ドンに会いに行くということで、あの一騎打ちです。
・・・
あの後、ケーブ・モック大森林からダングレストに戻るために移動していたユーリ達。すると、途中でドンに出会ったのだった。どうにも話し込んでいると、ドンはレイヴンを見つけ、声をかけた。知り合いらしい。ユーリが名乗り、話がある、と言ったところでドンは飛鳥のことを見つけたのだった。
「っと、おい。そこにいんのはアスカじゃねえか」
「!……あー、うん。久しぶり、って言ったらいいかな?」
「え、アスカってドンと知り合いだったの!?え、ってことはアスカは
「んなわけないっしょ。うちみたいなんが居れるわけあらへん。訳ありで、ぶっ倒れてたとこ助けてもらって、しばらくの間面倒見てもらったんよ。まぁ、碌な恩返しせずに旅立って、気がつきゃ、記憶喪失、だなんて笑えねぇけどな」
「で、記憶は戻ったのか?」
「まーね。全部じゃないけど大体はね」
「そうか。元気そうでなによりだ。……居場所は見つかったみてえだな」
「はぁ――、揃いも揃ってそれかい。見つかった、かどうかはまだわかんねぇよ?だって、うちは
「!……てめえ、まだそんなこと言ってやがるのか。アレはてめえのせいでもなんでもねえだろうが」
「あぁ、何度でも言うよ。事実なんやから。アレは、うちのせいや」
アスカが珍しく、喧嘩腰なこと、口調が乱れてることに気づいたユーリは、2人とレイヴンが割と仲が良かったのでは、と推測した。そして、ドンには飛鳥が度々口にしてる、咎が何か、話しているようだ、とも。
「ったく頑固な小娘だ。で、若ぇの、ちょいと面貸せや」
レイヴン曰く、腕っ節が強そうなのを見つけると、試したくなるそうだ。そして、あぁ、と思い出したかのように
「あぁ、あとアスカ。てめぇもな」
と告げるドン。
「は……ちょお待ち!うちも!?えぇちょっと、勘弁したってよ!!?」
「――強くなったろ。〝飛鳥〟。見せてみろ、この老いぼれにな」
「――っ!!」
ドンにそういわれた飛鳥は、目を見開く。あぁ、なんで。どうしてソレを知ってるの。おかしい。確かに、名乗ったはずだ。アスカ・ツキシロ、と。決して月城飛鳥、とは名乗ってないはず。なのに、なんで、知ってるの?ねえ、過去に話したとでも、言うの?
飛鳥は、硬直しその場に座り込んだ。自然と胸元へと手を当てる。
―うち、は……全部、話して、しもたん?そこの記憶は、ないからわからん。けど、あぁ、そっか。ドンは。それでか。んでもって、この、疼き、は何……!?
