色々なIF集   作:超人類DX

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冒頭は前々回ですが、そっからちょっと続けてみました。


リアスさんの選択と思想がこうだったら……


IFのIF

もしも……もしもリアスがその選択を間違えなければ。

 もしも……もしもリアスがきちんと筋を通して居れば。

 もしも……もしもリアスが下僕にした理由が違ければ。

 

 

 もしも、もしも……もしも……。

 

 

 

 

「っ……ドライグの声が聞こえない!? しかも力も――」

 

「目……覚めたのね?」

 

「……!? アンタはたしか……」

 

「今アナタの身に起きている事を順番に説明するのと同時に、私はアナタに謝らなければならないの。

その……聞いてくれるかしら?」

 

「………………」

 

 

 力の強大さだけでは無く、その中身をちゃんと知ろうと努めて対話をしたなら……もしかしたら未来は変わっていたのかもしれない。

 

 

「まずアナタは死にかけていた。

これは覚えてる?」

 

「あ、あぁ……確か修行に熱が入りすぎてつい。

だが死にかけたとしても5分も寝てれば治るし、それと俺の力が消えてるのと何の関係が……」

 

「五分!? …………そ、そうだった、の?

そ、その……ごめんなさい! アナタが死にかけてるのを発見したから、その……助けるつもりでその……駒を使ってアナタを転生させてしまって……」

 

「…………………は?」

 

 

 これはそんなもしもにもしもを加えたおとぎ話。

 

 

 

 

 

 兵藤一誠は失った力を取り戻す為に毎日死ぬ気で鍛練をしていた。

 学業以外の全てを鍛練へと費やすその姿はまさに鬼気迫るものであり、一刻でも早く全てを取り戻そうと躍起になる姿は、リアスをより罪悪感を抱かせる要因だった。

 

 

『Boost!』

 

「キャオラッッ!!」

 

 

 そしてげに恐ろしきは全ての力を赤子同然にまで封じられた一誠が、封じられて満足いく成長も出来ないというのにも拘わらす、出来無いなりに地獄の様な鍛練スケジュールをこなした結果、既に上級悪魔ですら始末できるまでの力を獲た事だった。

 

 大公からの指令によるはぐれ悪魔討伐の任も、既に兵士の駒を礎に悪魔へと転生した一誠単騎で達成させられる程であり、今日も一人ではぐれ悪魔を消し飛ばした一誠は、ちょっと無愛想な顔で何とも言えない顔のリアス達にこれまた無愛想な声でこう言った。

 

 

「終わりました」

 

 

 蹴り潰し、殴り千切り、叩き殺したはぐれ悪魔を最後に消し飛ばした一誠の距離を置いた様な言い方にリアスは気弱そうに頷く。

 

 

「ご苦労様……その、力の方は?」

 

「話になりませんね。

全力で殴ったのに、殺すまで二・三発必要でしたし、赤龍帝の籠手も禁手化すらできやしない」

 

 

 ぶっきらぼうに自分の力が話にもならないレベルまで落ち込んでいて、まだまだ取り戻すには全てが足りないと告げた一誠は、左腕に纏わせた会話も出来なくなった相棒の力を引っ込め、スタスタと自分一人だけ先に帰ってしまう。

 兵藤一誠は正直イラついていた。

 

 それは勿論、悪魔に転生してしまった事で全盛期の億分の一にまで落ちてしまったのもそうだが、何よりも悪魔に転生したってだけで自分の力が落ちたという脆弱さが実に許せなかったのだ。

 

 確かにリアスは自分に許可も無く勝手に悪魔に転生させたのかもしれない。

 けどしかし、リアスは死にかけていて、寝てれば治ると知らずに自分を取り敢えず死なせないと思って苦肉の策として悪魔に転生させただけで、話を聞いたり観察した結果、彼女に打算的な内面が一切感じなかった。

 だから一誠はリアスを憎む事もなく、ただただ消えたのなら取り戻せば良いと、全盛期の頃よりも更に殺人的なトレーニングメニューに取り組んだ。

 

