色々なIF集   作:超人類DX

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ラストです。

といっても続きみたいなもんですけど。



ありふれない状況でバグ量産

 

 

 現地人曰く、錬成師なる天職は割りとメジャーで珍しくはない天職との事らしいけど、俺にしてみれば割りと珍しいどころかこれはひょっとせずとも便利なのではなかろうかと思うのだ。

 

 だって色々と作れるんだぞ? 超便利じゃんか。

 

 これあれば食いっぱぐれとかも無さそうだし。

 

 

 そもそも戦う為の力はあるからね……戦う気があまり無い云々は置いておいても。

 

 

(おおっ! 錬成師ってスキルはすっげーぞドライグ……! カチンコチンの岩に泥をイメージしながら錬成かけるとドロッドロになる!)

 

『………』

 

(逆にサラッサラの砂を一掴みして錬成をするとがっちがちの石にもなるし……。手品みたいで面白いぜこりゃあ)

 

『………………』

 

(ん? どうしたんだよドライグ?)

 

『そんなしょうもない力が良いのかお前は。

オレの事は全く使わなくなったくせに……』

 

 

 ただ、この力を使うとドライグが不機嫌になるんだけどよ。

 

 

 

 

 

 

 図々しい女子二人に部屋を占拠されてから明くる日。

 当初の予定通りの実践訓練を行う事になったハジメ達は、オルクスの大迷宮なるゲームで例えればダンジョン的な地下空洞に訪れ、メルドという王国の騎士団長の指導の下による訓練を行っていた。

 

 

「次! 南雲だ!」

 

「…………」

 

 

 

 所謂実戦訓練の為に今回は精々20階層までしかし行かない事になっている中、取り敢えず出てきた魔物を生徒達は倒していく。

 軽いチーム分けごとに魔物を倒していく中、やはりソロ化させられていたハジメは事前に極限まで弱らされていた小型の魔物と戦わされていた。

 

 

『舐めてるのか…? 踏み潰せばそれで殺せるだろうが……』

 

(一般人並かそれ以下のステータスで通ってるんだから、向こうがそれなりに気を使ってくれてんだろ)

 

『しかしだな……あのガキ共といい、お前が舐められるのは我慢ならんぞ』

 

(良いんだよ、舐められてるくらいが俺には都合が良い)

 

 

 まさに虫の息状態の魔物を前に、安っぽいナイフでメルドの指示通りにトドメ刺したハジメは、内に宿る相棒の不満げな声を宥めながら、トドメを刺した魔物から出てきた低ランクらしい魔石を拾っておく。

 

 

『そんなものを拾ってどうする?』

 

(ゲームとかじゃあこういうのがなにかしらの素材になるだろう? 折角錬成師ってスキルに面白要素があるってわかったんだし、何かを作る時に使おうかなってな)

 

『オレを使わずにか?』

 

(拗ねるなよ。

そもそも本気出した所でドライグの力自体がここじゃあオーバーキルになるだろうし)

 

『ふん……』

 

 

 今までの自分には無かった錬成師というスキルを、与えられた新しい玩具のように面白がるハジメに不満を口にするドライグを引き続き宥めながら魔石を袋にしまうハジメが視線を上げると、カースト上位組の中から此方を見ている香織と雫に気づく。

 

 

(おいおい、あんまこっち見るなよな……)

 

 

 バッチリと二人と目が合ってしまったハジメは、微笑みながら手まで振ってくる香織と雫に居心地が悪そうに目を逸らしながら悪態をつく。

 

 雫もなのだが、特に香織はクラスどころか学校全体でもその容姿もあってか――そう、かつて学園の二大お姉さまだ癒し系マスコットだとかと持て囃されていたリアス・グレモリー達のような崇められ方をされているのだ。

 

 

(昔オカルト研究部に入った時に近いものを今周りから向けられちまってるからなぁ……)

 

『ああ、妬みってやつだろう? くだらん』

 

(言ってやるなよ。

俺だって昔はオカルト研究部に入っててイケメン扱いされてた木場に似たような事を思ってたんだ。

もっとも、ここに居る連中とは違ってそこまで陰湿な事は考えてたつもりはないけど)

 

 

