色々なIF集   作:超人類DX

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タイトルの通り。

拗らせた悪魔の少女は大人になるに連れて洒落にならなくなる。


喪女とその予備軍コンビ

 一夏達学生と鉢合わせしたのは、真面目に偶然だった。しかも、ひんぬーさんが居るんだからという意味で予想はしてたヴァーリと曹操にまでカチ会うなんてマジで予想外だった。

 

 そもそも海に来た理由だって、何と無く遊びたかったからって曖昧な理由だったんだ……それがお前、お兄ちゃんなんて呼ばれて悦に入ってる奴と、嫁言われて喜んでる名実共のロリコン野郎になってましたな状態で会うとか考慮してねーってんだ。

 

 まあ、見栄だか何だかで俺の事をパシリにしてるだ何だと吹いてたのを知って軽く成敗してやれたし、別に会うのが嫌だって訳じゃなかったから良いんだけどね? 今も完全に合流して遊んでるし。

 

 

「それにしても、オーフィスの水着はお前が選んだのか?」

「あ? そうだけどそれが何か?」

 

「毎度毎度オーフィスの衣装を選ぶ一誠のセンスが突き抜けてるというか、よくもまあピンポイントに似合うのを選べるな……とな」

 

「もう何十年の縁だしな……つーか今更何だよ?」

 

「いや……別に……なぁ?」

 

「おう……特に深い意味は無いよ」

 

 

 一般解放……といってもほぼ貸し切り状態になってる浜辺にて、今日も良い天気なので久々の四人で海遊びに興じようと全員が水着着用状態なんだが、何故かオーフィスと水着を選んだのが俺だという事について何か言いたそうなツラをしてる二人。

 

 黒のフリフリタイプの特徴なんて別に無い単なる水着を着せてやったんだが……なんだ? 変なのか? 俺は普通に似合うと思うが。

 

 

「一誠、早く遊ぼ?」

 

「おう」

 

 

 うん、普通だろ。普通に似合ってる。

 

 

「当たり前の様に衣装を選んでる事に今更ながら突っ込みたいんだが……」

 

「というか暗に自分の趣味とセンスをオーフィスに……ってわかってないのか?」

 

 

 まあ、見栄張り馬鹿は前からこんなんだし、気にする必要も無いかと思いつつ、オーフィスに手を引っ張られる形で腰を上げた俺はふと思い出した事があったので、パラソルの下に座ってるままの二人に聞いてみた。

 

 

「そういやひんぬーさんの事は何か知らんのか?」

 

 

 元々あのひんぬーが居るってわかったから、コイツ等二人も居るんだと予想できた事だったので、この世界に来たのだって多分一緒だったんだろう。

 そう思って取り敢えず聞いてみたのだが、二人の表情は何も知らなそうなそれだった。

 

 

「いや、グレートレッドと衝突した際に次元内滅茶苦茶になってそれに吸い込まれた時以降、顔は見ていない」

 

「グレートレッドだって?

何だお前等、あんな脳筋馬鹿と戦ってたのか?」

 

 

 微妙に懐かしい名前が出て来てちょっと驚く俺に、ヴァーリが補足するように渋い顔になる。

 

 

「好きで戦ったんじゃない。曹操がまた余計な事を言って奴を激怒させたんだよ」

 

 

 と、半目になって隣を睨むヴァーリに曹操は糞下手な口笛を吹きながら明後日の方へと視線を逸らしているのを見て俺は察した。

 

 

「相変わらず無駄に相手を切れさせる芸当がお得意の様で」

 

「あぁ、昔一誠に潰された右目についてわざわざ言わんでも良いことを言ったせいでな」

 

「ひゅー♪」

 

 

 なるほど、という事はひんぬーさんとは別行動って事か。

 この世界に居る以上、何時かはカチ会わなきゃいけないのは覚悟してるが、問題はあの喪女の電波具合が何処までイッちまってるかと、ひんぬーさんの話題を出した途端ちょっと不機嫌になってるオーフィスと喧嘩にならないかの心配だ。

 

 前のあの無人機とやらの時点で色々と加速してたし、オーフィスもめっちゃぶち壊してたからな……。

 本物とカチ合ったらそれこそこの日本列島が無事で居られるか……。

 

 単なるいち悪魔だった癖に、勝手にどんどん進化しまくったせいでオーフィスと真正面から笑いながら殴り合える様な人になっちまったから厄介な事この上無いぜ。

 

 

