色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

ひたすらに確定ルートみたいな話


悪役令嬢さんは押しまくって勝利する

 

 

 その先に待っているのが、この世界にとってのバッドエンドであったとしても私は迷わない。

 気狂いと揶揄されようと、この世界のコミュニティから弾き出されても私の意思はあの時の出会いから変わらない。

 

 

「そうか、キミのその髪を見てひとつ思い出したぞ。

昔、イッセーにちょっかいをかけたあの堕天使の女と同じ髪だ。

そう、名前は確かレイナーレだったか―――ぶっ!?」

 

「いくらお前でも今の言葉は聞き流せないぞヴァーリ。この子を、あのクサレ女と一緒にするんじゃねぇ!!」

 

 

 それが私の意思なのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 授業の際、うっかり力の加減を間違えた結果国王に呼び出されてしまったユミエラとアリシア。

 光と闇の魔法属性を持つ両者は正反対に位置する者である――と何も知らない人々は思ったようだが、此度の謁見を経てその偏見は少しだけ薄くなったのかもしれない。

 

 いや、どちらかと言えばユミエラもアリシアも自身の力を決して見知らぬ誰かの為ではない、誰かの為だけに使うという意思しか感じられなかったというべきか。

 

 どちらにせよ、国としてはその若さでレベル99というひとつの到達点に至ったユミエラと、光属性を操るアリシアは復活するであろう魔王を討伐する為の戦力として――いや、国として敵対しないようにと慎重になったのだという。

 

 

「とにかく自分達のことはそこら辺の石ころみたいにほっといてくだはいと訴え続けたら一応それなりの配慮をしてくれると約束してくれたわ」

 

「そうか、そいつは良かった」

 

 

 そんな、双方の熱量が絶妙にズレた謁見は終わりを迎え、学園へと帰還したユミエラとアリシアは―――――何故か背に白龍皇の光翼を背に首の関節を鳴らしているヴァーリと、左腕に赤龍帝の籠手を出しながら左右の指をポキポキと鳴らしているイッセーという、双方とも『ヤル気満々』なオーラをバシバシ出しまくって待ってるその姿を見て、慌てて『今のところは大丈夫そうだ』と話した。

 

 

 

「そのまま二人が捕まったらイッセーと二人で国王を襲撃して連れ出そうと話していてな。

二人が無事に戻ってきたようだし、少しは安心したよ」

 

「そうだな」

 

「「………」」

 

 

 どうやら二人が戻って来なかったら、一切躊躇わずに城を襲撃するつもりだったらしく、ユミエラとアリシアは『話をある程度わかって貰える陛下でよかった……』と首の関節やら指をポキポキ鳴らしている二人を前に本気で安堵してしまう。

 

 

(前世で読んでた原作のせいで戦闘狂のイメージしかなかったけど、このヴァーリも結構後先考えないタイプね……)

 

(これは謁見後にあった王妃様との会談の件が話しづらいなぁ……)

 

 

 『出きれば国の兵士と戦ってみたかったが……』

 『いや、全員ユミエラとアリシアちゃんよりは弱いだろうし、あんまり期待できないだろ?』

 『それもそうか……』

 

 と、コンビニに買い物しに行くようなノリでの会話と共に戦意を霧散させる赤白帝皇コンビが落ち着いてくれたのを見計らったユミエラとアリシアは、王妃から持たされたお土産のお菓子を食べようと二人を誘って細やかなお茶をする。

 

 

「私とアリシアが聖女となって近々復活する魔王討伐のメンバーに入らないかと言われたわ」

 

「そりゃあそれだけの強さを持ってると分かれば言われるわな?」

 

「でもついで感覚で私かユミエラちゃんのどっちかが殿下と婚約者にならないかって王妃様に言われちゃって……」

 

「は?」

 

 

 絶妙に和やかなタイミングを見計らったユミエラとアリシアが謁見の後にあった話を打ち明ける。

 すると『ほう?』と普通に反応するヴァーリとは正反対に、イッセーはといえば持っていたティーカップを思わず握りつぶしてしまった。

 

 

 

「こ、こんやくしゃ……? こんやくしゃってなんだ? 食い物か?」

 

「落ち着けよイッセー。

二人ともこの世界の人間としては最上位の強さなんだ、そんな話を持ち掛けられてもおかしくはないだろう?」

 

(うわぁ……分かりやすいなぁイッセーさんって)

 

 