 かつてとは違って完全な陰キャ扱いされている上に一部から熱烈な苛めを敢えて受けている立場である現状を考えると、ああいう女子に関わるだけで要らない僻みやら妬みやらやっかみを受けるので、あまり表向きには関わりたくはないと今のハジメは思っている。

 

 

(だから何度も『関わるな』って言ってたんだけどなぁ……)

 

『なら誰にも見られてない時にお話しようよ――だったか? お前も大概色々と拗らせているが、あの小娘の妙なメンタルの強さの方が勝っていたな』

 

(なんだよなぁ。

マジで何がそこまで彼女達を駆り立ててるのかがわかんねーや)

 

 

 というより前に何度か罵倒混じりに『お前等、ウザいよ』と言って二度と関わるなと言ってやった事もある程度には今のハジメは枯れ果てていた。

 しかし現状の通り、香織も雫もそんなハジメの言葉をすぐに忘れましたとばかりに変わらなかったのだ。

 

 ともなれば基本的に女子には甘い方ではあるハジメとしてもこれ以上は無下にもできず、仕方なく『誰にも見られてない状況なら』という条件だけを守らせる形で、彼女達との交流を重ねることになったのだ。

 

 

(おい、然り気無くこっちに寄ってくるんじゃない。

檜山辺りに見られたらまたウザ絡みされんだろうが)

 

『もう良くないか? 一度完璧に叩きのめしてしまえば……』

 

(悪魔になる前の俺を見てるみたいでなんか可哀想にすら思えるんだよ……)

 

『断じてお前は妬みだけで他を傷つけるような真似はしなかったぞ。あんなガキとお前は違う』

 

 

 そそくさと然り気無く近寄ってくる香織と雫に顔をしかめながら、犬でも追い払うようにしっしっと手を振って追い返しながら距離を離そうとする今のハジメには、やはり香織と雫がなにを考えているのかがわからないままだった。

 

 

 

 

 

「よーしお前達!

ここから先は一種類の魔物だけでなく複数種類の魔物が混在したり連携を組んで襲ってくるぞ! 今までが楽勝だったからと言ってくれぐれも油断するな! そして入る前に言った通り、今日はこの20階層で訓練して終了だ!」

 

 

 

 そう言ってなんやかんやで訓練は進み、メルドに先導されながら20階層に突入する。

 

 この階層からは今までと違って極端に道幅が狭かったり、もしくは足場が不安定だったりと、まさに迷宮らしい空間となっており、魔物の力もそこそこ強くなっている。

 

 

「はりっきてんぁ……」

 

『お前はやる気無しだがな……』

 

(無いしな実際……)

 

 

 とはいえ、この異世界組み達にとっては苦戦する程のものではないとメルドは判断しており、現に徒党を組ながら襲い掛かってくる魔物達を次々と彼らは倒していく―――という光景を他人事のように何もせずに眺めているハジメ。

 

 

「天翔閃!」

 

 

 特に勇者でありステータスも初期段階から高い天之河光輝はクラスメートたちの中でも早くも抜きん出た実力を示しており、何やら必殺技らしき剣技で複数の魔物を倒している。

 しかしこんな場所でそんな広域の技を使用したことをメルドに怒られていた。

 

 

「木場でも出来そうな技だなあれ」

 

「光輝があの中では抜きん出てるわねやはり」

 

「そうだねー? ところで木場ってだぁれ?」

 

「あ? ああ、木場ってのは―――――っ!?」

 

 

 そんな光輝を見ながら過去の仲間の事をなんとなく思い返しているハジメが独りで呟いていると、いつの間にか真横に居た香織と雫が当たり前の顔をしながら話しかけ来たではないか。

 

 

「…………。来るなって言っただろうが。何で近づくんだよ」

 

 

 異世界に来てから余計に周りの目を気にしなくなっている二人の女子にハジメは苦々しい顔をするも、香織も雫も開き直っている化のような態度のままそのまま居座る。

 

 

「学校に居る間の話であって、異世界では関係ないと思ったからだけど?」

 

「そもそもなんでコソコソしてないといけないのかが今まで納得できなかったし。

それより木場って誰のこと?」

 

「……昔の友達だよ」

 

「お友だち? へぇ? 男子?」

 

「まぁな……」

 

