色々なIF集   作:超人類DX

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すまんやっぱ続く。





ちょっと昔のテンションに身を任せる

 

 

 

 何時も誰かに陰口を言われいても。

 

 時には理不尽な暴力を受けても。

 

 

 本当の彼は強いからこそ耐えられる。

 強いからこそ安易に報復には走らない。

 

 

 強いからどれだけ周りに陰口を言われ、理不尽な暴力を向けられても『自分』を貫けるのだと――そう思っていた。

 

 

「結局こうなってしまうのかい……。

まったくドライグの奴め……。俺を乗せるのが相変わらず上手いったらありゃしないぞ」

 

 

 だけどその考えが間違えであったことを知ったのは、異世界に召喚されるという訳のわからない非現実的な体験を少しだけ受け入れ始め、生き残って元の世界に帰るために強くならんとする訓練の際に起きてしまった『事故』による『不運』によって私達の命が脅かされた時であった。

 

 

「な、南雲……?」

 

 

 前門には骸骨のような魔物の軍勢。

 後門には巨大な角を持った狂暴な化け物。

 

 どちらも、私達が今回の訓練にて訪れた20階層では見なかった強力な魔物であり、私達の訓練の指導をしてくれていたメルド団長や騎士団の人達も焦燥している。

 

 

「南雲……くん?」

 

 

 

 そもそもの原因は20階層で訓練を終えようとした矢先にクラスの誰かが発見したグランツ鉱石という綺麗な鉱石を見つけ、その輝きに綺麗と呟いた香織の声が聞こえていたらしい檜山君が、メルドさんの制止も聞かずに取りに行こうとした事で仕掛けられた『罠』が発動したからにある訳だけど、今更その事を攻めてもどうにもならず、とにかく生き残る為に全員で協力をして突破を図らなければならなかった。

 

 けれど、メルドさん曰く、このオルクスの大迷宮の65階層まで当時到達した冒険者達でも全く歯が立たなかったとかれるベヒモスという名の魔物と38階層から生息しているトラウムソルジャーに挟み撃ちにされている形である以上、20階層までの魔物との戦いしか経験の無い私達では多勢に無勢だった。

 

 騎士団の人達は、ベヒモスの方は無理にせよトラウムソルジャーならば全員で力を合わせればまだ望みがあると言っているけど、私達の足並みは全くもって揃わず、死ぬかもしれないという恐怖が今更になって襲い掛かることでパニックになってしまっていた。

 

 

「もうこうなりゃヤケクソだ。

なるようになれってんだコンチクショー」

 

 

 そんな状況でもなんとか一体一体倒すことに成功していた私の背後から襲い掛かる魔物に気づけず、香織が叫ぶようにして私の名前を呼んでくれたけれど、私は反応こそできたものの避ける事が出来ずに文字通りの『死の光景』が浮かんだ。

 

 けれど、私はこうして生きていた。

 身体のどこも痛くはなく、そして死んでも居ない。

 

 何故なら、魔物の放つ凶刃が私を切り裂くよりも速く――――彼が魔物を殴り飛ばしてくれたのだから。

 

 いや、そればかりか他の人達に襲い掛かっていた魔物達をも一瞬で彼は『消し飛ばした』のだ。

 

 

「な、南雲君……私を助けてくれたの……?」

 

「状況的にはそうなるかな。

………ちょっとばかし『相棒』に乗せられちゃった部分はあるけども」

 

「え?」

 

 

 他の誰でもない。

 親友である香織と共に初めて見たその時から気になって気になって仕方がなかった――ちょっと変な男の子に。

 

 

 

 

 

 常にぼーっとしている目をしている南雲くん。

 

 死んだお魚みたいな目をしながらライトノベルを熱心に読む南雲くん。

 

 人からの暴力をやり返すことなくマイペースを貫く南雲くん。

 

 たまにすれ違う女の人の胸を見ている南雲くん。

 

 でも私の胸は全く見てくれない南雲くん。

 

 寧ろ私と雫ちゃんが付いていこうとすると『嫌そうな顔』を隠すことなくする南雲くん。

 

 物凄く近所の野良猫ちゃんに懐かれる南雲くん。

 

 猫を撫でる時は優しげだけど、苦しそうな顔をする南雲くん。

 

 たまに私と雫ちゃんが知らない誰かの名前を寂しそうに呟く南雲くん。

 

 誰なのかを聞いてもはぐらかすちょっと意地悪な南雲くん。

 

 実は隠れ細マッチョな南雲くん。

 

 本当は結構強いかもしれない南雲くん。

 

 

 

 これが私達が今のところ知っている南雲くんの事だけど、ひとつだけ訂正しなければいけないかな?

