色々なIF集   作:超人類DX

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ごった混ぜ故に色々とごった混ぜ。


おじさんとおじいさま

 

 

 カテレアと元士郎が見に回ると決めた訳だが、どうやら今回の聖剣騒動はどうやら並みの複雑さを遥かに超越している様だ。

 

 堕天使のコカビエルが安置されている教会から聖剣を奪った。

 聞こえは良いかも知れないし、コカビエルを知らない者達からすれば、古くから続く三勢力の確執から来た乱心と解釈出来なくもない。

 

 しかしだ、彼を知りつつも親しくはない者達からすれば今回の行動に違和感を感じてしまう。

 何故なら、奪った目的がもし戦争目的であるとするならば、わざわざそんな回りくどい真似をしなくてもコカビエルの実力なら十分に各勢力に戦争を仕掛けられるからだ。

 

 故に一部はコカビエルの行動を不信に思う訳で……。

 

 

 

「なに、姫島朱乃だと?」

 

「うむ、アナタを出せと今宿の前に……」

 

 

 その日コカビエルは、奪った聖剣を抱えつつ駒王の街にて経営される小さな民宿を貸しきり、今回の騒動の仲間達と共に時期が来るまでのんびりと浴衣姿で色々なお刺身に舌鼓を打っていた。

 

 略奪者で追われてる身とはとても思えない余裕っぷりだが、コカビエルにしてみれば首謀者の自分が神経を尖らせても、下に付く奴等に良い影響は無いという考えで、わざとらしくまったりしている訳なのだが、和室の部屋にやって来た同志、バルパー・ガリレイの言葉に藍色の浴衣を着た男……コカビエルは眉を潜めた。

 

 

「姫島朱乃と言えばグレモリーの女王だが……」

 

「…………」

 

 

 この街を管理しているグレモリー一族の娘が従える女王の訪問に、何故居場所がバレてしまったんだと疑問に思いつつ今居る二回の部屋の小窓から下を覗いてみると、確かに学生服を着た年頃の長い黒髪の少女が立っている。

 

 

「どうするコカビエルよ。あの娘は確か……」

 

「あぁ、丁重に迎えろ。

ったく……こんな所まで嗅ぎ付けるとは予想外だよ」

 

 

 かつて一部のバカな堕天使のせいで命を失った戦友の嫁の面影を感じつつ、コカビエルは小さくため息を吐きながらバルパーにこの場所まで連れてこいと命ずると、バルパーは小さく笑いながら了解したと部屋を出る。

 

 

「バカな小娘め……。

俺と知り合いだとグレモリー共に知られたらお前の居場所が無くなるかもしれんのだぞ」

 

 

 見守ってきた友の娘の訪問に、バルパーが出たタイミングを見計らったコカビエルは盛大なため息を吐き、お猪口の日本酒を煽って居ると、襖が開けられバルパーとそれに続いて表情の固い朱乃が入ってきた。

 

 

「連れてきたぞコカビエル」

 

「あぁ……」

 

「………」

 

 

 穏やかな老人顔のバルパーにスッと手で促された朱乃が海鮮料理が沢山置かれたテーブルを挟み、胡座で座るコカビエルと無言で見つめ合う。

 

 

「ん、私は邪魔な様だし、隣の部屋に失礼させて貰らおうか。

お嬢さん、ゆっくりしていきなされ」

 

「……。はい」

 

「………」

 

 

 そんな二人に何かを感じたバルパーが気を使い、部屋から出ていく。

 コカビエルを前に一人残された朱乃はバルパーに軽く会釈をし、再び座ってる彼を立ったままジーッと見つめる。

 その瞳は何処か彼を責めている様だった。

 

 

「…………。座ったらどうだ?」

 

 

 その瞳に意を理解したコカビエルは、若干気まずそうに目を逸らしながら座ったらと促し、朱乃は漸く……されど冷たい怒りのオーラを放ちながらテーブルの前に座る。

 

 

「……。よくこの場所が分かったな」

 

 

 ふぐ刺しを箸で贅沢に取り、タレに浸して食べ、日本酒を煽ってのコカビエルの言葉に朱乃は正座しながらピクリと頬を痙攣させると、物凄い無理した笑顔を旧に浮かべ始める。

 

 

「この街は、私の王であるリアス・グレモリーの管轄ですよ? 少し探せば簡単に探せますわ。

まして、堂々とふぐ刺しやらお刺身やらお酒を楽しんでられるともなれば……ね」

 

「…………お、おう」

 

 

