色々なIF集   作:超人類DX

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本編はぶち壊されたというのに……。

はぁ……。


二人の未来予想

 俺は一体何の為にこの場所に居るのか。そんなものなど分かりたくもなかった。

 

 

「人間が80年ちょっとで死ぬなんてのは、所詮テメー等の中での話だ。

残念だったな、俺に寿命や老いの概念は存在しねぇよ!」

 

「貴様……確か先代政府との戦争の時に現れた人間……!」

 

「何をしに来た!」

 

 

 スキル持ちが存在しない世界。

 このまま居ても俺の知る仲間とは再会出来ない世界。

 

 

「何を? そらアレだ、今日は良い天気だろ?

だから久々にテメー等の数でも減らしてやろうと思ってよ」

 

「な、なんだと!? っ、お下がり下さいセラフォルー様! この男は……!」

 

 

 だからか知らないが、とっくに滅ぼせてる筈の悪魔共は未だ生き残ってる。

 滅ぼした所で最早意味を感じないから……そして新しさの欠片も感じないから。

 

 

「よぉセラフォルー・レヴィアタン。

くくく、この前はまんまと逃げた気になってる様だが、今度は三勢力間での戦争でもやってるのかい?」

 

「なっ!? セラフォルー様はこやつと――」

 

「……そうだけど、キミはやっぱり天使と堕天使に与するの?」

 

「それでテメー等に嫌がらせできるのならそうするが……へ、戦争ってのはバチバチと喧しいもんだ。

だからよ――平等にぶちのめしてみる事にしたわ……げげげげ!!!」

 

 

 新しさが欲しい。

 再会出来ない事を知った今、俺に残った欲はそれしかない。

 誰でも良い。何でも良い……。

 

 

「ま、待って! アナタは私達悪魔が嫌いなのは分かってるけど、どうしてそこまで……!」

 

「ムカつくからだよ、その全てが」

 

 

 俺に新しさを寄越せ……!

 

 

 

 

 俺達が強くなる為に、なんとギルバさんが指導してくれる。

 という話をリアス部長がグレモリー家でした途端、まるで部長が帰省してした時と同じ出迎えの準備をして待ってたんだけど。

 

 

『ようこそグレモリー家………に?』

 

「こんにちはー☆」

 

「…………」

 

 

 やって来たのは、ちょっと……いや、当社比3倍はご機嫌のセラフォルー様と、明らかに死んだ目をしながらその後ろを歩くギルバさん。

 

 王と女王、主と僕という関係を持つ上であまりにも対照的な様子……そしてギルバさんだという事もあって騒然となる。

 

 

「ようこそグレモリー家へ」

 

 

 しかしそんな中でもメイド長のグレイフィアさんは冷静に二人に迎える言葉を投げ掛ける。

 そういえばサーゼクス様と同等の年代という事は、グレイフィアさんもギルバさんの知り合いなのか?

 

 

「やっほーグレイフィアちゃん」

 

「ご招待に感謝致しますグレイフィア様……」

 

 

 グレイフィアさんに対してセラフォルー様は気安く、ギルバさんは死んだままの目で事務的に挨拶を返す。

 同じ女王同士――いやまあ男であるギルバさんの場合、別名である将軍(ジェネラル)の方が似合ってるが、ともかく同じ魔王の右腕的ポジションだから、少しは知らない仲では無いと思ったけど……。

 

 

「アナタに畏まられると違和感しかありませんねギルバ」

 

「そうでしょうか? まあ、アナタ様にとってはそうでしょうね」

 

 

 うーん……二人の間に展開される微妙な空気が、ただ事では無い事を物語ってるぜ。

 

 

 

 

 さて、ギルバさんの指導導入によりシトリー先輩達とのレーティングゲームが二十日後から二十三日後へと変更になった状態で修行をする事になった訳だけど、話に因ればいきなりギルバさんの指導が入る訳じゃなく、その前に堕天使のアザゼルさんによる指導からスタートする。

 

