【トリップ】それでも、私は生きている   作:月乃夜桜

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一番上にネタバレありとなしの飛鳥のプロフを手描き、アナログのイメージ画像もどき付きをあげました。

気になる方はどうぞ。


今回はヘリオード~になります。


35戦目

・・・

 

トリム港に行くということでその途中、ヘリオードに来たユーリ達。だが、街は静かだ。前のような賑わいはなかった。

 

「なんだか……以前より閑散としてません?」

 

「ああ。なんか人が少なくなった気がするな」

 

「そう言えば、あれかなぁ……」

 

「あら、どうしたの?」

 

「ダングレストで聞いたんだけど、街の建設の仕事がキツくて逃げ出す人が増えてるんだって。本当か嘘かしらないけどさ」

 

「ふーん……そんなことが……」

 

ひとまず、落ち着くためにも、宿屋に行くことになった。割と疲れていたのもあり、その日はもう宿屋で休むことになった。だが、夜中に物音で目が覚めたユーリは外に出ていく。当然、飛鳥もこっそりと後をつける。念のため、エステルとカロルたちには防護壁をはってから。

 

隠れながら、ぼうっと話を聞く飛鳥。物音に敏感というのも困りものである。会話は特に変わったことはないようだ。

 

―よし、変わりないしひとまず戻るか……

 

 

そう思い、戻ろうとした時だった。

 

「オマエ、ケス」

 

「!!!」

 

咄嗟にユーリ達が話しているところまで飛びのいてしまった。

 

「「!?」」

 

だが、飛鳥が居たところには地面が少しばかり抉れていた。

 

「アスカ!?どうし――」

 

た、とは言えなかった。飛鳥が銃ではなく、チャクラム両手に、あの黒い、赤眼の魔物と戦っていたから。近距離と遠距離を上手く使って立ち回る飛鳥は、何も言わない。だが、目は経験を積んだ、戦士のよう。

 

「アスカ!助太刀するぜ!」

 

ユーリがそういって黒い魔物―2メートルほどの竜型―に攻撃する。しかし、はじかれてしまった。

 

「なに!?」

 

「下がって」

 

飛鳥が言いながら投げたチャクラムは見事的に命中し、飛鳥のもとへ返ってくる。チャクラムが命中した黒い魔物は消えていく。どうやら倒せたようだ。だが、飛鳥はその場に座り込む。息も荒い。

 

「大丈夫か?」

 

「はぁ、はぁ……ん、大丈夫……持ってきてたの、チャクラムの方だったから、ちょっと、ね」

 

「あの魔物、貴女を狙っていたようだけど」

 

「うん、あの黒い魔物はうちの事を狙ってる。で、今ハッキリした。うち以外はあいつに攻撃が通らへん」

 

「「!」」

 

そういった飛鳥の顔は見えなかった。だが、その背中はどこか諦観が含まれたもので。

 

「まったく、困ったもんや」

 

「アスカ?」

 

「大丈夫、あいつらを一発で消せばいい話。だから、心配せんでええよ」

 

振り向いてそういいながら、微笑む飛鳥。声をかけようとしたが、先に戻ってる、と言ってそのままその場から離脱されてしまった。

 

・・・

 

次の日、部屋で作戦会議をする。と言っても街の様子見と前に暴走した魔導器(ブラスティア)を見に行くことから始めることになった。というより、何も知らないため、情報収集である。

 

街に出て魔導器(ブラスティア)を見に行くと。以前、助けた子どもと母親に出会った。だが父親の姿がない。話を聞いてみると、3日前から行方不明だという。貴族になるために頑張っていた、という話を聞くが、エステル曰くそれはおかしいらしい。貴族という位は帝国に対する功績をあげ、皇帝陛下の信頼を得ることができた者にのみ与えられるものだそうだ。

 

「で、ですが、キュモール様は約束してくださいました!貴族として迎えると!」

 

