色々なIF集   作:超人類DX

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続きです


奈落の底(割りとイージーモード)

 

 

 

 自分が最初に兵藤一誠から『南雲ハジメ』に生まれ変わったのだという現実を知ったのは、この世界には悪魔が単なる空想――まあ俺も部長達に出会う前はそう思ってた種族が全てお話の中の存在だということ嫌でも知った時。

 

 そして一番は当時一誠としての親父としょっちゅう見ていたアニメが絶妙に名前が違う形で放送されていたのを知った時か。

 

 

 ドラゴソボールがドラゴンボールだったりな。

 

 見るとドラゴソボールの方がなんかパチもん臭い気がしたのは内緒だがな。

 

 

 まあ、そんな訳で生き残って子供になってしまったのはら今度こそ皆を守れる男になるために徹底的に鍛え直してやろうという俺の目標は簡単に砕け塵、そこから勝手に殻に閉じ籠って酔っ払い始めるだけの人生に早変わりしてしまう訳だが……。

 

 

 

「龍拳・爆撃ィィィッ!!」

 

 

 こっちじゃあ『龍拳』もしくは『龍拳・爆発』って名前のアニメの主人公の奥義を十数年振りに使った感想としては――――ああ、サボるとこんな鈍るんだなぁ思いました。

 まあ、一応目の前のピンチとやらからクラスの皆―――わかった正直に言おう、ほぼ白崎と八重樫を遠ざけられたから今はまだ良としよう。

 

 後でかめはめ波――じゃなくてドラゴン波がちゃんと撃てるか試さないとならなくなった理由もできたしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「張り切り過ぎたお陰で、俺・ピンチ!」

 

『チッ、だからあれほど鍛えておけと……』

 

「今更言わんでくれよ! 俺だってちょっぴりだけ後悔してるって!」

 

『! 来るぞ! 今度は熊のようなのだ!』

 

「アイアイサー!!」

 

 

 いやー……まさか助けた――というよりは八重樫と白崎が無事に逃げられるだけのフォローをしたついでにフォローしておいたクラスメートの一人にしてやられるたぁ驚いたよ。

 

 

「オラァッ!!」

 

『次だ!』

 

 

 お陰でベヒモスとトラウムソルジャーだっけか? 二匹の魔物をぶっ飛ばした衝撃で脆くなってた足場を事故っぽく見せかけて崩されたせいで俺は更に大部下の階層にまっ逆さまだ。

 

 別にそれだけならさっさと地上に戻れば良い話なのだけど、ここまで下の階層となると小型から大型関係なく魔物とやらの狂暴性と強さが半端なくてね。

 

 

「このアスリートみたいな立派な脚してるなんちゃってウサギが! 俺を喰おうなんぞひゃくおくまんえん早いわ!!」

 

『Boost!』

 

 

 今まで散々ドライグの忠告をガン無視してサボりまくってたツケを痛感させられる。

 それでもまだ正直このくらいの魔物に一斉に襲い掛かられてもどうにか出来る自信はあるし、現に今の時点で大したダメージを負うこと無く100体くらいは倒せている上でまだまだスタミナにもまだまだ余力がある。

 

 

「アタァッ!!」

 

『Boost!』

 

「あ゛ァーー……!!」

 

『Boost! Boost!!』

 

「北斗百烈拳(ただ連打して殴ってるだけ)! アータタタタタタタ!」

 

 

 なんならこの世界で観て参考にしたアニメ技をコイツ等で試せるという意味では白い龍を宿していた宿敵の戦闘大好きなアイツじゃないが、若干テンションも上がってるくらいではある。

 

 

「お前はもう死んでいる(キリッ)」

 

『グォォォォォッ!!!』

 

「あ、あれ!? 全然死んでない!?」

 

『馬鹿な事をして無駄な体力を使うな!!』

 

「い、いやだって北斗神拳の前では死あるのみだし……」

 

『お前は秘孔なぞ突けんだろうが!!』

 

「そりゃあそうでした!!」

 

 

 それに、あの時の事は普通に見えちゃったから誰が故意にやってくれたのかは知っているが敢えて伏せるし正直別に恨みもない俺としては、寧ろ予想外とはいえ計画が実行出来たのだからラッキーと捉えている。

 

 これで俺は間違いなくクラスの人達や王国とやらの騎士の人達には『MIA』って奴に―――つまり死亡もしくは行方不明と見なされているだろうからな。

 

 これで生き残りさえすれば俺は戦争とやらに荷担することもなく、ニートして干からびる事ができると当初はドライグの呆れ果てた声を無視してニヤニヤしてたもんだ。

 

 

「南雲くん!」

 

「私達も一緒に……!」

 

 

 遅れて上から俺を押し潰す形で降ってきたこの二人さえ居なければな………。

 

 

「! やめろ! 今の二人じゃ無理だっての! 本当に頼むから隠れてろって!