 割りと錯乱するイッセーのリアクションを見てアリシアは苦笑いしてしまっていると、思いの外動揺されてる事を知ったユミエラは若干舞い上がりつつ口を開く。

 

 

「私もアリシアも刹那で拒否したから大丈夫よ」

 

「そ、そうか……」

 

「? アリシアもか? 玉の輿のチャンスだっただろうに」

 

「………。本気で言ってるなら、暫くラーメン禁止にするよヴァーリくん?」

 

 

 当然ユミエラはそんな話なぞ秒で断るどころか全力で拒否したと言えばイッセーは露骨に安心している。

 基本的にイッセーもヴァーリも『身内判定』をした者に対する情は深く、その者の為なら平気で国どころか世界そのものに中指を立てて喧嘩を吹っ掛ける程度には後先を考えない。

 

 

「あぶな……。

ユミエラがその事を言わなかったら、その殿下だかなんだかを殺しに行ってしまいそうだったわ」

 

「い、嫌だわイッセーったら。

そんなに私の事が……?」

 

「そりゃあ好きか嫌いかで言えばかなり好きだしな、ユミエラの事は」

 

「おっふ……! こ、幸福とはまさにこのことだわ」

 

 

 大概の人間からすればそれは『重い』とされるが、ユミエラにしてみればその重さは重さとはまるで感じることはない。

 

 つまり、この二人の相性は割りと良いのかもしれないのである。

 

 故にしつこいようだが、ユミエラ・ドルクネスの精神は常に『幸福』そのものである。

 求めてやまなかった青年と共に生き。

 

 その青年から文字通り手取り足取り『戦い方』を教わり、青年から『嫌いじゃないし、寧ろ好きだ』という言葉を貰えた。

 

 

「―――そうして周辺諸国を植民地として支配するのだ!

今説明した通り、キミは敵国の軍を壊滅させるだけでいい!

後の政治的な事は夫となる僕に任せてくれて構わない!」

 

「………………」

 

 

 故に、国王との謁見以降、それまで嘘吐き呼ばわりするか怖がっていた者達が別の意味で鬱陶しいものに変わったとしても、ユミエラからすれば些細な話なのだし、ここの所毎日貴族の子息辺りに呼び出されては口説かれようともユミエラの精神は一切揺れもしないのだ。

 

 

(今日からやっと本格的にイッセーの必殺技の使い方を教えてくれる……。

ふふふ、闇属性の魔力を使ったドラゴン波が使えたら凄いだろうなぁ……)

 

 

 無視をすればするで騒がれるという事もあって、渋々呼び出しに応じてはいるユミエラは、過激派なる貴族の子息の語る演説じみたなにかを全く聞くことはなく、その頭の中はやはりイッセーのことばかりであった。

 

 

「最終的には大陸全土を支配する。

素晴らしいだろう?」

 

(最近のイッセーはぱったりとナンパもしなくなったし……ふふふ後少しよ私。

毎日の積み重ねもあって戦闘力(オッパイ)も中々育っているし……ふふふふふふ)

 

「キミにとっても悪い話ではない筈だよ。

黒髪のキミが僕の妻になれるのだから……」

 

 

 故にあれこれと言ってくる名前すら記憶していない過激派らしき貴族の子息には――というかその手の輩に対してのユミエラの返答はたったひとつだ。

 

 

 

「お断りします。

私、自分より強い人(イッセー)が大好きなので」

 

 

 

 六○のおいしい水よりもさらりときっぱり断るのである。

 この決め台詞に関しては意外と有用であり、レベル99であるユミエラより強い人なんて指で数える程度しか現状存在しないし、内の二人に関しては世間に名前も顔も広まっていないのだ。

 

 

「くっ……! は、ははは! しかし今の時代は腕っぷしの強さだけではやってはいけないよ。

大事なのは頭の良ささ! その点僕は優秀さ!」

 

「はぁ。

では私も軍の相手や反乱分子を押さえつけたりといった荒っぽい真似はしないようにしますが……」

 

「なっ! キミみたいに戦うしか能がない人間は何も考えずに僕のような優秀な人間の言うことを聞いていればいいんだ!!」

 

「………………」

 

 

 ついうっかり本音を爆発させる男子生徒にユミエラは所謂『クソデカため息』が出てしまう。

 

 

「困りましたね、好きで好きでたまらなかった(イッセー)と共に生きてきたせいで、他の人間達の姿が全て物言う案山子にしか見えなくなってきましたよ」

 

「な、なんだ――――どぼぇお!?!?」

 

