ブラック・ブレット〜白の変革者〜   作:ヒトノミライ

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今回はちょっとした説明回です。


Beast.1 白い獣

(いや、これはキュウビじゃない。キュウビの皮膚は紫に近い色だった。だけど、この身体には紫色の皮膚がある場所に真っ白の体毛が生えている)

 

キュウビの特徴は紫に近い色の皮膚に黄色の体毛だ。

ということは、

 

(マガツキュウビ? いや、それもおかしい。あれは黒い皮膚に白い体毛。もしかして、マガツキュウビの変異種、ということになるか…)

 

キュウビの特異種であるマガツキュウビ。

それは、ゴッドイーターの中でも指折りの難敵である。

 

 

キュウビというのはゴッドイーターの中で、限りなく純粋なオラクル細胞『レトロオラクル細胞』で構成されたアラガミである。

細く、しなやかな外見とは裏腹にとても高い戦闘能力を保有している。

素早く、広範囲の攻撃を得意とする隙の無い強力なアラガミとして存在していた。

 

 

そして、マガツキュウビにはキュウビには無かった“殺生石”という技が存在する。

黒い球体のようなもので、自身と周囲のアラガミから生成し、これに接近すると体力上限が削り取り、衰弱させるというチート技だ。

しかも、あまりに近くにいると一瞬でLIFEを1にされてしまう。

当初はすごく苦戦したのを覚えている。

 

 

(だけど良かった。マガツキュウビの変異種なら余程の事が無い限り死にはしないだろうからな)

 

これがザイゴートになんてなっていたら俺は絶望していただろう。

どう考えても最初のチュートリアルで殺されるイメージしか湧いてこない。

 

(それに俺がマガツキュウビだということは、ここはゴッドイーターの世界なのか? だとしたら絶対に主人公たちには会わないようにしよう。絶対何らかの補正で殺される)

 

主人公補正ほど恐ろしいものはないと俺は思う。

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 

 

(うーん、周りは森だらけかぁ。少し街でも見てみたいけど行ったら絶対に討伐されるよなぁ……)

 

あれから辺りを散策してみたが目ぼしいモノはあまりなかった。

あるとしても湖が点々とあったことくらいだった。

 

(それにこの身体は腹は空かないのか? たしかにレトロオラクル細胞は他のオラクル細胞を取り込み、自身を変異することはない、ということは知っている。だが、マガツキュウビはキュウビの生息域から出て変異したアラガミだ。おそらくは他のアラガミと違い、オラクル細胞を取り込み、レトロオラクル細胞という純粋な状態を保持しながら進化していったと考えられる)

 

ゲーム内では、マガツキュウビはキュウビが元の生息域から外部に出て急速に進化、変異したものと書かれていた。

 

なら結論としては、腹は減るという事だ。

ならば、食場を確保する事が今一番にやることだ。

 

(でも、アラガミってなに食べるんだ? 他のアラガミを喰えってことか? ……まぁ、それは最終手段として今は最初の川で魚でも捉えて食べてみるか)

 

決まったならば、少し離れてしまった川に向かって走り出す。

もう完全にこの身体に慣れたようで危なげなく走ることが出来た。

 

(しかし別に全力で走っている訳じゃないのに結構なスピードが出てるなぁ)

 

感覚的には時速70キロ前後くらいは出ているのに、この鬱蒼と生い茂った木々にぶつかることはない。

木々が目の前には表れると自然と避ける事が出来ていたし、動体視力も上がっているのか、この速度に目が追いつかない、なんてことも無かった。

 

(まぁ、嬉しいことだ。とっととこの身体と能力を確認しないとな)

 

少しすると、あの川のある所に出た。

早速その動体視力で鮭のような魚を捕食。

 

(なんか、感覚的に何処に魚がいるのか分かったなぁ。なんでだろ?)

 

モシャモシャと骨ごと鮭のような魚を食べてみると、意外と美味しかった。

 

(味覚が変化したのか? まぁ、好都合だからいいけど)

 

10匹くらい食べると次第に満腹感が襲ってきた。

 

(へぇ、この図体であんな小さな魚10匹でいいのか。低燃費で何よりだな)

 

満腹になると、今度は眠気が襲ってきた。

別に今すぐやることも無いか、とその場に丸くなるように横になる。

 

(能力の確認なんかは明日にでもやればいいや。……もう眠いし。)

 

そう結論付けて、俺は睡魔に身を任せていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日が登る、数時間前。

彼の身体にある異変が起きていた。

彼がそれに気がつくのは、日が登ってから数時間も後のことだった。

 

 




主人公はここがゴッドイーターの世界だと勘違いしているようです。

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