「雌悪魔は良いから、早く遊ぼ……」

 

 

 もうちょい仲良く出来んのかね……的な意味でよ。

 

 

 

 

 と、所謂フラグというものをバシバシに立てまくる一誠ご一行が、取り敢えずビーチで呑気に遊んでるその頃……。

 

 

「専用機持ちって大変だのー?」

 

「そうだね、こんな暑い中をカチャカチャとやってるんだからご苦労様としか思えないよ」

 

 

 臨海学校とはいえ授業もちゃんとやるという流れで、今日は先日遊びそびれた海辺で、専用機を持つ生徒がそれぞれ、本国から送られてきたテストパッケージの換装と、起動テストを行っているのを持ちじゃない組に混じって自己トレをしながら皮肉っぽく眺めていた一夏と簪。

 その専用機持ちには兄の友達繋がりという伝で仲良くなったシャルロットとラウラも居たのだが、他の専用機持ちに先んじて片付けてしまったのでカウントされておらず、二人が言っているのは偽物一夏達の事だった。

 

 

「つーか、右半身がイカれたままなんだから大人しくしてりゃあ良いのに。最近妙に授業に出たがるよな」

 

「理解したいとは思わないし、どうでも良いと思う」

 

「ま、そりゃそうだ」

 

 

 特に自分を消しそこねても織斑一夏を名乗る男に至っては、身体すら兄の一誠による破壊の力による仕込みで永遠に治らないという最悪な末路状態だというのにも拘わらず、まるでなにかを待ってるかの如く必死に授業に参加している。

 

 とはいえ、他の専用機持ちと違って整備もテストも『身体がガタガタだから』とか主張して人任せにしてるので、一夏と簪からすれば何か企んでるだけなのが見え見えで実に滑稽に見えてしまってるのだが……。

 

 

「ねぇねぇ、兵藤くんのお兄さんっておいくつなの? 昨日見た感じ、私たちと殆ど変わらないような気がするのだけど?」

 

「え? 今年29だけど……」

 

「29!? やまやんより年下だと思ってたけど、若いね~?」

 

「……。(実際はもっと上だったりするけどな)」

 

「……。(実際はほぼ不老不死なんだけどね)」

 

 

 とまあ、ほぼガタガタで滑稽にしか見えない転生男はこれくらないにして、一夏と簪は今年29歳……という事になってる師であり兄である一誠の年齢を聞いて驚く女子達に対して内心苦笑いをする。

 

 29……世間的に三十路手前という年齢だが、一誠――そして昨日見た同世代のヴァーリと神牙の見た目は十代後半の少年そのものの容姿であり、オーフィスに至ってて完璧な合法ロリ姿だ。

 

 故に見た目だけならヴァーリは悪童三人組の中でも小柄だし、ロリコン呼ばわりされてもまだフォローが効かないでも無かったりするに加えて半分は悪魔の血を持つ者だ。

 悪魔的に言わせて貰うならまだまだ小僧と呼ばれる年代でまず間違いないし、三十路のソーナだって小娘だ。

 

 だが人間からしたら三十路おっさんだしおばさんだ。

 心ない男はBBA呼ばわりするし、女子高生で見た目ロリに嫁とマジで言われてるなんてのも完璧にロリコンだし、いくら実年齢が不詳レベルで生きてて龍神だからと主張してもロリコンはロリコンなのだ。

 

 本人達が必死になって否定してもだ。

 

 

「良いなぁ、私ボーデヴィッヒさんの彼氏さん凄い好みなんだよなぁ」

 

「私はデュノアさんの義理のお兄さんかなー……キリッとしてて」

 

「ちなみにうちの兄ちゃんについての評価は?」

 

「へ? あー……うん……視線がちょっと」

 

「面白い人だとは思うけど……」

 

「「……」」

 

 

 しかも一誠に至っては目線が露骨過ぎたせいなのか、ヴァーリと曹操に比べるまでも無く評価が低く、兄と慕う簪と一夏はちょっと複雑だった。

 既に見た目が完全に幼女の嫁と、その幼女の嫁と取り合いの喧嘩ばっかりしてるらしい悪魔の女性が居るからとポジティブに考える事にするにしても、やっぱし複雑だった。

 

 

「集合!」

 

 

 自分としての個すら失い、途方に暮れていた自分を拾って此処まで育ててくれた兄と姉は血の繋がりなんてのが嘘だった事を思い知った代わりに得た、確かなものなのだから……。