 

「ギルバが他人に修行を付けるなんて前代未聞な事態だが、正直な所奴がどんなやり方で指導するかが予想できねぇ。

だから取り敢えず俺は、お前達のスペックデータを参考に作ったメニューをやって貰う」

 

「おっす!」

 

「………」

 

 

 セラフォルー様がサーゼクス様と何かの話し合いをする為に城の中へと入っていき、残ったギルバさんがジーっと見てくる中始まるアザゼルさん監修の修行に、俺達は気合いが乗る。

 アザゼルさんは見た目のちょいワル男さとは裏腹に、考えることは結構科学的だったりする。

 

 なので修行を付ける俺達一人一人に合ったメニューはちょっと地味に感じるものの確実に成果のあるものなのだろう。

 

 

「朱乃は雷の力だけでは無く堕天使としての力も使え。

これまでの戦闘データを参照するに、本来楽に勝てる相手にも負けているのは完全に力を使ってないからだ」

 

「……ですが私は堕天使の力なんて」

 

 

 その際、堕天使に対して何時も視線が鋭い副部長がアザゼルさんの提示してきたメニューに対して否定的な答えを口にした。

 女王・姫島朱乃。ハーフ堕天使で堕天使の血を嫌悪している伏がこの前のコカビエルとの戦いで解ったのだけど、今もそうみたいで、あくまで副部長は堕天使の力に頼らないでいたいらしい。

 

 しかしそこは大人のアザゼルさん。

 副部長の否定の言葉をアッサリ聞き流す。

 

 

「事情は知ってるが、そのプライドで仲間を危機に落としたいのか? だったら俺は止めねーが」

 

「っ!」

 

 

 言外に今のままのお前は弱くて話にならないと言われたのを感じ取ったのか、副部長の顔つきが僅かに歪む。

 その様子に俺達は口出し出来ずに不穏な空気にちょっと困惑してしまうのだが……。

 

 

「事情を聞くに、彼女はハーフ堕天使でしたか」

 

 

 死んだ目をしたまんま俺達の様子を見ていたギルバさんが腰掛けていた石垣からゆっくりと立ち上がってアザゼルさんへと近寄る。

 

 

「ギルバ……あぁ、そうだ。コイツはバラキエルの娘だ」

 

「っ……!」

 

 

 ギルバさんの問いにアザゼルさんが答える。

 その際出てきた……副部長のお父さんの名前に副部長の顔が憎悪の表情へと変わり、アザゼルさんを睨み付けていた。

 

 

「バラキエル……? あぁ、彼の娘ですか」

 

「う……」

 

 

 しかしそんな表情もギルバさんと目が合った瞬間霧散してしまう。

 英雄であり狂人である女王ギルバ。如何に同じ女王といえど、その格の違いは小動物と恐竜以上の差がある訳で、流石の副部長も精神的に退いてしまった様だ。

 

 

「堕天使としての力を使わずに強くなりたいと仰いましたね姫島様?」

 

「う……は、はい……!」

 

 

 直接話し掛けられた副部長が息を飲みつつも頷く。

 

 

「おいギルバ、お前何をしようとしてるんだ?」

 

 

 じーっと副部長を品定めするかの様に見据えるギルバさんにアザゼルさんが眉を潜める。

 俺達は既に部長を含めて割り込めない空気に立ち尽くしてしまうだけになってるけど、そんな中をギルバさんは副部長に向かって言う。

 

 

「いえ別に、堕天使の力に頼らない状態での強化……つまり今日一日彼女の鍛練は私一人に任せて頂けますか?」

 

「え!?」

 

「なに……!?」

 

 

 マンツーマン完全指導。

 ギルバさんが何を思ったのか、副部長に直接修行を付けてやると言った瞬間、俺達周囲の者達は言われた本人を含めて驚愕してしまう。

 

 

「別に難しい事は言いません。そこまで自分の持つ力を使いたくなればそれで良し」

 

「だ、だがギルバ……」

 

 