二人にやっと借りを返したばかりなのに、ここで死なれせたら真面目に泣いてしまうぞ俺は!」

 

 

 白崎香織と八重樫雫。

 覚えている限りじゃラノベだアニメに嵌まり始めた中学時代の途中辺りから妙に絡むだ後をつけてくるようになった変な女子二人。

 二人の近くに居るだけで陰キャやってた俺が嫌でも目立つ存在感をある意味持つ―――『あー、昔の俺ならファンやってんだろうなぁ』と思う程度には系統の違う美少女指数を持つ二人が、俺と同じ階層まで落ちて来たんだ。

 

 

「だ、だけど……! これじゃあキリがないわ!」

 

「大丈夫だ! 相棒に説教されてちょっとコイツ等相手に『勘』を取り戻してるだけだからな!

見てろ、その気になりゃあコイツらは一撃だ!!」

 

『Boost!!』

 

 

 しかも俺と違ってこの二人曰くクラスの誰かが明らかに故意に『南雲くんだけを攻撃』して足場を壊したのを見た挙げ句、多分その気になれば俺が普通に落ちずに着地できるのをそれをしなかったから追いかけて落ちた――と下手しなくても普通の子なら死ぬかもしれない選択をしたんだから俺は戦慄すら覚えたね。

 

 とはいえだ、俺とは違って彼女達はまだまだ素人だし、天職的な意味で戦闘タイプである八重樫もこの階層の魔物は無謀だし、アーシアタイプ――じゃなかった、非戦闘側の白崎も当然ここの魔物共からすりゃあ狩られ側だ。

 

 ならどうするか? ………俺がやるしかないだろう?

 

 

 正直なこれが他のクラスメートなら割りと本気でほっといたよ。

 けど悔しいけどこの二人となれば話しは別になる。

 

 

「行くぜ! 限界倍加――」

 

『explosion!!』

 

 

 何回も『俺に近寄るんじゃない』と、時には罵声混じりに突き放しても、子犬みたいに寄ってきては構ってくれたこの二人だけは生きて返さなきゃ南雲ハジメでも兵藤一誠でもねぇ!

 

 

 

「ドラゴン波ァァァァッ!!!」

 

 

 

 そうだろ――木場と匙? おっと、ギャスパーもだったな?

 

 

 

 

 

 

 完全に足を引っ張っている。

 

 その現実が、そしてあまりにも遠すぎる彼の背中に仄暗い大迷宮の底に敢えて共に堕ちた雫と香織は『余裕だぜ』と言いながらも日に日に身体中に生傷を負いながらも守ってくれるハジメに二人は『力が欲しい』と切実に思い始めていた。

 

 

「よーし……出来たぞ! 錬成成功だ! 喜べ二人共、今日からまともな風呂に入れるぞ!」

 

 

 ハジメが誰かの手によって故意に落とされ、その堕ちたハジメが這い戻ろうともせずに落ちていくのを見て、本能的にその後を追って自ら穴に飛び込んだ雫と香織は運良くハジメと同じ場所に落ちることが出来た。

 

 最初はハジメも本当に驚いていたし、寧ろ『なんでそんな馬鹿な真似をしたんだ』と怒られたりもした。

 だけど『ハジメはすぐに戻れるのに戻ろうとする様子がなかったから追った』とこちら側が言えば、ハジメは罰の悪そうな顔をしてこれ以上は言わなかった。

 

 

「壁のあちこちから漏れでる水の正体である変な石をかき集めれば、結構な量の水になる。

で、その水を白崎が火的な魔法を俺が錬成して作ったこの水溜め場で沸かせば――風呂代わりになる訳よ」

 

 

 だけどその後自分達がハジメの足手纏いであるのだと理解させられたのは、このどこかも最早わからない階層の魔物達の強さが半端ではなく、自分達だけでは到底敵わないと思った時からだ。