 女子達にヘラヘラと笑う裏でそう思う一夏は、担任の号令に従い、松葉杖状態の偽者こと専用機持ち達と共に整列をする。

 

 

「これよりISの~」

 

 

 姉だった人で今は担任の織斑千冬が次の予定の説明をするのを、簪を傍らに軽く聞き流しながら何と無く日差しが厳しい蒼空を眺め、これまでの人生を何と無く振り返る。

 

 

(ホント、最初はワケわかんなかったなぁ。朝起きたら急に姉から『キミは誰だ? 弟に似てるが、何処からこの家に入った?』なんて言われるし、誰も見てないのを見計らったカスヤローには『お前はもうお役ごめんだから、勝手に野垂れ死ね』と、おもっくそ殴られてから言われるわ……)

 

「この訓練は~」

 

(腹は減るし、寒いしでまず死にたかったっけか……。

でも餓え死ぬ前に俺を拾ったのが兄ちゃんで――はは、あの時橋の下で死にかけてた俺を、たまたま釣りをしに橋の下に来たオーフィス姉と一緒に見つけてくれたんだっけ)

 

「であるからして~」

 

(薄汚かった俺を家まで運んで、兄ちゃんのスキルで否定して貰って……事情を話したら信じてくれて。

俺を強くしてくれて……家出した簪と出会って……ふふ、色々あったよ)

 

 

 それは自分の半生。

 見捨てられ、忘れられた、名前すら失った自分を拾い、生きる術と奪われた名前を名乗り続ける精神の強さを与えてくれた育ての兄と姉。

 高校生くらいの若い兄ちゃんと幼女というアンバランスな組み合わせだなと思ったのは、思春期に入った中学の頃で、まさかロリコンなの? と聞いて拳骨貰ったのは良い思い出だ。

 自分と同じく鍛えられた事によって気質を覚醒させた相棒とも出会えた事も、何もかもが大事な思い出。

 

 

(ある意味じゃ偽者ヤローには感謝してやるよ、テメーが奪ってくれなきゃ、今の俺は無かったんだからな)

 

 

 だからこそ、皮肉たっぷりながらも一夏は成り代わりの一夏に感謝した。

 出会えなければ一生覚醒しなかっただろう己の気質、友、家族と巡り会わせてくれた欲まみれの男に。

 

 後はボロを出し、自分達に向かってきた時はその皮肉をたっぷり込めながらぶちのめすだけ。

 

 セシリア、鈴音、箒に支えられていい気分になってる偽者を後ろから嘲笑した顔で見つめる一夏は、ただその時が来るのを楽しみにこれからも力を進化させる。

 

 

(オーフィス姉の無限(ウロボロス)と一誠兄の無限(ヒーロー)の背を見た俺の能力(スキル)、それが無限大(ウロボロス・ヒーロー)

俺を陥れた時点で舐めて殺さなかったテメーの誤算だよ……くくく!) 

 

 

 全ては偉大な兄と姉の領域に相棒と共に登り詰める為に。

 その為には過去の事なぞもはやどうでも良いと、一夏は一誠とオーフィス以前の思い出を完全に捨てようと思った――

 

 

ちーちゃぁぁぁん!!!

 

 

 思い出すだけで、悶絶しかねない恥ずかしい記憶の元が来るまでは………。

 

 

 

 

 

 予想通りだ、やはり束は来た。

 大方箒に頼まれて紅椿を持ってきたのだろう、原作と同じく千冬姉に飛び付こうとしたのを避けられてアイアンクローを喰らってる。

 

 

「いたた……相変わらず愛情表現が過激だねちーちゃんは」

 

「何をしにきた束?」

 

 

 アイアンクローからのぶん投げに対し、平然と復活した束は千冬姉からの質問に対してヘラヘラしながら答える。

 

 

「ちょっとした近況報告と、箒ちゃんにプレゼントを持ってきたのさ☆」

 

 

 プレゼントという言葉に隣に居た箒が反応し、千冬姉はスッと目を細める。

 

 

「さてさて、箒ちゃんはどこかなー?」

 

「私なら此処ですよ姉さん」

 

 

 箒の様子が冷徹なものへと変わってる。

 姉である束との確執によるものなのだが、そこには敢えて俺も触れてない。

 

 

「おおっ、暫く見ない内にまたおっぱいが大きくなったかな? どれどれ、お姉ちゃんが触診して――いだ!?」

 

「殴りますよ?」

 

