なんかマイナスシリーズ的なドロドロな繋がり
唐突だが俺は死にかけた。
リアルに死にかけた。
真剣と書いてガチで死にかけた。
「派手にやられたようね」
「いっ……てて。
完全に悪魔としての特性を忘れてました……。
ギリギリ勝ちはしましたけど……あてて……」
理由としては、俺が転生悪魔になってしまった元凶とも言うべき女堕天使―――名前は忘れたけど、とにかくその女堕天使とその一派が潜伏している教会にカチコミをかける事になった。
「今のアナタはリアスの駒のせいであらゆる力が弱ってしまっているに加えて、転生悪魔になってしまった事で堕天使や天使が扱う『光』に対する耐性も大幅に無くしているわ」
「そっすね……。
転生悪魔になる前ならあの程度の堕天使の扱う光なんて素手でぶん殴ってやれたんですが……。
つい自分の現状を忘れて何時もの調子で対応しようとしたらこのザマっすよ……」
「火傷のように右腕全体が爛れているわ。
下手したら右腕そのものを失ってたかも……」
その堕天使の女っつーのは、名目上は町の管理をやってるらしい部長さんの許可無く俺を含めた神器使いを探しては排除やら何やらをしていたらしい。
で、結果だけ言えば連中は簡単に言えば『やりすぎた』ということで部長さん達が排除に動くことになり、自動的に下僕の体である俺もそのカチコミに参加したわけだ。
自分が笑けてくるくらい転生悪魔の駒を埋め込まれたせいで弱くなっていた自覚はしていたし、その対策――みたいなこともをちゃんとはしていたつもりだったのだが、堕天使の扱う力に対する耐性についてが頭から抜け落ちてたせいで、奴らの攻撃を何時もの調子で真正面から受けた上でぶん殴ろうとした俺は、悪魔特効をもろに喰らって大ケガを負ってしまった。
具体的には今治療をしてくれているセンパイが言うとおり、右腕全体が強酸かなんかで溶かさたかのように爛れていて…。
「寧ろこの程度で済んで良かったと今は思うべきね。
これなら暫く無理に動かさなければ治癒できるわ」
「本当っすか? うわー良かったぁ……。
もしこのまま右腕が使い物にならなくなってしまったら、この先荒ぶるであろう俺の分身を沈める事もできなくなっちまうし……」
「片方の腕は健在じゃない? それにそもそも私が毎日してあげるわよ?」
「真面目そうな顔して凄いこと言うよねセンパイって……」
「イッセーにだけよ?」
「うーん……嬉しいせいで、今の俺ってキモい顔してるんだろうなぁ」
一応その堕天使女共は絶滅させたので良かった。
俺の宿す神器がドライグ――あー、二天龍の片割れである赤い龍のそれであるのも確信させ、挙げ句なんか神器引っこ抜かれて死んでた金髪シスターの女の子のその神器の力が使えるからかなんなのか、駒使って転生させることが出来たと部長さんの機嫌も悪くはないので良かった。
お陰でこうして目を盗んでセンパイの家に来れたからな。
「そうそう、例の女堕天使とその一派についてだけど、総督のアザゼルに問い合わせた所、グリゴリ本部とは無関係で、彼女等の独断だと言っていたわ。
排除もこちらに任せるともね」
「あーやっぱりか。
じゃあ部長さんが気にしてた外交的な問題も特に無いと……?」
「ええ。
もっとも、グリゴリ自体はともかくアザゼル個人としてはかなり驚いていたわよ? アナタが転生悪魔になってしまった事を」
「アザゼル先生――いや、アザえもんはなんて?」
「『イッセーがソーナじゃなくてサーゼクスの妹の下僕とか超笑えるわー』ですって?」
「うぐ、アザえもんの煽り顔が簡単に浮かんでくるぜ」
「ちなみに、その話を聞いていたコカビエルは真顔で『今すぐにでも鍛え直してやろうか』と言ってたみたいよ?」
「それは本気で勘弁してくれほしいな。
ガキの頃からそうだけど、あの人天然なんだけど基本的におっかないし
ガブリエルおねーさんとセットじゃないと……」
そもそもあの女堕天使が独断でやってるのだろうという予想はある程度ついていた。
その理由は今の会話の通り、俺とセンパイはその堕天使のトップ層と個人的な付き合いがあるからだ。