「アスカ!?」
「だいじょうぶ。あたまいたい、とかじゃ、ない、から……」
どこ虚ろで、片言な飛鳥。だが、次の瞬間。覚醒した。
「アスカ?」
「大丈夫。ドン直々にご指名のようなんで、ちょっとボコられてくる」
その瞳には、光が見えた。それを見たのは、ドンしかいない。だが、悟った者がいる。レイヴンだ。
―あー……嬢ちゃん、覚醒したのね。やっぱあのドンの言葉は特別だわ。名前を呼んだだけなのに。まぁ、嬢ちゃんが背負ったモノ考えりゃ、覚醒でもしなきゃやってらんないわな。嬢ちゃんは、本当に一般人だってのに……あとなんでかおっさんの事知ってるしなぁ……ドンは嬢ちゃんのせいじゃないって言ってるけど、あの眼は……
・・・
ユーリとドンの一騎打ち(ユーリが一方的にボコられた)が終わり、次は飛鳥の番になった。あまり飛鳥は乗り気ではないようだが。
「マジでやんなきゃダメ?」
「てめえらの話聞かなくていいならやめてもいいぞ」
「それ卑怯!!絶対やんなきゃなんないやん!!」
ドンにそう言われ、ドンへかかっていく。その動きは下手をすればユーリよりも動けていると言っていいだろうものだった。それを見て、ユーリやカロル、エステルらは驚いた。あのユーリでさえ、防戦一方だったのだ。それなのに飛鳥は、ドンの攻撃を避け、攻撃をしていた。
「あいつ、オレよりやるんじゃねえの?」
「すごい……」
「まぁ、ドンにああやって扱かれてたからねえ、嬢ちゃん」
「そうなの!?」
「そうよ、毎回ボロボロにされちゃってまぁ、手当てすんの大変だったんだから」
戦いを見守るが、アスカは何度も吹っ飛ばされていた。しかし、それでも立ち上がる。その姿にドンは満足しているのか、嬉しそうに言った。
「アスカ!てめえやりゃあ出来るんじゃねえか!!」
「はぁ、はぁ……!!やんなきゃアンタに扱かれんでしょーが!!アレはもうヤダかんね!!?」
息が上がりつつも、攻撃をする飛鳥。すべて防がれているものの、今までずっと銃を使っている。チャクラムは使わないのだろうか。
「どうした!」
「~~~!!!うちは、銃のが得意だって、言ってんでしょー!!!」
そういいながら飛鳥がチャクラムにチェンジし、ドンへ接近戦を挑む。本来の飛鳥なら、こんなことはしないだろう。だが、ソレをさせるだけの何かが、ドンにはあるらしい。だが、接近戦は不慣れらしく、先ほどよりも随分と吹っ飛ばされていた。だが、ドンの剣を避けた時だ。同時に足を出していたらしい。
「っ!!」
「は、足癖の悪いヤツだな!」
「おかげ様でね!」
どうやら、回避しながら攻撃するという方法はドンから教わったらしい。そのあとも、しばらく打ち合いが続く。それを見てユーリは悟った。あぁ、自分の時で半分くらいかそれ以下の力しか出していないのだと。そして、今飛鳥の相手をしている時は、自分の時よりもさらに加減していることに気づく。だが、それも終わった。飛鳥が今までよりも盛大に吹っ飛ばされ、樹にぶつかったからだ。受け身を取れておらず、そのままぐったりとしていた。
「「「アスカ!!」」」
「おおっと、ちょいとやりすぎたか」
「やりすぎた、じゃないわよ、爺さん。あれ、気ぃ失ってんじゃないの?」
「かもな」
「かもって……」
ユーリとエステルが慌てて飛鳥に近づき、ユーリが飛鳥に触れようとした瞬間。
パァン!!
銃声が、鳴り響いた。だが、ソレはユーリには当たっておらず、後ろの黒い魔物にあたったようだ。黒い魔物が耳障りな声を上げ、消滅していく。
「……は!?」
「――っ、はぁ、はぁ、はぁ……もう、こちとら、体力、ないんやから、勘弁、してーな……」
それだけ言うと、地面に倒れこんだ。
「ひゅー、やるねえ。嬢ちゃん」
「アスカ!!」
「気ぃ失っただけだ」
「……わたしの治癒術、アスカには、ダメなんですよね……」
しゅん、と落ち込んだ様子のエステル。やはり、怪我をしている人がいて、それを治す術を持っているが故に、それが使えないとなると、優しい彼女は耐えられないらしい。ユーリは飛鳥を背負う。そして、ドンがダングレストに戻ったら話を聞く、と約束をしてくれたので、ひとまず戻ることになったのだった。
というわけで、飛鳥ちゃんにも一騎打ちをしてもらいましたw
まあユーリが勝てませんから、飛鳥のときはかなり手加減してもらいましたw
あと、ドンやレイヴンとの関係は、また本編で明かすので、もうしばらくお待ちを。
次回はダングレスト~になります。