その名前に、一行は嫌な思い出がよみがえる。そして、現執行官代行だという、知りたくもない情報を手に入れた。という事で、ギルドで捜索依頼を承り、人探しをすることになった。

 

―やれやれ……あのバカに蹴りの一つでも入れてやりたいね……

 

飛鳥は、顔には出さなかったが内心ではため息をついていた。ついでに、制裁を加えることもだ。

 

何はともあれ、人探しを開始したユーリ達。だが、部外者が立ち入り禁止の場所があり、明らかにそこが怪しい。側にたち、門番をしている騎士に聞いてみると、この先は労働者キャンプがあるらしい。だが、危険だとのこと。

 

そこで色仕掛けで突破することになったのだが。

 

「それなら、アスカやってみるか?」

 

「あ”?なんで?意味わかんねぇ」

 

「そこまで怒ることねえだろ」

 

「こんな色気もへったくれもねぇ奴選ぶユーリがおかしい」

 

と、かなり反対したため、結局はジュディスが行くことになったのだが。服を作ってもらう際、何故かエステルのも作られており、さらにそのエステルの服の色違いで飛鳥の分の服も作られていた(エステルの服の赤?の部分が飛鳥のは青)ため、エステルに引っ張られ、一緒に着る羽目になった。

 

「…………」

 

「お前、色気ないんじゃなかったのか?」

 

「こっちが聞きてぇよ……」

 

そういって飛鳥はため息をついた。だが、本人がいう程にあってない、なんてことはなかった。むしろ、似合っているな、とユーリは思う。だが、口が悪いのと低いので男装すれば今なら男だと偽れるかもしれない。

 

―なんでこんなことすんだよ……マジでふざけんじゃねぇぞ……!!

 

・・・

 

 

そして何とかなったのだが。早々に飛鳥は元の服に着替えていた。そして、騎士の格好をして、おいたほうが良い、ということで騎士の格好をすることになった。当然、ユーリがするものだと思っていたのだが。

 

「アスカ、お前に任せた」

 

「……バレてもしらんからな」

 

そういって騎士の格好をした飛鳥。するとすぐに別の騎士がやってきて、詰め所で暴れている魔導士がいるから止めてほしいとのことだった。

 

「あぁ、悪い。すぐ行く」

 

飛鳥がそういうと、伝えに来た騎士はすぐさま走り去っていった。

 

「ってわけだ。行ってくる」

 

飛鳥もそれだけ言い残すと走り去っていった。

 

「え、気づかないの……?」

 

「らしいな」

 

・・・

 

 

飛鳥が詰め所に行くと、そこにはリタが居た。相当暴れているようで、何人もの騎士が倒れていた。全員倒してしまい、走りだそうとするリタに向かって、発砲する飛鳥。ユーリほどの力もないため、流石に羽交い絞めにはできないと思ったらしい。

 

「何よ、アンタ!!あたしの邪魔をす……え?アスカ?」

 

「よかった。気づいてくれなきゃバトんなきゃいけなかったわ」

 

と、そこでユーリ達が駆けつけた。それからはどうにかリタを落ち着かせ、飛鳥も服を着替え、今は詰め所の前に集まっていた。

 

事情を聴いてみると、どうやらここの魔導器(ブラスティア)の様子を見ておこうと思って立ち寄ってみれば、夜中にこっそり労働者キャンプに魔導器(ブラスティア)を運び込んでいたらしい。それを見たリタはいてもたってもいられず、首を突っ込んだところ、捕まった、ということだった。

 

リタ曰く、そこで見たのは騎士に脅され、無理やり働かされている街の人々だったらしい。そして、リタが見た魔導器(ブラスティア)というのは兵装魔導器(ホブローブラスティア)だったらしい。確実に戦うための準備をしている、ということだった。

 

「アスカ、似合ってましたよ!」

 

「………」

 

「そうね。似合っていたわ、アスカ」

 

「やっぱ、うちって声低いのかね……」

 

なんて思う飛鳥だった。




という事で、リタとも無事に合流!

次は広場へ向かう所~です。

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