 

 下手をすれば四肢を失ってもおかしなくない攻撃力を持つ魔物達をたった一人で撃退していくハジメ。

 危うく喰い殺されかけた自分達を身体を張って守るハジメ。

 

 そのせいで至るところに傷跡を残しても『唾つければ治る』と言って気にするなと笑いながら返すハジメ。

 

 それもこれも全ては自分達が弱くて、ハジメの足を引っ張るだけの木偶の坊だからだ。

 この階層に落ちて、そして本当の意味での弱肉強食を知っていったからこそ香織と雫は、それでも真正面から迎え撃てるハジメの強さに羨望と渇望を抱くのだ。

 

 彼を追うのではなく、彼の隣に立ってこの先を歩けるようになりたいと……。

 

 

「ふぃー……あの石から変な成分出てるお陰か、傷の治りも早くなるし消費した魔力とかも回復できるってのは良い発見だ」

 

「一緒に入れば良かったのに……」

 

「南雲くんが作ったこの部屋の入り口は基本閉めているから魔物達も入ってこないのでしょう? それならわざわざ警戒することも無いんじゃないの?」

 

「何時でも警戒は大事だろ? ……まあ確かに今八重樫が言った通り、無理矢理洞窟の壁ぶち抜いて作った洞穴を錬成で拡張した隠れ部屋だし、入り口塞げば魔物共は入っては来ない――ってのはわかってんだけどな」

 

「それなら尚こと一緒の方が……」

 

「あのね……いくら今の俺でも素っ裸の女の子を目の前にしたら何しでかすかわからないっての。

それともアレか? 俺を生殺しの刑にしたいのか?」

 

「そういう訳じゃないし、なんなら別に触っても良いのだけど……」

 

「そりゃあ夢のある話だけど……やっぱりダメだ」

 

「むー」

 

「そんな膨れっ面してもダメだっての白崎。

ったく、無駄に可愛い顔しおってからに」

 

「え、そ、そう? あはは……南雲くんに可愛いって言われちゃった」

 

 

 そんな文字通りの根無し草のその日暮らしを始めてどれくらいの日が経ったのかについては、この時間の感覚すら薄れる仄暗い階層に居るせいか三人ともわかってはいない。

 

 そんな場所でそのまま寝ようとすると魔物に襲われるので、壁を殴り抜いて作った穴を錬成師のスキルで拡張しで作った隠れ部屋のお陰で、ある程度の安心はあるし、ついさっき錬成としての技術を多少上げたハジメが簡易的な風呂を作ったのもあって、割りと生活水準が上がってはいる。

 

 それまでは壁から染み出る変な効能がある水を溜めて、身体を洗ったりしていたり、空腹の時は襲い掛かってきた魔物を狩って喰らったりという原始的な生活だった事を考えれば随分と今の生活はマシであるし、最近は戦闘の勘を取り戻すトレーニングに加えて錬成の技術も磨いており、つい最近は香織と雫の為の着替えも作り出すことに成功した。

 

 作るに辺り、二人のスリーサイズを冗談半分で聞いた時にまさか直で触って調べろと言われた時は流石にビビったのは良い思い出だ。

 

 

 

「熊っぽい魔物の肉うめー」

 

「最初はまともな調理法もわからず、切羽詰まっていたのもあって生の状態のままこの謎の石から出る回復する水で無理矢理流し込んで食べてたのよね……」

 

「南雲くんがやってるのを見て真似をしてね?」

 

 

 そんな積み重ねと共に、気づけば三人の生活もそれなりに板がついてきており、この日も新設したばかりの風呂に香織と雫が入っている間に表に出て魔物を狩ってきたハジメの味付けもなにもないただ焼いただけの肉をもしゃもしゃと喰らう。

 

 

「んぐんぐ………俺に戦い方を教えて欲しい?」

 

「「………」」

 

 

 そんな、地上へと戻る目処も無いままのその日暮らしに慣れ始めたある日の食事の時間に、基本的にハジメの後ろで守られているだけであった雫と香織が『自分達に戦い方を教えて欲しい』と切り出す。

 

 

「悔しい話だけど、南雲くんの言う通り私も香織もここの魔物には手も足も出せない程に弱い。

だからこれまでずっとアナタの強さに頼りきっている」

 