 本当は結構強いかもしれない―――じゃない。

 

 

「い、今のは南雲がやったのか?」

 

「俺達が苦戦してる骸骨の魔物を一瞬で……!?」

 

 

 本当はとても強い南雲くんだね。

 雫ちゃんが危なかった所を颯爽と助けてくれたこの瞬間に私は確信した。

 

 

「南雲くん……」

 

「はい元気です」

 

「え? い、今のは別に出席を取った訳じゃなくて……」

 

「しってるよ。ちょっとした小ボケって奴だよ。

んで? 大丈夫なのか?」

 

「え、ええ……。

その……心配してくれるの?」

 

「数少ない知り合いの一人だからなキミは」

 

「そ、そう……」

 

 

 むー……確信できたは良いけどちょっと雫ちゃんだけズルいなってこんな状況で思ってしまう私ってやっぱり身勝手なんだろうなぁ……。

 

 

「大丈夫雫ちゃん? 南雲くんも」

 

 

 こうやってわざとらしく二人の間に割り込んでしまう私って嫌な女なんだと思うけど……。

 どうしてもズルいって思っちゃうんだもん。

 

 

「え、ええ……南雲くんが助けてくれたから」

 

「むー……雫ちゃん顔赤いよ?」

 

「へ!? そ、そそ、そんな事はないわよ!?」

 

「俺が言うのもなんだがよ、やっぱキミ等変だわ。

こんな状況でよくもまぁ―――――ほんわかできるよな?」

 

 

 余程南雲くんに助けて貰えた事が嬉しいのか、私の指摘にアタフタする雫ちゃんと私を見て呆れた顔をする南雲くんだけど、それを言う南雲くんだってそんな事を言いながら背後から切りかかってきた骸骨の魔物にノールックの状態で裏拳をして返り討ちにしている辺り結構マイペースだと思うよ?

 

 

「お、おい……今南雲の奴、全く見ずに裏拳だけであの骸骨の魔物を粉々にしなかったか?」

 

「ま、まさか。

何かしらの魔法を使ったんだろう? そうでなきゃステータスがオール1の奴があんな簡単に……」

 

 

 クラスの人達が次々と『実は結構強い南雲くん』を見て驚く―――いや、怖がってるが半分と『南雲ごときが』っていった反応が半分かな?

 うん、私も自分が割りと頭の中がお花畑で能天気な方だという自覚は、何回か南雲くんから言われた事もあるのでしているけど、そこまでバカのつもりでもないよ。

 何でか知らないけど、私や雫ちゃんが南雲くんとお話しているのがこの人達は気に入らなくて、それが原因で南雲くんをやっかんでいるのも……。

 

 

「いいなー雫ちゃん。

私も南雲くんに颯爽と助けられて、お姫様抱っことかして貰いたいなぁ?」

 

「別にキミは襲われてないだろうし、なんだその願望は? やっぱ頭ん中ハッピーだな」

 

「そ、そうよ香織? 今はそんな事を言っている場合じゃない訳で……」

 

「わかってるよ。

でも夢くらい見ても良いでしょう? こんな状況だからこそ」

 

 

 お陰で今までは誰かに見られないようにとコソコソしながら南雲くんとお話をしてたけど―――もう良いよね? ここは学校じゃないし、そもそもここは異世界なんだし。

 

 

「さてと、一時のテンションに身を任せたことで段々後悔してきたとはいえ、ここは一応ちゃんとやらなきゃあな……」

 

 

 他の誰がどう思っていようとも、私と雫ちゃんは変わらないし変えられない所まで来てしまっているから。

 

 

「八重樫、白崎。

キミ達はクラスの皆に『一切何もしなくて良い』とだけ言ってくれるか? 正直他の人達に下手に動かれると巻き込む可能性もあるし守れる自信も無いからな」

 

「それを言って聞いてくれるかは別にしても、わかったわ」

 

「うん……助けになれなくてごめん南雲くん」

 

 

 だからここからは私も――そしてきっと雫ちゃんも真剣と書いてマジになる。

 そう、南雲くんが読んでいるのを知って私と雫ちゃんも読み始めたあのカレッジD×Dのちょっとエッチな主人公に恋したヒロインのように……!

 

 

「ごめんとかやめてくれよ白崎?」

 

「え?」

 

「こう見えて俺はバカな程の調子ノリなんだ。

だから謝られるよりは『応援』してくれると少しはやる気出るんだよ」

 

「「……………」」

 

 

 

 初めて南雲くんにお願いされたという嬉しさを雫ちゃんを共有しながら……!

