色々なIF集   作:超人類DX

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続き。

結果だけ言うと――多分シリーズの中では勝ち確に近いかも


悪役令嬢さんはこの世界では幸せらしい

 

 

 

 奇跡ともいうべき別世界のラノベ主人公とのまさかの出会いを果たしてからの私は、皮肉にも女子大生だった前世の頃よりもハッキリと『生きている』という実感を感じている。

 

 

 乙女ゲーの裏ボスキャラに転生した当初は、なんとか前向きに考えようと努めたものだが、今となっては努める必要も無い……と私は思う。

 

 

『というか今気付いたんだけど、俺小さくなってね?』

 

『ええ、大体今の私と同じくらいの子供に見えるわ』

 

『マジかよ……。

この前18の誕生日迎えたばっかだったのに……。

俺のマイ・ビッグサンがまたリトルサンになっちまってるし……』

 

 

 本来ならば完全にこの世界とは無関係の存在。

 私自身と同じく、この世界に居る筈の無い存在。

 

 

『強くなりたいって話だったな。

この世界には見慣れない生物が結構居るらしいし、まずはそいつらを相手に喧嘩のやり方をキミに教えるぞ』

 

 

 前世において創作物の存在であり、偶々アニメを観た事で推しとなった存在。

 そんな存在と向かい合えるばかりか、こんなにも近くで私に戦い方を教えてくれる。

 

 

『その闇魔法ってのはあくまで戦う時の『手段』として考えろ! 今キミに必要なのは、その手段を封じられても問題なく戦うことが出来るパワーだ!』

 

 

 

 確かに時には厳しく、時には辛く、何度も死にかけたりもした。

 けれど私は折れなかったし、折りたくはなかった。

 彼を―――――イッセーをガッカリさせたくないという想いだけが、私を突き動かし続けてきた。

 

 

『……む!? あの使用人の女の人、中々の戦闘力(オッパイ)を持っている! へいそこのおねーさん! 一晩だけで良いから俺と一発―――』

 

『きゃぁぁぁぁっ!?!?! 近寄らないでください!』

 

『ギエピー!?』

 

 

 

 少し……いえ大分スケベで、最初の頃はどこぞの嵐を呼ぶ5才児みたいな顔をしながら使用人やら町の女性をナンパしたりするので目は離せない事もあった。

 

 

『せ、世界が変われど俺はモテないのか……?』

 

『そ、そんなことはないわよイッセー? 私はアナタの事大好きだし、一夜どころか毎晩何発でも―――』

 

『ふ、ふふふ。

同情してくれるのは嬉しいけど、無理しなくて良い。

ふっ、ちっさい頃からモテるのはヴァーリかアザゼルさんだったからな。

こちとらもう慣れっこよ……ふふふふ』

 

 

それを含めてもイッセーだし、そんなイッセーの生き方が――例え私が元の世界で呼んでいたラノベの原作とは違う生き方をしていたとしても、私はイッセーが大好きだから。

 

 

『それに今のキミはちょっとどころじゃなく戦闘力(オッパイ)が……うん』

 

『…………………』

 

『じょ、冗談だよ。

そんな泣きそうな顔でこっち見られると罪悪感でつぶれそうだ……』

 

 

 

 だから私は強さの他にも、イッセーが本来出会う筈であったヒロイン共を越えた戦闘力(オッパイ)を……!

 

 

 

 

 

 

 

 凄まじくその時の記憶が曖昧だったりするのだが、俺ことイッセーと、宿敵以上にただのトモダチでもあるヴァーリは全くの異世界に気がつけば子供頃の姿で居た。

 

 俺はどこかの真っ暗な洞穴で、ヴァーリはどこかの田舎の村の近くで。

 

 なんでそうなったかについては未だに思い出せないまま気付けば元の世界と同じ年齢になるまでこの世界で生活をしていた訳だが……帰りたいかと言われたら別にそうでもなかったりする。

 

 

 そりゃあヴァーリにとっちゃあ親代わりでもあったアザゼルさんの事だけは気がかりだったりはするけど、それ以上にこの世界は好き勝手生きてても邪魔をしてくる輩が出てこないせいで、寧ろ元の世界よりも居心地が良かったりする。

 

 何よりもこの世界には俺のファンを名乗る女の子が居て、割りとお世話になりっぱなしだったりするのもある。

 

 

 曰く、俺達のように別の世界からユミエラとして転生をし、前世はただの一般人大学生だったとの事だが、その世界ではこの世界と俺達が生きた世界は所謂創作物の存在だったらしく、俺はそのラノベの主人公との事らしい―――あんまりピンとは来ないんだけどな。