「でも、それではダメだってこの前から雫ちゃんと話し合ってたの。

でも私は当然だけど、剣術を心得ている雫ちゃんも『試合』は知っているけど『戦い』は知らない」

 

「だから俺に教えて欲しいと?」

 

「「………」」

 

 

 頷く雫と香織にハジメは肉を食べる手を止めて真剣に懇願する二人の顔を見つめる。

 確かにこの階層に落ちてから今までの間、二人をまともに戦わせた事はなかった。

 

 それは二人が女だから――という訳では断じてない。

 そもそも戦う女の子なんてイッセーの頃に散々見てきたし、どの女の子も知る限りじゃ全員強かった。

 

 それを考えれば、異世界に召喚され天職という力を持った二人も鍛えれば強くなれる確証はあるにはあったがハジメは常に二人を前線には決して引っ張り出すことはしなかった。

 

 何故か?

 

 

「ステータスは今どこまで上がった?」

 

「「……」」

 

 

 単純に二人のレベルと能力ではこの階層の魔物達を相手に鍛える事が難しいからである。

 だからハジメはドライグの助言を聞く形で『その時』が来るまで実戦形式のトレーニングには付き合わせなかったのだ。

 

 この世界の魔物の血肉を生で喰らうことで何故か肉体が歪に強靭化するという発見をするまでは。

 そして何より――

 

 

 

「……。二人の基礎ステータスはプレートを見る限りこの階層の連中とやり合えるくらいには成長してるな。

魔物の血肉を肉体に負担が掛からない程度に加工して二人に喰って貰ったせいで時間は掛かったが、確かにこのステータスならばなんとかなりそうだ」

 

「「それじゃあ……?」」

 

「本当は二人にはさせたくはないけど、言っても聞かないってのはもう分かってるつもりだ。

良いよ……俺側に引っ張り込んでやるさ。

――――――アイツ等の内の何人かの魂がキミ達を気に入って後継者にしちゃったことだしね」

 

 

 彼女達はハジメとのこれまで以上に近しい生活をする中で『継承』をしてしまったのだ。

 

 

「そっちの方の制御はどうなってる?」

 

「問題ないわ。

最近やっと言うことを聞いてくれるようになったから」

 

「私もコントロールができるようになったよ……!」

 

 

 かつての仲間達の魂と力を継承したことを証明するように雫はその無数の剣を辺りに生成しながらその手には大剣を持ち、香織もまたその両手に癒しの光と永遠に燃え続ける炎を生成する。

 

 

「八重樫には木場とゼノヴィア。

白崎にはアーシアとレイヴェルの力か……アイツ等め、俺にそんなものを仕込んでたなんてな」

 

 

 永遠の別れとなっても自分を守ってくれていたのだと実感するハジメは、かつての仲間や友人達に想いを馳せながら笑みを溢す。

 

 

「俺って何時もそうだ。

居なくなってから何時も後悔する」

 

 

 これで馬鹿な夢を真面目に夢見て遮二無二走り続けた過去の思い出にする訳にはいかなくなった。

 継承した二人を見たことで腑抜けていた精神に再び火が灯った兵藤一誠―――否、南雲ハジメは真っ直ぐに雫と香織を見据えながらゆっくりと拳を突き出す。

 

 

「教えてやるさ。とことんな……!」

 

 

 

 その宣言通り、ハジメは二人をただ守るだけの存在としては見なくなり、明くる日から魔物を相手にした――時には綺麗事では語れない事を含めた多くの『戦い方』を香織と雫に叩き込む事を決めた。

 

 常人では直ぐに投げ出して心を折るような壮絶なトレーニングであり、二人は何度も死にかけ、全身には無数の生傷も絶えない。

 だがそれでも香織と雫はただの一言も弱音を吐くことはなく必死に前を走り続けるハジメを追い続けるように走り続けた。

 

 

 

 そしてハジメの宣言から更に時は経ち……。

 

 

 

 

 

「そろそろ地上に戻るか?