なので『この神器があれば私はアザゼル様の寵愛を受けることができるのよ!』と、自信満々にのたまっていたのを聞いた時は、心の底から『んなアホな、あのアザえもんが言う訳ないだろ……』と思ったもので……。
で、案の定センパイが裏でこっそり問い合わせれば、あの女堕天使の存在すらアザえもんは知らんかったというオチなんだが、あの女堕天使もある意味憐れなもんだよ。
部長さんに消し飛ばされる寸前に俺に向けてきた醜い命乞いも含めてな。
「ヴァーリとは連絡つかないんすか?」
「『ラーメン王に俺はなる!!』と言ってあちこちフラフラしているせいか、音信不通らしいわよ。
だから今もヴァーリ君はアナタの現状を把握しているかはわからないわ。
それと、『彼』の行方もまだ掴めてない――――けど、多分ヴァーリ君と同じようにそこら辺をフラフラしながらジャンクフードを食べ歩いているんじゃあないかしら?」
「曹操―――いや、神牙ならありえる話っすね。
ホント相変わらず自由な奴等だよ」
「何を言ってるの? 身勝手さなは私達も同じようなものでしょう?」
「それもそうっすね。あははは」
俺にとっては師匠みたいな大人堕天使と天使。
俺と同年代にて俺と同じ神滅具を宿すトモダチ二人。
そして悪魔の女の子であるソーナセンパイ。
「部長さん達に知られたら面倒だろうなぁ。
俺の知り合いの面子……」
「勢力としては一応敵対している人達ですものね。
まあ、種族の違いとかまるで気にしない変人ばかりなのだけど……」
「俺とセンパイも含めて超変人集団っすね」
今更ながら、世間的には三大勢力呼ばわりされてる悪魔・堕天使・天使が定期的に集まっては無意味に駄弁ったり遊んでるなんて信じられないだろうなぁ。
「さて、と……。
そろそろ家に帰らないとな。いい加減部長さん達に怪しまれる……」
正直部長さん達にバレても割りと構わなかったりはするし、バレた結果部長さん達からネガティブな反応をされた所で今言った人達との付き合いを変えるつもりも全くない。
「そう……。
リアス達には悟られてはいないの?」
「今の所はね。
ただ今後は今までのように気軽にはセンパイの家には行けないかもしれないっす」
「………………どうして?」
「ほら、さっきの話に戻りますけど、部長さんが神器使いのシスターを眷属として転生させたでしょ? 彼女ってどうやら身寄りが無いみたいで、何故か俺の実家に住まわせるって勝手に決めだ初めて……」
「…………………………………は?」
「お、俺は当然最初は拒否しましたし、部長さんの家に住まわせた方がまだ自然じゃないかと言いましたよ? だけど部長さんもそのシスターも俺の実家の方が言いとか言うし、両親には部長さんから話を付けるからって……」
「………………………………………………………。リアスは私に喧嘩を売っているのかしら?」
「い、いやいや、俺とセンパイの関係性についてを向こうはまだ知らない筈ですからそれは無いんじゃないっすか?
もしかしたら俺が定期的に部長さん達に黙って姿を消す事があるとを怪しんで、監視役として送り込んだ可能性もなきにしもあらずですけど……」
というか、いっその事全部ではなくソーナセンパイとの関係については今すぐにでもカミングアウトしてしまった方が後の事を考えても良いような気もしないでもないんだよね。
じゃないと、あの部長さんったらセンパイの地雷普通に踏むような真似するしさ……。
「常識的に考えて、どこから来たのかもわからない――しかも見た目からして外国人の女子をいきなり住まわせるだなんてイッセーのご両親もよく了承されたわね……」
「基本的にのほほんしてますからね……。
ただ……流石に俺も断るかとは思ってたが」
「………。リアスが暗示を掛けた可能性もあるわ」
「何で俺はあの人の眷属になっちまったんだ。
あー……半分は俺の油断が原因か……くそ。
今すぐ匙って野郎とポジション代わりてぇ……」
それもこれも俺の油断と慢心ってのが原因だと思うと、あの時の俺を張り倒したくなる。
今呟いた通り、俺は時期を見て本当ならセンパイの眷属になりたい――ってセンパイには言ってなかったちょっとした目標があったのに、俺のバカさ加減のせいで全ておじゃんだ。
「そんなことを考えてたのね?