 

「あの、イッセー? ご飯作ったのだけど、良かったら――」

 

「修行するんで結構です」

 

「あ、う、うん……そうね。邪魔してごめんなさい」

 

 

 結果一誠は眷属でも完全に浮いており、周囲に壁を作って孤立しており、リアスなりの謝罪の意を込めて色々と気を使いまくってる行動も避け続けていた。

 だが決して一誠はリアスに恨み言の一つも吐かなかった。

 

 理由はある程度リアスを一誠は信用しているからだ。

 良かれと思った行動が失敗してしまった……のは痛いほど謝られたので理解はする。

 しかし仲良くなれと言われたら……元々どうでも良かった相手なので仲良くなろうとは思わなかった。

 雇い主と労働者……あくまで一誠の認識はその程度だった。

 

 だから一誠に憎悪は無い。

 あるとするなら、容易く力を失う自分の脆さだった。

 

 

 

 

「必ず勝つわよ皆!」

 

『はい!』

 

 

 この日、リアス達は学校を休んでグレモリー家の所持する別荘へとやって来ていた。

 

 

「今回のゲームには必ず勝たなければならない。

だから、出来る限りの手を尽くして強くなるわよ!」

 

 

 理由はリアスに訪れた婚約騒動。

 ライザー・フェニックスとの婚約を破棄する条件として提示されたレーティング・ゲームという悪魔達のゲームで勝利する事で破棄が出来るという流れになった訳だが、悪魔としてまだ成熟前でゲームプレイ資格が無かったリアスにしてみれば非公式とはいえこれが初めてのゲームとなる。

 なので、婚約破棄を何としてでも達成したく学校を休んでまで眷属達と修行に出掛ける事となった訳なのだが……。

 

 

「……………」

 

 

 当然その中には一誠の姿もあった。

 リアスや眷属達と一定の距離を保ち、ただただ与えられた仕事を単純にこなしつつ、転生により失った力を取り戻す。

 それが一誠の目的であり、正直リアスが婚約してようが嫌がってようが知ったことでも無かった。

  付いて来たのは眷属としての仕事と、力の復活の為でしか無い。

 

 

「えっと、イッセーは――」

 

「一人でやるんで」

 

「え、あ……そ、そう……?

そうよね、私達じゃ足手まといだもの……うん」

 

 

 だから、良かれと思ってやった結果想定外な事になってしまって今でも罪悪感たっぷりな顔のリアスには悪いが、この茶番も力を取り戻すための踏み台になって貰うと……リアスからの遠慮がちの声もバッサリと切った一誠は、一人別荘の周辺に広がる広大な山林へと消えていくのだった。

 

 

「部長」

 

「うん……」

 

 

 転生してからずっと壁を作り続ける一誠に強くは言えないリアスを心配してか、眷属達が声を掛ける。

 眷属達もまた憎悪の念を向けられないだけマシだと思っているので、リアスと同じ気持ちだったのだ。

 

 

「くよくよしてはいけないわ、私達も早速始めましょう!」

 

 

 イッセーの隔てる壁に跳ね返されてちょっとテンションが落ちたリアスだったが、取り敢えず改めて修行を開始しようと眷属達に号令を掛ける。

 山林の奥へと消えたイッセーの事が気になりながら……だが。

 

 

 

 

 

 そしてそんな一誠はと云うと。

 

 

「チッ……全然戻る気配がしない」

 

 

 リアス達の別荘からかなり離れた山林の奥地で、巨木を素手て殴り倒しながら一人で苛立っていた。

 

 

「ドライグの声すら聞こえない……」

 

 

 その左腕には相棒の力を纏い。

 

 

『Boost!』

 

「っ……ラァッ!!」

 

 

 その背には必要の無い悪魔の翼を生やし。

 

 

「まるで元栓を閉められた水道みたいに能力(スキル)が塞き止められてる……。

ククク、ドライグ……もし今も俺の中で見てるとするなら、今の俺を情けなく思うかい? クソッタレ」

 

 

