俺がモテないのは……多分俺のせい
中学の頃、俺は女子高生に憧れた。
故にモテようと自分なりに色々と試行錯誤してみた。
よく分からんメンズ雑誌読んでみたり、理解出来ない割高の服を買ってみたり、ナンパ術を極めてみたり。
『ごめんなさい、気持ちは嬉しいんだけど……』
『本当に気持ちは嬉しいんだけどね? あの……付き合うのはちょっと……』
結果……どう足掻いても俺は女の子と付き合えなかった。
良くて友達止まりで、男女のご関係になる事は本当に一度たりとも無かった。
いくら雑誌を読み漁ろうと、いくら金も掛けたくない服に金掛けて格好をまともにしても、俺は結局高校に進学した今の今まで彼女が出来なかった。
故に俺は諦め――――――る事はせず、高校生になったらモテるだろうと思うことで自分を保つ様にした。
え、結果? ……………。
「変わらねーじゃねーか!!」
寧ろ友達と呼べる存在すら怪しくなるまでに落ちぶれてしまった様な気がしてならかった。
アイツが言ってた通り、男子校生になれば勝手にモテるって言葉を鵜呑みにしてしまった結果……俺なモテる処かクラスで微妙に敬遠される感じになってしまった。
だから俺は文句を言おうと思う……ガキの頃によく分からん間に知り合いになって、よくわからん間に遊ぶ様になって、今でも普通に交流が盛んなあの不健康チビにな。
「モテ無い……どうしてくれる、全然モテねぇぞコラ」
高校に進学してから早数ヵ月。
取り敢えず目ぼしい女の子に対して片っ端から声を掛けまくったってのに、メルアドどころか敬遠されるという高校デビュー大失敗をしてしまった俺は、取り敢えず愚痴りたいと思い、自分の家の隣の家に住む腐れ縁の部屋に突撃し、ジト目しまくりなソイツに俺は床に座りながら文句を言ってやった。
「それは此方の台詞……というか、私の判定によるとお前の自業自得だ」
すると高校進学の祝いだか何だかで買ってもらったらしい新型のPCに視線を向けたまま、ソイツは生返事宜しくに俺の愚痴をアッサリ切り捨ておった。
「そもそも、声さえ掛ければ女がホイホイ寄ってくると思ってる、おめでたい思考回路だからバカなんだ」
「いや、女子高生になったらそれだけでステータスになるからモテモテになる――とか何とか自信タップリに言ってたお前にだけは言われたくねーよ」
カタカタとせわしなくキーボードを操作しながら、此方を一切見ずに話してるこのチビは、ピタリと操作の手を止めると、完全に俺を嘗めきった顔で椅子を回して座ってる俺を見下ろすと、世間を呪ってる様な死んだ目で言った。
「私達のクラスの奴等はどいつもこいつも高校生の皮を被ったガキだったんだ。
女はビッチ宜しくに騒ぎ、男はそんなビッチにホイホイとお前みたいに釣られる。そのせいで私もモテない。死ね」
「……。あまりのクズ発言に俺はドン引きだぜ」
また夜更かしでもしてたのか、ただでさえ血色の悪い顔が悪くなり、目にしても更にどんよりと濁り、トドメに隈も酷い。
まるでゾンビを連想させる腐れ縁のチビ子の他人のせい発言に俺は思わず愚痴も忘れてドン引きしてしまった。
「ハァ……てかさ、バカキャラ貫いて折角お前も巻き込んで然り気無くクラスに溶け込ませてしまおうとしてるのに、どうしてお前ってそーなの?」
ボッサボサの長い黒髪は前髪も無駄に長いせいで片方の目が隠れ、何かもう色々と残念すぎるこのチビ子は、まごう事無きボッチだ。
いや、正確に云えば俺が嫌がるコイツを無理矢理連れ回してるから、1クラスメートとして機能してはいる。
だが、小4辺りからどうも人見知りを拗らせてしまったというか、気付いたら既に手遅れになっちまったというか……。
今のコイツは乙女ゲーとエロゲーが趣味のクソ残念すぎる喪女にafterしてしまった。
ぶっちゃけ、ナンパしまくってドン引きされた俺よりも害は無いのだろうが残念さでいえばコイツの方が遥かに上だ。
しかも挙げ句の果てには……。
「お前アレマジやめろ。お前のせいで私までバカにされるんだぞ! そうだ、私がモテないのはお前が邪魔してるせいだ!」
これである。
コミュ障拗らせてまともに他人と話せないで出会いもヘッタクレも無いくせに、モテないのは俺のせいだと言い出す始末だ。
「お前がモテる為に踏み台になれとか言うからだろうが。言わせて貰うが、お前マジこんなんでも居なかったから人として死んでるぜ?」
「恥をかく位なら死んだ方がマシだ……。
