が魂の抜けた顔をしていた。

 

 

「ほら、二人が戻ってくるよちーちゃん。

ちゃんと労ってあげてね?」

 

「あ、あぁ……」

 

 

 何故なんだ。

 部屋を出て行こうとする束の背を、私はただ見送るだけしか出来ない。

 

 

「お、織斑先生……」

 

 

 束が出ていってから30秒程が経った後、入れ違いの形で妹の篠ノ之箒が罰の悪そうな顔で入室してきた。

 

 

「篠ノ之か……」

 

「その……さっき姉さんとすれ違ったのですが、織斑先生とご一緒だったのですか?」

 

「……まぁな」

 

 

 紅椿という専用機を手にしてからの初の実戦で舞い上がっていたせいか、一人で突っ走ってしまった篠ノ之。

 話に依れば、その時銀の福音から攻撃を直撃されそうになったのを一夏が庇ったとの事らしいが……。

 

 

「もう一度……もう一度私に出させてください!」

 

 

 篠ノ之は一夏の仇でも取りたいのか、私に頭を下げながら出撃許可を求めてきた。

 

 

「ダメだ」

 

 

 だが私の口からはこれしか言えず、頭を下げる篠ノ之に複雑な気持ちを抱きながら言う。

 

 

「な、何故ですか……私が未熟だから……?」

 

 

 当然篠ノ之の性格を考えれば、一言で折れるとは思って無いので、彼女のこの問いもある意味予想通りだ。

 しかし私はそれでも許可をしない――いや、出来ない。

 

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は先程完全に沈黙した」

 

「え……!?」

 

 

 もう暴走機は居ないのだから。

 

 

「沈黙……って、どういう……」

 

「言葉通りの意味だ。

一夏とお前、それから凰とオルコットが失敗した場合に備えて待機させたボーデヴィッヒとデュノアがつい今しがた出撃してな。

…………あっという間に暴走機を制圧したのさ」

 

「なっ……!? ふ、二人で……!?」

 

 

 ショックを受けたかの様に固まる篠ノ之。

 私だって最初はそんな気分だったけど、これが現実なのだから何時までも立ち止まる訳にはいかない。

 

 

「だから出撃許可は出せない。お前が一夏の仇討ちをしたいのはわかるが、仇は既に撃墜されてる。

だったらもう仇も何も無いだろう?」

 

「………」

 

 

 異常な戦闘力を持つ様になったラウラとデュノアは、その背後に居るだろう、異様な5人組がそうさせたのだから。

 

 

「………」

 

 

 そう、探らなければならないのだ……。

 

 

 

 

 

「ほーん、ベタなタイミングで筆下ろしの機会は無かったと」

 

「おう……ホッとしたような残念な様な気分だぜ」

 

 

 雨風激しい嵐が嘘の様に晴れ、夜空には満点の星空が地上を照らしている。

 そんなちょっぴりロマンチックな夜の浜辺には、一夏と一誠……一繋がりの義兄弟が砂浜に腰を下ろして駄弁っていた。

 

 

「ヴァーリと曹操が心配性なもんだからよ。今回ばかりは悪いな」

 

「いや、優先するのは当たり前だし、束さんも簪も納得してたから平気だぜ兄ちゃん」

 

 

 奪われ、忘れられ、見捨てられた。

 その苦渋を舐めさせられた事により、皮肉にも出会う事の出来た兄弟。

 性格も兄の一誠に影響されまくったせいでナンパな性格まで似てしまってる辺り、最早血の繋がりの有無なぞ両者には無関係だった。

 

 

「それにしても、あのひんぬー――じゃなくてソーナって人はよくオーフィス姉と真正面から殴り合えるもんだね」

 

「まあ、後天的にスキルに目覚めて急激に進化したからな。俺もオーフィスも正直強いとは感じるぜ」

 

 

 そんな兄弟の少し上気味に向けられた視線の先には、長い黒髪の小さな少女と、眼鏡を掛けた黒髪の少女(?)が真正面からぶつかり合っていた。

 

 

「一誠の事をペロペロした。お前はやっぱりむかつく……!」

 

「常に傍らに居れるのだから良いじゃないですか……!!」

 

 

 

 