 転生により力の殆どを失った少年はただ、自分の脆弱さに自嘲する事しか出来なかった。

 

 

「いっそ、『その力を利用するから転生させて貰ったわ』とでも言えば良かったものを……」

 

 

 拾った枯れ枝でかつては何でも斬り伏せられた力も無い。

 無限に進化する事が出来る異常性も使えない。

 真の力を解放できた相棒の力も今では基礎の基礎までしか引き出せない。

 師から教わった技術の全てすら……今の一誠には使えず、転生によって獲たのは長寿だけ。

 

 

「黒神ファント――ぐがっ!?」

 

 

 脆く、弱く、そして情けない。

 かつては息をする様に使えた力すら、今は使おうとすればその反動でボロボロになる。

 鎌鼬の様に身体中を切り傷だらけにしながらも、無理矢理行使した技術によりその場にぶっ倒れた一誠は、ただただ情けなさに泣きたくなるが、決してリアスを責めるつもりは無かった。

 

 

「クソが……悪魔じゃねーのかよアンタは」

 

 

 転生させた理由も、全盛期の自分の力をもう少し間近で見たく、思いきって近づいてみたら瀕死になっていた姿を見て、このままでは死んでしまうと思って、一か八かで転生させたら本当に出来てしまった。

 

 そしてそのせいで力の殆どを失ってしまったのを知って罪悪感に苛まれる。

 

 力を取り戻す為に動く自分に文句も言わず、寧ろ痛々しいまでに気を使ってくる。

 

 いっそ嘘でも『その力が危険だから封じさせてもらった』とでも言ってくれたら喜んで憎んで、力を存分に取り戻してやれたのに……。

 

 

「悪魔なら悪魔らしくしろよ……ちきしょう」

 

 

 気を使われ過ぎて、逆に変な罪悪感が沸いてしまう一誠は、複雑な気分で木々から差し込む陽の光に目を眩ませるのだった。

 

 

「今までの技術は力を取り戻すまでダメだ」

 

 

 だが一誠は諦めの悪い性格だ。

 力を失ったからと云ってそのままにしておく訳もないし、失ったなら失ったなりに戦い方を変えれば良い。

 

 

『Boost!!』

 

「その為に……今はコレを完璧にする!」

 

 

 よろよろと立ち上がった一誠の目が闘志が宿る。

 そう……一誠は失っても尚足掻いていた。

 

 

 

 

 そんな訳で一誠だけ別行動での修行開始一日目は終わり、夕飯の時間になったのだが……。

 

 

「イ、イッセーが帰ってこない」

 

「何時も気配を隠すので、何処に居るのかもわかりませんわ……」

 

「やっぱり探しに行くべきじゃ……」

 

「僕、山の中を見てきましょうか?」

 

「イッセーさん……」

 

 

 晩御飯になっても――更に言えば完全な夜になっても一向に帰ってくる気配の無い一誠に、リアスを筆頭に眷属達も心配していた。

 

 

「もしかして此処じゃなくて野宿をするつもりとか……」

 

「あ、ありえそうですね……」

 

「イッセー先輩、嫌いですからね私達の事」

 

「「……」」

 

 

 壁を隔てられる理由は全員知っている。

 元々なし崩し的に転生したに加えてその弊害を一身に被っているのだ。

 正直悪魔を憎んでも仕方ないとすら思ってるリアスだが、それでも一誠が心配だったし、出来る限り美味しいものをとリアスは頑張ってご飯を作った。

 

 しかしそのご飯はすっかり冷めており、一誠の姿も別れてから一度も見ていない。

 探しにいこうと提案する騎士の祐斗に倣って探しに行くべきなのだが、もし見つけて一誠に『帰るまで一人でやるんで』と言われたらと思うとリアスは胸が苦しくなるからと迷っていたその時だった。

 

 

「っ!? イ、イッセー!」

 

 

