色々なIF集   作:超人類DX

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ミッテルトちゃんもヒロインやらせろ!

ということで多少イチャコラ成分を追加しました。


魔王様と人外さんと……時々イチャコラ

 どれだけ理不尽な力を持とうとも、それに準じた性格(キャラ)がどうしようもなければ、結局は負けて終わる。

 それが兵藤一誠という若者だ。

 在る現実から都合の良い幻実へと逃げても、持ち前の不運で大概負けるのが彼の持ち味だ。

 だからこそ只一つ人外は彼を気に入った。

 単なる過負荷(マイナス)でしかない彼を人外は大概助けて来た。

 ある一つの……初めて平等にカスと見下すだけの彼から貰った、たった一つの借りの為に。

 

 

「何時から僕は世話焼きになってしまったのやら……。

フッ、割りと彼が素直だったから? それとも言彦のボケを完封出来る概念を知らず知らずの内に僕に与えてくれたから? まあ、どちらにしてもだよ一誠くん……」

 

 

 僕が此処まで動いておきながら、傍に居る悪平等(ぼく)を守れないなんて事はいくら過負荷(マイナス)でも許さねーぞ?

 

 

 人外は薄く笑みを浮かべながら天を仰ぐと、何処へと歩き始める。

 カラン……コロン……という下駄の音を奏でながら……。

 

 

 

 

 

 知らなかった……そう、知らなかったのだ。

 いやそんな言い訳なんて通用しないし、彼女ならもしかすれば『ふーん、知らないなら別に構わんよ。僕は決して怒ってる訳じゃないしー』と安心で魅力的な笑顔を向けてくれるだろう。

 けれどそれでは駄目だ。許してくれるかもしれないがそれでは駄目だ。

 

 別に怒ってないから許すも何もないよ。

 だからも2度とオメーと話はしないな。つまんねーし。

 

 そう言われると思うだけで気が狂いそうになる。

 紅髪の青年は、独り頭を抱えながら先程あった事も相俟って本気で狼狽えていた。

 事の発端は自分の妹の婚約話から始まった。

 フェニックス家の三男であるライザー・フェニックスとは結婚したくないと主張する妹の為に、逃げ道を与えるつもりで提案させたレーティングゲーム。

 

 このゲームで見事妹が勝てば婚約は無かったことにすると双方に約束させた……まではよかった。

 

 

『サーゼクス様……お耳に入れて欲しい事があるのですが……』

 

 

 八方美人で眷属も全て女性で構成し、その性格も余り褒められるものではない……そんな印象があった青年・ライザー・フェニックスは、そんな印象とは掛離れた物腰の柔らかい笑みを魔王である自分に向けながら言ったのだ。

 

 

『貴方の妹様であるリアス・グレモリーさんが、貴方がよーく知る安心院さん自身でもあり一番に気に入る悪平等(ぼく)……そして同等の扱いをしている過負荷(マイナス)の少年に軟禁生活を強いているみたいですが、安心院さんは割りとムッと来てるようですよ?』

 

『……ライザー?』

 

 

 突如自分の住む城へ来訪し、個人的に話がしたいとの申し出を受けて自室に招いたサーゼクスは首を傾げ、そして驚愕する。

 何時もの尊大が見え隠れする態度では無い……冷めているというか何事も全てが同じと見ている目を向けながら、他が聞けば何の事だか……しかし青年にとっては嫌でも分かるライザーの言い様に魔王たる青年は全身に氷水を掛けられた気分になった。

 

 

『ちょ、ちょっと待ってくれ! ぼ、ぼくって、まさかライザー……キミは!!』

 

『別に言う必要性も無かったので今まで黙ってました。

ええ、サーゼクス様のご推測通り、私は悪平等(ノットイコール)…………つまり安心院さんに近い者です』

 

『そ、そんな……』

 

 

 嘘だ……。

 紅髪の青年・サーゼクスは盛大に狼狽え、そして気付きも出来なかった己の不甲斐なさを悔いた。

 かつて出会った絶対的で平等主義者な彼女になりたくてもなれず、それでも諦めずに居たのだ。

 それが、知らない間に……自分を差し置いてライザーが悪平等だったなんて。

 サーゼクスは魔王という立場も関係なくライザーに嫉妬の念を抱くも、等の本人であるライザーの顔は飄々としていた。

 

 

『まあ、私が悪平等だったなんてどうでも良いでしょう。

そんな事よりどうするんですか? 貴方はやる気になった安心院さんを止められるんですか?』

 

『っ……』

 

 