「まさかソーナさんが兄ちゃんの首筋を抱き着きながらペロペロしたりしたせいで、地球が壊れちゃうんじゃないか位の喧嘩が始まるとは……」

 

「昔から二人はあんな調子だからな。

俺達はもう慣れちまったよ……」

 

 

 おかげでさっきから互いにぶつかり合う度に星全体が震える様な衝撃波が周囲に飛散するのだが、その衝撃波は一誠がソーナにレクチャーしてもらい会得した悪魔式の障壁を二人の周囲に展開しているので、地球や自然に降り注ぐ被害はほぼ皆無だ。

 

 

「ちっ、また張り直さないと……」

 

「オーフィス姉のパンチをまともに受けてるのに即反撃って……あの人格闘ゲームでいうスーパーアーマーでも付いてるのかよ?」

 

「ひんぬー先輩曰く『慣れた』かららしい。

昔はもっとからかい甲斐のある人だったんだけどなぁ。

何でこうなったのやら」

 

 

 オーフィスのパンチとソーナの蹴りの余波が、展開させた障壁にヒビを入れ、その度にパンパンと手を叩いて障壁を張り直す一誠は、珍しく苦笑いだ。

 

 昔は逆に振り回してやってた立場なのに、気付けば振り回されている。

 嫌だったらとっくの昔に縁なんて切ってるので、一誠としては別に構わないのだが、貧乳と言えば顔真っ赤で怒ってた頃のソーナや、エロ本読んで余計な知識を付ける前のボーッと不思議な雰囲気を出していた頃のオーフィスが若干恋しい。

 

 

「そろそろ止めるかな。おい一夏、お前二人を止めに行け」

 

「え!? お、俺が!? こ、こいつは中々難しい注文だが……や、やってやるぜ!!」

 

 

 まあ、嫌いじゃないけどね。

 二人には絶対口に出さないが、それでも一誠は二人に対しての感情はポジティブのままだった。

 

 

 

 

「おらもう良いだろ?」

 

「よくない。この雌悪魔は一誠をペロペロした」

 

「別に良いだろ……今に始まった話じゃねーし」

 

「そう思うならそろそろ私の姉さんみたいにレーティングゲームが出来るくらいの子供を孕ませて欲しいわね」

 

「うっせぇな、Cカップ以上になってから出直せ、この貧乳が」

 

 

 放っておくと三ヶ月は殴りあってそうなオーフィスとソーナを、一夏を介入させる事で止める事に成功した一誠は、傷ついてる姿を幻実逃否で否定して綺麗にしてあげると、未だ仲直りしそうも無い二人にため息が出てしまう。

 

 

「ほら、見ろよ簪と博士ちゃん――じゃなくて束ちゃんを。

一夏を挟んでも仲良さげだぜ?」

 

「「……」」

 

 

 ずっと長いこといがみ合う二人。

 いや、決して仲が本当に悪いというのでは無いのだが、どうも自分が絡むと何時も二人はこうなる。

 止めた際にやって来た束と簪が一夏を挟んで楽しそうにしている姿を指しながら指摘はするものの、別に一誠は二人と『そういう関係』になりたいという気分は無い。

 

 

「ま、俺はお前等に欲情なんてしねーけど」

 

「「……」」

 

 

 寧ろ逆にからかうが如くニヤニヤしながら『お前等に女を感じねーよ』と煽る。

 これももう随分と長いこと口にしている台詞であるのだが、それを言われて『あぁ、そうですか。なら諦める』という感情は元よりオーフィスとソーナには無い。

 寧ろ余計にペロペロしてやるというやる気と元気に満ちる辺り、拗らせてるとしか云いようもない。

 

 

「偽物がちーちゃんに言われてショック受けたらしいよ? ラウラって子とシャルロットって子の二人が銀の福音を黙らせた事について」

 

「へー?」

 

「性懲りも無く挑むつもりだったのかもね。

無駄に終わっちゃったけど」

 

 

 

「ほら見ろ。クソ、おっぱいサンドされて一夏の奴はモテモテだちくしょう!」

 

「じゃあ我がやる」

 

「私もやりますよ?」

 

「だぁかぁらぁ!! 無いだろ!? お前ら揃って無いだろ!? 余計悲しくなるわい!」

 

 