 

 

 

「「頑張って南雲くん……!」」

 

「おう! 頑張るぜぃ!!」

 

 

 私と雫ちゃんの応援の言葉に、初めて子供のような無邪気な笑顔を浮かべてくれた南雲くんに見事に色ボケてしまった私はドキドキが止まらないし、雫ちゃんも同じような顔をしている。

 

 その左腕に見たことのない赤い鎧の籠手を纏い、全身からとても強くて――でも安心もする炎のような赤いオーラを放出しながら魔物達へと突撃する南雲くんを叶うなら永遠に―――

 

 

 

 

 

 

 なんか思っていた以上に香織と雫の両方と気安い会話を襲い掛かる魔物をハエでも叩き落とすかのように一撃でバラバラに粉砕しながらしている南雲ハジメが今度は左腕に謎の赤い籠手を纏ったと思いきや、恐怖を感じるほどのエネルギーを全身から放出し、残りの魔物の群れに突っ込んでいく様を唖然と立ち尽くしながら見ることが出来ないクラスメート達。

 

 

「ひ、一人で本当に倒してるぞ南雲の野郎……」

 

「そ、そんなバカな……! アイツのステータスは1なんだぞ? それがなんで……」

 

 

 あの南雲が。

 オタクでひ弱で、目が死んでいて、冴えない――と、誰もが思っていた南雲ハジメがたった一人で魔物の群れをなぎ倒していくその姿にショックにも近い驚愕の感情しかない。

 

 中でも元の世界からこの世界に召喚された後に渡ってハジメを苛めていた檜山グループの面々は、目の前の現実が受け入れられないといった顔だ。

 

 

「お、おい。俺達も南雲に加勢した方が良いんじゃないか?」

 

「だよな? もしかしたら生き残れるかもしれないし……」

 

 

 その内クラスの何人かがハジメに加勢しようという声を挙げる中、それに待ったを掛けたのが事前に頼まれていた香織と雫だった。

 

 

「止しなさい。今の南雲くんに加勢は要らないわ」

 

「下手に動かれると却って戦いにくいって南雲くんは言ってたよ?」

 

『………』

 

 

 暗にハジメから『騎士団含めた全員が足手まといだから余計な真似はやめろ』と二人を介して言われた気がした何人かの生徒は、自分より色々な意味で下だと思っていたし思いたかった相手であるハジメを悔しげに睨むも、現実問題トラウムソルジャーの群れを次々と葬るハジメ一人で事足りそうだった。

 

 

「そ、それなら俺達はベヒモスってのと戦ってる光輝とメルド団長の援護に行こうぜ!」

 

「そ、そうだな!」

 

 

 目の前の現実を認めたくないという気持ちを誤魔化すように誰かが口にだしたその言葉にクラスの生徒達は全員頷くが、それにも雫と香織が待ったをかける。

 

 

「それも大丈夫だわ」

 

「ほら、もう南雲くんは骸骨の魔物達を全滅させたよ?」

 

『…………』

 

 

 ある意味クラスが一致団結しそうになった所に水を挿した方地なる二人の言葉通り、ハジメは既にトラウムソルジャーの群れを殲滅させ、新たに魔方陣で現れる気配もなくなっていた。

 

 

「うげー……久し振りの戦いってのもあるけど、サボりまくってたからやっぱ鈍ってるぞこりゃあ……」

 

『………』

 

 

 頭だけになったトラウムソルジャーを地面に放り捨ててから首の関節を鳴らすハジメに、生徒達も騎士団達も徐々に畏怖の感情を抱き始める中、すたすたと軽快な足取りで戻ってきたハジメは自然と道を譲るクラスメート達がすっかりと怯えている事に気付いてない様子で、ベヒモスを相手に致命傷とまでは至らぬものの着実にダメージを負って疲弊している光輝とメルドがまだ生きているのを確認する。

 

 

「おー、流石勇者だったか? 思ってたより全然強いな」

 

「でもそろそろ本当に危険だわ………行ける?」

 

「さっきの骸骨連中の倍は強いんだろうけど……まーなんとかなるだろ。

とりあえずあの二人を回収するから治療とかしてやれよ?」

 

「うん、わかったよ南雲くん……!」

 

 

 勇者である光輝が存外やると素直な感想を洩らしながら走り出したハジメ。

 

 

 

「ドライグ!」

 

