【トリップ】それでも、私は生きている   作:月乃夜桜

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あと少しで、1部終わり、かな!

長いっすw

バルボス戦後~になります。


33戦目

・・・

 

ユーリ達に敗れ、ふらつくバルボス。だが、それでも倒れないところを見る限り、相当タフである。

 

「ぐっ……ハハハっ、な、なるほど、その様だ」

 

「ではおとなしく……」

 

「こ、これ以上、無様をさらすつもりはない……ユーリ、とか言ったな?おまえは若い頃のドン・ホワイトホースに似ている……そっくりだ」

 

「オレがあんなじいさんになるってか?ぞっとしない話だな」

 

「ああ、貴様はいずれ世界に大きな敵を作る。あのドンのように……そして、世界に食い潰される。悔やみ、嘆き、絶望した貴様がやってくるのを先に地獄で待つとしよう」

 

バルボスはそう言い残し、自ら奈落へと落ちていった。

 

・・・

 

 

塔から無事に出ることができたし、水道魔導器(アクエブラスティア)魔核(コア)を取り戻すこともできた。だがここで気づく。いつの間にかレイヴンが消えていることに。フレンも部下に仕事を押し付けたままだということで一足先に帰ることになった。エステルを一緒に、と思ったようだがエステルのユーリらと一緒に居たい、という願いに折れ、ユーリに託していった。

 

フレンと寄り道しないでダングレストにエステルを送り届ける、という約束だったため、まっすぐダングレストに戻ってみると。ちょうどラゴウが捕まっているところだった。フレンの姿は見られない。しかし、すぐに姿を現し、まだごねるラゴウに、ドン・ホワイトホースとヨーデルで友好協定を結ぶための話合いをしている、という事を伝える。その一部始終を見ていたユーリ達も、ひとまずは宿屋で休むことにした。

 

だが。宿屋で休んでいたがいきなりカロルが走って起こしに来たのだ。どうしたのかを聞いてみると、捕まったはずのラゴウが、評議会の立場を利用し、罪を軽くしたとのことだった。そのため、今の地位より少し低くなる程度で済まされるという。それを聞いたユーリは駐屯所にいるであろうフレンを訪ねた。飛鳥も、こっそりと後をつけた。この後起こることを、知っているがゆえに。

 

「ノックぐらいしたらどうだい?」

 

「来るの、わかってたろ」

 

「おまえ、その格好」

 

「本日付けで隊長に就任した」

 

「フレン隊の誕生か。また差をつけられたな」

 

「そう思うなら、騎士団に戻ってくればいい。ユーリなら……」

 

「オレの話はいいんだよ。隊長就任、おめでとさん」

 

「ありがとう。……僕を祝うために来たわけじゃないだろう?」

 

「ああ」

 

フレンはすぐさまピンときた。

 

「ラゴウの件だな。ノール港の私物化、バルボスと結託しての反逆行為。加えて街の人々からの掠奪、気に入らないという理由だけで部下にさえ、手をかけた。殺した人々は魔物のエサか、商品にして、死体を欲しがる人々に売り飛ばして金にした」

 

「外道め……」

 

「これだけのことをしておいて、罪に問われないなんて……!思っていた以上だった……評議会の権力は……!隊長に昇進して、少しは目標に近づいたつもりだった。だが、ラゴウひとり裁けないのが僕の現実だ」

 

「……終わったわけじゃないだろ?それを変えるために、もっと上に行くんだろ」

 

「そうだ。だが、その間にも多くの人が苦しめられる。理不尽に……それを思うと……」

 

「短気起こして、ラゴウ殴ったりすんなよ?出世が水の泡だ」

 

「…………」

 

「おまえはラゴウより上に行け。そして……」

 

「ああ、万人が等しく扱われる法秩序を築いて見せる。必ず」

 

「それでいい。オレも……オレのやり方でやるさ」

 

「ユーリ?」

 

ここで、ユーリの雰囲気が変わる。それに気づいたフレンは問いかける。

 

「法で裁けない悪党……おまえならどう裁く?」

 

「まだ僕にはわからない……」

 

ユーリはその答えを聞きつつも、その場から立ち去る。大きな橋まで来ると、そこにはラゴウが何やら話していた。そこへ攻撃を仕掛けるユーリ。

 

「あ、あなたは……私に手を出すつもりですか!?私は評議会の人間ですよ!あなたなど簡単に潰せるのです。無事では、す、すみませんよ」

 

「法や評議会がおまえを許してもオレはお前を許さねえ」

 

「ひぃ、く、来るな!」

 

そういって逃げようとするラゴウの背中を剣で斬りつけたユーリ。

 

「ぐっ……あと少しで、宙の戒典(デインノモス)をぉ……がふっ」

 

ラゴウはそのまま橋の下に落ちていった。それを見届けた飛鳥はユーリより一足先に帰る。どうやら何か起こるかもしれない、と思って見に来たのだが杞憂だったようだ。ユーリがや宿屋の前まで来ると、ラピードが伏せをして待っていた。

 

「……ラピード」

 

・・・

 

翌日。帝都に戻るエステルを見送りに来ていた。ラゴウの件は自分から何とかいうと言っていたエステルだが、昨夜から行方不明だと告げられる。するとすぐ後にリタはエアルクレーネの調査をし、それが終わったら帝都にも顔を出すとのこと。あとはすぐさま、走り去っていってしまったが。

 

「アスカも、遊びに来てください!もっと、お話ししたいです!」

 

「……ふふ。そう言ってくれるのは、うれしいな」

 

「はい!待ってますね」

 

「カロルは、これからどうするです?」

 

「ボクは、ギルドを、ユーリとアスカと一緒に作りたいな……」

 

「!?」

 

その言葉を聞き、飛鳥は驚いた。ユーリはわかる。ギルドを作らないか、とユーリを誘っていたから。だが、自分はそんな名前が挙がるようなことはしていないはずだ。それなのになぜ。そう思いつつもこの後、確か。

 

―確か、エステルが襲われるんじゃ、なかったっけ……?