 二人がバッと一誠の両腕に飛び付き、簪と比べても遥かに劣る胸を押し付けようと割りと健気に頑張るが、悲しいかな無いものは無いので、一誠は逆に惨めな気分をそのまま叫ぶというオチになってしまった。

 

 

 さて宴もたけなわに、天の川の下でわーわーやっていた一誠達だが、話はこれからの事についてであった。

 

 

「一夏達は休日はほぼ家に帰ってくるし、行く宛も無いならウチに来るか? 部屋なら余ってるし」

 

「え? い、良いの?」

 

「おう、オーフィスも良いだろ?」

 

「ん、一夏と簪もそれが良いと言ってるから我も構わない」

 

 

 世界中からその行方を捜索され、ある国では身柄をも押さえようと躍起になっている対象の束に一所に落ち着かせる場所と環境を提供するという一誠に、言われた本人の束は驚いたが、やっと再会して想いを伝えられた一夏と離れてしまう事を考えれば、とても魅力的だった。

 

 

「休日になれば俺がほぼ学園に迎えに行って、転移魔法で家までワープするからな。

移動時間も15秒で済むから、長いこと色々とできるぜ? 色々とね……けけけけ」

 

「兄ちゃん……」

 

「しかも防音だ。ドラムぶっ叩こうが、デスボイスで騒ごうが音は漏れねぇ……」

 

「へ、へー……?」

 

「良かったわねタバネ。これで毎週末はお腹がたっぷんたっぷんになるまで孕ませプレイが出来ますよ?」

 

 

 ふっ、と笑みを溢しながら束の肩に触れるソーナの言葉に束は恥ずかしそうに俯く。

 ちょっとだけソッチの意味での期待をしていた事を見透かされている気がしたからだ。

 

 が、ソーナからすればこれで束とはお別れになると思っていた。

 何せ、一誠の家に住むという事は当然自分は無理だろう……そう思っていたから。

 

 が、そんなソーナを見て一誠は言った。

 

 

「おい、言っとくが寝込みとか襲ったら本気で怒るからな?」

 

「は?」

 

 

 まるで自分も住んで良いみたいに釘を刺してきた一誠にソーナはポカンとしてしまう。

 

 

「ん?」

 

 

 そんな表情をするソーナに、一誠も釣られてポカンとする。

 

 

「何その顔?」

 

「え、いえ……だってまるで私も住むみたいな言い方だったので……」

 

 

 若干声に勢い無く言うソーナに、一誠は『何言ってんの?』といった様子で傍らに引っ付きながらソーナをジーっと見るオーフィスの頭をポンポンしながら言った。

 

 

「束ちゃんは良いのに、傍に居たアンタが駄目だなんて流石に言わねーよ。

部屋なら余ってるって言ったろ?」

 

「……。仕方ない、一夏と簪の為」

 

 

 シトリー家といった実家のある元の世界なら兎も角、この世界では伝もコネもゼロに近い。

 ソーナにしてみれば唯一束が繋がりなのだ。それを知っているからこそ一誠だって嫌だとは言わないし、オーフィスもちょっとツンツンしながらも住む事を許可している。

 

 

「………」

 

 

 そんな二人の言葉にソーナは暫し目を丸くしながら沈黙していたが、やがてふっと小さく笑いだし――

 

 

「ぐおっ!?」

 

「む!?」

 

 

 びっくりする位の速さで一誠に肉薄し、再会した時を思わせる飛び付きで一誠に抱き着きながら思いっきり押し倒す。

 

 

「飴と鞭という言葉を体感できるとするなら、まさに今がそう感じるわ。

ふふ……まったくもう、私の事が昔から好きでいじめてた癖に、何時まで経っても素直にならないんだから……♪」

 

「………。は? いや、何処にそんな要素がというか、昔からバカだなアンタ」

 

「おい、何一誠に抱き着いてるんだこの雌悪魔。早く離れろ」

 

 

 目が若干ヤバイ感じになってるのを砂浜の上で押し倒された体勢で目にしながら、ネジの抜けた言動に引く一誠。

 しかしソーナは覚醒した時からずっと『一誠は自分が好きだから貧乳だ何だと罵倒して気を引こうとしてる』と本気で思っており、それは今も変わらない。

 