 

 というのも、その原作とやらを聞いてみればみるほど俺じゃない気がしてならないのだ。

 大まかな登場人物については確かに聞いたり見たりしたりしたことのある人物だったりはするのだが、その物語はどこを切り取っても俺が生きた人生と被らないのだ。

 

 その原作における俺は悪魔の眷属になって、様々な事件や騒動を仲間達と共に潜り抜け、やがてハーレム王になるらしいのだけど、俺は悪魔の知り合いは居ないし、そりゃあ女の子は大好きだけどモテた試しも無い。

 

 なんなら世の中の女性という女性から毛嫌いされてるのではないかと思うくらいモテなかったくらいだ。

 

 そんな俺に対してファンを名乗られた時は逆にちょっと疑ってしまった事もあったが、十数年世話になっていけば彼女が嘘ではなくマジだったってのは流石にわかった。

 

 いやだって、今まで声を掛けた瞬間悲鳴あげられるかぶん殴られていた俺にあれこれしてくれるし、割りと厳しいトレーニングをしてても根を上げることなく付いてこようとしてきたし、なんなら一生生活には困らない財力の全てを捨てでも俺と一緒に居るだなんて真顔で言うんだぞ? これで嘘だったとしたら俺は人間不信になる自信しかないぞ。

 

 つまり、あまりにも前の世界を含めてモテなかったせいか、結構チョロい性格になってしまっている俺は、こうまで言ってくれるユミエラの事は嫌いじゃないって訳だ。

 

 ……そんなつもりも無く、ちょっと異性と会話しただけで泣かれたりはするけど、逆を返せばそれだけマジなんだと思えば―――――まあ、悪い気はしないよな。

 

 

 

「ほれ、また実家から見合いの写真が送られてきたぞ」

 

「即刻処分だわ」

 

「良いのか? 今更だけど一応貴族だろユミエラは?」

 

「この立場も今だけよ。

折りを見て姓を捨てる以上、顔も見た事の無い両親の言うことなんて聞く義理も無いわ」

 

「あ、ああそう……」

 

「そもそも、既に私はイッセーにしかお嫁に行けない身体にされてる訳だし……?」

 

「いやアレは意思とは無関係でそうなってしまうといいますか……」

 

 

 ほんと、変な女だ……。

 

 

 

 

 

 

 

 この世界の原作主人公が、白龍皇であり半人半魔であるヴァーリ・ルシファーと共に居るというのはあらゆる意味で皮肉めいている――と、今までヴァーリとは顔合わせ程度しか会わなかったユミエラは、学園の敷地から数十キロ程離れた平原にて、朝っぱらから殺し合いにしか見えないレベルのドツキ合いを繰り広げている赤い龍を宿す青年と白い龍を宿す青年の二人を眺めていた。

 

 

 

「ガァァァッ!!!」

 

「ダァァァッ!!!」

 

 

 片方が拳を振るえば大地が割れ。

 片方が蹴り上げれば空を流れる雲が消し飛ぶ。

 

 この世界の生物レベルをある程度把握し、現段階でその到達点に君臨しているつもりであるユミエラから見ても二人の青年の力はまさしく世界を破壊しかねない災害そのものだった。

 

 

「グ……グゥゥゥ……!!!」

 

「ギ……ギギギィィ……!!」

 

 

 されどユミエラは――そしてその隣で同じように見守っていたアリシア・エンライトは、青年二人が互いの額を叩きつけ合い、互いが負けじと迸らせるオーラで周囲を壊しながら殴り合うこの姿を見ても恐れることはなく、寧ろウズウズとしている。

 

 

「早く私もイッセーと真正面から殴り合えるようにならないと……」

 

「私もヴァーリ君の欲求を受け止められるようにならないと……」

 

 

 早い話が、アリシアとユミエラは赤と白の龍を宿す青年達の影響によって似た者同士だったりするのだ。

 

 

 

「ふははは! 今回はオレの勝ちだなイッセー!」

 

「ちくしょう、最後の最後で油断した……!」

 

 

 そんな定期的な喧嘩はヴァーリに軍配が上がる形で終わりを迎える事となり、全身の至る箇所に青アザを作りながら爽やかに笑うヴァーリとは対照的に、同じく全身アザだらけのイッセーは悔しそうにその場に腰を下ろしている。

 

 

「ほら、動かないで」

 

「いててて!?」

 

「もう、こんなに腫れるまで喧嘩するなんて」

 

「楽しくなってつい……いつつつ」

 