能天気なお前には解らないだろうさ……お前というバカと知り合いだと思われてるせいで、盛った猿とビッチ共にバカだと思われてるこの辛さが……!」
「いや思ってねーよ。
自意識過剰にも程があるぜ」
ガキの頃から変わらないのは根の良さ。
だからこそどうも今でも放って置けないんだが……はぁ、あの子は高校生デビューに成功したってーのに、コイツと来たら。
「うぐぅ……このままだとこのバカのせいで、高校生でベリーハード、社会人でナイトメアな人生を送る嵌めに……!」
「…………」
こんな事なら今年から共学化して女子比率が圧倒的なあの高校に進学すべきだったのかもしれない……。
そうすへばコイツも独り立ち出来たかもしれないし、俺もモテモテハーレムでうはうはだった……かもしれないし。
あぁ、人生って儘ならねぇや。
関係を表すなら幼馴染み、しかも男女同士で互いの家の部屋に顔パスで入れる。
ともなれば基本的に世間じゃリア充の烙印を押される訳だが、只今色々と女として終わってる少女の部屋に上がり込んでる少年は、自分を勝ち組だなんて思うことは無かった。無論、少女の方も。
「俺は正直大学生になったら頑張る事にするとしてだ、取り敢えずよ智子……お前は自分を何とかしてみねーか?」
「は? やったし、勿論やったし。
ちょっと実践してみて鏡で自分を見たら即吐いてしまった程度には努力しましたけど?」
「……………。あ、おう……ごめん」
本来少年の進路は、今通っている長ったらしい名前の高校ではなく、今年から共学化するとある高校のつもりだった。
しかし、勉強以外がほぼ壊滅的に終わってる幼馴染みの少女がどうしても放って置けず、本当は女子比率の多い高校でウハウハしたかったのを押してこの智子と呼ばれる少女と同じ学校へと進学する事になった。
その為にわざわざ勉強に必死になり、同じクラスにまたなれた事を利用して、中学から完全コミュ障ボッチになった智子の為にバカになってまで手を尽くしたが、5月の下旬となった今……彼女は中学と変わらずの喪女街道をズンズンと爆進しているという、少年にしてみれば頑張り甲斐がまるで無い結果だった。
「あの時の変顔はそういう事だったのか……」
「表情筋が使われ無さすぎてああなったんだ……」
少年にしてみれば得なんてまるで無い。
しかしそれでもどうにも放って置けずに、寧ろ迷惑と毒を吐かれながらもせっせと智子少女に世話を焼く辺り、将来赤詐欺に引っ掛からないか心配になる事だが、今の少年には関係なかった。
「知ってるか? 私の弟の癖に智貴は結構モテるって情報だ」
「あー……そういやそんな気配あったな……。
アイツはサッカー部だからなぁ……」
「悔しくないの? よりにもよって智貴に負けてるんだぞお前」
「いや別に……智子の千倍はしっかりしてっからなー……」
ピコピコとする事もなく飽きたゲームをする二人の会話は長年の付き合いの深さがチラホラ伺えた。
とはいえ、異性として意識してる訳じゃなく、ただただ遠慮する必要なしと互いに思ってるだけだからこその雰囲気なのだが。
「取り敢えずよ、暫く規則正しく寝起きして隈を薄めろよ。
決してお前は見た目が悪いって訳じゃねーんだからさ」
「なら一誠はあのアホみたいに片っ端からナンパしようとするのはやめるべきだ。
見てくれは別に悪くないんだから」
「そんな事言うのってお前くらいなもんだわ……まーでもありがとう」
「私は礼なんか言わないよ、だって自覚してたし」
寧ろ周りの人間からすれば気色悪い距離の近さと思われてたりするが、基本的に二人は互いに互いを『腐れ縁の延長』としか思ってないので改善しようと思ってもないし、そのせいで噂にされてる事も知らなかった。
「あ、また負けた」
「はっはっはっー! 負けた罰として私に傅く権利を与えてやろう」
「へへーありがたき幸せです智子様~」
「グゥェッヘッヘッヘッ!」
「…………………。なぁ、虚しくならないか?」
「……………。煩い、今私もそれを思ってちょっと気持ち悪くなってきたんだ」
智子自身は一誠少年に学校で絡まれるのを極度に嫌がるが、こうして学校から離れるとアホなやり取りをし合える程度には一誠を嫌ってる訳では無かった。
というか、一時期智子の方がうざったくなったから話し掛けるなと中二病みたいに冷たく言い放ったのだが、一誠はアホで智子を放っておけない性格だったので、程無くして普段通りに戻ったなんてエピソードもあるくらいだ。
「はぁ、何で私にフラグが立たないんだ……。というかお前以外と全く会話が出来ないのはどういう事なんだ?」