 ギルバさんから肯定的な意見を貰ったのが意外だったのか、アザゼルさんも副部長も困惑する。

 

 地力を100%使わずに強くなるなんて難しい筈なのに、それを否定しなかったという事は、ギルバさんの修行はそれほどの効果があるのかと俺達は思ったのだが――

 

 

「ただし、そこまで否定されるのであれば、当然この程度は出来て貰いますよ姫島様」

 

「え?」

 

 

 英雄であり狂人。俺達はこの言葉を甘く受け止めていた。

 副部長に対して抑揚の無い言葉を送ったギルバさんが、グレモリー家の中庭に生えた木へと移動し、小さな小枝を採取する。

 

 その行為に何の意味があるのか、そして何故軽く城壁に向かって構えているのか? 俺達には意味が分からず、苦い顔をしたアザゼルさんを除いてただ眺めているだけでしか無かった。

 

 

「この程度を出来て貰わなければ……ね」

 

 

 甘かった。

 魔王と同格と呼ばれるギルバさんの実力を俺達は嘗めていた。

 手に持った小枝を軽く城壁へと振った瞬間、堅牢な壁が豆腐の様に切り刻まれて崩れてしまう様を見るまで、俺達はギルバさんをあくまで文献や伝承で知ったつもりだったんだと思い知らされた。

 

 

「か、壁が……」

 

「う、嘘……魔力の類いすら使わずあんな軽く……」

 

「う、お……と、トラウマが……」

 

 

 豆腐の様に切り刻まれた壁が崩れ、砂煙を背に俺達を見据えるギルバさんの行った、単純にして実は物凄い行為に俺達は空いた口が塞がらなかった。

 

 確かに俺達悪魔ならやろうと思えばギルバさんと同じ事が出来るだろう。

 しかしそれはあくまで種族として、転生した力があってこそ初めて成立する事であり、小枝一本を折る事無く、また悪魔としての力の源である魔力すら使用せず単純な力でやれるかと言われたら、俺達は不可能だと答える。

 

 

「種族としての力を頼らずともこの程度は出来る。

さて姫島様……アナタ様にも出来ますか?」

 

「っ」

 

 

 ギルバさんの底が見えない瞳が真っ直ぐと副部長に向けられる。

 

 

「出来ますか?」

 

「ぁ……」

 

「出来ないんですか?」

 

「そ、れは……」

 

 

 それはまるで責めている様にしか見えない。

 しかし誰も助け船が出せない……そりゃそうだ、だって今ギルバさんの雰囲気が口を挟むなと語っているのだから。

 

 追い詰められた様に目を泳がせる副部長が俺達に助けを求める様な視線を送ってくるが、当然俺達にそんな力なんて無い。

 

 

「覚悟があるなら私は全力を注ぐ。ですが覚悟が無いのであるなら時間の無駄になる。

もう一度問いますよ姫島様――――本当に堕天使の血と決別するのですか?」

 

「う、うぅ……!」

 

 

 ギルバさんが遂に副部長の真理を突く。

 それに対して副部長は混乱した様に顔を歪めてしまい……。

 

 

「リ、リアス……わ、私の我が儘で足を引っ張って申し訳ありませんでした……!」

 

 

 目を見開いて驚く部長に謝った。

 

 

「あ、朱乃……」

 

「ですがもう足は引っ張りません! 例え嫌いな力でも強くなる為には拘りません!」

 

 

 そして拘りを捨てたと、アザゼルさんの指導を完全に飲み込むと宣言した。

 

 

「…………。あれ、心がへし折れると思ったのに、何でだ?」

 

「おまっ、折るつもりだったのかよ……!?」

 

「聞き分けの無さそうな餓鬼の言い分ばっか聞いてても埒が明かないと思ったので、適当に黙らせようと……」

 

「ひでぇ、結果オーライだから良かったが……」

 

 

 

「うおぉ、スゲーぜギルバさん」

 

「何というか、交渉事に強そうな出で立ちだったな」

 