 

 

 親しい相手が同じ学校に通っているということもあり、以前よりも喧嘩をする頻度が上がっているイッセーとヴァーリは勝敗問わず毎回喧嘩の度にボロボロになっており、その度にそれぞれユミエラとアリシアに治療をして貰っている。

 

 そんな暑苦しい朝を終えて学園へと戻れば、ユミエラとアリシアは何食わぬ顔をしながら授業を受ける。

 

 先日の入学式の際のレベル鑑定で99を計測した事で、その髪の色もあってか周囲から腫れ物のような目で見られるユミエラと、入学式のレベル鑑定では『レベル2』を計測した目立ちはしなかったものの平民であるアリシアは意味こそ違うが目立っている。

 

 

「レベル自体を低く偽装する方法を知っていれば私もここまで変な目で見られなかったのよねぇ……」

 

「入学する前にヴァーリ君から教えて貰ってたので、私はそれで乗り切れたのですが、イッセーさんは教えてくれなかったのですか?」

 

「私もだけど、そういう細かいのは苦手なのよ。

仮に教えられてもすぐには習得できなかったと思うし、仕方ないわ」

 

 

 現在進行形で男女問わず遠巻きに見られまくるユミエラ……と、そんなユミエラを全く恐れずにその隣の席に座って話をするアリシア。

 その遠巻きの視線の中には、原作主人公の攻略対象である男子生徒の姿があるのだが、アリシアの様子から見ても彼等を気にする素振りはまったくない。

 

 

(本人はヴァーリの事しか頭にないせいか、すっかり原作の攻略対象の人達がモブキャラ化してしまっているわ……)

 

 

 本来ならばあの攻略対象達の誰かと復活した魔王討伐後にゴールインするというのが原作での流れであるのだが、どこを見てもそんな未来が見えてこない程度にはアリシアはヴァーリの事しか関心がない。

 

 

(まー……ある意味でヴァーリも王族の血筋を持ってるし)

 

 

 なんならこのアリシアはヴァーリが半人半魔であることを既に知っているのもあってか、魔王という概念への恐れが全く無いし偏見もない。

 つまり、ヴァーリが居る時点でアリシアと立つ筈のフラグが地中に埋まったままなのだ。

 

 

「よく寝ているヴァーリくんを起こそうとすると、そのまま引きずり込まれて抱きつかれたまま寝ちゃうんですよ。

困ったねぼすけ君で困っちゃいますよ~」

 

(うん、これは一生立たないまま地中深くに埋め込まれたままだわ)

 

 

 なんなら自分がたまにイッセーにやられるようなイベントをアリシアも経験している時点で攻略ルートが確定してしまっていることを、頭ではなく心で理解したユミエラはつい前世のノリで『それな』と返す。

 

 

「やっぱり似てるわあの二人。

私も何度か――いえ、三日に一回はそうなるわ」

 

 

 最初は思いきり警戒しまくっていたけど、この主人公となら仲良くなれると確信するユミエラなのだった。

 

 

 陰口やらなにやらあれど、ちゃんと話の合う友人と出会えた辺りは割りと悪くはないかもしれない学園生活をスタートさせたユミエラは、剣術の授業でレベル99を偽装だと言って絡んでくる男子を適当にあしらい、99の魔法を見せろと煽ってくる輩に適当な魔法を見せて怯えさせたりとしながら滞りなく、そして適当にやり過ごす。

 

 何故ならユミエラ的には最早学校の授業そのものは単なる副産物でしかないのだから。

 

 

「魔法を見せろと言われたから、適当に空に向かってブラックホールを出したら学園長に呼び出され、国王陛下にも呼び出されてしまったわ……」

 

「暇だから遠くで飯食いながらヴァーリとその時の授業覗いてたけど、そんな事になったのかよ……?」

 

「ええ、そのブラックホールをアリシアが普通に同規模の光魔法で相殺して止めたせいでアリシアにも私と同じ目を向けられるように……」

 

「目立たない学生生活はどうしたんだよ……」

 

 

 ちょっと魔法発動したら大騒ぎになって国王に呼び出されたとしてもユミエラ的には少々の誤算程度でしかないのだ。

 

 

「アリシアは気にしなくていいと言ってくれたけど、やっぱり巻き込んでしまったのは良くなかったわ」

 

「後で菓子折り持って謝りに行くか?」

 

 

 実家では一応主と使用人という立場を崩さずに、人目がある所ではよそよそしいやり取りをしていたが、寮で生活する現在はそんな人目も気にせずにいられる。

 