「いやだから……俺が何回かアシストしたのにお前が拗らせ過ぎたせいで悉く失敗したんだろうが。
お陰で俺まで微妙にとばっちり食らって、友達出来てねーし」
と、ゲームの手を止めて二人仲良くため息を吐いているが、実際は学校でも気付けば気色悪いレベルの距離の近さを周りに無自覚に見せ付けてしまってるせいで、逆に敬遠されてるだけだったりするのだが、二人はそれに気付けず、ただただ己のモテなさにガックリと肩を落とす。
兵藤一誠
力を自覚して持つけど、使いどころが全く無いまま、喪女化してる幼馴染みの為に本来の道筋から外れた赤龍帝。(智子には内緒)
黒木智子
バカで鬱陶しい幼馴染みに小さい頃から構われ過ぎて、割りとそこまで卑屈じゃなくなってる喪女手前。(一誠が異常な面を持つのを知ってるけど、ぶっちゃけだからどうしたと思ってる)
「あぁ、駒王学園にしといた方が良かった気がしてきたわ。そしたらモテモテになってた気がする」
「妄想乙」
備考・何処かの善吉と不知火みたいな距離の近さ。
「あの……今更言ってもアレなんですけど、何でアレに構い続けてくれんすか?」
「は?」
黒木智子には一つ下の弟が居る。
つい二時間前に智子と一誠の会話に出てきた智貴という姉と比べれば天と地の差を誇る好青年なのだが、只今彼は兄の様に慕う茶髪の少年に1on1を近くの公園で付き合って貰いながら、自身の……もうなんか色々と終わってる姉に構い続ける理由を久々に、一誠から軽く抜き去られて悔しがりながら聞いてみた。
「何でって……ぶっちゃけダチ作り失敗したからな俺」
「それってあのバカのせい……」
「じゃなくて、入学初日に女教師含めた全てにナンパ仕掛けで玉砕したせいでドン引きされちまったんだ……あっはははははは…………ドライブシュート!!」
「うぉ!?」
何処かヤケクソっぽい笑いと共に、某ボールが友達サッカー少年の必殺シュートをガチで繰り出し、公園の柵を一部を折り曲げた一誠はしまったと焦りながら、折り曲げてしまって策へとダッシュする。
「や、やべ!? ちゃんと手加減したのにやっちまった……!」
「中高って一誠さんは帰宅部だったのに、俺自信無くすんですけど……」
「バカ野郎、お前みたいにモテねぇからこうして密かな努力をだな……よし、元に戻ったな?」
「蹴ったボールで柵を折り曲げて、挙げ句に素手で修復とか化け物ですか……いや、昔から一誠さんはそうでしたけど」
まるで飴細工宜しくに自分で折り曲げた柵を簡単に素手で真っ直ぐに修復して見せる相変わらず何処かおかしい姉の保護者である一誠に苦笑いしか出来ない智貴。
そう……昔からそうだ。
何か一つ取り組めば異常な結果を残し、そのせいで周りの人間から気味悪がられて離れていく。
「化け物ね……窮屈な世の中だぜ」
「中二病拗らせた様な台詞ッスけど、一誠さんの場合全部本当の話ですからね……」
そのせいで唯一異常とは思うが、怖いとは思わずに一誠と接した黒木姉弟に対して結構過保護になる。
智貴自身も姉経由で一誠と知り合い、その異常性を知ったが、知ったのが幼い頃だったのと当時から今でも一誠をテレビから飛び出してきたヒーローみたいだと密かに憧れているせいなのか、一誠を怖がったりはせず寧ろその異常結果に対して呆れ顔でツッコミを入れられる好青年に成長した。
「で、話は戻しますけど……あのバカ姉の為にそこまでしなくても良かったのでは? 進路まで変えて……」
だからこそ人として終わり果てちゃった姉を今でも……それこそ自分の進学先までねじ曲げて同じにした一誠に智貴は微妙に申し訳無い気持ちがあり、何度も今と同じ様な事を一誠に言うのだが……。
「俺も駒王にすりゃあ良かったとちょっとは思うけど、何つーかさ、アイツの事やっぱ放って置けないってかさ……。
いや、要らねーお節介なのは自覚してんだけどよ」
妙にアクロバットなリフティングをしながら、一誠はヘラヘラ笑って昔から全く変わらない答えを智貴に告げた。
「………。やっぱ趣味悪いっすね一誠さんって」
「そうか?」
「ええ、もし俺が一誠さんの立場だったら今頃音信不通にしてますよ」
その変わらない答えに、嬉しさ半分複雑さ半分な気持ちで智貴は笑いながら一誠からボールを取ろうと競り合いを仕掛ける。
「どうかな、お前ってねーちゃん想いだしなー?」
「ありえません……よっ! くそ!」
「はっはっはっ、どーしたサッカー部? 万年帰宅部様の俺に負けてたら駄目じゃないか?」
「なろ……!