「そっかー、男子かぁ! それなら安心かな?」

 

 

 『なんの安心だそれは……』

 

 男子だと聞いた途端、ぶんぶんと振る犬の尻尾の幻影が二人から見えた気がしたハジメは、最早普通に二人の傍に居る場面をクラスメート達に見られてしまい、どう見ても妬みの入った視線を向けられてしまっていることに鬱陶しさを感じながら舌打ちをする。

 

 

「人気者さんが陰キャのオタク野郎と喋ってるってだけで、この様になる。

だから近寄るなって言ってたのに……」

 

「前から思っていたのだけど、素の南雲くんならそんなこと一々気にも止めないと思っているのだけど?」

 

「なんでダメなのかよくわからないし。

なんで他の人たちの目を気にしないといけないの?」

 

「いや……改めてみたらその通りだけど。

人間ってのはそんな理屈で納得するようなもんじゃないだろう? はぁ……この後がめんどくさいぞ―――ってほらぁ」

 

 

 ただでさえ目立つ二人と居るだけで、要らぬやっかみしか受けないというのに、開き直っている二人が当たり前の顔で横に居るせいで既にクラスの大半からよろしくない視線を受けていたハジメが嫌そうな顔で指を差した先には、訝しげな顔をしながらこちらに近づいてくる天之河光輝と坂上龍太郎が居る。

 

 

「南雲、雫と香織になにをしている?」

 

「何もしてないんだけど……」

 

 

 開口一番の言葉に、なんで俺が二人になんかやってるって前提なんだと思いつつ何もしていないと主張するハジメだが、完全に疑われる目をされてしまう。

 

 

「一人で居るから大丈夫かと思って私達の方から話しかけに行っただけよ光輝」

 

「うん、ダメなの?」

 

「ダメだとは言わないが……」

 

 

 若干声が低くなっている雫と香織にちょっとだけ圧されてしまう光輝は何か言いたげな視線を無言でハジメに送る。

 するとハジメはこれ以上拗らせたくもないし、なんならほっといて欲しかったので――

 

 

「ぼ、僕は大丈夫だから! はい、八重樫さんと白崎も天之河君の所に戻って、ね?」

 

 

 挙動不審なオタク陰キャみたいな演技――というよりは適当に作った『南雲ハジメ』としてのキャラを演じて事態を納めようとする。

 

 

「「…………」」

 

(おい、そんな胡散臭いものを見るような顔を揃ってするんじゃない……!)

 

 

 基本的に周りにはこの手のキャラを演じていて素の状態はドライグ――そして犬のようにひっついた事で一度爆発して素になってしまった所を見せてしまった香織と雫しか知らなかったりする。

 

 

「あ、あははごめんなさい。

僕なんかが白崎さんや八重樫さんに近づくことすらおこがましいのはわかってるから……」

 

『……。演技とはいえ、よくもまあここまで卑屈になれるなお前は…』

 

「「………」」

 

 

 しかしドライグも香織も雫もなまじ素を知るせいか、取って付けたような弱気キャラを演じるハジメをあまり見たくはなかったりする。

 しかし、それを知らない光輝達は曖昧に笑って誤魔化そうとするハジメの優柔不断に見えるそのキャラにすっかり騙されているらしく、光輝は無自覚にハジメに対して嫌味をふたつほど飛ばしてから、最後まで抗議するような目をする香織と雫を引き連れて行ってしまうのであった。

 

 

 

(あー、めんどうな。後で檜山達からサンドバッグにされんなこりゃあ)

 

『くだらん演技をする必要なんぞなかっただろうが……』

 

(良いんだよ。

なにもかもめんどくさくなっちゃってんだよ俺は。

……確かに今思えば演技する理由とかあんま無かったけどな)

 

 

 この場は一応乗り切ったが、恐らく後で檜山達から呼び出され、ヤキでも入られるのだろうとため息を内心吐くハジメなのだった。

 もっとも、その直後に起こった騒動によりそれは無くなるのだが……。

 

 

おわり

 

 

 

 

 

 

 彼が本当は強いというのは、親友と共に彼を追い回していた事で知っていた。

 何故その強さを隠して、あんな気弱な演技までしているのかまでは未だにわからなかった。

 

 

 だけど、私達は漸く知ることが出来た―――

 