 どこまでも冷めきった目……いや見下した目。

 悪平等以外は全て同じモノと捉えているその目がかつて出会った彼女の目と被り、サーゼクスの顔が歪む。

 

 

『リ、リアスは知らなかったんだ……。

だから今すぐにでもその人間と悪平等の人に関わるなと命じて……』

 

『だからもうその段階は終わってるんですってば。

良いですか? 確かに貴方の妹さんは彼と彼女を軟禁すればどうなるかなんて知りもしないでしょう。

リアス・グレモリーから見た二人は只の弱い者なんですからね……。

問題はその二人をあの安心院さんが実は気に入ってたりするという所で、貴方の妹は既に二人を『知らぬ事とはいえ』自由を束縛し、あまつさえ片方を駒にするため悪平等(かのじょ)を人質にしている点だ。

今更貴方がシャシャリ出て命令しても、やってしまったという結果は変わらない』

 

 

 尊大なライザー・フェニックスでは無く、悪平等(ノットイコール)としてのライザー・フェニックスの言葉がサーゼクスの胸を深く抉った。

 何の理由があって妹がそんな真似をしたのかは分からないが、そのせいで安心院なじみという絶対的存在が己を…………。

 

 

『片方は堕天使、片方はリアス・グレモリーにとっては得体の知れない力を持つ人間だから警戒するのは仕方ないと個人的に思います。

まあ、だからと言って軟禁生活を強いるのは慈愛に満ちてるらしいグレモリー家の人間としてどうかと思いますがね……』

 

『…………』

 

『とまあ、言いたい事は言いましたので私はこの辺で……。

では、レーティングゲームが来るその日まで……魔王・サーゼクス・ルシファー様』

 

 

 静かな口調のまま、言うだけ言って一礼をしたライザーはそのまま魔方陣を展開させてサーゼクスの自室から消えた。

 残ったサーゼクスは、只呆然と……そして徐々に焦りを帯びた表情を浮かべ、とにかく妹を止めようとまずは人間界に居る彼女に連絡を取ろうと動こうとするが……。

 

 

 

 

 

 

 

『おっと、いきなり慌てても仕方ないだろ? まずは落ち着きなよ』

 

『っ!?』

 

 

 

 

 部屋を出ようとドアノブに手を掛けたその瞬間、居ない筈の声が背後から聞こえてサーゼクスの心臓は大きく鼓動した。

 それは、居るわけ無い他人声が聞こえたから驚いたというのもあったし、その声が忘れられない声だからというものもあった。

 心地良さすら覚える女性……いや少女の様な声を背後から耳にしたサーゼクスは即座に振り返る。

 するとそこに居たのは…………。

 

 

「やっほーグレモリー君。

フェニックス君の家に遊びに行く次いでに寄っちゃった」

 

 

 長い白髪と巫女を思わせる白装束。

 最後にサーゼクスが見た時とは違う出で立ちだが、その顔も声も雰囲気も何もかもがあの頃とまるで変わらず、サーゼクス・ルシファーとして、いや只のサーゼクス・グレモリーとなって彼が眠る時に使うベッドに腰掛けながら笑みを見せる彼女に対して、その場に膝を付く。

 

 

「お、お久し振りです……貴女に会いたかった……安心院さん……」

 

 

 まるで絶対の存在を崇める様に、己の立場も何もかもを忘れてサーゼクスが膝を付く。

 彼女を知らぬ者からすれば今のサーゼクスの行動はまさしく異常であるのだが、安心院なじみはそんなサーゼクスの過剰な挨拶に困った様な笑みを見せる。

 

 

「おいおい、魔王様たるキミが只の人外でしか無い僕にそんな真似するなよ?

誰かに見られたら大変だぜ?」

 

「構いません。僕にとっては貴女が全てですから……」

 

「相変わらずウザい小僧のままかよ……。

だから悪平等(ぼく)にはなれないんだよキミは……。

まあ良いや、何の関係もないキミの所に僕が来た理由は、さっきフェニックス君からされた話で分かってるよね?」

 

 

 やれやれと肩を竦めながら早速本題を告げる安心院なじみに、膝を付きながら頭を下げていたサーゼクスの身体が大きく動揺を告げてるかの如く動く。

 

 

「ゎ……かってます……。

申し訳ありませんでした……知らぬ事とはいえ妹が……」

 

 

 彼女が気に入るという二人の存在に僅かながら嫉妬しつつも、謝罪の言葉を口にするサーゼクスに安心院なじみはあっけらかんとした口調で言った。

 

 

