色々なIF集   作:超人類DX

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てか、こんな組み合わせやってる俺って……

続きです


カテレアさんの日記とその後

 ◯月◯日

 

 セラフォルーから全てを奪い返す為、今日からこの人間界に潜伏して力を蓄える事にする。

 シャルバ達にも見限られ、危うく産むだけの機械にされるというなんていくら何でも嫌だし、セラフォルーにもシャルバ達にも復讐する為に私だけの力を手に入れてやる。

 

 その為の手記であり、戒めの為の記録。

 

 ふふ、私を見下す愚か者共……私は必ず這い上がってみせるわ。

 

 

 

 ◯月◯◯日

 

 人間界で力を蓄えるという判断を下した理由である小さな少年。

 名は元士郎というらしいが、手駒にするだけの人間の名前なんてどうでも良い。

 この子供……どうやら力を持つが故に周囲の弱者から迫害されたらしいが、彼はどうもバカなのかその事を全く表に出さず、私を下手くそな治療を施したばかりか私の勧誘に疑問すら思わず従っている。

 

 所詮は子供だからなのか――そんな事はどうでも良いとして、バカな子供は扱いやすい。

 これなら将来的に捨て駒として重宝できそうだし、何より彼が迫害された理由である神器の力は利用できる。

 

 

『できました!』

 

『ふふ、よくやりましたね』

 

 

 その為に良い悪魔を演じて、私を信じ込ませてみせる。

 私の為に死ねる覚悟すら当たり前の様に持つ人形として……ふふ。

 

 

 

 ◯月◯◯日

 

 元士郎の神器はどうやら元の力から大きく逸脱した方向へと進化しているらしい。

 調べによれば五大龍王のウリドラの力を宿したものらしいけど、元士郎の扱うそれはどう見ても違う。

 

 倒した相手の力を食らう事でその力を増し、使役すら出来る。

 何故そうなったのかは私と元士郎にも解らないけど、この誤算は良い意味での誤算だろう。

 上手くいけば元士郎の力でセラフォルー達の力を食わせて確実に勝てるのだから。

 

 

『陰我吸因というのはどうかしら?』

 

『おぉっ、何だか格好いいっす!』

 

 

 力を蓄えるのと平行し、私が人間界に潜伏している事を奴等にバレてはならない。

 故に自分自身に枷を掛けてカモフラージュしないとならないのは屈辱だが、この際目は瞑ろう。

 堕ちる所まで落ちぶれた私にもはや隙は無い。

 

 

 

 ◯月◯日

 

 ……。家事が出来ないから何だというのですか。

 ご飯がド下手で燃えカスを食べて悶絶したから何だというのだ。

 

 そもそも私はレヴィアタンなのです。家事なんて下級の存在がやれば良いのであって、私はふんぞり返れば良いのだ。

 

 それを……

 

 

『あ、あの……明日から俺が作るよ。カテレアさんのご飯も』

 

『ご、ごめんなさい……』

 

『あ、謝らないでよ。俺嬉しかったし……』

 

 

 何なんだ元士郎は。

 興が乗って作ってやったのに……。

 しかし、やはり私は偉いし下僕の元士郎が食事の用意をするのが当然なのでこれで良いのかもしれない。

 

 

 

 

 

 ……。明日、書店にでも行って料理本でも買おうかしら……。

 

 

 

 

 ◯月◯日

 

 元士郎は戸籍があるようで無い。

 故に学舎に行くことは叶わないので、私が仕方なく施しを与えなければならない。

 

 

『良い元士郎? この数値にはこの公式を当てはめるのよ』

 

『はぁ……こう?』

 

『そうよ、よくできましたね』

 

『へへっ……』

 

 

 私の捨て駒――いや下僕か学が無いなんて許せない。

 だから面倒と思うけどこの前料理本を購入した書店で適当に参考書を入手して早速教えてみたのだが、ふむ、中々どうして飲み込みが早い。

 『高校生の為の参考書』という問題集を教えつつ解かせてみたら、既に完全に飲み込んでいる。

 

 どうやらバカではあるが頭が悪い訳じゃあ無いみたいで此方としては楽だ。

 

 

『完璧ね……この本の問題も』

 

『へへ、あの、カテレアさん……その……』

 