 

 

「もうヤケクソだコノヤロー」

 

 

 後少しで取り返しの付かない事になっていた私と香織を初めて彼が助けてくれた事で。

 

 

「やるぞドライグ」

 

『やっとか。

何年も待たせやがって……!』

 

 

 その腕に見たことのない赤い装甲を纏い……。

 

 

「おーおーおー、いい感じで獣だなぁ? お前のせいでこちとら動く羽目になっちまったんだ。

簡単には終わらせてなんかやらないからな!」

 

『Boost!』

 

 

 全身から広大な宇宙を連想させる力を放出させ……。

 

 

「まずはリハビリだぜ骸骨共―――ドラゴン波ァァッ!!」

 

 

 私達が苦戦した骸の騎士の軍勢を一撃で粉砕し……。

 

 

「うへー……やっぱ本来の(イッセー) とは違って全く鍛えて来なかったせいで大分鈍ってる……が! これならやれるぞ!」

 

 

 

 強力で獰猛な巨体を誇る獣を叩きのめすその姿が。

 

 

「龍拳・爆撃ィィッ!!」

 

 

 彼の本当の姿なのだと、私と親友はやっと……やっと見ることが出来た。

 

 

 

「げっ!? し、しまった! 久しぶりのせいで加減間違えた!? お、おいお前ら! 足場が崩れるからとっとと逃げろぉぉ!!!」

 

 

 強くて、悲しげで、私達とは違う誰かを常に見ている南雲ハジメを……。

 

 

「香織! 雫!!!」

 

 

 私達はまだスタートラインに漸く立てただけに過ぎない。

 ここから本当の意味で彼を知る事が私達の目標になる。

 

 

 

「という訳で、今この瞬間からお互いに名前で呼び合いましょう」

 

「私達は一蓮托生だからね」

 

「………。嫌でもそうなっちまったからな。

まさか白崎にアーシアの神器が、八重樫に木場の神器とゼノヴィアのデュランダルが宿っちまうとは……」

 

「彼女達から託されたのよ、アナタのことを。

でも私達はアナタをイッセーとは呼ばないわ」

 

「うん、私達にとってはハジメ君だから……」

 

「そこは好きに呼んでくれ……はぁ」

 

 

 そして、彼に宿っていた彼のかつての仲間達の魂に託された事で私達はもう迷わない。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

「ん、なんだユエ?(香織と雫と三人で散々悩んでつけた名前)」

 

「ハジメはあの二人にだけちょっと贔屓してる気がする」

 

「贔屓だぁ? なんだそれは?」

 

「具体的には説明できない。

でも、私達とはどこか違う」

 

「そうです! 例えば宿に泊まる時も私達がハジメさんのお部屋に入ろうとすると摘まみ出すくせに、カオリさんとシズクさんのことは普通に入れたりします!」

 

「この前の朝なんて三人で寝てた……」

 

「違う、普通に寝てたらあの二人が寄って来ただけだ。

俺は悪くない」

 

「だ、だったら私達とも寝てくださいよ! なんでダメなんですかー!」

 

「だってあの二人が怒るから……」

 

 

 

 

 

「ぐぬぬー! 今日こそお二人勝ちますっ!」

 

「勝ったらハジメと一晩添い寝する権利を貰う……!」

 

「それは―――本気で負ける訳にはいかないなぁ?」

 

「私達は年季が違うのよ。

けど、そっちがそのつもりなら私達も全力で迎え撃つわ!

禁手化――聖覇の龍騎士団(グローリィ・ドラグ・トルーパー)+デュランダル!」

 

 

 

 

 

「今日も元気じゃのぅ?」

 

「お前もやる気満々じゃないか?」

 

「当たり前じゃ。

今日こそ……今日こそドライグとの一夜を過ごす権利を頂くのじゃ!!」

 

「だ、そうだぜドライグ?」

 

『ふん、小娘が。

良いだろう、全力で叩きのめしてくれるわ!!』

 

 

 終了




補足

すっげー簡単に説明すると。


雫さん→木場きゅんとゼノヴィアさんの意思を継承している。

香織さん→アーシアさんと誰かの意思を継承している。

とまあ、継承したせいでバグ化してる。

押しの強さもバグ化している。

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