ブラック・ブレット〜白の変革者〜   作:ヒトノミライ

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今回は結構書いた感じ。
補足ですが、この白いマガツさんは通常のマガツさんと違い、常にオラクルの炎を出しております。


Beast.2 一匹は森で

何処からか鳥の鳴き声が響き渡る。

それは、もうすぐ朝が来ることを伝えていた。

地平線から太陽が顔を出し、暗かった森に朝が来たことを知らせる。

太陽が完全に地平線から顔を出すと、川辺の近くで丸くなっていた一匹の真っ白な狐が目を覚ました。

 

 

 

 

 

 

(ん…………、朝か…)

 

丸るなっていた身体を解しながら起き上がる。

大きな欠伸が漏れる。

地平線から顔を出したばかりの太陽を見て、思わず苦笑が漏れてしまう。

 

(夜明けとともに起床とか……)

 

凝り固まった節々を解すように、ググッと身体を伸ばす。

 

(んん〜、よく寝た。…? なんか首筋に違和感が……。まぁ、大した違和感じゃないから放っておくか)

 

少し身体に小さな違和感を感じたが、まだ少し慣れていないのだろうと結論づけるとすぐ横の川に目を向ける。

 

(そういや、昨日はこの川で魚を食べてそのまま寝たんだっけか。でもまぁ、それにしてもデカイ川だなぁ)

 

かなりの川幅があるようだから別に食べる魚の数は減らす必要無さそうで良かった。

まぁ、この低燃費の身体だからそこまで食べることはないが。

 

(腹減ったな。また昨日みたいに魚でも食べるか)

 

川に脚を踏み入れ、近くを泳いでいた魚を素早く捕食する。

 

(んー、昨日みたいに生で食べるだけだと飽きちゃうかもなぁ)

 

鋭い爪の先に突き刺さった魚を見てそう思ったが、現状では生で食べるしか方法はない。

 

(焼いて喰いたいが火のおこし方なんて知らないし………ん?)

 

ウンウンと唸っていた俺の目に飛び込んできたのは、腰部から生えていたユラユラと揺れる青白いオラクルの炎。

 

(……一応オラクルの炎だからいけるか?)

 

爪に突き刺さっていた魚をもう片方の手の爪で抜き、器用に爪の間に挟む。

そして、それを俺の後ろでユラユラと揺れているオラクルの炎へと近づけ、炙るようにかざす。

 

(お、おおぉ!! 焼けた!)

 

炙った魚がジュウジュウと良い匂いを立てながら焼けていく。

 

(……というかこのオラクルの炎は熱があるのか。だ、大丈夫なのか? 俺の綺麗な毛に引火とかしないよな?)

 

ジュウジュウと音を立てて焼けていく魚を見るとどうしてもそういった不安が出てくる。

 

(この不安を解消するには手を突っ込むかして試すしかないけど……)

 

目の前でこんがりといい具合に焼けた魚を見るとそれを試す勇気が無くなっていく。

こんがりと焼けた魚を口に放り込みながらウンウンと唸ってしまう。

 

(あ、生より美味しい)

 

だが、いずれは試さなくてはいけない道だ。やるしか、ない。

 

(大丈夫、大丈夫……この身体はマガツキュウビだぞ? 少し火傷を負ったくらいどうってことないさ!)

 

勇気を奮い立たせ、勢い良く………では無く、そおっと爪の先っちょをオラクルの炎に近づける。

そして、爪がオラクルの炎に触れた。

 

(あ、あれ? 別になんともない)

 

爪の先は焦げた感じは無く、伝わってくる筈の熱さも無い。

ならばと思い、毛の生えた腕を炎に触れさせるが爪と同様に変化はない。

 

(なんでだ? さっき魚は焼けたはずなのに……)

 

ためしに近くに落ちていた木の枝を爪で挟み、オラクルの炎に当てると、

 

(あ、燃えた)

 

木の枝は勢い良く炎上し、炭も残さず灰になり風に吹かれ散っていった。

 

(つまりこのオラクルの炎は俺の害になるようなモノは燃やさない……というか、俺自身には効かないということか)

 

まぁそうだろう。このオラクルの炎で俺自身がこんがり焼けてしまったら意味がない。

試しに川の中に入れてみてもなにも変化はない。

 

(なんであれ、不安は解消されたんだ。中断した朝食の続きをするか!)

 

足取り軽く、川の中に入り魚を探すと少し向こうにさっき食べた魚よりも一回り大きい魚を見つけた。

 

(結構大きいな。食べ応えがありそうだ!)

 

テンションが少し上がっていた俺は川底をしっかりと踏み込み、その魚目掛けて飛び掛かる。

 

(よし! 捕まえた、って ふ、深っ!?)