 

 それは喜ぶべき事なのか……は今は分からないけど、これを見越してたとするならギルバさんってスゲーぜ。

 俺もああなれるのかな……。

 

 

 

 

 ギルバにしてみればリアス・グレモリー達は遠いムカつく記憶を思い起こす存在だ。

 

 

「おかしい……」

 

 

 知らない顔があるものの、概ね自分が奪われた時の面子が揃ってる。

 そして一度へし折れればそのまま朽ち果てることも知っていた。

 だからこそ、嘗ては両足を永遠に破壊してやった少女と同じ顔の少女に対して嫌味をぶつけて適当に折ってやろうとした。

 しかし結果は違った。

 

 

「雷光だ、雷光になればお前は更に上にいける」

 

「は、はい……!」

 

 

 折れなかった。それどころか、堕天使の力を取り込もうという考えに切り替えもした。

 アザゼルの指導を受けて堕天使の力を引き出す訓練をしている姫島朱乃をぼんやり眺めながら、ギルバはつくづく思い通りにならないこの世界の悪魔達に口の端が歪む。

 

 

「げげげ……」

 

 

 好きか嫌いかで判断するなら、リアス・グレモリー達はゼノヴィアとイッセーを除いて嫌いだ。

 しかしその中身が自分の知る悪魔達とどこまでも違う。

 セラフォルーと過ごした時間でそれは既に分かっていたつもりだったが、改めてギルバは思った。

 

 

「げげげ……新しい」

 

 

 嫌いな顔した小娘共からすら貰う新しさに、ギルバは一人嗤う。

 

 

「相変わらず悪人みたいな顔ねギルバ」

 

「あ?」

 

 

 其々がアザゼルに与えられたメニューでの修行を、特殊な防壁を施した結界内でしているのを眺めながら嗤うギルバの背後から女性の声が聞こえる。

 

 その声に釣られて振り返ると、そこに居たのはメイド服を着た銀髪の悪魔……グレイフィア。

 

 

「ゲストに向かって気安いな」

 

「そうでしょうけど、アナタとは他人という訳じゃないでしょう?」

 

 

 何時もの畏まり口調が互いに無い、昔からの縁がある同士の気安いやり取り。

 女王同士という縁と、かつては敵同士だったという縁、決して浅くは無い奇妙な縁を持つこの二人は、修行をするイッセー達を前に其々メイド服と燕尾服姿での会話が始まる。

 

 

「サーゼクスの所に居なくて良いのか?」

 

「彼はセラフォルーと話し合いをしててお暇を貰ったのよ」

 

「あっそう」

 

 

 赤龍帝の籠手の力を引き出す訓練をしているイッセー、デュランダルの制御の訓練をするゼノヴィアにほんの少し穏やかな視線を向けている……それに気付きつつも気付かないフリをしたグレイフィアは、ところでとギルバにこんな話を振り出す。

 

 

「セラフォルーとは相変わらずなの?」

 

「あ?」

 

 

 セラフォルーの名前が出て一瞬今朝の出来事がフラッシュバックしたギルバが露骨に嫌そうな顔をして、隣に立つグレイフィアに視線を移す。

 

 

「あのアマ、何か余計な事でもほざいたのか?」

 

「いえ、私とサーゼクスは何も」

 

「じゃあ何だよ?」

 

「いい加減彼女の気持ちに気付いてるでしょう?」

 

 

 またそんな話か……。

 グレイフィアの言葉にギルバはげんなりとしてしまう。

 

 

「セラフォルーを見てると同じ女同士として不憫に思えるのよ。彼女だって子供の一人が居てもおかしくない歳になったし」

 

「テメーがサーゼクスとガキをこさえたからって随分とお節介だな」

 

「昔は私だって想像できなかったわよ、けど子供は良いわよ?」

 

「へっ、その気になったら人間の嫁でも見付けてやらぁ」

 

 