 

そう、考えながらエステルが乗った馬車を、追いかけ、空を見上げた瞬間。火の玉が見えた。

 

「っ、ざっけんな!」

 

そういいながら、飛鳥は防護壁を展開する。だが、それでも衝撃を殺しきることはできず、フレンを含めた全員が怪我をする。当然、飛鳥も防護壁を張るために前に出たため、怪我を負ってしまう。

 

「アスカ!?」

 

「はぁ、はぁ……怪我大丈夫?うちは、別に動けるから大丈夫だけど」

 

なんていいつつ振り返った飛鳥。フレンは怪我をし、剣を杖代わりに地面に突き立て、膝をついていた。だが、それを確認した後、すぐにエステルの元へと急いだ。原作通りではないこと、さらに言えばおそらくだが自分も世界の調和を乱したものとして、目の前にいる巨大な鳥型の魔物に狙われる可能性がある。そこへユーリがカロルとともにかけてきた。フレンはユーリにエステルの事を頼む。頼まれたユーリは走っていく。かけてきた飛鳥に驚きはしたものの、エステルは鳥型の魔物が自分を見ていることから自分が狙われているのだと悟る。

 

「忌マワシキ、世界ノ毒ハ消ス」

 

「人の言葉を……!あ、あなたは……!」

 

「世界ノ調和ヲ、崩シ者モ、共ニ消ス」

 

鳥型の魔物はもう一度攻撃を仕掛ける。だが、それを飛鳥は防ぐ。その様を駆けつけたアレクセイはハッキリと見た。見たところ飛鳥には武醒魔導器(ボーディブラスティア)の類は見当たらない。なのに、防護壁を自分やフレンを含むこの橋の近くにいた全員を護る防壁を張った。どういうことだ。

 

「ああ、やっぱそうかぁ……(ボソ フェロー……始祖の隷長(エンテレケイア)には、わかられてる、か……」

 

「アスカ…?」

 

エステルが問いかけるも、膝を着く飛鳥。さすがに2連続で広範囲に防護壁を張ったのがまずかったらしい。口の端から、赤い血が、零れ落ちる。それを見られぬように、乱暴に拭うと、立ち上がりながらも鳥潟の魔物の方を向いた。だが、そこに姿はなく、何らかの攻撃を受けて、それを回避しているようだ。するとどうにかエステルのもとまで来たユーリは問いかけた。

 

「オレはこのまま街を出て、旅を続ける」

 

「え?」

 

「帝都に戻るってんなら、フレンのとこまで走れ。選ぶのはエステルだ」

 

「わたしは……わたしは旅を続けたいです!」

 

「そうこなくっちゃな」

 

その途端。攻撃の一つが橋を直撃。その場から逃げ出すと、途中でジュディスがたっているのが目に入る。

 

「危ないことしないで!」

 

「お前がそれ言うな」

 

エステルが来たあとすぐにユーリもジュディスのもとへ来た。だが、彼女曰く心配はいらないそうだ。だが、エステルが強引にジュディスの手を引き、走っていった。すると、そこで魔物が去ったことでひとまずは危機を脱する。

 

「待つんだユーリ!それにエステリーゼ様も」

 

そこに現れたのは、フレンだった。だが、橋が壊れていてユーリ達のもとに行くことはできない。

 

「ごめんなさい、フレン。わたし、やっぱり帝都には戻れません。まだ学ばなければならないことがたくさんあります」

 

「それは帝都にお戻りになった上でも……」

 

「帝都には、ノール港で苦しむ人々の声は届きませんでした。自分から歩み寄らなければ何も得られない……それをこの旅で知りました。だから!だから旅を続けます!」

 

「エステリーゼ様……」

 

そこで、ユーリは水道魔導器(アクエブラスティア)魔核(コア)をフレンに投げ渡す。

 

「フレン、その魔核(コア)、下町に届けといてくれ!」

 

「ユーリ!」

 

「帝都にはしばらく戻れねえ。オレ、ギルド始めるわ。ハンクスじいさんや下町の皆によろしくな」

 

「ユーリ……!」

 

「……ギルド。それが、君の言っていた君のやり方か」

 

「ああ、腹は決めた」

 

「……それはかまわないが、エステリーゼ様は……」

 

「頼んだぜ」

 

「ユーリ……!」

 

そこまで言うと、フレンに背を向け、カロルの前に立つユーリ。

 

「言うのが逆になっちまったけどよろしくな、カロル」

 

「うん!」

 

それから、急いで街を出たユーリ達だった――。




はい、長かったですが、ここでやっと第1部、終了です!

というわけで、次回から第2部に入ります。

次回は街を出た直後~になります。

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