色々なIF集   作:超人類DX

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最後です。

まあ、最後です


モテないし、独り立ちしようとしても失敗したから再集合する。

 なるほどね、要するに体の良い壁にでもなれってか? いや良いんだけどね……別に壁になったげる相手がアイツの友達やってくれてる子だしね? そら困ってんなら出来る限りは力になったげるさ。

 

 

「余計な事かもしれないけど、殴る時はもうちょい腰を入れて、棒で殴る時はちゃんと振り切ったりしてですね――って、おたく聞いてます?」

 

「ひぃぃぃっ!? ば、化け物ォォッ!!」

 

「予想はしてたけど、こうも散々喚いた挙げ句にボコッボコ殴ってきた相手に化け物呼ばわりとか流石に凹むぜオイ?」

 

「ひぃぃぃっ!?」

 

 

 この際、将来の夢辞典に『要人警護』でも入れとこうかな。

 ちょっと向いてる気がするし……。

 

 

「あら……行っちゃった。

まぁ良いや、どさくさに紛れて住所割り出したし、これでまだ懲りなければ直接乗り込んでしまえば良い」

 

 

 そう、成瀬さんにしつこく言い寄ってた男の叫び声と共に逃亡する背中をぼんやり眺めながら考える俺は、サ店で待ってるだろう智子と成瀬ちゃんの所へ戻り、取り敢えず軽くトラウマ植え付けておいたとだけ報告する。

 ついでに連絡先も消せと忠告するのも勿論忘れずにね。

 

 

「逆上するとは……あの程度の根性だし無いと思うよ。

てか、あの彼は一緒の学校?」

 

「ち、違います……! た、偶々声を掛けられて、押し切られる形で……」

 

「そうなんだ? じゃあ気まずくなることもねーか。

でももし来たら言ってね? ヤサとか調べてあるし、今度は社会的に抹殺するから」

 

「は、はい……」

 

 

 相変わらず目すら合わせない成瀬さんに事後報告を完了し、アールグレイだかの茶を飲む俺は一つ今回の事で気付いた。

 アレだな……まずあり得ないが、もし今隣でニヤニヤ一人で嗤ってる智子が被害者だったら忠告無しで殺ってた気がする。

 

 

「オメーは何時までニヤ付いてるんだよ」

 

「痛っ!?」

 

 

 理由? ……………さぁ、俺にも解らないけど、、ただ何となくそう思っただけさ。

 やっべ……何か思ってて悲しくなってきたわ。

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 一誠曰く、ストーカーに対して無駄にトラウマ植え付けた上で追い払ってから日は無駄に過ぎ、気付けば一学期の最終日となっていた。

 ゆうちゃんの話に依れば、一誠にトラウマ植え付けられたらしいストーカーはその日を境に一切現れなくなったらしいが、私からしてみればムカつく事案である事には変わりなかった。

 つーか、ストーカー追い払ってもまだ男が群がってくるとか女王様にでもなったつもりかよ……ケッ!

 

 

「さくらんぼの茎を舌を使って結べればキスが上手いと聞き、試した結果蝶結びの上にもう一個固結びが出来た俺はそろそろモテても良いんじゃね?」

 

「只の変態じゃんそれ」

 

 

 こっちは結局このバカと無駄に時間を浪費したってだけなのによ。

 てか帰って早々家に来るなり何をほざいてるんだコイツは。

 

 

「夏休みという長期の休日を利用し、然り気無くビフォーアフターすへば智子もリア充になれんじゃね?」

 

「お前は天才か!?」

 

 

 と、思ったが無能下僕の分際でやるじゃないか。

 良いだろう、私の聖域という名の部屋にズカズカ入ってきた事を今だけは許してやろう。

 人のベッドで寝っころがってるのも寛大な心で見過ごしてやろうじゃないか。

 

 

「で、具体的にどうしたら良いんだ? あの薄情な愚弟は全く取り合ってくれないし……」

 

 

 リア充……そうリア充だ。

 このばか野郎のせいですっかり諦め掛けていたが、漸く一誠も私が迷惑がってると自覚したのか、今度こそ私の為に奴隷の様に尽くしてリア充になれるように押し上げてくれる。

 グフフフ……。

 

 

「そう言うだろうと思って考えた結果なんだけど。

なぁ智子――

 

 

 

 

 

 暫く互いに一人でどこまで出来るかをやってみねーか?」

 

 

 フフフ…………フ?