つっても、別に地上に戻っても目的なんてないけど」

 

「やっぱりハジメくんは皆の所には戻らないの?」

 

「ああ。

都合良く向こうも死んだ扱いしてくれてそうだしな、そっちの方が自由で良い」

 

「そう。

それなら私達も同じね。地上だろうと地の底であろうと、天国でも地獄でも冥界でも、私と香織はアナタから離れないわ」

 

「………。へいへい、そう言うと思ったよ」

 

 

 白崎香織と八重樫雫は、継承した魂の下――その殻を破り、飛翔するのだ。

 

 

 

「地上へと戻るのも良いけど、どうせならこの迷宮の探索を完全に終えてからはどうかしら? まだまだ役に立ちそうなアイテムや鉱石もありそうよ?」

 

「まだ行ったことのない場所もあるみたいだしね?」

 

 

 

 八重樫雫 17歳 女 レベル20

 天職・剣士

 

 筋力・1~4200(禁手化発動時+???)

 体力・1~5550

 耐性・1~3500

 敏捷・1~9999

 魔力・1~3000

 魔耐・1~5000

 

 技能・剣術

    言語理解

    胃酸強化

    以下言語化不能技能複数

 

 

 白崎香織 17歳 女 レベル20

 天職・治癒師

 

 筋力・1~4000(魔力解放時・+???)

 体力・1~4800

 耐性・1~5500

 俊敏・1~2100

 魔力・1~9999

 魔耐・1~8800

 

 技能・不死再生

    言語理解

    胃酸強化

    以下言語化不能技能複数

 

 

 

「じゃあまずはそうするか。

どこから行くよ? 八重樫と白崎で決めて良いぞ」

 

「「…………」」

 

「え、なんだよ?」

 

 

 

 南雲ハジメ 17歳 男 レベル1~55

 天職・錬成師

 

 筋力・1~9999(赤龍帝時+???)

 体力・1~6000

 耐性・1~7500

 俊敏・1~8000

 魔力・1~300

 魔耐・1~9000

 

 技能・倍加

    錬成

    永続進化

    言語無視

    並行進化

    胃液強靭

    神滅

    以下言語化不能技能複数。

 

 

「名前で呼ばないと私達は返事なんてしないわよ?」

 

「私と雫ちゃんとハジメくんとの仲は、もうそんなよそよそしい呼び方になる仲じゃないよね?」

 

 

 以下裏技能。

 

 八重樫雫

 

 魔剣創造(禁手化可能)

 デュランダル(ある程度の制御成功)

 

 

 白崎香織

 

 聖母の微笑み(癒しの反転化も可能)

 不死鳥の魔力(条件揃いしのみ完全不死身化可能)

 

 

 

「あー、わかった。

えーとほら明日から頑張ろうぜ香織、雫?」

 

「ふふ、ええ……!」

 

「はーい! えへへ♪」

 

「よし、それじゃあ食ったら良い子は歯ぁ磨いて早く寝な」

 

「寒くて眠れないわハジメくん」

 

「ハジメくんの体温に包まれながら眠りたいなー?」

 

「じゃあ二人で抱き合って寝りゃあ良いだろ? 俺に言っても何にも――お、おい!?」

 

「今更言いっこ無しよハジメくん?」

 

「ハジメくんも一緒……でしょ?」

 

「なぁ、俺が言える事じゃないけど、ホントに馬鹿だなキミ達は……」

 

「馬鹿で結構よ。はい、ハジメくんは真ん中よ」

 

「えへへ、南雲くんって暖かいからよく眠れそう……」

 

「……」

 

「あ、当然我慢できなくなったら遠慮せず襲いかかっても良いのよ?」

 

「寧ろそろそろ襲って欲しいかな……?」

 

「絶対に襲わないぞ俺は! 前に何回かグラついたけどな!」

 

 

 

終わり

 

 

 

 一切の自覚が無いバグ化ロードを突き進む三人。

 しかも質が悪いのは、本人達の頭の中には既に召喚された理由についてが完全に消えている事だろう。

 

 強いて本気になれば国ひとつは滅ぼせるだけの力を持つ三人の少年少女に目標があるとするなら……それはなんの柵もなく生きていく事であろう。

 

 

「生きて、居たのか……雫、香織……」

 

 

 誤算があるとするなら、気を抜いたせいで見つかったら余裕で面倒な展開に入りそうな面々に生存を気づかれてしまったことくらいか。

 

 

「えーと、見ての通り生きてるわよ」

 

「うん、お久しぶり……」

 

 

 正直今の今まで彼等の存在を忘れていたという、割りと酷い雫と香織の生存に、勇者達はこれでもかと歓声をあげながら喜ぶが、二人の反応はイマイチどころかさっさとこの場から消え去りたいといったものだった。

 