 だから今朝のアレは只の間違いだ。

 密かに自分のやらかしてしまった末代まで封じたい所業を消し去ろうと皮肉っぽく話すギルバ。

 

 

「悪魔が嫌いなのは今の若い者達以外なら誰でも知る所だけど、セラフォルーはアナタの嫌いな悪魔像なのかしら?」

 

「………」

 

 

 何時にも増して食い下がるグレイフィアにギルバは舌打ちをした。

 思い返してみれば、この女が旧政権派から離脱してサーゼクスと一緒になってから辺りからか、当時はまだ悪魔を破壊してやる気満々だった自分に対して妙にセラフォルーの話を振ってきた気がする。

 その時は意味が分からなかったが、今となれば何となくわかってしまう。

 

 

「当時からちょくちょくセラフォルーから密かに相談されてたのよ」

 

「は? その時からなのか? あの女バカじゃねーか」

 

「そうよ、時間にして数百年も変わらずよ。その一途さだけは認めて上げても良いんじゃない?」

 

「良い迷惑だぜ」

 

 

 この女……セラフォルーを自分に投げつけてると。

 サーゼクスと子供が出来てからは頻繁に自慢メールしまくってくるのも、今思えば遠回しの行為だった。

 

 

「そういえばさっき、セラフォルーが私達に何か言ってないかと心配してた様だけど……」

 

「おい銀髪悪魔。世の中にゃ知らない方が良いって事もあるんだぜ?」

 

「…………。そうみたいね。セラフォルーと添い寝して、寝惚けて赤ん坊の様に――という話は知らない方が良いわね」

 

「あのバカ女ァァァァッ!!!」

 

 

 そしてセラフォルーはそんなグレイフィアに直ぐ近況を報告する。

 お陰で直ぐにでも消し去りたい話は見事にバレてしまい、ギルバは憤怒の形相でセラフォルーを張り倒そうと叫ぶ。

 幸いギルバの怒声は防壁内で修行してるイッセー達に聞こえる事は無く、またグレイフィアに『どうどう』と落ち着かせられてる所も見られては無い。

 

 

「落ち着きなさいギルバ。知ってるのは私だけでサーゼクスには知られてないわ」

 

「バレてたら口封じでぶち殺してたぜ……!」

 

「それはホッとしたわ」

 

 

 ギロリと血走った目で睨むギルバに対してグレイフィアは臆する事無く、何故か妙に微笑ましいものを見る表情だ。

 

 

「一応セラフォルーの為に言うけど、彼女から話した訳じゃないわ。

偶々セラフォルーの胸元と首筋に強く吸われた様な痕があるのを見て、私から問い詰めただけ」

 

「チッ」

 

「セラフォルー本人は寝ぼけてたら仕方ないって笑ってたけど……。ふふ、あれだけ私達悪魔に恐怖を植え付けた男が、セラフォルーを抱き枕にねぇ?」

 

「そ、それ以上言ってみろ……殺すぞ」

 

「あら怖い怖い。それなら黙るわ」

 

 

 どいつもこいつも嘗てとは違う。

 皮肉にもそれが悪魔を生かしている理由なのだが、弄られると殺意が沸くのは変わらない。

 とはいえ、何をする訳でもないが……。

 

 

「サーゼクス達にバラしらたら契約打ちきりで即殺すからな」

 

「わかってるわ。今更アナタと敵対したくないし」

 

 

 グレイフィアは微妙に苦手だ……そう思うギルバなのだった。

 

 

 

 

 

 いーちゃん怒ってるかな……。

 グレイフィアちゃんにバレちゃったの。

 

 

「概ね拝見させて頂いた結界、皆様のレベルは高水準に纏まってて非常に優秀と私は思います。

ですが、まだまだ強くなれる可能性は沢山ある。従って明日からはアザゼル様の打ち出したメニューに加えて私がお手伝いさせて頂きます」

 

『はい!』

 

 

 多分グレイフィアちゃんの顔を見るにバレちゃってる事を話したっぽいし……。

 お仕事モードでリアスちゃん達に接してるからイマイチ内面が……。

 