『あ、はいはい……』

 

 

 ただ、正解する度に元士郎の頭をわざわざ撫でなければならないのは実に面倒だったわ。

 

 

 

 

 ☆月×日

 

 元士郎を手駒に仕込み始めてから既に三年。

 4歳だった元士郎は7才となり、その力も並みの下級生物なら互角に渡り合える程度にはなれた。

 とはいえ、私にとっては物足りない。

 

 魔王クラスは希望だが、精々上級悪魔程度を倒せるぐらいにはなって貰わないと私としても手間の甲斐がありません。

 

 

『あ、あの……カテレアさん……』

 

『? どうしたの元士郎?』

 

 

 そんなある日の夜。

 独学で家事をすっかり覚えた私は、夕飯の後に俯きながら話し掛けてきた元士郎の様子に違和感を覚えたのだが……。

 

 

『前なんて隠して何を――ぁ……』

 

『こ、これ……さ、最近こうなるようになっちゃって……! びょ、病気なんですか、おれ?』

 

 

 その理由は分かった。

 パジャマを着た元士郎が下半身をモジモジさせながら前を手で隠してたので、無理に取ってみれば……まあ、そういう事だった。

 元士郎はまだ何も知らない子供だし、戸惑うのも仕方ない。

 

 困った私は、此処でふと思い付いた。

 

『あ、そうか……これを利用すれば元士郎の精神を完全に掌握できるのでは』

 

 と。

 だから私は人の良い笑顔で安心させつつ、浴室まで連れていき――

 

 

『は、恥ずかしいよカテレアさん……!』

 

『大人になった証拠よ。

は、は、恥ずかしがる必要は無いわ……!』

 

 

 …………。しかし、男の子のあそこってああなってたのね。

 良かったわ、もしあのまま捕らえられてたら汚ならしい雄共にと思うだけで身の毛がよだつし、まあ、この大きさなら…………って、あれ?

 

 

 

 ▽月☆日

 

 ………………。痛いって話は本当だった。

 ま、まさか元士郎があんな――い、いや! アレはノーカウントだ! あんな人間の子供のアレで……あ、あんな……あんな気持ち良――じゃない!!

 

 くっ、手先が震えて上手く書けないのが忌々しいけど、これで元士郎の心は完全に私の意のままだし、あの夜を境に元士郎は更に鍛練に身を費やして多大な成長を見せる様になった。

 

 特に力に枷をつけて油断し、下級のはぐれに襲われた私を元士郎が助けてくれた時の力は文句無く上級悪魔程度を超越していた。

 

 ふふ……着々と復讐の準備が進んでる実感が沸く。

 

 このままの調子で成長すれば必ず奴等を……。

 そして私も元士郎の様に進化を……あははは!

 

 

 

 〇月×日

 

 元士郎も中学生というものになり、神器の力は完全に別方向に進化した。

 もはや魔王クラスなんて話にもならない……と、思うけど、念には念を入れるべきなんだろう。

 

 

『え、告白されたの?』

 

『はい、何かずっと好きでしたーとか何とか』

 

『え、え……そ、それで?』

 

 

 そんな事より事件だ。

 中学生となり学校へと通うことになった元士郎がどうやら告白されたらしい。

 相手は違うクラスの女子……らしいのだが、そんなのはどうでも良い。

 重要なのは元士郎がその告白とやらを受けたのかそうでないのかなのだから。

 

 

『いや、当然断りましたよ。

だってその女の事全然知らないし、もっといえばどうとも思いませんし』

 

『あ、そ、そう……』

 

 

 結果的に元士郎は断ったらしい。

 それを聞いた私は生まれて初めてかもしれない安堵を覚えた。

 当たり前だ、手塩に掛けて傀儡として育てた元士郎が人間の小娘にほだされて力を鈍らせる事があってはならないのだから。

 

 決して私の下から去ってしまうという不安があった訳じゃない。

 この良かったと思う気持ちは、手駒を失わずに済んで良かったという気持ちです。絶対に。

 

 

 

 ◇月♪日

 

 

 最悪だ……。

 私が人間界に潜伏している事をシャルバとクルゼレイにバレてしまった。

 油断したつもりも無いし、現魔王に与する悪魔達にバレて無かった。

 