 全身切り傷だらけの打ち身だからけという、誰がどう見てもボロボロな姿となった一誠が、別荘のリビングなに集まってる自分達をスルーして廊下をフラフラと歩く一誠の帰還に、驚く眷属達の中から我先にと飛び出したリアスは、そのまま宛がわれた自室に引きこもる気満々な様子の一誠を殴られる覚悟で止め、最近眷属に加わった回復神器持ちのアーシアに指示を飛ばす。

 

 

「アーシア! イッセーの傷を……!」

 

「は、はい!」

 

 

 地獄の獣とでも死闘を演じたのかとすら思える程のボロボロな姿にリアスの指示を受けたアーシアが直ぐに駆け寄り、一誠の身体に手を翳し、神器の力を使って癒しを与える。

 勿論祐斗と小猫と朱乃も見てるだけでは無く、ドリンクやら包帯やら一誠の為に残しておいたご飯の準備にあちこち駆け回る。

 

 

「…………」

 

 

 そんな眷属達に一誠は余程疲れていたのか、『要らない』という一言も無く、されるがままにされており、やがてアーシアの神器により身体の傷を癒した一誠は、オロオロとしつつ包帯を腕に巻こうとしているリアスに――

 

 

「二時間後、アンタ個人に用がある」

 

「え?」

 

 

 機械的な返答では無く、初めてリアスに対してそう話しかけた一誠は、そのままフラフラしながら自室に入ってしまうのだった。

 

 

「に、二時間後?」

 

「ちょうど日付が変わる頃ですわね……」

 

「……。何でしょうか?」

 

「というより初めてかも……自分から話すイッセーくん」

 

「何をするつもりなのでしょう……?」

 

 

 二時間後に。しかもリアスだけ。

 一体何なのか……と、なまじ一誠が無愛想過ぎて行動が読めずに困惑する皆だが、リアスは言われた通りにするつもりらしく、眷属達に聞き耳を立てたり覗き見る事は決してするなと厳命し、先に休ませた後、リアスは一人リビングに残り、ドキドキしながら二時間後を待つのだった。

 

 そして――

 

 

「時間だ」

 

 

 問題の二時間後になり、部屋から出てきた一誠がリビングにやって来た。

 

 

「って、アンタまさかずっと居たのか?」

 

「は、はい!」

 

 

 明かりのつくリビングに行ってみると、何故かソファで正座して緊張した面持ちのリアスに一誠は眉を寄せるが、取り敢えず伝える事があるとリアスを立たせると、そのまま別荘の外へと出る。

 

 

「ここら辺で良いか」

 

「あの……イッセー……?」

 

 

 外に連れ出された時の空は満天の星空であり、状況が状況なら実にロマンチックなのだが、あいにく相手は自分のせいで力を失って常にイライラしてる一誠なので、リアスからすれぱ別の意味でドキドキしていた。

 

 

(ま、まさか殴り倒される……とか? それなら仕方ないわね。

だって元を辿れば私の――)

 

「おい」

 

「ひゃい!」

 

 

 もしこのまま襲われても反撃なんてしないで、その怒りを受け入れるべきだと、自己嫌悪混じりで考えていたリアスは、別荘から少し離れた山林内の吹き抜けにて一誠に声を掛けられてビクッとしながらオーバーに返事をする。

 その反応に一誠も思わず『は?』という顔になるものの、深く考える事はせず、此処にまで連れ出した理由を語り出す。

 

 

「アンタに必ず覚えて貰うものがある」

 

「………………。え?」

 

 

 蹴り飛ばされるのか、それとも殴り倒されるのか……どちらにせよ仕方ないという覚悟を内心していたリアスは喜怒哀楽がほぼ欠落してるような顔で言われたその一言に思わずそんな声が出てしまった。

 

 

「覚えて貰う……?」

 

「そうだ」

 

 

 一体何を……。

 殴り倒される訳じゃないと分かったリアスはホッとなりつつ、その覚えて貰いたいものの内容を問う。

 すると一誠は、リアスにちょっと離れろと言うと――

 

 

 ――黒神ファントム――

 

 

 パァン!!!!