 何せ誰も彼も自分達のことで騒ぐくせに、ハジメの事は誰も見向きもせずなんなら視界にすら入っていない様子なのだ。

 

 

「あのね、ハジメくんが私達を守ってくれてたの」

 

「そうよ。

誰も彼もハジメくんのことは見えてもいないみたいだけどね」

 

「あ、そ、そんなことはないぞ? 南雲もよく無事で……」

 

「どーも……」

 

 

 もっとも、ハジメはそれで良いと思っていたので、取り繕うように生存を喜ぶ面々に微妙な顔だった。

 

 そしてここからが問題なのだが、行方不明の間に雫と香織はそれぞれ勇者を単体で秒殺できる領域に到達していることが知られ、その理由がハジメに徹底的に鍛えられたと知った勇者が物凄い剣幕でハジメに詰め寄ったのだ。

 

 

「雫と香織になにをした南雲!!」

 

「なにって……戦い方?」

 

「明らかに成長速度が異常だ!」

 

「才能あったからじゃないかなー……?」

 

「ふざけるな! お前が二人に危険なことに巻き込んだのだろう!!? あの香織ですらあんな……」

 

「いや別に良くない? 強い分には問題なんて……」

 

「ある! お前が香織を危険な戦いに巻き込んだのだとするならな!」

 

「………」

 

 

 ハジメ的には全然理解できない理由でキレられてしまい、どう言えばわからないで困惑すらしていると、話を途中まで聞いていた雫と香織が口を開く。

 

 

「やっぱりそう言うのね光輝は? 昔からアナタはそうだったわね、アナタの中での香織のイメージ像と少しでも合致しないとそうやって喚き出す」

 

「私、光輝くんの人形じゃあないんだけど……」

 

「そ、そう事じゃない! 俺が言いたいのは――」

 

「勘違いしないで貰える? 強さを求めたのも、今の強さにまで来れたのも、全て私達が自分で望んだのよ」

 

「そうじゃないと、何時までも私達はハジメくんの傍に居ることはできないから」

 

「そ、傍だと……?」

 

 

 自分の知らない間に幼馴染みがおかしな奴におかしくされた……と、解釈した勇者だが。

 

 

「言っておくけど、もう何を言われても私と香織はハジメくんから離れる気は無いわ」

 

「うん。

大好きだし……それに……えへへ♪」

 

「」

 

「…………」

 

 

 二人の意思はそれそれは固く、そして……。

 

 

「地上に戻ってから初めて泊まった宿屋での夜は一生忘れられないわ……」

 

「最初は聞いてたように痛かったけど……あははは♪」

 

『』

 

「違うし。五目並べしてただけだし。

なんか真っ裸になった二人に裸にひん剥かれた後、交互に合体させられたとか絶対無いし」

 

『』

 

 

 色々と先に行きすぎて最早手すら届かなかった。

 

 

「ハジメ、ハジメ……私もハジメと合体したい」

 

「わ、私もです! 今度こそは……!」

 

「本当にやめてくれ。

そんなの二人にバレたら一週間は閉じ込められる……! ま、前だってお前等が全裸で襲撃してきたのを回避してたのを知られた二人に5日間も……!」

 

 

 押しまくりすぎてかつてのイッセーのヒロイン達並の肉食っぷりとなって。

 

 

「なに? シズクとカオリについてじゃと?」

 

「今更何を言ってるんだ?」

 

「いやその……冗談なのはわかってるんだけどさ、ちょっとでも他の女の子を見るだけであの二人が襲撃してくるからさ……。

いや良いんだよ? ……なんやかんや結構俺もあの二人は好きだし……」

 

「ちと重いということかの? ふーむ、妾がドライグと一線越えてからの迫り方を見ていたらしいからのぅ……」

 

「オレの事を義父呼ばわりしてくるしなシズクとカオリは……」

 

「で、どうしたら良いと思う?」

 

「子でも孕ませれば少しは落ち着くのではないか? 妾がそうであったようにな……」

 

「………」

 

「おい、また俺に義理の弟か妹ができるのか?」

 

「………コイツに聞くのは絶対に間違いだ。

程度で言えばコイツも二人と大差ない」

 

「………。お、おう」

 

 

 すっかり補食される側にされた赤い龍と共に少年は今日も頑張るのだ。

 

 

終了




補足

こうしてバグチームが結成されましたとさ。



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