 それなのに私の前に現れた二人の元同志は、傍に居た元士郎を見下しつつ私に戻ってこいと宣っている。

 

 私を恥知らずと言って、道具にしようとした奴の台詞じゃないと私は当然突っぱねた。

 

 私は私のやり方で奴等を倒す……そう言ったのに、何を考えているのか二人はそれでも無理矢理私を連れていこうとした。

 同じ魔王の血族二人相手では私とてどうする事も出来ない。

 

 けど……。

 

 

『それ以上カテレアさんに近付いたら殺す……!』

 

 

 そんな私を守ったのが元士郎だった。

 小さかった身体は大きくなり、その背に頼もしさすら感じ、溢れ出る覇気は二人に勝るとも劣らない。

 

 そんな元士郎にシャルバとクルゼレイは嘲笑していたけど……。

 

 

『業火炎破ァ!!!』

 

 

 禍々しい装飾が施された黒い鎧……暗黒の狼となった元士郎の力を見誤った二人は全身を燃やされながら、すごすごと帰った。

 二人の力を喰らうことは出来なかったけど、これで元士郎の成長は確実な強さを持ったものだと確信できただけでも十分な収穫だ。

 

 後は今居るこの地を離れ、別の場所で更に力を蓄えれば、私は悲願を――――

 

 

『この地はグレモリーが管理しているけど、敢えてこの地に住むのよ元士郎』

 

『はい、でも大丈夫っす。

俺はもっと強くなって、カテレアさんを守れるようになりますから!』

 

『ふふ、ありがとう……』

 

 

 いや、わからない。

 私はもう……復讐なんて止めて彼と――

 

 

 

 

 ☆月▽日

 

 目論みは概ね達成した。

 グレモリー共もまさか私がこの地に居るとは思ってもないらしく、敢えて堂々と枷を付けた状態で出歩いても特に何も無い。

 

 ふふ、お間抜けさん達を出し抜くのはやっぱり気分の良いものです。

 

 さて、そんなこんなでこの地に移住してかれこれ1年になるけど、最近私の中で何かが目覚めた。

 

 

 シャルバとクルゼレイに危うく捕らえられそうになった己の無力さを呪い、元士郎と一緒になって鍛えだしてからだったかしら。

 なんというか、たまに自分のやってる事が一瞬で完了したり、逆に音よりも速く動くものがゆっくりに見えたりする様になった。

 

 元士郎も鎧の力の他に私と同じく分類不明の力を目覚めさせていたが……これは一体?

 

 いえ、考えるまでもありませんね。

 目覚めたのなら鍛えて自由に使えるようにする。

 

 自由自在に……ね。

 

 

P.S……元士郎が春から通う事になる高校がグレモリーとあのセラフォルーの妹の通ってる高校だった。

 

 

 

 ▼月◆日

 

 元士郎も16を控える。

 4つの頃から数えて12年……早いものですが、最近元士郎は私を見る度に複雑そうな顔をする。

 一体なんだろうと問い掛けても、元士郎は決まって『いえ、俺自身のしょうもない悩みっす』と苦笑いして話してくれない。

 

 我慢できなくなったら何時でも私の事を好きにして良いと言ってるし、成長するにつれて私を抱く回数が増えてもいるからそういう事では無いのは分かるけど……うーん、一体なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 ◇月☆日

 

 

 元士郎の悩みの理由が分かったのと同時にかなり危ない橋を渡る意味で解決した。

 

 どうやら元士郎は人間である自分の寿命の短さについて悩んでいたらしく、何と……よりにもよってセラフォルーの妹のソーナの下僕に悪魔として転生する事で無理矢理解決したのだ。

 

 しかも、自分の力を無理矢理封じてまで……。

 

 

「ご、ごめんカテレアさん。俺……その……」

 

「………」

 

 

 

 自分の力の大半を犠牲してまで悪魔に転生した理由……それは私にも分かる。

 そう、私に付いていく為だけに自分を犠牲にした。

 

 私は捨てられた子犬の様な顔でひたすらに謝る元士郎に怒るつもりは無かった。

 復讐を完全に諦めたつもりは無いし、その為に元士郎の力が必要なのもわかってる。

 

 けど、それ以上にそこまで私の為に尽くしてくれる覚悟を示した時点で私は、元士郎に心で負けたのです。

 