 

 

「!?」

 

 

 空気が破裂する強烈な爆音と、強烈な衝撃波を放ちながら地面に大穴を明けながら姿を消した一誠は、近くにあった巨木をその速度と共に殴り付け、そのまま盛大に破壊した。

 

 

「う……わ……」

 

 

 あった巨木が折れて倒れた……なんて生易しいものでは無く、巨木が根の上から丸々消し飛んだその威力にリアスは驚いた。

 いや、消し飛ばす事位なら悪魔広しであるし、自分でも出来るが、単純な身体能力でこの芸当をできるかと言われた自信が無かった。

 故に驚き――

 

 

「ぎ……ぎぃ……!!」

 

「っ、イッセー!」

 

 

 破壊した巨木の近くでボロボロになって膝を付く一誠の姿にも驚いた。

 勿論、ほぼ自然に身体が動いたリアスは全身をボロボロにする一誠に駆け寄る。

 

 

「大丈夫イッセー!?」

 

「チッ、一発が限界とは落ちぶれたもんだぜ……くくっ」

 

 

 冷や汗を流しながら息を切らし、昔ならいくらでも行使できたといった台詞を半笑いで宣う一誠に罪悪感に再び苛まれそうになるリアスだったが、顔まで切り傷だらけの一誠がリアスを見て言った。

 

 

「七日でこれを徹底的にアンタに教える。だから覚えてくれ」

 

「え……イッセーの技を、私が……?」

 

「あぁ、死にかけたままの状態で転生した俺じゃあ、見た目はともかく中身はずっと死にかけてるせいで一発が限界だが、アンタなら覚えられる筈だ」

 

 

 初めての邂逅以来の会話らしい会話に内心ちょっと嬉しいとか思いつつも、リアスは驚いた。

 力を失った原因であるリアスに自分自身の技術の一つを教えようとしている事に。

 

 

「で、でも……何で私に……? 小猫の方がアナタと戦い方も似てるから適任だと思うわ」

 

 

 そう、教えるなら何も自分じゃなくても良いのでは? と、遠慮しがちに話すリアスだったが、一誠は『ふん』と鼻を鳴らす。

 

 

「アンタの部下に『コチラ側』のセンスがある奴が居ないんでそれは無理だ。

それに何もタダで教えるつもりは無く、ちゃんと代わりを貰うつもりだ」

 

「え……?」

 

 

 有り体に言えばリアスのセンスを認めた上で選んでるというカミングアウトじみた台詞にちょっとドキドキしてたりしたリアスは、代わりを貰うと口にしながら赤龍帝の籠手を呼び出し、倍加を掛けながら右手の掌に魔力の塊を作り出した。

 

 

「これが何だかわかるか?」

 

「魔力…………っ!?」

 

 

 若干ドヤ顔で見せてくる一誠な魔力の塊をしげしげと見ていたリアスは絶句する。

 只の魔力……それなら転生して適正があればある程度操れる様になれるからそれ程珍しくは無い。

 

 リアス驚いたのはその魔力『性質』であり、信じられないと言った表情をしながら一誠の右手に手を伸ばし……小さく口を開く。

 

 

「滅びの……力」

 

「正解だ」

 

 

 そう……母の血筋であるバアル家にのみ許された力にて、兄と自分も受け継いだ力。

 その力をバアルとはまるで無関係の……ましてや人から悪魔へと身を転身した一誠が今自分で使っている。

 

 余りの衝撃に信じられないといった表情で一誠の右手に触れるリアスだが、伝わってくるのは紛れもなく己と同じ滅びの性質。

 

 

「一体……どうやって……?」

 

「餓鬼の頃からの得意分野でね。

まあ、猿真似程度だが……再現するのにはクソ苦労したしたぜ」

 

「…………」

 

 

 猿真似演技が得意。

 そんな理由で血族者限定の力を行使出来るなんてバカな話があるか……と思ったものの、全盛期の途方もない力を一度だけ目の当たりにしているリアスは納得するしかなく、コクコクと頷くしか出来なかった。

 

 