 現に一応燕尾服を着ているイッセーと共に使っているベッドに寝っ転がりながら会話をしている。

 

 

「こうなったら予定を早めてこの国から失踪しようかしら……。

実はこの話をしたらアリシアとヴァーリが住んでいる村に住まないかと言って貰えてね……」

 

「そうしたいならそれで良いけど、せめて俺の再就職が決まるまでは待ってくれないか? 流石にそこまでしておいてヒモ続行は……」

 

 

 ゴロゴロゴロゴロと暇を持て余している子犬のようにベッドの上で転がりながらイッセーと話をするという事すらをも幸せと感じるユミエラは、さっさと貴族の娘という立ち位置を捨て去り、既にイッセーの嫁になる気でいるらしい。

 

 

「ユミエラとしては15になったのよ? ちょっと早いかもしれないけどイッセーの子供が欲しいし、お金の事なら問題ないわ。

定期的にダンジョンに入って売れそうな鉱物を取ってくれば良いし」

 

「なんで当たり前のように俺と一緒になるのが確定してるんだよ……」

 

「……。嫌?」

 

「嫌……でもないと思っちゃうんだよなぁ」

 

 

 イッセーと出会った時点で原作やら何やらの流れなぞ最早どうでも良くなっているユミエラが横で寝っ転がっているイッセーに覆い被さるように身を乗せ、イッセーの目をジッと見つめる。

 

 

「…………」

 

「私を見てイッセー」

 

「っ……」

 

 

 なにかを訴えるようなその目に思わず目を逸らしたイッセーだが、ユミエラはそんなイッセーの頬に触れながら目を見て欲しいと懇願する。

 

 

「好き、好き……大好き。

この世界の、この世に生きる生物の中で一番好き……!」

 

「ユ、ユミエラ待てって。ここ学校の寮だっつーの………!?」

 

「出会うことも無く、こうして触れ合う事もなかったのなら、私はきっとただのユミエラ・ドルクネスとして生きたのかもしれない。

でもあの時出会ってしまった……私が記憶する人生とは違っていたとはいえイッセーと出会えた。

その瞬間、ユミエラ・ドルクネスとしてどう生きるかだなんて考える事もやめたわ。

前世の名前は覚えていない……だから私はただのユミエラとして生きるのよ。

ただのユミエラとして――――アナタの傍で生きたいの」

 

 

 誰にも邪魔をされず、誰にも否定されないただのユミエラとしてイッセーと触れ合えるこの時間がなによりも心地よい。

 原作とは違う人生を歩んだ事で、イッセーは本来出会う筈であったヒロイン達とは出会うことも深く関わる事もなかったのなら自分がそうなってやる。

 

 

「明日陛下の前に出なくてはいけなくて不安なの。

だから私を勇気付けて……?」

 

「う、嘘くせー……。

で、でもそんなに言うなら別に良いけどよ」

 

 

 厳しい鍛練を繰り返し、ひとつの『壁』を越えた時に見せてくれる子供のような笑顔も。

 

 魔王の生まれ変わりだと揶揄される黒髪を見て腫れ物のように見る連中を容赦なく張り倒してくれるその『熱』も。

 

 『しょうもない奴等の戯言なんて気にするな、俺は好きだぞ? ユミエラのキレーな黒髪』と頭を撫でながら笑ってくれた包む込むような言葉も。

 

 

「ありがとう、イッセー……」

 

「おう」

 

 

 ユミエラとしての人生の宝物なのだから。

 

 

「他の女の所に行ったら私、その女を殺してしまうかも」

 

「………お、おう」

 

「ん……取り敢えずそうさせない為に私の胸を揉んで良いからね?」

 

「お、おぉう……」

 

 

終わり。

 

 

 

 

 

 

 

「うー……明日ユミエラさんと一緒に陛下と謁見しないといけないのに、首の痕が消えない……。

ヴァーリくんのせいだよぉ……」

 

「?? オレが? 何かしたか?」

 

「したんだよぅ……。

は、恥ずかしくて言えないけど……」

 

「記憶に無いが、一体なにを……」

 

 

 

終わりったら終わり

 




補足

チンピラじゃなくてほんのり原作に近めなので距離を詰めやすい。

されど原作と比べるまでもなく女っ気が無さすぎて、ユミエラさんの距離の詰め具合に困惑しまくりつつも簡単に受け止められる。

なので、このユミエラさんが貴族の坊っちゃん(過激派)にモテモテ化したら割りと分かりやすく焦る。


その2
天然アホの子のせいでアリシアさんの母性が常に上昇してるらしい

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