 

それほどの深さは無いと高を括っていたのが仇になり、急に深くなった川に溺れかけてしまう。

 

(や、ヤバイ!! 息が………ってあ、あれ? 出来るぞ?)

 

口から水が入っていくのが分かるがそれを呼吸のように酸素を取り入れることが出来るというの普通に考えておかしい。

俺は狐だぞ?

 

(水中で息ができるって事はエラが出来ているってことか……)

 

と思って首筋に触れてみるとあまり大きくはないがエラが出来ていた。

 

(今朝起きた時に首筋に違和感があったのはこれの所為か……。なんでエラが出来たのか、と考えると思い当たるのは一つだけか)

 

水中で呼吸が出来るようにエラがある。そんな種類の生物はそう多くはいない。

 

(昨日食べた魚か? あれを食べたことで俺の身体が進化し、エラ等の水中で呼吸するための呼吸器官を生成したって事か?)

 

自分の身体には無い器官を食べた物から情報を得て、急速に進化していく。

そして、その進化の速度が物凄く早い。

 

(流石はマガツキュウビってところか。それに体毛も何故か硬く甲羅みたいに変化してるし)

 

川に入る前まではキューティクルな真っ白い体毛だった筈なのに、今は甲羅のように硬く変化している。

試しに川から上がってみると、みるみるうちに甲羅のような硬さが取れ、キューティクルな体毛に変化した。

 

(これを考えるに、水中での活動を考えるとこの体毛は邪魔になるから変化したってことか)

 

ただ闇雲に進化するのではなく、環境にキチンと適用するように進化している。

よく見ると、爪と爪の間に青白い水掻きのようなモノが出来ている。

おそらく尻尾のオラクルのようなモノで創られているそれは、川から上がると霧散して消えていった。

 

しかしである、

 

(ここまでのチートのような成長進化であっても主人公たちに勝てるビジョンが思い浮かばないのは何故だ……)

 

あらためて、絶対に主人公たちに遭遇しないようにと心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(にしても水中で呼吸が出来るってのは楽だなぁ)

 

川の中をスイスイと泳ぎ回り、途中にいた魚を爪で捕まえていて単純にそう思った。

 

(それにそんなに視界がいいわけじゃないのになんか気配っぽいのが分かるんだよなぁ。おっと、見っけ!)

 

魚の気配? のようなモノを感じ取り、爪で一突きにする。

 

(そういやどっかの雑学で聞いたことがあったな)

 

少し前に高校の科学の担当の先生が話していたのを思い出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みんなは“気配”というものを感じたことはあるかな?

たとえば、それが見えなく足音や息遣いが聞こえなくても気配を感じるということがある、みたいな事や後ろに気配を感じ、振り向いてみたら本当に人が居た! なんてことを経験した人もいるだろう? 意外と気のせいで済ませることが出来ない“気配”という曖昧なもの。

じゃあなぜ誰も居ないのに人の気配を感じるのか。

ーーその答えは電気だ。

生き物は活動すると微弱な電気が発生する。その電気を他の誰かが感じると“気配”となる。

その気配の持ち主が去っても、気配だけが残されてそれを感じることが出来るというわけだ。

 

そして、人間に限らず生物は全て微弱な電気を発生させている。歩く場合には足の裏の接地面積が変化したり、電荷のやりとりが起こったりすることで電界の状態が変わり、数メートル離れた場所にいる別の人間の生体電位に影響を与えることで“気配”として察知される。

 

つまり、“気配”の正体は身体の周りでつくられている電気だったということだ』

 

 

 

 

 

 

 

(つまり、俺は他の生物の発する電気を敏感に感じ取ることが出来るって事か)

 

なんか気配がするな、という感じではなく、完全にあそこに何かいる! というのが分かることからして相当感知能力が高いのだろう。

 

(流石マガツさん。基本的なスペックもチート級だな)

 

6匹もの魚を捕獲した俺は悠々と川辺向かって泳いでいた。

 

(というか、マガツさんに転生した俺って前の時よりも基本的に勝ち組じゃね? 主人公たちにさえ会わなければ大抵のアラガミには負けないし。ゲームが出来ないのがちょっと残念だけど、しょうがない)

 

そして、川辺に上がった俺は早速捕獲してきた魚たちを炙って食べるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーしかし、川からは大きな影がその白い狐を睨んでいた。

 




不可解な点や誤字脱字などがありましたらお知らせ下さい。

次回はついにあいつらが登場します。
お楽しみに。
……原作開始の時期がきちんと断定出来ないんですが、初夏くらいですかね? 5月中旬らへんかな?

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