「うん、良いよ別に。

イザとなったら一誠くんとミッテルトちゃんを全力で守るし」

 

「………………………」

 

 

 一誠とミッテルト……それが彼女のお気に入りの名前。

 サーゼクスは楽しそうに二人の名前を口にする安心院なじみの足元で頭を下げながら、しっかりと記憶に刻み込んだ。

 何せ彼女自身が守るとまで言わせてる時点で、かなり優遇されたポジションに居るのは火を見るよりも明らかだし、悪平等になれなかったサーゼクスからすれば羨ましいことこの上無いのだ。

 だからしっかりとサーゼクスは覚えたのだった。

 

 

「僕が此処に来たのはだねグレモリー君。

キミがフェニックス君の話を聞いてリアス・グレモリーさんに二人を解放しろ…………なーんて言い出さない為だったりするんだ」

 

「え……でもそれだと……」

 

「うん、まあ一誠くんは彼女達に利用され続けるだろうし、その為にミッテルトちゃんが人質代わりにもされるだろうけど、久々にすぐ逃げるだけの男である一誠くんが誰かに立ち向かうんだぜ? しかもミッテルトちゃんという悪平等(ぼく)の為に。

だから、僕自身驚く事に、オラわくわくすっぞ! と言いたい心境なんだ」

 

「は、はぁ……」

 

 

 人指しを立てながらという、昔と変わらないポーズを取りながら話す安心院なじみにサーゼクスは下げていた頭を上げて彼女をポーッと気の抜けた顔で見つめる。

 

 

「まあ、だからキミが余計な事言ってレーティングゲームを中止にさせられたら少しだけ困るんだ。

そのゲームが終った後は好きにしても僕は知らんけど」

 

「わ、分かりました……じゃあレーティングゲームは開催させますね?」

 

 

 よくは分からないが、彼女がそうしたいのならそうした方が良いんだろうと、サーゼクスは少し戸惑いながらも首を縦に振る。

 

 

「うん、ありがとう」

 

 

 すると安心院なじみは、ニコリと誰もが惹かれる様な可愛らしい容姿から魅せる笑顔を浮かべると、そのまま膝を付いたまんまのサーゼクスの頭を優しく撫でる。

 

 

「っ!?」

 

 

 ドクン……と、安心院なじみの手の感触を頭で感じたサーゼクスの心臓が今再び大きく鼓動するのと同時に顔に熱を感じた。

 

 

「あ、安心院さん……」

 

「いやはや、まさかこの僕が過負荷(マイナス)一人の為に此処までさせられるなんてなぁ」

 

 

 実の親ですら感じない強大な安心感がサーゼクスの心を麻薬の様に侵していく。

 初めて出会った時もそうだ。何処までも魅力的で何処までも安心する……初恋の人。

 だからこそ、サーゼクスの身体はほぼ本能で動いてしまう。

 

 

「おっと、何のつもりだいこれは?」

 

「ぼ、僕は……」

 

 

 自分の頭を撫でる彼女の手を掴んで引き寄せ、そのままベッドの上に押し倒し、それでも薄く笑みを浮かべている彼女をサーゼクスは辛そうな表情で見下ろす。

 

 

「僕は……! 僕は!」

 

「おいおい、キミは妻子持ちだろ? 浮気でもするつもか?」

 

「そ、そんなの……周りが勝手に押し付けただけだ!」

 

 

 カタカタと震えながら、心の内にひた隠していた事を露呈してしまう今のサーゼクスは魔王ですら無い、只の子供のようだった。

 

 

「ハァ……小僧ごときが僕を抱くってか? あんま調子くれなんよ?」

 

「あが!?」

 

 

 しかし、突然醒めた顔になる安心院なじみがサーゼクスの額にデコピンし、彼の身体が向こうの壁際まで吹っ飛ばされる事で未遂となる。

 

 

「くだらねぇ……オメーごときに靡くとでも思ってるのか? 安心院さんはそんな軽い女じゃねーぜ?」

 

「ぐぅ……ご、ごめんなさい……。で、でも僕は……!」

 

「知らないな。キミが僕をどう思おうが勝手だが、生憎僕はキミに何の興味もない。

こうして話をするのだって、用件があったからに過ぎないのさ。勘違いすんなよ……只のサーゼクス・グレモリー君」

 

 

 そこら辺に落ちた消ゴムでも見る様な目で、壁に背を向けて崩れ落ちるサーゼクスを見下ろして言った安心院なじみは、最早用は無いとその場から一瞬で姿を消した。

 

 