「な、殴ってから言わないでよぉ~」

 

 

 ……それにしても周りはいったいあの人は誰なんだって顔をしてるが、そろそろ説明は――

 

 

「あ、あの先生? あの人は……」

 

「篠ノ之束と言えばお前達ならよくわかるだろ?」

 

『ええっ!? 篠ノ之束!?』

 

「そうだ、あんなんだがISの開発者だ。おい束、生徒の前に突然現れたんだ、筋は通せ」

 

「えー? はいはい、はろはろ~私が篠ノ之束だよ~……これで良いの?」

 

『………』

 

 

 と思ったら千冬姉が説明し、束のキャラも大体理解したのか全員が押し黙ってしまった。

 よし、束の性格は身内以外はどうでも良いという性格そのままだ。

 

 

「はい、空をご覧あれ! アレが箒ちゃんの専用機になる第四世代の紅椿なのだ!」

 

「紅椿……」

 

「プレゼントって、ISなんだ……」

 

「篠ノ之さんが妹だからって、何か不公平かも……」

 

「はぁ? おいおいそこの若い女の子や、世の中ってのは理不尽で汚くて嘘だらけで不公平な世界だから機能してるんだぜ? 平等だった事なんて今までなかったよ」

 

「うっ……」

 

 

 不公平とぼやいた女子に切り捨てる様な台詞もまんま。

 

 

「あ、あの初めまして篠ノ之博士、私はセシリア・オルコットと申しまして……」

 

「ん? あ、ごめん今忙しいんだよ。また千年後にね」

 

 勇気を出したのか、セシリアが代表候補生を強調しながら絡みに行ってもこの態度。

 身内以外はどうでもいいそのもの……だが、身内になら情のあるということは…………。

 

 

「お久し振りです束さん」

 

 

 俺はパスできるって事だ。

 ふふ、何か言いたげな顔をしてる死に損ないに今一度お前はもう誰でも無いという事を教え――

 

 

「あ? あぁちーちゃんの『弟くん』か。うん、久しぶりだね。怪我でもしたの? 御愁傷様、箒ちゃんにラブラブ看病して貰えば?」

 

 

 …………は?

 

 

「え? 束、さん……?」

 

「姉さん……?」

 

「束、お前……どうした?」

 

「何が? ちーちゃんの弟くんなんでしょ? 何か間違ってる?」

 

 

 一夏である俺に対する態度が他と変わらない事に俺は思わず頭の中が真っ白になった。それは箒も千冬姉も同じなのか、褪めた顔になる束に困惑している。

 

 

「よく考えたらさ、私ちーちゃんの『弟くん』の事よく知らないからさ~? なんかごめんねー?」

 

「し、知らない? 何を言ってるのですか姉さん! 知らない筈は無いでしょう!?」

 

「そうだぞ束! 小さい頃とはいえ何度も会ってるのに……」

 

「そうは言われてもね~? 会ってても思い出も何も無いからどう話せば良いか全然わかんねーや☆」

 

 

 どういう事だ!? 俺が一夏に成り代わった以降も何度か会ってるし、会話だってしてる筈だ! なのに知らないとは一体……。

 またしても原作と違う展開に混乱してきた俺を他所に、束は俺に近づき……。

 

 

「すーはー……」

 

「っ……!?」

 

 

 妙に大袈裟に深呼吸しながらその俺の横を通りすぎ、束が近づいた効果なのか、女子達がサッと道を開けて譲る中をスタスタ歩いて行き……。

 

 

「ね、ねぇそうは思わないかな? あ、アナタは?」

 

「……は?」

 

 

 ボーッと突っ立っていた死に損ないの前に立ち、声を吃らせながらそんな事を聞いていた。

 

 

「……なんすか、突然」

 

「あ、ぅ……ご、ごめんね? あはは、確かに突然だったよね? えへへ……」

 

 

 何故か顔を赤らめ……モジモジしながらという原作じゃありえない姿に俺は絶句するしか出来なかった。

 いやそれだけじゃない。

 

 

「まだ終わらないのですか? とっとと打ち明けなさいよ、このヘタレ」

 

「ぬ!? 誰だ貴様……? 此処は関係者以外立ち入り禁止で――」

 

「あ、良いの良いのちーちゃん。彼女は束さんのお手伝いさんだから」

 

 

 いつの間にかそこに居たとしか思えない、原作では見たこともない女の子が束のお手伝いさんとして存在してるという事に――いや。

 