 

 その言葉にカチンと来た男子生徒が声を荒げようとしたその瞬間、見えないナニかが男子生徒の顔面をぶち抜き、乱回転をしながら吹き飛ばされた。

 

 

「失礼、お嬢様に粗相を働くと判断し、行動に移させて頂きました」

 

 

 ちょっとキレ気味になっている燕尾服を身に纏った茶髪の青年――というかイッセーの拳によって。

 

 

「ちゃんと自分で断るって言ったのに……。

どうするのよ、これでも一応相手は貴族の子息なのよ? ……あーぁ、顔面がグチャグチャになってるし、この分じゃあ二度とステーキが食べられなくなるわよこの人……」

 

「段々腹立って来てつい。

どう聞いてもユミエラを兵器扱いしてる言い方しかしないし……」

 

「……。困ったことに、その台詞を聞いた瞬間許してしまうわ。

まあ、この程度なら闇魔法でギリギリ修復できるし、適当に記憶をシェイクさせておけばなんとかなるわ」

 

 

 多くの人間はまだ知らないのだ。

 ユミエラ・ドルクネスの精神はある意味で極まっていて、ユミエラ・ドルクネスの背後にはどんな相手だろうと噛みつこうとする番犬――もとい番龍が居ることを……。

 

 

「そもそも私なんてまだマシよ? アリシアなんて最近殿下達から絡まれてるし」

 

「らしいな。

けどスペック的にヴァーリの圧勝だろ。俺はヴァーリみたいなスペックはないからよ……」

 

「変な所で自分に自信がないのねイッセーって。

大丈夫よ、少なくとも私だけはアナタはこの世のなによりも素敵な人だって思ってるから……」

 

 

 かつてアザゼルの赤き狂龍であり、ユミエラの狂龍である赤き龍の帝王が……。

 

 

 

 

 

 

 優しかった筈の両親に見せたあのモノが原因で、それまでの全てが嘘だったかのように『拒絶』され、そして見捨てられた。

 

 何がいけなかったのか、見せてはならないものであったのか……それすらも考える暇も無く幼い身のまま世間に放り捨てられた少年は生きることに必死だった。

 

 優しかった両親から拒絶され、世間に放り捨てられてから一年後、少年は野良犬のように町のゴミ箱を漁っていた。

 

 学校には行っていなかった。

 モノを買う為の金銭を己で稼ぐ手段を当時持たなかったが故に服はボロボロで、人前に出れば冷たい視線に晒される。

 

 最早腐った生ゴミすら食べる事に躊躇いなんてなかった。

 

 とにかく空腹で死にそうだった。

 

 

 最早ちっぽけな少年に残された心はただひとつ『生きること』だけであった。

 死ぬことだけは考えず、どんな手を使ってでも生きること。

 

 それだけが当時の少年に残された『希望』だったのだ。

 

 そんな生への執着があったからこそ少年は自身に宿る龍の力――そして両親に拒絶をされる元凶となった、己自身の精神と向かい合えたのかもしれない。

 

 

『今の時代にお前のようなガキが居るとはな。

しかもその目――ちょっと前に拾ったアイツと同じ目をしている』

 

 

 その決して消える事のない執念があったからこそ、少年は偽悪的に振る舞うとある堕天使の男と出会えたのかもしれないし、同じくその堕天使に拾われた――宿敵であり後に親友となる少年と出会えたのかもしれない。

 

 

『その力が原因で拒絶された事を忘れろとは言わんさ。

けれど誰かの顔色を気にして生きる事だけはやめろ。

誰に何を言われようが気にするな、その力と精神を拒絶する奴等は確かに居るだろう、けれど少なくとも俺はお前を拒絶はしない』

 

 

 その堕天使に言われた言葉があったからこそ、少年(イッセー)は世界そのものを憎悪することなく生きてこられたのかもしれない。

 ただ自由に――どれだけ後ろ指を差されようとも誰よりも楽しく、誰よりも狂ったように生きてやろうと……。

 

 宿敵である白い龍を宿す少年と誰よりも好き勝手に、バカな学生のようにハチャメチャに生きることを決めた時から少年の心は決して消える事のない業火の炎で燃え上がり続けているのだ。

 

 だからこそ、面倒を見てくれた父にも近い堕天使の男と似たような台詞を異世界で出会った訳アリの不思議な少女に言われた時から、彼は初めてアザゼルと呼ばれた堕天使とヴァーリと呼ばれた少年以外の他人に心を開いたのかもしれない。 