 

「アジュカ・ベルゼブブの作り上げた駒システムを学習しておくべきだったわ。

そうなれば私がアナタ兵士じゃなくて女王として――いえ、考えても仕方ないわ。

こうなったらその封じられた力を取り戻しましょう」

 

 

 もう時間も伸びたのだ。

 封じられた力も取り戻せば良いだけ……。

 それに復讐するならセラフォルーの妹の下僕として動けるだけで有利。

 だから私は悲観しない……というか、正直寿命が伸びてホッとしてるし、謝る元士郎を抱き締めてれば最近満足している自分がいる。

 

 

「お祝いでもしてあげる……ほら、おいで元士郎?」

 

 

 私だって強くなったつもりだし、ゆっくりやらせて貰うわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

☆月◇日

 

 

 元士郎がセラフォルーの妹とその下僕にモテてる疑惑が浮上。

 連中は既に元士郎が本来の力を取り戻してそれを隠している事に気づいてないみたいだけど……モヤモヤしますね。

 

 思わず嫌味っぽく元士郎に『そういうのがお好きなんでしょう?』なんて言っちゃったけど……。

 

 

「えー? あの人たちがですか?

いやいや、無いですし、仮にそうでも興味ねーっす。

だって俺カテレアさんが………あ、あはははー」

 

 

 元士郎は恥ずかしそうにはにかみながら私にそう言ったので安心だ。

 まあ、ぽっと出の小娘ごときが元士郎を求めるなぞ身の程を知れって事ですよ。

 

 

 追記・でもやっぱり、元士郎に小娘の匂いが付いてるのは嫌なので、恥ずかしいけど密着して自分の匂いで上書きしてやろうと思います。

 

 

 

 

 先代魔王の血族者であるカテレアと十二年程共に居ることを隠し、寿命獲得の為にソーナの下僕となった元士郎は今日もそれなりに生徒会としてあくせく働くのだが、美少女揃いの生徒会の中に属する男という事で嫉妬の念を向けられるのは多かった。

 

 

「よ、匙! 今日も雑用か?」

 

「ん、あぁ、兵藤か。

確かに雑用だが、お前達は何してんだよ」

 

「え、あー……ちょっとお前に頼みたいことがな?」

 

 

 そんな中を全く気にせず、そして美少女揃いの生徒会の面々にまるで興味なしな素振りで仕事をこなす元士郎は、農夫みたいな格好で花壇の土を配合する作業をしていたのだが、そんな彼の下にこの前顔合わせしたグレモリー眷属の兵士・兵藤一誠が訪れ、何やら頼みたい事があると言ってきた。

 

 

「頼みたい事? お前、俺の事嫌いなんじゃないのか?」

 

 

 そんな一誠に先日の顔合わせてめちゃくちゃ言われた事に思い返し、眉を潜める元士郎。

 すると一誠はグイッと……いやズイッと元士郎に顔を近づけさせると……。

 

 

「ちょっと協力してくれよ……な?」

 

 

 何かを企んでいる笑みを浮かべ、そのまま少し強引気味に元士郎は一誠に連れ出されるのだった。

 

 

 

 カテレアさんのご飯を楽しみに、今日もあくせく働いてた俺は、どういう訳かグレモリー眷属の兵藤に連れられ、何故か行方不明中の木場っつー騎士の転生悪魔を探していた。

 

 

「会長の眷属なんだが、何故俺がお前らの仲間なんて探さないとならないんだよ」

 

「まあそう言うなって! 困ったときはお互い様じゃないか!」

 

 

 正直そろそろ帰りたいというか、会長に知れたら絶対に怒られるのね関わりたくない話なんだけど、兵藤の奴は連れの……あれだ、確か猫って文字はいった小柄な女の子と、金髪の神器も持ちの女の子を横に調子の良い事を言ってバシバシ背中を叩いてくる。

 

 そもそもその木場ってのが行方不明になった理由だって良く知らないんだけど、昨日だか一昨日だかに教会から派遣された悪魔祓いが出てきてから行方を眩ませたって時点で無関係とは思えない訳で。

 

 まさかとは思うがコイツ等……自分の主の意向を無視してその悪魔祓いと何かするつもりじゃないだろうな……? だとしたら即帰らせてもらうぜ俺は。

 