『やっとその気になったか。

随分とオレを待たせやがって……! こっちはとっくの昔から準備万端だ! 行けイッセー!!』

 

 

 弾丸のような速度でクラスメート自然と譲るように開けていた道を走り、真の意味での相棒の力を借りるためにその名を呼べば、相棒である赤い龍は待ち焦がれた瞬間がやっと来たと歓喜の声を上げながら宿主であるハジメに己の力を与える。

 

 

 

『Boost!』

 

 

 赤き龍の帝王の力が掛け声と共に宿主であるハジメの元の力を倍加させると、ハジメの走る速度は更に速くなり――やがて疲弊して膝をついていた光輝とメルドの間を通り抜ける。

 

 

「!?」

 

「な、なんだ! 今なにかが凄まじい勢いで―――」

 

 

 二人の目では最早捉えきれない程の速度で疾走するハジメは赤い閃光へとなり、赤い閃光はやがて赤い龍の形へと変わり狂暴なだけの獣となりて暴れていたベヒモスへと迫れば、赤い龍の形となったオーラを纏ったハジメはベヒモスへと拳を突き出し――かつて兵藤一誠であった頃の仲間達との切磋琢磨の末に会得した奥義の名を叫ぶ。

 

 

「龍拳・爆撃ィィッ!!!」

 

 

 その奥義の名と共に突き出した拳がベヒモスの眉間を貫く。

 

 

【グギャァガァァァッ!?!?】

 

 

 強者の雄叫びをそれまであげていたベヒモスから悲鳴のような叫び声をあげると同時に龍の形をしたオーラがベヒモスを締め上げる。

 

 

【ガァァァァッ!?】

 

 

 実態なんて無い筈の龍の形をしただけの闘気が抜け出さんともがくベヒモスを締め上げながら天を駆ければ、強烈な赤い閃光を放ちながら、ベヒモスを断末魔の咆哮と共に文字通り『消滅』させた。

 

 

「なん…だと……」

 

 

 あまりに唐突過ぎる展開と光景にそんな声が出てしまう満身創痍のメルドと、声こそ出さなかったものの同じような事を思った光輝。

 

 

「!」

 

 

 しかしそれ以上に驚愕――いや、ショックだったのは、あの謎の閃光と龍の形をした莫大なエネルギーの正体が、あの……香織と雫の周りを何故かうろちょろしているストーカーみたいな男子――と光輝は認識していたあの南雲ハジメだった事だ。

 

 

「今のを南雲がやった……だと……」

 

 

 自分が全く歯が立たなかったベヒモスを、一撃で文字通り消滅させたのがあの南雲ハジメであることを当然当初は何かの間違いだと何度も首を横に振ったり目を擦ったりする光輝。

 

 しかし何度やってから見てもあの背中は……そして腕を振り上げた姿で君臨するあの横顔は紛れもないハジメだった。

 

 

『……………』

 

 

 そんな奇跡みたいな光景に誰もが沈黙する中を何でもないように腕を振り上げた体勢のまま『フッ、久し振りにしては中々に決まった……。けどやっぱめちゃめちゃ鈍ってるぜ』と呟いているハジメの下へと駆け寄る雫と香織。

 

 

「今の南雲くんを知ったせいで、色々な感情が入り交じって自分でもよくわからなくなってるけど、とにかく私達を助けてくれてありがとう。

………でも、教えてくれるのよね?」

 

「その腕って錬成師のスキルとは無関係だよね? というか明らかに南雲くんとは違う渋い声が話してたよね?」

 

「えー? めんどうだから嫌だ」

 

『………』

 

「か、香織……」

 

 

 まるで自分達の方からハジメを慕っているかのように……。

 その瞬間、天之河光輝の中での南雲ハジメの認識が完全に切り替わった。

 

 

「南雲……!」

 

 

 無意識に思っていた取るに足らない奴から、自分の大切な幼馴染みに何か妙なことをして歓心を向けさせている卑劣な男へという、やはりどこかズレた認識へと。

 

 

 

終わり

 

 

 

 

 その昔、兵藤イッセーという少年は、それはそれはおっぱいに夢を見まくる健全な少年だった。

 

『ハーレム王に俺はなる!』と、どこぞの海賊王を目指すゴム人間みたいなフレーズを堂々と言ってしまうだけの健全なスケベ少年だった。

 

 

「でもよくよく考えたらそもそも誰かとまともに付き合ったとかすら無かったわ。

……一度告白されたことはあって舞い上がったけど、その告白した相手が俺の神器狙って殺そうとしていた堕天使だったしよ……」

 