 メッチャ怒ってるぞこの娘。

 かつてバラキエルの惚気を延々聞かされた時の中に、妻の怒った顔が素晴らしいなんてニヤニヤと気色悪く言ってたのを思い出したが、母親の面影ありまくりな娘のこの何とも言えない怒りを感じ取ってニヤつける度量はコカビエルには無いらしく、ニッコニコーとしてる少女に思わず圧されてしまう。

 

 

「私、知らなかったですわ。

教会から聖剣を奪って、この街で良からぬ事を企んでいるなんて」

 

「あ、あぁ……おう」

 

「知らなかったですわ。

バルパー・ガリレイさんと行動しているなんて」

 

「う、うむ」

 

「いや、ほんと……私、知らなかったなー?」

 

 

 どこまでもニコニコ笑顔の朱乃に段々声が萎んでしまうは、最強の堕天使ことコカビエル。

 多分、同志にて堕天使組織の長である彼が見たら腹を抱えてて自分を笑うだろうな……と思いつつ、最早言い訳をせずに朱乃の嫌味を聞きつづける覚悟を決めたコカビエルは……。

 

 

「おじさんの……バカ!」

 

「っ!? や、やめろ! 料理が黒焦げになる!」

 

 

 バチバチと正座した朱乃の身体から紫電が流れ、笑顔から怒気孕む表情に切り替わったのを見て咄嗟に謝りまくった。

 全く今回の事件を知らせなかった事を、娘みたいな歳の少女にただひたすら……。

 

 

「私の仲間に木場祐斗君という騎士の子が居るのだけど、彼は悲しんでいたわ……バルパーさんが死んでると思ってるから」

 

「あ、あぁ……その事についてだが、どうやらバルパーの方もその小僧が死んでると思っていたらしくてな。

奴も大層驚いていたよ」

 

 

 結局料理は無事だったものの、プリプリと怒る友達の娘さんの機嫌直しの接待をしなくちゃならなくなったコカビエルは、出された料理を一緒に食べながら、これまでの事について話し合っていた。

 

 

「でも驚いた……おじさんがあんな事をするなんて。

どうして聖剣なんかを……?」

 

「それは……うむ……」

 

「そう……。今は言えないのね? わかった、なら私はこれ以上聞かない。

けど、バルパーさんと祐斗君をちゃんと再会させてあげてよ?」

 

「それは分かってる。分かってるが、バルパーは教会の人間共に嵌められて、狂人扱いをされている。

それに、俺とお前が繋がってるとサーゼクス以外の悪魔にバレたらお前の立場もない。

やるなら慎重に動かないとならんのだよ」

 

 

 妙な緊張感から一転、随分と気安い様子で話をするコカビエルと朱乃。

 もしこの姿をリアスやら一誠が見たらひっくり返るレベルの衝撃的事実だが、一誠は別行動で聖剣捜索をリアスに内緒にしながらしており、リアスはリアスで独自に調査しているのでバレる心配はない。

 

 

「計画に使われたガキ共を逃がし、社会復帰させる為に身を費やしてる男が皆殺しの大司教など笑えん話だ」

 

「……。何処の勢力も同じ様なものなのね」

 

「上の言葉を都合良く解釈したり、または届かないというのは良くある事だ」

 

 

 鮪の刺身をわさび醤油で食べるコカビエルに、ふぐ刺しを上品に食べる朱乃。

 影から成長をずっと見守ってきた者と、見守られてきた者。

 この二人の関係は……そんな関係であり、だからこそ朱乃は今回の事件の首謀者がコカビエルと聞いた時、思わず変な声が出てしまったくらいに驚き……そして怒ったのだ。

 

 何で私に内緒なんだと。

 

 

「…………。で、あの天使様は?」

 

「天使様? ……………。あ、ガブリエルの事か? アイツなら今回の騒動の真の目的を知ってるから心配せんでも良いぞ」

 

「………そう」

 

 

 あの天使には知らせてるくせに。

 

 

「? 何だ、会いたいのか? そう言えばお前とガブリエルは仲が良かったな」

 

「………………。おじさんにはそう見えるんだ……」

 

 

 それが何よりも朱乃は気に食わず、怒った理由の大半がそれだった。

 あの金髪の天使……コカビエルと種族違いだけど高めあったライバルは……。

 

 

「でもガブリエルは居ないぞ? アイツにも立場があるしな」

 

「そう、それは残念ね……ふふ」

 

 

 朱乃のライバルでもあるのだ。

 冷酒をチビチビと煽るコカビエル関連での。

 そう――

 

 

「ね、コカビエルおじさん? お酌してあげる」

 

「む……良いのか? なら頼むが……」

 