 

 

「最近思った。

俺、お前の邪魔になってる気がする」

 

「え、あ……お、おぉ……?」

 

 

 風向きは今私に向いていると確信して思わず笑った私だったが、何を考えてるのか急に真面目ぶった顔で宣う一誠に私は面を食らって変な声が出てしまう。

 迷惑……いや確かにウザいし迷惑だと常日頃から思っているのは事実だけど、また変なタイミングでそれをコイツの口から聞くと、何か変な気分だ。

 すると何を思ったのか、一誠は勝手に占拠していた私のベッドから降りると部屋の出口へとスタスタ歩き、出て行く間際に呆然と床に座ってた私に振り向くと……。

 

 

「アレだ、互いに模索した方が良いだろ? だからもう今度から家にも来ないし無駄に誘わない」

 

「は……は?」

 

「いやさ……おばちゃんと智貴に昨日言われて今まで俺がお前にやって来ちまった事を振り返るとお前の邪魔にしかなってねーやと思ってね 」

 

「え、今だって図々しく人の部屋に入り浸ってたのに、何言っちゃてんの? 頭大丈夫か?」 

 

 

 お母さんと智貴が何かを言ったらしく、ヘラヘラしつつも微妙に無理した顔をしてる様にしか見えない一誠は、私の問いに『多分まともだぜ』とだけ言うと、そのまま部屋を出て行ってしまった。

 

 取り残された私は、あんまりも唐突な展開に訳が分からず、またアイツが言った互いに自力でリア充目指そうぜ的な台詞に訳が分からずとも、これはアイツからの挑戦と受け取り、やってやろうと決めた。

 

 

「なるほど……つまり私に対する挑みって訳か。

上等だよ……夏休みの間に絶対にお前が恨めしくなるほどのリア充になってやる……!」

 

 自分のポテンシャルでリア充になった暁には、失敗してどん底に居るだろう姿が容易に想像できるバカを思いっきり嘲笑ってやろうと決めた。

 

 

「つーか突拍子が無さすぎて訳がわからない」

 

 

 妙な違和感を残したまま……。

 

 

 

 

 

 人生に於いて、これ程夏休みが退屈に感じた事は初めてだった。

 

 

「暇だ……」

 

 

 夏休みに突入してからもうすぐ八月へと入ろうとしているとある昼間。

 課題や宿題を機械的な要領で直ぐに終わらせてしまった一誠は、今までに無い程の虚無感を覚えながら自室に引きこもり、暇を持て余していた。

 

 

「…………」

 

 

 本当に暇すぎだった。

 それはもう、朝起きて自己トレーニングしてからご飯食べて部屋に戻って寝っころがって一日の大半を寝て過ごしてる時点でお察しなぐらいであり、何でこうも暇なのかとぼんやりした目で天井で考えようとしてる一誠だが、本当はこの暇な理由が解っていた。

 

 

「アイツ……どうなったかなー」

 

 

 お隣さんの幼馴染みにかまけていた時間がごっそりと無くなったから暇なんだと一誠はちゃんと理解していた。

 が、理解しているだけで一誠は何時もの様に智子からウザいと言われる構いに行こうとはしなかった。

 

 

「リア充になれてるかな……」

 

 

 理由簡単だ。

 一誠は言われたのだ……智子の母と弟の智貴に。

 『このまま構い続けていたら一誠の人生がダメになるから、互いの為に自立してみたらどうか?』と……。

 智子の母と弟にかなり神妙な顔をされて言われてみれば、確かに自分は四六時中智子の動向を気にしていた様な気がした。

 

 人見知りを拗らせ過ぎて喪女の手前になった智子に構いまくって本当の喪女にならないようにしたり、一人でネットばっかしてる所を連れ出したりと、気付いたら何時も智子ありきの生活を送っており、自分の事なんてほぼ二の次だった。

 

 お陰で高校になってモテモテハーレム王になる夢もさっさと諦めて、智子とゲームして遊んでばっかりな何時もの生活に戻っていた。

 それをふと今までの人生を振り返って漸く気付いた一誠は思ったのだ……『俺のせいで逆にダメにアイツがなってしまうんじゃないのか』と。

 

 故に一誠は決心したのだ。

 まずは智子に自立心を促し、自分なりの方法で自分を変える事をさせ様と。

 今まで散々自分のせいでそのチャンスを棒に振ったんだと気付いえ今更に申し訳なくなった一誠は、知り合ってから人生初の『智子と一切関わらない』生活をこうして夏休み中に決行して慣らそうとし、現在こうしてやる事もリア充になる努力をする気力も無く、夏休みの日々を無駄に過ごしていた。

 

 

「イッセー、ご飯はー?」

 

「ん……要らない」

 

 