 それはいくら本人が否定してもであり、拗らせてる今では最早修正不可能なレベルで刷り込まれている。

 

 

「あっ……は……♪ もう、アナタにあんな事言われちゃうからびしょびしょになっちゃうじゃない……」

 

「知るかよこの痴女! ふざけんな、子供が見てるから離れろバカ!」

 

「あっ……♪ そんな事言われたらもっとビショビショになっちゃうわ……あはははは!」

 

「離れろこの雌悪魔!」

 

 

 拗らせてしまったというのは……こういう事なのだ。

 実家の自室にはアングル的に盗撮だと思われる一誠の写真が大量にあるし、戦いでボロボロになった衣服もあるし、卒業と共に使わなくなった体操着やジャージまで強奪して保管してるし、わざと罵倒の言葉を受けた際に声を録音したボイスデータもギガバイト単位で保管してる。

 

 

「ソ、ソーナちゃんはやっぱり筋金入りだよ。

……一緒に行動するようになってからそうだったけど、直接会えて余計にタガが外れてる」

 

「だからオーフィス姉が警戒していたんだとよくわかるわ。ありゃスゲェ……」

 

「お兄ちゃんを押し倒せる時点で相当だもんね」

 

 

 その筋金入りのせいで両親は諦め、逆に是非一誠に貰って欲しいとすら思うようになったのはいうまでも無いのかもしれない。

 だって、拗らせ方が半端じゃないのだから。

 

 

「一誠に言われるがままになるわ。だからちょうだい?」

 

「うるせぇ! 俺はボインじゃなきゃ嫌だ!」

 

「我が貰う、お前じゃない!」

 

 

 終わり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 臨海学校も終わり、日常が戻ってきた……のだが。

 

 

「はぁ……いや、生徒会は間に合ってるから募集はしないわ。

というか、入りたかったら来年選挙に出れば良いと思うわ」

 

「………」

 

 

 バグの存在に焦った織斑一夏は、原作通りとはいかずに躍起になりはじめる。

 

 

「……と、いう事がありまして」

 

「ふーん?」

 

 

 しかしそのバグにより鍛えて貰ってる繋がりがあり、あっさりリークされてしまう。

 

 

「たっちゃんや虚ちゃんや本音ちゃんの事狙ってるんじゃねーか? 昔、似たような奴が居たが、思考回路は女だからなぁ」

 

「はぁ……」

 

「それ、一誠さんと変わらない様な気がしますが?」

 

「おいおい虚ちゃんよ。俺は女の子相手に無理矢理なんて真似はしねーよ。

怪我人の癖に飛び付いて来たんだろ? その織斑一夏くんは?」

 

「はい……びっくりして思わずショートフックしてしまいました」

 

 

 そしてそのバグにより鍛えられた暗部の後継者もまた、その実力を急激に伸ばしていた。

 

 

「良いよ。

イッセーちゃんの修行の間に束さんがキミのISをオーバーホールしてあげる~」

 

「どうも……。しかし一誠さんと一緒に居るとは……これじゃあどの国だろうと、どの勢力だろうと手出ししたら終わりですね」

 

 

 ISも同等に。

 

 

「はっはっはっ、どうしたんだたっちゃん? おじさんは官能小説の後半まで熟読しちゃってるぜ?」

 

「くっ……悔しいくらいに強いわね……!」

 

「しかも如何わしい本から一切視線を移さないのが余計腹が立ちますが、これが私達と一誠さんとの差って奴ですね」

 

「そのお友達も同じくらいに強いし……世の中って広いよね~……異世界の人達だけど」

 

 

 そしてその鍛練が三人の精神を変化させ始めていた。

 簪に恐怖していた頃とは違う、より強い精神へ……。

 

 

「え? 本当の名前は刀奈?」

 

「はい……楯無は云わば更識家当主を引き継ぐ者の名前で……」

 

「それはわかったけど、本名を俺に教えちゃって良かったの?」

 

「え? あ……まぁ……何と無く一誠さんには教えておきたかったので……」

 

「ふーん? でもなぁ……俺的にたっちゃんって呼ぶの気に入ってるからなぁ。

駄目か? たっちゃんって呼ぶの?」

 

「それは全然……たっちゃんなんて呼び方するの一誠さんだけですから……ふふふ♪」

 