 

「お手伝いだと?」

 

「うん、というより相棒って感じかな?」

 

「お噂はかねがねお聞きしていますわ織斑千冬さん。そして初めましてIS学園の皆さん。

支取蒼那と申します、以後お見知りおきを……」

 

 

 ショートカットの黒髪、眼鏡越しに輝く紫色の瞳に支取蒼那。

 そう、このキャラは紛れもなく存在しない筈のキャラである事に気付き、そして思い出す。

 昨日見たあの男三人と黒髪の幼女の正体――

 

 

「やっぱり我達の近くに居たな、雌悪魔」

 

「急に走るから何だと思ったら……考えてた矢先に即会うとか笑えねぇよ」

 

 

 

「あは、一誠から会いに来てくれるなんて……ふふ♪」

 

 

 コイツ等……ハイスクールD×Dキャラじゃねーか! 何でインフィニット・ストラトスの世界に居るんだよ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

「昨日の……。此処は立ち入り禁止と言った筈ですが?」

 

「すんません、ちょっと知り合いの気配を感じたもので……すぐ帰りますわ」

 

 

 さあ、色々と空気が混沌とし始める中、転生者の密かなショックなんてどうでも良いとばかりに、話は進んでいく。

 

 

「よく見てろラウラ、今から修羅場になるぞ?」

 

「自業自得で拗らせた女に迫られる男のな」

 

「……。若干笑えないんだけど」

 

「クラリッサの言ってた痴情の縺れという奴だな」

 

 

 ちゃっかりとヴァーリと曹操が一誠達に混じり、更に言えばシャルロットとラウラの傍らで事の説明をしてたりするが、正直そんな空気じゃないことは何も知らない生徒達ですら察知していた。

 

 

「相変ず揉み応えゼロのひんぬーのまんまみたいで……」

 

「姉やリアス達が大きすぎるのよ。年とったら垂れるだけだし、もう私は拘らないわ」

 

「チッ、皮肉に耐性つけやがって……」

 

 

 久々に見ても全然変わってない先輩の異様にニコニコした笑顔に目を逸らす一誠。

 何処で何をしてたのか……なんて野暮な事は聞くつもりは無いが、IS学園でオーフィスとやりあった無人機については一応聞きたい。

 

 だが学生の領分に侵入してまで聞き出す気も無かったし、何より然り気無く一夏と簪の側からこっちを見てるうさ耳カチューシャの女を見れば、大体の察しもつくので此処は一旦オーフィスを引き摺って退散をしようと考える一誠。

 

 

「ま、何にせよまた今度って事で……ほら何時までも未来ある若者の邪魔はしちゃならんし、おら行くぞオーフィス」

 

 

 電波発動されてもドン引きされるだけだし、一応彼女の名誉を守る為にも撤退しなければならない。決してさっきから笑顔が怖いとかでは無い。と言い訳しながら背を向けた一誠なのだが……

 

 

「わかりました一誠。ですがちょっと待ってください」

 

 

 背を向けた瞬間、ソーナが一誠を呼び止め反射的に振り返った。

 

 ここで一誠はひとつ忘れていた。喪女となって電波飛ばしまくりな悪魔の貧乳女の拗れっぷりを……その執念を。

 

 

「オーフィスとは何回?」

 

「うわ!?」

 

 

 振り返った瞬間、自分の目と鼻の先にソーナの顔があり反射的に飛び退こうとした一誠。

 しかしそうはさせるかと、何故か駒王学園時代の制服姿のソーナに所謂『だいしゅきホールド』っぽく羽交い締めにされるや否や。

 

 

「っ!?」

 

「させませんよオーフィス。良いじゃないですか、一回くらい……」

 

「お前……!」

 

 

 焦った顔で蹴り飛ばそう向かってきたオーフィスに向かって手を翳し、金縛りのようにその場に硬直させたソーナは不敵な笑みを浮かべると。

 

 

「はぁ……♪ 水着なんて着てるから直にアナタを感じたままできるわ……」

 

「ぐみゃ!?」

 

 

 IS学園生徒と教師を目の前に思いっきり押し倒しながら、ヤバイ方のキスをめっちゃし始めた。

 一誠がもがこうが何だろうが、それ以上に強い力で抱き締めて身動きを封じ、無限の龍神たるオーフィスを金縛りで動けなくしている状態で見せつけるかの如く。

 

 

「あは……ちょっとヘタレな子を勇気付けさせるという意味もあるから協力してね? 答えは聞かないけど」

 