 

 けれど現在の少年は別の少年へと生まれ変わるまでにあまりにも大切なものを失い続けたせいなこともあって、女堕天使によるトラウマを乗り越えたというのに再発していた。

 

 

「リアス部長の眷属になってから結構色々な美少女とお知り合いになれたけど、所謂フラグってやつか? そういうのは皆無だったんだよなぁ。

やっぱウザキャラだったてのもあるし……」

 

『…………』

 

「後に後輩の一人になるレイヴェルって子が居たんだけど、あの子なんて俺の顔見る度に『作ったけど失敗したからくれてやりますわ!』なんて言いながら失敗した手作り菓子の入った袋をメジャーリーガー真っ青な速球で投げつけてきたし……」

 

『………………』

 

「その子の友達で戦車の小猫ちゃん――あ、いや白音は基本ウザキャラな俺の事を養豚場の豚を見るような目で見るし……」

 

『…………………………』

 

「その姉貴は結構エロエロな格好しててナイスバディなんだけど、『白音と姉妹丼なら構わないわよ? だからさっさと白音を落とすにゃ~ん?』って、俺があの子に脈なんて確実に無いのを知ってる上で言ってくるから間違いなく寧ろウザがってただろうし……」

 

『……………………………………』

 

「それなのに一人で『ハーレム王になる!』なんて――今にして思えばアホも良いとこだろ?」

 

 

『…………………………………………………』

 

 

 なんやかんや自分の過去どころか前世のことまで知る『友人』に苦笑いしながら、かつての夢を語るハジメだが、その友人達は思いの外どころではないレベルのハジメの認識の『ズレっぷり』に呆れてしまうわけで。

 

 

「なんだろう、あの鈍さのお陰で私達にチャンスがあることに安心すべきだと思う?」

 

「余程堕天使の女に騙された挙げ句殺されかけた事と、グレモリーさんといった仲間達を失った事がトラウマになりすぎて拗れに拗れて卑屈になってしまっているわね……」

 

「鈍いフリをしてるだけで、単純に応える気がないだけだと思ってた」

 

「私だってかなり露骨に好き好き光線だしてるのに、ハジメさんは常にああですもんね……」

 

 

 ハジメのかつての仲間の魂から託されて継承されたからこそわかるハジメの認識のズレっぷりに、これは深刻だと会議を重ねるのだが……。

 

 

「って、ユエとシアは何をちゃっかりハジメくんに変な事してるの?」

 

「え、だってハジメはハーレム王になりたい筈だし……」

 

「そ、そうですよ。ハーレムというからにはせめて最低四人は居ないと……」

 

「本人は『夢のままで破れたけど、今となってはそれで良いと思っている』って言ってるのよ? つまり今のハジメくんにはそういった願望はないのよ」

 

「そう、つまりハジメくんには私と雫ちゃんだけで十分ってこと!」

 

 

 大体この手の話になると2対2の変則マッチになってしまう。

 

 

「ハジメは別にそんな事は言ってない。

第一、シズクとカオリだって別にハジメからはそう見られてはない」

 

「そーですそーです! 大事なのはハジメさんがどうしたいかです!」

 

「残念ながらそうでもないんだよね雫ちゃん?」

 

「ええ、当初は嫌がられてたけど、最近はどこに行っても寝る時は一緒よ。

しかも本人も特に何も言わないわ」

 

「う……」

 

「ぐ、確かに私かユエさんが押し掛けると未だに追い出されます……」

 

「昨日のハジメくんなんてぎゅって私と事を抱き締めながら眠ったもん!」

 

「一昨日は私だったわ」

 

「「ぐぬぬ……!」」

 

 

 

 ドヤァっとする二人とぐぬぬとなる二人のマウントの取り合いはこうして続くのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかし、ホント部長にそっくりな声だよなぁティオって……」

 

「またその事か? 仕方ないのぅ、お前さんの未来の義母として子守唄でも歌ってやろうか?」

 

「……ベロンベロンに酔っぱらってたから記憶にないってドライグは言ってたけど、やっぱりマジなん?」

 

「うむ、泥酔したドライグにいきなり町の外に連れ出され、そのまま近くにあった洞窟であんなこととかこんな事――とにかく大人にされてしまったのじゃ」

 

「……。意外と手が早いんだなドライグって」

 

 

 片や色々とやらかしまくったせいでトントン拍子に話が進みまくっていたりするのだが……。

 

 

終了




補足

むちゃくちゃサボってて精神も腑抜けまくってたので、一応弱くなってます。



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