「…………うぅ」

 

 

 そして残ったのは、自分の部屋で失恋して泣いている高校生を思わせる悲しみに満ちたサーゼクスだけだった。 

 

 

 

 

 

 そんな出来事が遠い地で起こっているとは知らず、自由になりたい若者、兵藤一誠は弱小な身体を何故か酷使していた。

 理由は簡単……自由を束縛する相手であるリアス・グレモリーと愉快な仲間達のお陰である。

 

 

「ゼェ……ハァ……ぐっ……」

 

 

 両手と背にある大量の荷物と山の中。

 それはまるで遠くの地へと旅行へ馳せ参じる姿を連想させるのだが、生憎一誠は旅行へ来ている訳では無く、単なるパシりだ。

 

 

「だ、大丈夫っすかイッセーさん……?」

 

「お、おぅ……何とかね……」

 

 

 目的地目指して山の中を登る一誠の隣には、一誠程では無いものの背に荷物を背負う金髪ロリっ娘こと堕天使ミッテルトが今にも真っ青な顔色で吐きそうになってる一誠を心配した面持ちでフラフラな身体を支えている。

 

 

「な、何で女ってのはこんなに荷物が多いんだよ……」

 

「さ、さぁ……女のウチにもこれは解りかねるっす……」

 

 

 持っている荷物の多さと重さにブツクサ文句を言う一誠はそれでも負けじと1歩1歩足を進める。

 何でこんな事になったのか……一誠はつい先日の事を思い出していた。

 

 

 

 

 軟禁生活を送る一誠は、今日も元気に学校へと登校した。

 その性質故に人々が彼を見るなり露骨な距離を置く中をヘラヘラした面持ちで歩いていた一誠だったが、そんな彼の前に現れた数人の人物によって、教室へと向かう予定が狂い、一切関わりが無い筈の旧校舎へと連れていかれてしまった。

 

 

「は? 転生しろ……ですって?」

 

 

 正直な所、自分の前に立ちはだかりこうして連行された時点で嫌な予感しかしなかった訳だが、やはり話の内容も最低なものだったと一誠は自分の目の前に座る紅髪の少女を若干睨む。

 

 

「ええ、そうよ」

 

「…………。理由を聞いても?」

 

 

 薄暗い部屋を根城にする悪魔……リアス・グレモリーとその眷属達に囲まれているというアウェー感満載な気分のまま、一誠は何と無く察しているものの敢えて理由を聞く。

 するとリアスはしれっとした顔のままその口を開く。

 

 

「そうね……貴方の持つ神器では無い謎の力……。

その力を私の為に使って欲しいからと言えば納得するかしら?」

 

「…………………………」

 

 

 やっぱりな、コイツ……。

 久々に頭に来る事を言ってくれたリアスについつい釘と杭で串刺しにしてやりたくなった一誠だったが、その衝動を押さえ込み、ニコリと貼り付けた笑顔を浮かべる。

 

 

「あははは、冗談は止めてくださいよ。こんな弱っちい俺なんて貴女方のお仲間にしてもマイナスにしかなりませんよ?」

 

 

 ヘラヘラと笑いながら断ると遠回しに告げる一誠。

 しかしそう言われると予想していたのか、リアス…………では無くその後ろに立っていただけの彼の双子の兄とされる兵藤誠八が苦々しげに口を開いた。

 

 

「お前一人だけならこんな事は言わなかった。

だが、お前と一緒に居る堕天使の事があるし、何より先輩の支配下に置けばある程度自由になれるんだ……お前にとってもメリットはある」

 

「それは無いのと何ら変わらないと思うけど?」

 

 

 何を言ってるんだこの自称:兄貴は? と小馬鹿にした笑みを浮かべて言い返す一誠だったが、直後にリアスが口にした言葉のせいで顔色が変化する。

 

 

「私は別に断っても構わないわよ? 引き続き軟禁生活が送りたければね。

ただ……うーん、彼女は堕天使で私達は悪魔でしょう? そうなって来るとそろそろ彼女を堕天使側に渡さないといけないのよねぇ」

 

「………は?」

 

「あら、何を馬鹿なって顔をしてるけど当然じゃない。

彼女が堕天使な以上、この地で行った行為の罪の裁きは堕天使のトップが行う事よ」

 

「……………」

 

 

 一誠の顔付きが徐々に崩れていく。

 

 

「そうなれば貴方は2度と彼女と再会は出来ないわ。

けど貴方が悪魔に転生し、彼女を……そうね、使い魔として契約すればその限りではないと私は思うのよ」

 