「うふふ……♪」

 

「わざわざ隣に来ることも無いだろう。それにそんな大袈裟にくっつく意味は何だ? バラキエルに怒られるから控えて欲しいぞ」

 

 

 姫島朱乃は大好きなのだ。

 母を失い、憎悪を向けても尚向き合って、憎悪を全てを受け止めてくれたおじさんが……。

 

 

「あの人は知らない」

 

「チッ、あのヘタレ。

まだ朱乃と話をしてないのか……」

 

 

 故に、何か色々と手腕が似てるガブリエルは倒さないといけない壁だ。

 

 

 

 コカビエルのおじさんと仲直り出来て良かった。

 といっても一方的に私が怒っただけなんだけど……。

 

 

「そう、か……。あの子は私の仇を取ろうと」

 

「はい。

当時居た本当の首謀者を打ち取ろうとしてます」

 

「やはり先にその小僧と接触すべきだと思うぞ俺は。

フリードとルフェイも言ってたが、その小僧はかなり憎悪を孕んでる様だしな」

 

 

 内緒であるけどとても大切な繋がり。

 リアス達を騙してる様で罪悪感は沢山あるけど、おじさんは私にとって一番の拠り所だから……。

 

 

「やはり計画を急ぐべきなのか……」

 

「教会側の人間二人が残りの聖剣を持っているのであれば、いっそ俺が出向いて奪っても良い。

その小僧は早いとこお前と再会するべきだ」

 

「私もおじさんと同意見です」

 

「……。わかった、この時の為に子供達から託された聖剣因子を使う時が来た様だ」

 

 

 だから私は……私のやり方でこの事件を終わらせる。

 祐斗君をバルパーさんと再会させ、おじさんと実は繋がりがあると然り気無くカミングアウトして堂々とおじさんと触れ合える様にする。

 そうすれば……ふふ♪

 

 

「バルパー、フリードに連絡してルフェイと此所に戻るようにと告げろ。

朱乃、お前は取り敢えずリアス・グレモリーの元へと戻り、俺とは敵対してる様に装うんだ」

 

「了解だ。儀式の準備もしなければな……」

 

「うん、おじさん」

 

 

 おじさんと好きなだけずっと一緒……。

 

 

 

 

 

 木場は結局兵藤の連絡を無視して現れなかったらしい。

 お陰で今日も木場捜索を手伝わされてるんだが……。

 

 

「おーいおい、テメーまさか鎧の使い手か?」

 

「色々と俺も驚きだっつーの!」

 

 

 まさか同類がこの世に居たなんてな……。

 そう思いながら今俺は、魔法使いみたいな帽子を被った女の子と一緒に俺達を襲撃してきた神父野郎と戦っていた。

 

 

「さ、匙の奴……あ、あんな強かったのかよ……」

 

「私達には見えなかった斬撃を全部避けながら戦ってます……」

 

 

 ちなみに兵藤達や悪魔祓い二人組はダウン中だ。

 このフリードっつー野郎……正直強い。

 会話の通り鎧を見せる訳にもいかないので使わずに戦ってる訳だが、この野郎も生身でありながら物凄い素早い剣劇を繰り出してくるせいで決定打が撃てないんだ。

 

 

「伸びろライン!」

 

「っと、何度も喰らうかよ!」

 

 

 ウリドラの初期能力だけで勝てる相手では無いのは分かってるが、此処で剣を抜いたら色々と厄介な事になっちまう。

 だから拘束でもしてぶん殴ってやろうと思うんだが、このフリードって野郎は戦いの最中に成長しやがるタイプなのか、既に伸ばしたラインは無力にも切り刻まれてしまう。

 

 

「フリード様、コカビエル様からご連絡です! 『今すぐ帰って来る様に』と」

 

 

 いっそ後ろでひっくり返ってるのが気絶でもしてたら、剣を抜いてやれたが……と内心自分の素手での戦闘の弱さに嘆きながら、横に薙ぎ払うフリードの剣をしゃがんで避けて足払いをしてたその時だった。

 突如見ていただけの仲間の少女が、フリードにそう告げた。

 

 

「っとと……え、ボスから? オーケーわかったぜルフェイたん。帰るぞ」

 

 

 足払いされたフリードが地面にひっくり返る直前にバク転して着地すると、あっさり剣を納め。

 そして俺にニヤリと嗤うと……。

 

 

「今度は鎧アリでやろうぜ? ユート以外の使い手とぶち当たるのは初めてだからよぉ」

 

「……ユート?」

 

 