 悪魔祓いがどうって訳じゃないが、俺は転生悪魔としての仕事を最低限執行するだけして、大きな災害が来たらそれを利用してくたばった事にして姿を消すという次の目標があるんだ。

 もしボロを出してコイツ等にカテレアさんの存在が知られちゃ絶対にならんのだ。

 

 

「なぁ兵藤。何と無く聞くけど、グレモリー先輩みたいなスタイルの金髪で褐色肌な女の人ってどうなん?」

 

「ビックリするほどストライクに決まってんじゃん!」

 

「あ、そ……」

 

 

 特にこのエロ権化にカテレアさんの事は絶対教えたくねぇ。

 特徴出しただけでゲヘゲヘ笑ってる時点でアウトだし、もしコイツがカテレアさんにセクハラしたら腕切り落とすだけじゃ自分を止められねぇ自信があるぜ。

 

 

「つーか何だよ匙ぃ~? 今のはお前の好みの女の子のタイプか?」

 

「……。まぁな」

 

「何だ何だ! 生徒会でハーレム気分になってる匙君も隅に置けませんなぁ? てか、生徒会にそんな特徴の女の子居ないけど」

 

「あぁ、だからオメーが勝手に妄想してる様な事をあの人達に抱いちゃねーんだよ俺は」

 

「いや、それは嘘だな」

 

「嘘じゃねーよ……そんなに疑うならオメーのハーレム手腕とやらで会長達を口説けば良いだろ……くだらねぇ」

 

 

 覗きはする、エロ本は持ち込む、挙げ句の果てにハーレムハーレムと喧しい。

 自分に素直と言えばそれまでだが、漫画じゃあるまいしハーレムなんて何が良いのかわかりゃしないぜ。

 

 平等に全員愛するなんて台詞、俺がもし女なら吐いた時点で総入れ歯になるまでぶん殴ってやるわ。

 

 まあ、そんな奴でも性格が性格なせいか好いてる女子は結構居るみたいで……後ろで兵藤をシラーッとした目で見ている二人もまたそんな感じなんだろうね。

 

 

 

 で、そうこうしながら木場捜索に付き合わされていた俺だけど、案の定というか……まるで図られたかの様に金に困り果ててた悪魔祓いの二人組(女)に、悪魔だってのを自覚してる様子もなく兵藤はファミレスで飯を奢りつつ、何と聖剣捜索を手伝いたいと宣いだした。

 

 

「ふむ、まあ、一本くらいなら良いだろ」

 

「ほんとか!? なら直ぐに木場にメールしてみるぜ!」

 

 

 それに対して悪魔祓いは何故か了承。

 いやお前等目の前の俺達が悪魔だってのわかってんの? と俺は席の端で水にも口をつけずに思うけど、これも兵藤の性格ゆえだからなのか。

 

 もう一人の悪魔祓いと少し揉めつつも結局はコイツ等も捜索に加わる方向になってしまった形に纏まってしまったと確信した俺は、そろそろマジで潮時と思い、そのまま席を立つ。

 

 

「? どうしたんだよ匙?」

 

 

 おもむろに席を立ち、何も頼んでは無いけど千円札をテーブルに置くと、悪魔祓い二人組や兵藤とその連れ二人の視線が一斉に俺へと向けられる。

 

 

「いや、帰るんだよ」

 

 

 まるで帰るなんて思ってもませんな視線の兵藤にそれだけを言って帰ろうとした俺だが、何故か兵藤に待てよと止められる。

 

 

「ちょ、ちょっと待てよ。協力は……!?」

 

 

 慌てて引き留める兵藤に俺は首だけ傾けて兵藤に視線を向ける。

 

 

「木場を探すのはなし崩し的に付き合ってやったが、その聖剣の話は関係無いだろ俺には」

 

 

 一つ兵藤を分かった。

 コイツに関わると面倒事に巻き込まれてしまう。

 回避できない面倒事なら真正面から立ち向かえるが、巻き込まれた面倒事なんてごめん被る訳で……。

 

 

「ま、待てよ。俺達仲間じゃないか、それに木場はその聖剣をある事情があって追ってて……」

 

 

 ただ同じ転生悪魔同士なだけなのに仲間と本気で言ってる兵藤に俺は何か微妙に呆れてしまう。

 

 

「だから? 俺は会長からそこの悪魔祓いと、抱え込んでる何とやらとは一切関わるなと言われてるんだ。

それをこれ以上無視したら怒られちまうだろ? それに、木場が何を抱えてるのか知らないが、助けてやるなら『仲間』のお前等でやれ。俺は只の外様だ」

 

「「「………」」」

 

 

 おっと……? 何か俺が悪い空気になってねーか? 何これ、木場の助けにならない奴は極悪人っすか?