ぜってー今日こそ取る!」
その異常性さえ隠せば簡単に人の輪の中心に入れるにも拘わらず、異常性を見ても普通に接してきた智子を取る一誠の趣味の悪さの変わらなさに妙な安心感を覚えつつ、智貴は学校では見せない子供っぽさを全面に出しながらポンポンと逆立ちしながらリフティングして挑発してくる一誠に突撃する。
それは端から見れば本当の兄弟の様な光景だった……。
原宿教育学園幕張秀英高等学校……通称・原幕と呼ばれる高校に所属する一誠と智子だが、正直言ってクラスの中ではカースト下位に位置する――と本人達は思ってるのだが……。
「おーい智子」
「……!? ひ……しっ!」
「は、何だって? というか弁当と財布忘れたから弁当分けてくれよ」
「が、がっこーでは、はなし……かけるなって……!」
「分かってるけど腹減ったんだよ。明日奢るからちょっとくれ……な?」
とあるお昼休み。
財布と弁当を忘れてお腹グーグーな一誠が、本を片手に昼食を取っていた窓際席の智子の所へと近づき、クラスメート達から見られてるにも拘わらず平然と無神経に話し掛けられたと恨み言を言いたそうにしている彼女のお弁当のおかずをヒョイヒョイと取っては食べ始めた。
自宅ならその時点で蹴りでも入れてやってる智子だが、運の悪いことに此処は学校で、しかも超周りから視線に晒されてるというのもあってか、声すらまともに出せずに弁当のおかずを奪われていた。
「おーおーうめーうめー、智子のかーちゃんの飯はうめーうめー」
「おまえっ、シネ! ホントシネ!」
「死にませーん、あ、ついでに飲み物も寄越せーい」
挙げ句の果てには飲みかけのお茶までガブガブ飲まれつつ、ついには腰を据えて話し掛けられてまくる智子は、帰ったら殺してやると、その恐ろしい目付きで睨みながら、さっきから此方見てヒソヒソしてるクラスメートから隠れるように俯くのだった。
ちなみにそのクラスメートの感想は……。
(気色悪いくらいにやっぱり仲が良い……)
智子の使ってた箸で食べ出してるわ、飲みかけのお茶を平然と口つけて飲んでるわ……。
入学初日にいきなりナンパされて舞い上がったは良いが、蓋を開けてみたら普通に仲がおかしいレベルで良い女子が居ました……と思って憤慨した何人かの女子達も、黙ってれば顔は悪くない男子にそこまで構われてる智子を若干羨ましいと思ったとか何とか……。
終わり
補足
いや、ほんと意味わかんないけど、そのまま思うがままに文にした私はホント訳わからん。
その2
ちなみにD×D世界と混同してるので悪魔とかなんだとかも居ますし、リアスさん達も居ます。
……まあ、進学先を心配すぎる喪女幼馴染みのせいで変えたので出会うことは無くなりましたけど。
ちなみに、転生者も親に捨てられたも無い……原作に近い家庭環境で育ってますが、異常性は幼少期から覚醒してるせいで微妙に周りから敬遠されてます。
けど、もこっちはある意味一誠相手だとハートが鋼化するので、多分目の前でビームぶっぱなそうが、影分身しようが平然と『中二病乙』と嘲笑うでしょう……。
んで、一誠と一緒故に多少元よりは喪女から抜けてる……まあ、それでも喪女な挙げ句鬱陶しい腐れ縁野郎から高校に進学しても構われててモテないと嘆く……。