 意味深な台詞を残して、少女が作り上げた転移魔法で去っていった。

 鎧ありでというのは解るが……あの言い方からして奴以外にもこの原理不明の鎧を使う奴が居るのか? だとしたら……チッ、カテレアさんの為に発言させたってのにオリジナリティに欠けるじゃんか。

 そう一人で複雑に思いながら、取り敢えずひっくり返ってる兵藤達の無事を確認しようとしたんだが……。

 

 

「これは、どいう事なの?」

 

「…………匙」

 

 

 最悪なタイミングで最悪なバレ方をやってしまった。

 

 

「げ、リアス部長!? こ、これはっすね……」

 

「言い訳はその傷を直してからにして」

 

 

 

「匙、アナタ……彼等の誘いには乗るのですね? 私達の誘いは全部断るのに」

 

「無理矢理連れ出されただけっすよ。

俺だって嫌だったのに……まぁ、すいません」

 

 

 主の意向を無視した事にご立腹な会長のご機嫌とりをしないとと思うと……流された自業自得とはいえダルいぜ。

 

 

「取り敢えずお仕置きね!」

 

「いだだだだだ!?!?」

 

 

 まさか、兵藤みたいに尻をひっぱたかれるなんて事されないだろうな? 俺をひっぱたいて良いのはカテレアさんだけだっつーのに。

 

 

「匙、四つん這いになりなさい。私もお仕置きよ」

 

「…………。あ、会長もそんな趣味をお持ちですか、そーですか」

 

 

 …………………。あぁ、何か既に悦に浸ってる他人の女にしばかれるのは、確かに罰ゲームだわ。

 

 

終わり

 

 

 

オマケ・???

 

 

 駒王町・古びた一軒屋。

 その家は良く『幽霊』が出ることで有名で、そのせいで安くたたき売りされていたのだが、一人の青年が幼女を引き連れて買い取った事で、今ではその人物の持ち家となっていた。

 

 

「いやー……誰も俺の邪魔をしないってのは素晴らしいぜオイ!」

 

 

 リアス・グレモリーに尻をひっぱたかれてる少年と瓜二つな容姿を持つ青年が、買い取った自宅のリビングでダラダラしながら『解放感』について気持ち良さそうに呟いている。

 

 名を兵藤一誠……。

 奇しくもリアスの下僕で赤龍帝の少年と同姓同名なこの青年の一言に、それが当たり前ですとばかりに青年の膝の上に座ってる長い黒髪の幼い少女はコクコクと頷く。

 

 

「同意。あの雌悪魔の邪魔が無いだけでも我は満足」

 

 

 名をオーフィス。

 無限を司る別次元の龍神にて、青年と時を永遠のものへとする為に擬態じゃなく、変化した事で、龍神の力をそのままに人間と変わらぬ姿へとなった少女は、青年との長い触れ合いを経てこの世界の龍神と比べて考えられない程表情豊かに一誠青年の膝の上に座ってその身を小さく揺する。

 

 まあ、それでも彼女を知らない者からすれば無口で抑揚の無い表情と思われるかも知れないが、一誠青年や彼を取り巻いていた者達からすれば、昔より遥かに表情豊かであると思っている。

 

 というか――

 

 

「だから一誠。我とたくさん子供作ろ?」

 

 

 この青年のせいで余計な知識を吸収しまくったと言えるだろう。

 隙あらば一誠青年とチョメチョメしたがる所とか……。

 

 

「怠いから嫌だ」

 

「なら一誠は動かなくて良い。

我が一誠の事をいっぱい気持ちよく―――いたい」

 

「何処行ってもそれ言うの止めろよな。つーか、お前の見た目でその台詞はアウトだわ」

 

「むー……また逃げた」

 

 

 まさに合法ロリエロ龍神になってしまったオーフィス。

 本日も無限同士はのほほんだった。

 

 

 兵藤一誠

 所属・無し

 

 備考・別系統の無限と夢幻を体現せし人外。

 

 

 オーフィス

 所属・無し

 

 備考・かつて無限を持つ少年を拾い、そして惹かれ続ける合法ロリ。

 

 共通備考・次元をこじ開けてやってきた旅行者(滞在予定・約三百年)

 

 

終わり




補足

原作と違い、聖剣というよりはバルパーさんに押し付けた奴等が憎いので、今回の事件で姿を見せると踏んで内定してる木場きゅん。

ちなみに、隠し事のひとつに『既に銀牙騎士に一度覚醒済み』があり、今は復讐心が強すぎる故に召喚が不可能。


そして……然り気無くのほほんしてるロリコン一誠は、今日ものほほんしてましたとさ

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