 そんな息子の今までに無い無気力な生活に対して、両親は敢えて何も言わずに普段通り親として接した。

 お隣のお嬢さんに――ぶっちゃけお前ストーカーか? ってレベルで暇さえあれば会いに行ってる息子は何時だって智子の事を『は? 好きって俺がアレをか? いやいやいや、おっぱい無さすぎてありえない』と真顔で宣い、その失礼さによくひっぱたいてやる訳だが、今の息子は智子と接しなくなったせいか、嘗てその異常さで周りの子供から逃げられていた時の頃に戻っているような気がしたと感じる。

 

 

「夏休みだからってダラダラするのは良くないわよ?」

 

「課題も宿題も終わったんだから良いだろ別に。

どーせ遊びに行く約束をする相手なんていねーんだから」

 

「………」

 

 

 今も注意すれば不貞腐れた様にゴロンと寝返りを打つ息子の背中を見つめながら、母は小さくため息を吐いた。

 『とっとと自覚しろこのバカ息子』と。

 

 まるで智子の様に隈の酷い顔で、覇気もヘッタクレも無いその原因に気付かない……いや、気付こうともしない酷い息子に母はこれ以上は何も言わずに部屋を出ていく。

 

 

「つまんねー……」

 

 

 残された息子はただただ、満たされない気持ちのまま今日も何も食べずに眠るのだった。

 

 

 

 そしてそれは智子も同じだった。

 

 

「ふぇ、へへへへへへ……!」

 

「おいねーちゃん……」

 

「ひぇへへへへへへへへ!」

 

「…………」

 

 

 黒木家、智子のお部屋。

 女子らしさの欠片も無い、漫画本やアニメのDVDやまPCゲームのあるオタクなお部屋は只今物凄く空気が淀んでおり、その部屋主の智子もまた……これまでに無いくらいヤバイ事になっていた。

 

 主に隈とか形相とか精神が。

 

 

「ふざけんなばーか、どいつもこいつも楽しくしやがって。

ネットにまで自慢して面白いですかー? テメー等の自己満足を世界に発信して恥ずかしくねーのかよクズが! ひゃははははは!」

 

「………。母さん、やっぱりダメっぽい」

「そう、ね……。正直イッセーくんに言った私がバカだったわ」

 

 

 隈はより酷く、より不摂生な生活の果てに装備された充血濁り目でケタケタ笑いながらPCの画面に向かって毒づく姉ないし娘の様子を部屋の扉の隙間から除く智貴と母親は、予想以上に智子は一誠が居ないとダメだと改めて理解した。

 暴言吐かれても決して本気で怒らず、正直もらって欲しいレベルで世話を焼くお隣の一人息子さんが如何に娘のダメさにストップを掛けていたか……。

 

 『寿命をくれてやるからこいつ等の頭に硫酸でも降ってそのまま死んでしまえ』と化け物みたいな形相でカタカタとキーボードを叩く娘ないし姉を見れば見る程、二人は思った。

 

 

「でもどうするんだよ? プライドだけは無駄に高いし、今更一誠先輩と会えなんて言っても聞かないだろ……」

 

「智子ってどうして一誠くんの事を好きじゃないのかしら……」

 

「何でも『一誠より百倍イケメンの男以外にしか興味ない』んだと」

 

「どれだけ自意識過剰なのよあの子は……」

 

 

 自立どころか人間的に退化してしまった智子をさっさと元に戻さなければと、母は静かに携帯を取り出すのだった。

 

 

 

 自力で互いに夏休み中にリア充になろうじゃないか。

 その言葉を送られたっきり、アレだけウザかった一誠が一切自分の所に現れず、更にいえば会話すらしなくなった。

 最初の2・3日は『やっとウザいバカとオサラバだ!』と喜び、必ず一誠よりも早くリア充になって死ぬほど見下してやろうと、早速行動を起こそうとした。

 

 が、だ……それから更に2日程経った後だ。

 ネットの知識を頼りに服やら髪型やらを無理矢理変えて外に出て行ってからの惨めすぎる結果に即心がへし折れた智子はその日を境に引きこもった。

 そして一誠に世話されてたお陰である程度守れていた規則的な生活も即座に崩れ、肌はボロボロ、隈は最悪、目はゾンビ……と化してしまい、今では掲示板に爆撃噛ましてはIP規制を掛けられて悪態付く最低すぎる生活にまでレベルが堕ちてしまったのだった。

 

 

「え、アイス……?」

 

「そう、今ご飯作ってて忙しいし、智貴は宿題をやってるからアンタが行きなさい。

部屋にばっかり閉じ籠ってるし暇でしょう?」

 

「ぅ……」

 

 

 故に外に出ることすら嫌がる様になっていた所に与えられた単なるおつかいにも、智子にしてみれば軽い死刑宣告にすら聞こえた。

 しかし行かないと妙に不機嫌な母に怒られてより面倒で、最悪PCやゲームを全部取り上げられてしまうと思った智子は久々に蒸し暑い夏の外へと出る事にし、適当な服を着て家の外へと出た。