「いっつつ……これは取引だ。

俺はアンタにさっきの技術を教える……アンタはこの滅びの力の使い方を俺に教えるというな」

 

 

 フラフラと立ち上がった一誠は、唖然とその場に座るリアスを見下ろし、星空を背に笑って言う。

 

 

「勿論力は取り戻す。

だが、アンタの邪魔な問題を片付けるには時間が足りねぇ。

だから今は無いなりの戦い方を生み出し、アンタの対戦相手を実験台にする……。

どうだ……この件に関してだけは全力で力を貸す」

 

「………」

 

 

 初めて機械的な表情じゃない……人間らしい笑みを浮かべて手を差し出す一誠にリアスは胸の鼓動をより大きくしながらボーッとその表情を見つめる。

 やがてその気持ちはより大きくなり、何かを決心した表情へと変えたリアスは――

 

 

「アナタの力……ちゃんと取り戻せるように私も頑張るわ」

 

 

 謝る代わりにサポートを。

 逃げるのではなく立ち向かう勇気を。

 目を逸らさず前に立てる強さを。

 

 燻る心の中の枷が外れた様な気持ちと共に、リアスはその手をしっかり握り……立ち上がる。

 

 

「あ……やべ、力が抜け――」

 

「きゃっ!?」

 

 

 ちょっとした事故なんかもありつつだが。

 

 

「お、おお……? やっぱデカいなアンタの胸」

 

「ちょ……こ、こんな外で……は、恥ずかしい……ぁん……っ!

イ、イッセーって意外とエッチなのね……」

 

「まあ、態度でそう思ってたんだろうが……一応俺は男のつもりなんでねって――って、やべぇ……黒神ファントムの反動で動けねぇ……」

 

「え……っと……取り敢えず回復するまでこのまま……?」

 

「いや、普通にそこら辺に転ばせれば良いだろ。

そんなサービスまで強要するつもりねーし」

 

 

 初めてちゃんと向き合えた……そんな夜になった。

 

 そして――

 

 

 

「っ……やぁ!!」

 

「……。よし、完璧だな」

 

 

 翌日から終日までに其々互いの技術を吸収した二人は……。

 

 

「消し飛べ!!」

 

「そう! それよイッセー!」

 

 

 

 

 

『え、何があったの?』

 

 

 眷属達もビックリなレベルで日常会話が交わされる様になったとか。

 

 

「イッセー、今日は何が食べたい?」

 

「オムレツ」

 

 

終わり

 

 

 

 

 

 始まりしレーティングゲーム。

 

 戦い方を変えた一誠は兵士としてその力を対戦相手であるライザー・フェニックス……そして観戦者の悪魔達に見せつけて注目を集めていた。

 しかし……。

 

 

「くっ……」

 

「ははは、甘いな下僕風情が!

不死を司る俺はその程度じゃ倒せない!」

 

 

 不死のフェニックスにはまだ届かず、王であるリアスを庇いながら徐々に追い込まれていく。

 

 

「いい加減しつこいんだよお前は!」

 

「がはっ!?」

 

「イッセェェェェッ!!」

 

 

 そして遂に破れたイッセーにリアスの悲痛な叫びが木霊する。

 

 

 

 そう……生まれて初めて――いや久しく覚えた信頼関係という概念が奇跡となって現れるトリガーとなるとはライザーも知らず。

 

 

『瀕死……いや、死んだんだよお前は。

ったく、世話焼かせちゃって困る弟子だ……が、これでやっと復活だ』

 

 

 勢い余ってライザーに殺された一誠は――

 

 

「な、なん……だと……?」

 

「い、いっせー……?」

 

「……………………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久々に……新しいなぁぁぁぁっ!!!! ゲッハハハハハハァ!!!」

 

 

 破壊の龍帝として再臨する。

 

 

「さぁ来いよ……。

聖剣・エンピツカリバーの錆びにしてやるぜ……ゲゲゲゲゲゲ!!」

 

 

 無神の滅殺龍帝編に続かない。

 




補足

と、まあ……間違えなければこうなってましたね。
間違えなければ……。

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