「ん、ならたっちゃんだな」

 

 

 自分を知るという精神力はやがて……。

 

 

「一誠さんっ!!!」

 

「な、何だよ虚ちゃん? エライ剣幕でまた……」

 

「何だよ、じゃありません!!! 楯無お嬢様に何をしたのですかっ!!!」

 

「はい? いや、先週は普通に何時もの様に修行付けてあげただけだけど……? てか虚ちゃんも一緒だったじゃん」

 

「その後! それ以外でお嬢様に何かしましたよね!?」

 

「いやしてないけど……? えっと、たっちゃんがどうかしたの?」

 

「最近どうもお嬢様の様子が、週末を前にすると何時もソワソワしたり!

修行なのに鏡の前でおめかしし始めたりと変化が明らかにありました! だからちょっとお嬢様を調べたら――」

 

「調べたら?」

 

 

 

「これ、お嬢様のノートなのですが、見てください! お嬢様の本名である更識刀奈の隣に一誠さんのフルネームが書かれて……あ、あ、相合い傘が……」

 

「……………あ、ホントだ」

 

「おかしいですよね!? 私と一緒にロリコンと蔑んでた筈のお嬢様にしては変ですよね!? 何かしましたよね!?」

 

「い、いやしてないからね? そら確かにちょっとセクハラっぽく言動はするけど、ボディタッチは流石に犯罪だからしねーし、修行中は寧ろ俺なりに妥協しないでやってるんだぜ? てかこれ、誰かの悪戯書きじゃないの?」

 

「悪戯書きをする方が一誠さんのフルネームを知ってるのですか? それに、これを見て直ぐにお嬢様に確認したら、お嬢様は私からノートをひったくった挙げ句、ベッドに飛び込んで枕に顔を埋めながら足をバタバタとさせてました。

つまり、これはお嬢様自身が書いたものです! さあ、何をしたか言ってください! 今ならまだ情状酌量の余地がありますから!」

 

「だから何の身に覚えも無いっての。

ったく、なら本人に聞いてみれば良いだろ?」

 

 

 進化へと繋がる。

 

 

「オーッスたっちゃーん」

 

「!? い、一誠さん!? な、何で私の寮部屋に……!」

 

「いやさっき家で虚ちゃんからめっちゃ怒られてさぁ。

たっちゃんも珍しく今日の修行も来ないし、ちょっとした様子の確認と、聞きたいことがあるんだけど……」

 

「な、なんですか?」

 

「いやさ……虚ちゃんが言ってたんだけど、たっちゃんのノートに自分の名前と俺の名前書いて相合い傘作った意図を――」

 

「虚ちゃぁぁぁん!!!!! 何でバラしてるのよぉぉっ!!」

 

 

 まあ、その背景には色々とあるのだが。

 

 

「うぅ最悪。よりにもよって一誠さんに知られるなんて……死にたい」

 

「いや、別に気にしなくても良いじゃん。だって単なる冗談なんだろこれ?」

 

「…………は?」

 

「いやだってそうだろ。

一回り上のおっさんに加えてセクハラ野郎なんか、若い子からしたら最低男じゃん。

男避けか何かに利用したんだろ? これ――」

 

「……………。やっぱり子供ですか、私は?」

 

「――え?」

 

「オーフィスちゃんやソーナさんに比べたら子供ですか……私は!?」

 

「……? あ、いや、たっちゃんは充分大人だとは思う――」

 

「じゃあっ! じゃ、じゃあ……! そ、その……デートしてあげても良いですよ?」

 

「…はい?」

 

 

 本当に色々と。

 

 

 似非予言・たっちゃんの進化。

 

 

 

 




補足

と、こんな感じで束さんは世界一安全なお家にお世話になる事になりました。

しかも週末にはいっくんと色々出来る特典つき。
やったね束おねーさん!!


その2
その背景に元の世界ではありえないソーナさんとオーフィスたんと一誠の共同生活。
 毎日が貞操の危機でスリリングだぜ。

ちなみに、曹操とヴァーリはシャルとラウラに付いてるので一夏達みたいに週末になったらお邪魔する予定らしい。

つまり、週末になると世界一どころか宇宙一安全なお家の出来上がり。

各国の束さん確保思考人、怪しい各組織は詰み確定。

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