 

 

「ま、まぶし……!」

 

 

 夕方の夕日が、引きこもっていた智子を照らして目が眩む。

 

 

「んだよ……アイスなんて今買わなくても良いじゃん」

 

 

 外の明るさに目が慣れ、ブツブツと文句を呟きながら門を開けて外の道へと久々に足を踏み入れた智子は、近くのスーパーに向かおうとノロノロと下を向きながら歩きだし、全く連絡すらしなくなった腐れ縁の家の前を通りすぎようとした……その時だった。

 

 

「「あ……」」

 

 

 それは偶然なのか、ちょうど腐れ縁の家の門の手前辺りまで歩いた智子がふと顔を上げると、さっき鏡で見た自分の顔に勝るとも劣らない隈と死人の様な目を携えたその腐れ縁男とバッタリと遭遇し、思わず目もあった。

 

 

「…………。よぉ」

 

「……うん」

 

 

 まず智子は、自分並みに顔がエグい事になってる腐れ縁男……一誠からの気まずそうな短い挨拶を受けつつふと疑問に思った。

 コイツ、何があったと……。

 

 顔は真っ青で、目は死んでて、おまけに隈も酷い。

 どう見てもリア充にはなれてないだろう、自分と同じやつれ具合は、基本バカだけど健康的な一誠らしからぬ姿だったが……智子は聞けなかった。

 何か微妙に気まずくて。

 

 

「「…………」」

 

 

 そんな空気のまま、母からのおつかいを優勢せねばとスーパーの方向に向かって一誠を通りすぎて歩き出した智子だったが、どういう訳かその一誠が無言で自分の隣を歩いており……よく見たらその手には彼ではないがま口の財布が握られていた。

 

 

(あぁ、おばさんにパシられたのか)

 

 

 自分もまさに今パシられてる状況だというのに、無言で隣を歩く一誠に対して若干嘲笑い気味に思った智子は、びっくりするくらいに無言のまま、揃って同じ目的地までゆっくりと歩いていると、その沈黙に堪えられなくなったのか、Tシャツハーフパンツ姿の一誠が、隈取り形相で前を向いたまま口を開いた。

 

 

「リア充にはなれそうか……?」

 

「…………。私の姿見て察っせなくなったの?」

 

「……。見たらわかるけど、会話の切っ掛けが掴めないからだよ、お前こそ察せよ」

 

 

 リア充という言葉にアレルギー反応した智子が、唸るような低い声で返すと、一誠は気まずそうな顔をした。

 どうやら自分から言った手前、話し掛け辛かったらしい。

 

 

「夏休みだからこそ難易度が跳ね上がった。

どいつもこいつも、ネット上にですらバカ共が自慢しやがる」

 

「そう、か……」

 

 

 互いにリア充から遠く掛け離れてしまってる状況に対し、二人の心に秘めた本音は『安堵』だった。

 もし一誠が、智子がリア充化してたら最早立ち直れない様な気がしたからであり、互いにそこから遠く離れた箇所まで吹き飛ばされたと報告し終えた後、漸く一誠は言った。

 

 

「明日ゲームしないか? もう正直お前と何かしてないと発狂しそう」

 

 

 久々の会話だからこそ、互いに毒を吐き合うだけで妙に気力が充実していると感じたのか、一誠からの微妙に遠慮じかちな誘いに智子は黙って頷く。

 

 

「良いよ別に。今リア充目指しても不可能だってわかったし」

 

 

 智子としてもそれはある意味で助かった。

 相手は一誠でアレかもしれないけど、居ないよりはマシだったのだ。

 

 

「その代わり、歩くのがしんどいから私をこのままスーパーまで運べ」

 

「おう、お安い御用だぜ」

 

 

 腐れ縁同士は結局こんな風に戻った。

 フラフラしてる智子を背に背負いながら、其々母親から頼まれたものを買いにお店へと向かう時まで、二人はただただ無言で背負い、背負われるといった形で。

 

 

「相変わらず軽いな智子は……ちっせーし」

 

「うっせーよばーか。役得と感じて感謝しろし」

 

「へーへー……変わらない悪態で安心したぜ」

 

 

  ちょっとだけ不器用に話ながら……でも楽しそうに。

 

 

終わり




補足

これ……無意識レベルで依存入ってる気がするっつーか……。

わたもての体を成してないというか……あれ、何でコイツらイチャついんてんだというか……。


次の日から普通に戻り、アホなやり取りをし合う状態に戻りましたとだけ最後に追記します。

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