「……………………」

 

 

 

 一誠の口許が怒りで歪み始める……そう判断したリアスは内心ニヤリと笑う。

 彼が見せたあの力……死んだ状態の存在をリスク無しで復活させる力は新たに眷属となったアーシアの持つ神器を凌駕する。

 その力を利用すれば……今度行うレーティングゲームの相手であるライザー・フェニックスが持つ不死に食らい付ける。

 だからこそ、彼に利用価値を見出だした上での勧誘だった訳だが、リアスは知らない。

 

 

 

(………………。ハァ、バカな俺より今のコイツ等はバカだな)

 

 

 一誠の見せる歪んだ表情は表向きで、内心は完全にせせら笑っていたのだ。

 過負荷(マイナス)である自分を戦力に数えようとする……知らないこととはいえ、それがどんな死亡フラグなのか……と。

 

 

「アンタの言いなりになればミッテルトちゃんには何もしないんですね?」

 

「ええ、貴方の使い魔なら手の出しようも無いしね……」

 

「………………」

 

 

 

 だから一誠は敢えて向こうからくれた塩を受け取った。

 そろそろコイツ等に仕返しがしたかったから……。

 そしてなりよりも知って欲しかったから……。

 

 

 お前ら程度に過負荷(おれ)を殺せねぇ。

 

 

 何も知らない馬鹿の心をへし折るには丁度良い……一誠は嫌々そうな顔を表に、内心はこれでもかと言う程嘲笑いながら……彼女達の『お仲間』になった。

 

 

 という話の基、実は余り物の兵士の駒一つで悪魔に転生した身となった一誠は、10日後に行うレーティングゲームの為の修行場であるグレモリー家別荘に向かう為山を登っていたという訳だ。

 ちなみに既にリアス達は別荘に到着しており、ジャンケンに負けた一誠が全員分の荷物を担がされているという理由が、この大量の荷物の正体だった。

 

 

「あ、悪魔に転生したお陰で多少腕力とか体力が上がってるって自覚したけど……キ、キツイ……」

 

「ちょっと休憩しましょう……」

 

 

 ライザーとのレーティングゲームで裏切る気満々な一誠に駒の転生で縛り付けるは余り意味が無い。

 問答無用の回復・蘇生能力だとリアス達は思っているだろうが、そんな前向きな力では無い。

 

 

「時が来たら転生した現実から逃げて人間に戻ろう。

悪魔になってもやっぱりロクな事ねーや」

 

「っすね。やっぱりイッセーさんは人間の方が素敵っす」

 

 

 あらゆる現実から逃げる力……それが兵藤一誠の過負荷(マイナス)なのだから。

 

 

「は、ははは……今の言葉でちょっとだけミッテルトちゃんが好きになれたかもっと……」

 

「うへ!? ちょ、ちょっとイッセーさん!? 外でだなんて恥ずかしいっすよ! そ、それに今のうち汗臭いだろうし……」

 

 

 大量の荷物を横に置き、近くの木に背を預けて座り込む一誠が隣に座ろうとしたミッテルトを抱き寄せ、無い胸元に顔を埋める訳だが、今の状況的に女の身としては色々恥ずかしいミッテルトの顔は真っ赤だった。

 

 

「アホか……性犯罪者にゃなりたかねーって言ってるだろ。

それに……スンスン……そうでもねーぞ?」

 

「あっ……! い、イッセーさんの馬鹿、変態!!」

 

「あいたたた!」

 

 

 が、1度誰かに甘え出すと止まらない一誠はまるで気にも止めた様子もなく、ミッテルトの胸元に顔を埋めたままスンスンと匂いを嗅ぐ。

 それがまた余計にミッテルトの全身がヒートする原因であり、真っ赤っかな顔のままポカポカと一誠の頭を叩くが、結局休憩が終わる数分の間一切離れる事は無かった。

 

 

「う、うぅ……何でこんな時に限って甘えてくるんすか……しかも結局抱いてはくれないし……」

 

「見た目幼女は駄目だろ?」

 

「抱き着くのはアリなんすか!?」

 

「抱き着く? 違うね、抱き枕代わりだよ履き違えるなチビッ子」

 

「うぎー!! 屁理屈っす! 抱け! そしてうちを孕ませろ!!」

 

 

 何やかんやで仲はかなり良い二人だった。




補足
サーゼクスさんは……阿久根さんがめだかちゃんに対して向けるアレと似てる様でやっぱり違う感情を持ってます。


てか、程度は違えど球磨川さん的なアレかも。

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