 

 

「木場がもしそのメールでも来なかったら明日また探すのは手伝ってやるが、俺には俺の用事があるんだ。じゃあな」

 

 

 何故か微妙な空気になってて、何故か俺が悪い的な空気を出された席からとっとと離れる。

 まあ、用事と云っても帰ってカテレアさんとご飯食べて……へへっ。

 

 

「噂通り、匙先輩さんは付き合いが悪いようですね」

 

「あぁ、確か支取先輩が言ってたな……。でも無理矢理此処まで付き合わせた俺が悪いし……しかたねーよ」

 

 

 

 

 元士郎の思考回路は常にカテレアが中心だ。

 だからカテレアの為にならない事は非協力的であり、またカテレアとの時間を削られる話も嫌だと突っぱねる。

 

 だからソーナやその仲間達に付き合いが悪いと思われてしまいガチなのだが、本人はだからどうしたとばかりだ。

 

 

「聖剣がこの街に持ち込まれてるみたいっすね」

 

「聖剣……? 昔砕かれて七本に別れたアレですか」

 

 

 すっかり上手になったカテレアの手作り夕御飯を食べながら、最近悪魔やその周囲で起きた話を全部カテレアへと報告する。

 

 

「はい。何でも大物堕天使がやったとか」

 

「ふむ……」

 

 

 時期が来るまでカテレアの事は何としてでも表に出すわけにはいかない。

 その為に尾行にも注意し、自宅の周りには認識を誤認させる結界を張り、最悪の場合は口封じすらする。

 

 

「バレる事は無いと思いますし、寧ろこの機会をチャンスと俺は考えてます」

 

「自分を死んだ事にする偽装について……かしら?」

 

「はい。

まあ、会長の姉の情報を抜き取る方が先決なので迷ってますけどね」

 

 

 元士郎は自分を正義の味方などとは思ってない。

 全ては自分を必要と、それが例え建前だとしても言ってくれたカテレアの為だけに自らの力を注ぎ込む。

 

 

「戦う時が来たら何時でも見限りますから」

 

「……」

 

 

 それが黒狼の鎧を持つ匙元士郎の生きる理由だった。

 

 

「ごちそうさまです」

 

「お粗末様です。お風呂沸いてますから先にお入りなさい」

 

 

 聖剣の話を切り上げ、カテレアとご飯を食べるためにファミレスで水すら飲ま無かった元士郎は、彼女の手料理に満足しつつ、促された通り彼女にお礼を言いながら先に風呂へと入る。

 

 

「んー……」

 

 

 湯気が立ち上る……お世辞にも広いとは言えない浴槽に身体を洗ってから入った元士郎は、今日一日の疲れを癒しながら、自分の両手をぼんやりと眺めると、小さく独り言を洩らす。

 

 

「鎧は呼び出せるし、今まで食った力も戻ってはいる。

後はまた更に強くなってカテレアさんを守れるようにならねーとな……」

 

 

 転生する際、力の大半を置いて臨んだ結果、元士郎はカテレアとの永い未来を手に入れる事が出来た。

 そして、鬼みたいな修錬を経て封じた力のほぼ全てを取り戻した今、その上で周囲に隠し通し……カテレアの悲願を何としてでも達成させるためにこの身を捧げる。

 

 盲目なまでの覚悟を改めて独り誓った元士郎は、取り敢えず別の事でも考えようかと思考を切り替えようとした――その時だった。

 

 

「入るわよ元士郎……」

 

「わ……!?」

 

 

 一糸纏わぬ姿で普通に浴室へと入ってきたカテレアに、微妙に慣れてない元士郎は変な声が出てしまった。

 

 

「カ、カテレアさん……」

 