「んみゅー!? んみゅみゅーっ!?!?」

 

「雌悪魔……! 雌、悪魔ァ……!!」

 

 

 拗らせた悪魔の女は色々と凄い。

 執念といい、一誠とオーフィスを押さえつけられるレベルまで進化した結果といい……。

 

 

「あ……どうしましょう一誠? 下腹部が物凄いことになってるわ、今の私……あはははは♪」

 

「し、知るか! 離れろこのド貧乳が! 教育によくねーよ!」

 

「そうかしら? 皆食い入る様に見てるけど?」

 

「うるせぇ! 何が悲しくて売れ残りの女にキスされなきゃならねーんだ!」

 

「あら酷いわ……アナタがさっさと貰ってくれないせいなのに。

ねぇ、オーフィス? アナタも一緒にどうです?」

 

「ぅ……」

 

「いやー! だ、誰かこの変態女を止めろぉっ!!!」

 

 

 拗らせたままの女は要アフターケアなのだ。

 

 

「す、凄いことになってる」

 

「こ、こんな外であんな……」

「私達と変わらなそうな人達なのに、お、大人ね……」

 

 

 

「貧乳の悪魔……な、なるほど、兄ちゃんが逃げてた理由がわかった気がする」

 

「ハングリー精神が半端ない……」

 

「あ、あはは……束さんもちょっとびっくりかな?

で、その……『いっくん』は私がアレをいっくんだと思ってるとか、やっぱり思ってるよね?」

 

「っ!? あ、アンタ今……!」

「………。あっちが自称一夏だって知ってるんですか?」

 

「一発でわかったよ。だってアレがお花持って結婚してくださいって言ってた訳じゃ――」

 

「げっ!? あ、アンタそれ……!?」

 

「……うん、そういう事だから」

 

 

 まあ、こっちの兎もそんな兆候はありまくりなのだが。

 

 

 

 

 偽者はどうでも良いし、馴れ馴れしいのもムカつくから適当にあしらった。

 だって問題は、私が偽者に騙されてると思ってるいっくんに信用して貰う事なんだから。

 

 

「あの……生徒の前でああいう真似は……」

 

「しゅ、しゅみましぇん……」

「い、いえ決してアナタが悪いとは見てた限り思ってはいませんから……はい」

 

 

 ソーナちゃんは案の定暴走し、いきなり開幕で押し倒して凄いキスをしまくってたけど、あの光景に引いたという共通の心境を抱いたお陰で、いっくんには何とか偽者の事はどうでも良いという事だけを伝えられた。

 

 

「何ですか、結局アナタも乗ったじゃないですか」

 

「うるさい、我から一誠は奪わせない」

 

 

 見てわかったけど、私はソーナちゃんとは違う。

 あんな下品に飛び付かないし、見てる前でなんて考えられない。

 そう、だから私はソーナちゃんとは違う。

 

 

「結婚してくださいか。可愛いね一夏は?」

 

「ち、違うって! 言ったのは事実だけど……」

 

 

 問題は、あのオーフィスって龍神に声が似てるこの簪って子だ。

 このままだとソーナちゃんみたいになっちゃう気がしてならな――

 

 

「あ、一夏くんに一つ言うことが――あぁ、松葉杖じゃない方のですよ?」

 

「っ!」

 

「え、な、なんすか?」

 

「タバネはアナタの事を思いながら、毎晩毎晩独りで慰め――」

 

「ぎゃーっ!! 黙れぇぇっ!!!」

 

 こ、この……ば、爆弾をあっさりと放り込むな!

 

 

「……。ふーん」

 

「毎晩? え? なんて?」

 

「兎さんは性欲が強いって事だよ一夏」

 

「くっ、キミに知られたくなかったのに……ソーナちゃんめ!」

 

 

 拗らせた女には羞恥心も無い。それはわかるけど、私を巻き込むのはやめてよね……。

 というか、どうするんだよこの空気……あのちーちゃんですら部外者の一誠って人のゲッソリ具合を見て若干同情して追い出す感じがしないし……紅椿の説明もしないといけないのに……うぅ。

 

 

終わり




補足

ひんぬーさんの今。

オーフィスたんと真正面から笑ってしばき合えるし、2分程度は完全に動きをロックできるし、一誠を押し倒せもできる。


そんな喪女パワーを食らった一誠を見て千冬さんですら不憫に思わせるレベル。

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