 

「今日は我が家で是非夕飯を一緒にしようではないか」

 

「ええ、ギルバ殿がグレモリー家に来るのも、リアスがまだ幼かった頃以来ですからね」

 

「と、父と母は言ってるから、どうだいギルバにセラフォルー?」

 

「はぁ……セラフォルー様が宜しければ私は是非。どうしますかセラフォルー様?」

 

「へ? あ、う、うん……じゃあご馳走になろうかな?」

 

 

 ……。あれ、怒ってない? てっきり『バカ女ァァァァッ!!!』と怒鳴り散らされると思ってたのに……。

 

 

「では本日はお世話になります」

 

「うむ」

 

 

 ……? グレイフィアちゃんが何か言ったのかな。

 

 

「いーちゃん……その……」

 

「話ならあの銀髪から聞いた。チッ、そんなアホみてーな格好してるからバレたんだ――と、言いたいが、今回だけは俺に落ち度があるせいか、何故か怒れねぇ」

 

 

 そう腑に落ちない顔をしながら周りに聞こえないように不機嫌に鼻を鳴らすいーちゃん。

 どうやら本当にそこまで怒ってはないみたいだけど……。

 

 

「あれ、セラフォルー様? 首筋に虫刺されの痕が――」

 

「さぁさぁ兵藤さま! お風呂入りましょうお風呂! そして女風呂を共に覗きましょうぞ!」

 

 

 い、衣装だけは変えないとまずいかもしれない。

 イッセーくんに気付かれて言われたせいで、他の子達も気付いちゃったみたいだし……。

 

 

「あ、イッセー先輩がギルバ様に……」

 

「虫刺され?」

 

「そういえばよく見たらセラフォルー様の胸元にも何個か……」

 

「あ、あれれー? 冥界蚊に刺されちゃったのかなー☆」

 

 

 ……。な、何で皆して目敏く……。

 イッセーくんと木場くんって子をいーちゃんが無理矢理引っ張って行った良いけど、残りの子達が……。

 

 

「虫刺され? いや待て、それは虫刺されというよりは――あ、なるほどな」

 

「あらセラフォルーちゃん。漸く想いが彼に通じたの?」

 

「い!? い、いやその……これは……」

 

 

 ど、どうしよ……。おじさまとおばさまには完全に意味まで知られた感じが……。

 

 

「………。キスマーク……? あ、なるほど―――って、ええっ!? それギルバのかい!?」

 

「こ、声が大きいよサーゼクスちゃん!」

 

「だ、だって!

確かに今日のセラフォルーはヤケに変な痕を付けてるなって思ってたけど……! ギルバにされたのそれ!?」

 

「こ、これには複雑な事情があるの! 頼むからオーバーに驚かないで! いーちゃんが見たら多分暴れるから……!」

 

「っ……そ、そうか……わ、わかったよ。僕もギルバは怒らせたくないし」

 

 

 こっちに来るまでには消えてるかなと思ってたのが甘かった……。

 

 

「良い皆? この事をいーちゃん――つまりギルバに振らないでね? 恐ろしい事になるから」

 

『……』

 

 

 念を押して置けば多分大丈夫だろうけど……。

 

 

「いーちゃんは寝ぼけてただけで、えへ……えへへ……」

 

(……。めちゃくちゃ喜んでる)

 

 

 うん……あの夜見たいーちゃんの姿は私だけのもの。

 いくらバレても良いけど、いーちゃんの弱い部分だけは誰にも教えない。

 

 

「アザゼル、頼むからギルバにこの事について聞くなよ? 死にたくなければね」

 

「解ってるぜ。

しかし、セラフォルーの態度とギルバの態度を見比べると、セラフォルーが不憫だぜ」

 

 

 いーちゃんの弱い部分も含めて私は大好きだから。




補足

かなりガッツリと寝ぼけたと自供するギルバさん。

ただ、端から見れば完全にアウト。

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