「今更な反応じゃない元士郎。

まあ、嫌いじゃない態度だけど……ふふん」

 

 

 結った髪は下ろされ、掛けている眼鏡も外し、タオルすらも巻いてない姿のカテレアが直視できず、若干前傾姿勢で背中を向ける元士郎は、風呂に浸かっておいて良かったと心底ホッとした。

 

 何時見てもカテレアの肢体は刺激が強いのだ。

 

 

「ふぅ、それじゃあ元士郎。

私の身体……洗って頂戴?」

 

「え"?」

 

 

 しかしそれを知ってか知らずか――いや、カテレアの笑みを見るに恐らく知った上での台詞が元士郎を追い詰める。

 

 

「え、あ、洗う……」

 

「そうよ。ほら……手でお願いね?」

 

「お、おっす……」

 

 

 ふふんと挑発的に笑って風呂椅子に腰掛けるカテレアの頼みを断れる訳が無い。

 覚悟を決めた元士郎は、マッチョな男同士のキモい絡み合いを想像して劣情を消し去ると、腰にタオルを巻いき、浴槽から上がってカテレアの背後に膝を立てて座ると、垂れた髪を纏めたカテレアの背中にボディーソープを手で擦り付ける。

 

 

「んっ……」

 

「っ……」

 

 

 別にこれが初めてじゃないけど、元士郎は異様な緊張で頭がボーッとしてしまい、洗う最中にカテレアから艶やかな声が出るだけで、おっさん同士のキモい絡み合いで相殺していた元士郎の精神は傾き始める。

 

 

「お、終わりました……」

 

 

 しかしそれでも元士郎は、カテレアの許可無く興奮しちゃ下僕失格だと自分に言い聞かせ、何とか背中を洗い終えた。

 

 

「ありがとう……」

 

 

 良かった、これでバレないとお礼を口にするカテレアに見えないようにホッとしたのだが……。

 

 

「次は前ね?」

 

「で、すよねー……」

 

 

 そうは問屋が下ろさない。

 背中だけな訳も無く、次は前だと言うカテレアに半ば予想してた元士郎は乾いた声で笑ってしまうが、断れる訳なんかやっぱり無いので……。

 

 

「んっ……んんっ……げ、元士郎ぉ……❤」

 

「あー……! あー! そ、その声は反則ですよ! 俺もうガキじゃないんですから!」

 

 

 塗り塗りと後ろから手を回して前を洗う元士郎は、さっき以上に艶かしい声を放つカテレアに対して色々と限界となってしまうのはしょうがないのかもしれない。

 というか、カテレアは分かってて元士郎を誘ってるのだから逃げようも無かった。

 

 

「カ、カテレアさぁん……!」

 

「ふふ、こうでもしないと元士郎は遠慮しちゃいますからね。

ほら……好きにして良いからおいで?」

 

「カテレアさん!!」

 

「きゃっ! 獣みたいな目になって……可愛い子」

 

 

 もう止まらなかった。

 カテレアの身体を洗い終えた元士郎はそのまま抱き締めながら狂った様にカテレアと唇を重ね―――――

 

 

「もう……いくら悪魔の出生率が低いからって何回も何回も……それもお風呂の中で」

 

「す、すんません」

 

「まあ、わざと煽ったのは私だから気にしないでください」

 

 

 元士郎は更に更に……カテレアに傾倒していく。

 

 

終わり




補足

まあ……うん、お前誰だよってなってるね、このカテレアさん。

ちなみに一誠は転生者じゃないです。
故にカテレアさんが傍に居ましたと知ったらそらリア充かテメェ!となるかなー……。


さらにちなみに


「一誠……この世界の一誠とは会わないの?」

「は? おいおい、会ってどうするんだよ? おっぱい談義でもしろってか? お前が引っ付いてる時点でどうせロリコン扱いされるだけだぜ」

「ん、そう……。一誠がそう言うなら我はこれ以上言わないけど……んっ、一誠……我のここ……ムズムズする……!」

「知るか、テメーで処理――ちぇあ!? ど、何処触ってんだゴラ!」


 と、世界の何処かでのほほんとした生活を満喫してる無限コンビが、匙きゅんとカテレアさんみたいにお風呂でイチャイチャしてるかもしれない。

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