 

 女性という女性に拒否られてきた自分を真顔で『大好き』だと連呼し、逃げてもおかしくない――ほぼ虐め同然の鬼畜トレーニングを与えても食らい付き続けてきたおかしな少女……。

 

 

「急になんだよユミエラ?」

 

「見ての通りよイッセー。

今さっきアリシアのお部屋に行ってみたら、ヴァーリが困り顔の癖に満更ではなさそうな顔をしているアリシアを抱き枕にして眠っていたのよ」

 

「あのヴァーリがねぇ。

アリシアちゃんったらどうやってあの戦闘バカを懐せたんだろうか……」

 

 

 数多の女性達から触れる事すら全力で拒否られてきた自分を、普通に受け入れようとする――おかしな女と居る事がイッセーは居心地のよさを感じるのだ。

 

 

「つまり真似をしたいと……?」

 

「その通り。

イッセーったら寝惚けてない限りはしないでしょう? たまには意識がはっきりしている時にしたいじゃない?」

 

「そんなわくわくされた顔して両手広げられても、逆にやりにくいんですけど……」

 

 

 闇魔法でステーキを食えない顔面に強制整形されてしまった男子生徒は記憶と共に証拠隠滅を済ませたその晩、アリシアのお部屋を訪ねた筈のユミエラが突然そんな事を言い出しながらベッドの上で両手を広げてウェルカムしてくる。

 

 聞けばヴァーリとアリシアと同じことをしたいとの事だが、あまりにも期待に目が輝きまくっているせいで、イッセー的にはとてもやりにくい。

 

 

「ほら……ほら……!」

 

「わ、わかったわかった……!」

 

 

 しかしグイグイグイグイと、轢き殺す勢いで常に押しまくってくるユミエラはこうなると聞かなくなることは十数年一緒だったのでわかっているので、結構恥ずかしいと思いながらゆっくりと近寄ると、一瞬で首の後ろに腕を回され、そのままベッドに引き倒された。

 

 

「ふふん……どう? 最近実は少しだけ胸が成長したのだけど……」

 

「お、おぉ……」

 

 

 わざわざ自身の胸の大きさを確かめさせるんだとばかりにイッセーの顔に埋めさせるユミエラに上手く返事ができずに、もう慣れてしまった――――されど悔しいかな慣れてしまったからこそ安心するユミエラの匂いと胸の鼓動に全身の力が抜けていく。

 

 

「元の世界じゃ俺にこんな事してくる女なんて居なかったぞ……。

なんなら土下座して頼んでも後頭部を踏みつけられながら拒否られたくらいだし……」

 

「それなら私が最初で最後ということになるわね? ふふふ……」

 

 

 気付けば身を委ねてくるイッセーを、ユミエラは心底幸せそうに頭を撫でる。

 

 

「この前ヴァーリが言ってたレイナーレって堕天使、私の知識にもあったのよ。

そう、確かに彼女は私のこの髪と同じ髪をしていたけど……」

 

「違う。あの女は関係ない。

アレとユミエラは違う……絶対に」

 

「ありがとうイッセー……」

 

 

 転生した当初はただ死なずに平穏な暮らしをすることが目標だった。

 しかし今は違う。

 

 平穏でなくても、地獄に堕ちても構わない――

 

 

「もう少し待っててイッセー? 必ずイッセー好みの大きさの胸に成長させてみせるから――」

 

「別に成長させなくても良いよ」

 

「―――え?」

 

「……。あっても無くても俺は―――――だ」

 

 

 イッセー共にこの未来(サキ)を……。

 

 

「だからなんだ……あんま気にしなくても良いぞ?」

 

「あ、あは♪ イッセー……!」

 

 

 自分にとっての世界は彼と共に在る事以外に無いのだ。

 

 

「ん……!」

 

「!? ユ、ユミエラ……!? お、お前今……!?」

 

「ふふ、今なら出来そうな雰囲気だったからつい……ね? あはは、これでもう私は貴族の娘としては失格だわ。

だってこうして貴族とは無関係の男の人とキスまでしちゃったもの……。

ふふ……んん……だからもっと……ね?」

 

 

 その邪魔をする奴等は世界であろうが許さない。

 それがユミエラの持つ『覚悟』であった。




補足

押しまくった結果……ほぼ勝ちが確定している。

仮に彼女がこの二人の生きるD×D世界に渡ったとしても割りと簡単に順応してしまえる程度には……。



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