でも私は絶対にイッセーを眷属になんてしなかったわよ?」
「え……な、なんで? 嫌なんですか?」
「バカね、私がアナタとの関係を主従関係になんてものに落とすとでも? 私はイッセーと同じ目線で、同じ場所にずっと居たいの。
ただの悪魔のソーナとして――ね?」
でもセンパイは仮に俺が事故らなくても眷属にするつもりは無かったと、理由と共に話してくれた。
「寧ろイッセーが悪魔として出世して独立をすれば、私はイッセーだけのものになれるし、これも修行のひとつだとと思うことにしましょう?」
「……うん」
センパイの言葉に俺は沈んでいた気持ちが少しだけ上向きになった。
そうだ……。今更この状況を悔やんでも意味は無い。
こうなってしまった以上、精々暫くはピエロでも何でも演じてでも力を取り戻す。
そしてその時こそ、センパイの両親だろうが魔王だろうがその他大勢の悪魔だろうが―――それこそこの世の全てが否定しようとも、俺は絶対にセンパイを――ソーナちゃんと一緒に生きるんだ。
「もう少しだけ時間はある? 今日は怪我もしているから―――ん、いつの間にか私より大きくなったアナタを抱き締めてあげるわ」
俺の――両親にすら怖くて見せられなかった病的なまでの『
彼女とこの先もずっと一緒に生きる事こそが、俺の生まれた意味だと確信している。
「………」
「大丈夫。
必ずイッセーは力を取り戻せるし、仮に戻せなくても私は変わらないわ。
弱くても良い……あの日、アナタと出会ったあの瞬間から、私の気持ちは同じなの……」
あまりに好きになりすぎて、もしかしてセンパイの見た目だけが好きなのかと悩んで。
それを打ち明け、お互いの皮膚を剥ぎ取っても変わらなかったこの想いだけは………。
終わり
オマケ・表側のイッセーくん
基本的に表側――というよりはソーナや師匠や友達の前以外では頑なに心を開かず、演じてしまうのがイッセーである。
「ご両親は説得できたわ。
だからアーシアの事をお願いねイッセー?」
「ふ、不束ものですが、末長くお願いします!」
「本当に説得したんですね。
まあ、身寄りが無いとなれば仕方ないっすね……」
紆余曲折あって新たにリアスの眷属となったアーシア・アルジェントが実家に住む事が確定してしまった――というのを、ソーナ成分を補給してから帰ってきたイッセーは知ることになる。
しかしイッセーはそんな状況を内心『鬱陶しく』すら思っていた。
本来のイッセーならば、寧ろ驚きつつもアーシア程の美少女と同じ屋根の下というシチュエーションにはテンションを上げるのだろうが、既にソーナが好き過ぎて軽く拗らせ気味なこのイッセーからすれば、このアーシアも一応の悪魔としての主であるリアスも他の美少女眷属達も、『等しく平等にただの女』としか思わないので、寧ろソーナとの時間を減らせる要因となるという意味では『邪魔な奴等』という認識でしかない。
しかしそれを露骨に態度に出すのは流石に良くはないという、最低限の良識はかろうじて持っているので、仕方なくアーシアを実家に招き入れる。
(はぁ……センパイを抱き枕にして眠りたい)
ソーナとの幼少の頃の偶然なる出会い以降、生きる動機全てがソーナだからこそ、その他の異性への関心がゼロ。
強いて言うなら――
(金髪キャラならガブリエルおねーさんで見慣れてるしなぁ……)
師の一人であり、悪人顔堕天使のお嫁さんを自称しまくってる天使のガブリエルの事は尊敬という意味で慕っている訳で……。
(そういや暫く会ってないけど、副業の天使的な業務が忙しいのかな? コカビーのおっさん騙して人間界のラブホ連れ込んでんの最後会った時にマジに実行してたけど……)
家に入り、リビングで両親とアーシアから話しかけらるのを適当な生返事で対応しながら、イッセーは実は師匠筋の中では最強だったりするガブリエルと、そのガブリエルに色々な意味で食べられまくるコカビエルの事を考えるのだった。
(てか、センパイが急に雰囲気色っぽくなったのって、絶対にガブリエルおねーさんに吹き込まれてるからだよなぁ……。
あ……やべぇ、もうセンパイに会いたくなってきた)
終わり
補足
好きすぎて他の異性に対する認識が、そこら辺に立ってる電信柱としか思ってない。
好きすぎて互いに異性の影がでてくると本気で消しにかかる程度。
そんな関係性