異世界転生─誓った約束を今度こそ   作:レイハさん

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四話 魔法

あれから大分時間が経ち、俺も2歳となりようやくこの世界の言語が理解出来るようになった。

それもそうだろう、寝る前に毎日毎日俺の母親であるジーナと父親であるフォウスが『ジーナお母さんですよー』『リウス、パパだ、フォウスパパだ』

何て耳元で聞かされればそりゃ覚えるだろうよ

後、リウスというのは俺の名前である『ジオリウス』を略したものだ

 

 

まあ、そんな事もあり俺は前世の感覚とか色々あったので、同年代の子供よりは早く言葉を覚えたし、歩けるようにもなった。

 

「そうよ、リウス……上手」

 

後、最近になって母親が魔法を教えてくれることになった。2歳になる前から母親にお願いしていたのだが、危ないから駄目だと言われた、だが、根気よくお願いしたため母親も折れたのか3日前から俺に魔法を教えてくれている。

 

「うっ………っは」

 

体の奥から溢れ出す魔力を右手に集中させる……。

昨日までは集中させた魔力がすぐに拡散して、霧となって消えてしまっていたが今回は何とか上手くいっている

 

「アイギル…………燃え上がれ!」

 

頭の中で魔法の術式を一気に組み立てる、術式とは魔法を発動させるために必要で、ジグゾーパズルのように複雑になっているため初級の魔法といえど組み立てるは難しい。

その術式を組み終えて、右手に集中させた魔力が燃え上がる炎へと変わった

 

「やった!成功だ!やったよ母さん!」

 

右手の内に炎をやどしたまま母親であるジーナへと向き直り、左手でガッツポーズを取る

 

「すごい!流石私の息子!」

 

それを見たジーナは、ジオリウスの右手に燃え上がる炎など気にも止めず思いっきり抱きしめる。

 

「わぷっ、苦しいよ母さん」

 

ジオリウスはジーナの胸の中で、そう言う。

だが、本当に嬉しそうに俺を抱きしめてくれている親を横目で見て、こう思う……

 

……嬉しい………と…

俺は誰にも愛されなかった……救いはなかった………苦しかった、悲しかった……

 

捨てられて、否定されて、『悪魔の子』などと呼ばれて……

 

…でもこの親は俺を…他でもないこの俺自身を愛してくれている。その事実が嬉しかった…

 

「リウス!?どこか痛いの!?」

 

ジーナの焦るような声が聞こえてハッとする。

どうやら泣いていたようで、頬を伝う涙が少し冷たい

 

「ううん、何でもないよ」

 

「そうなの?」  

 

「うん…………あのね母さん」

 

抱きしめられたまま俺は上目使いでジーナを見つめ

 

「ん?何かな」

 

「大好きっ!」

 

そう言って更に力を込めて抱き付いた

 

「ん、私もだよ、でも今日は魔法を教えるためにこうしてるからね、次はどんな魔法がいい?」

 

だが、何時までも抱きしめているわけにはいかない、今日はジーナに魔法を教えてもらうためにこうしているのだ、目的を見失う訳にはいかないとそう思い直す

 

「えっと、じゃあ風魔法がいい」

 

先程俺は、炎魔法『フレイム』を教えて貰っていたので、次は別の属性にしようと、風魔法を教えて貰うことにした。

この世界の魔法は、炎、風、水、氷、雷、聖、闇の7属性に分かれている。

その中でも、聖と闇の魔法は特殊で、聖魔法は天使族しか使えず、闇は魔族にしか使う事ができない。

そのため俺が教えて貰えるのは炎、風、水、氷、雷

の5属性だけなのだ。

 

「じゃあ、この本だね」

 

ジーナは後ろを向いて、一冊の本を手に持って此方に振り向く

 

「これ?」

 

ジーナが持っているのは風魔法の初歩的な事が書いてある魔法書だ、俺はまだ魔法の事を何も分かっていないので、特性を理解したり、どんな風に使うことが出来るかということを学ばないといけない。

だから、まずはこういった魔法書で基礎から習っている

 

「それじゃあ最初は、本当に簡単な『エア』からいこうか」

 

ジーナがパラパラと魔法書のページをめくり、風魔法エアと書かれた所を指差す

 

「うん、いくよ……アイギル………」

 

もう一度俺は右手を前にかざす。この『アイギル』というのは魔法を使うために必要な詠唱というものを俺なりに訳したもの……言う所の初動キーだ。

これを言うことで、長い詠唱を省略しても魔法を使うことができる。

 

「はぁぁぁぁ………」

 

右手に風の魔力を集める………。

この世界の魔法は俺が思っていたのと割と違って色々とめんどくさい事がある。

魔法を使う過程を説明すると

まずは自分の持っている魔力を使う魔法に適した属性へと変化させる(適した属性でなければ魔法は発動しない)→変化した魔力を一つの場所に集めて、発動するために必要な術式を組む(これは、慣れれば詠唱等は必要なくなるのだが、慣れていないと難しい。

術式とは簡単に言えばパズルのようなもので、詠唱をすると術式が簡単になる、ようは詠唱をすれば何も書かれていない真っ白なパズルが、絵などが書かれた少し簡単なパズルに変化すると言うことだ)→その後、組み立てた術式に仕上げとして魔力を流し込むことで魔法が発動する(この仕上げの時に流し込む魔力の量や質によって威力や効果が変化する)

 

このような過程となっている

 

「………風よ吹け!『エア』!」

 

今流し込んだ魔力に組み上げた術式が反応し、空中に風が吹きあれる。

とは言っても流し込んだ魔力は微々たるものなので、そこまでの風ではなく、扇風機から吹く程度の風だ。

 

「うん!やっぱり私の息子だね!」

 

ジーナは俺の魔法を見て、誇らしげに鼻を鳴らす

 

「……『キャンセル』」

 

ジオリウスはそう言い、手をぐっと握りしめる。

すると、空中で吹いていた風が弱まり、消滅した…

 

今のはキャンセルといった、使った魔法を消すことができる技術だ。どうしてあんなことができるのかと言うと、 魔法とは発動しても一応は自分の制御下にあるため、発動している魔法に魔力を流し込めば威力や効果は高くなるし、その逆として、魔力を自分に戻す事は出来ないが、魔法に組まれている術式を解除し、魔法を消すことは出来る。

 

これは、ジーナから魔法を習うときに、炎魔法とかが家に燃え移ってはいけないということで、一番はじめに教えられた。

これは割と高度な技術のようで、開始一発目で成功した俺にジーナは目を見開いて驚いていた。

何でも、このキャンセルという技術はある魔法と組み合わせると凄い事が起きるらしいが、そんな事ができる魔法なんて俺は知らないし、ジーナからも、まだまだ使えないと思うと言われたので今は関係無いだろう。

 

「本当に2歳でキャンセルまでできるなんて……まじで私の息子天才じゃない?」

 

その後、またジーナに色んな魔法を教えて貰って、キリのいい所で終了した。

 

◆   ◆

 

「よいしょ……っと」

 

魔法を教えるためにジーナが用意した本などを俺は小さな体を駆使して片づけている。

元々の体格ならばこんなもの簡単に片付けられるがこの体はまだ2歳であるため、そうはいかない。

 

ジーナも片づけている途中でよろけたりして怪我しないかと心配なようで、別にいいよと言われたが、俺のわがままで教えて貰って、片づけまで全部やらせるのは流石に悪いと思い、今、ぶ厚い魔法書を一冊一冊運んでいる。

 

そして、ようやく、全ての魔法書を元の本棚の近くに運び終え、ふう、と一息つく

 

「ん…?なんだこれ」

 

何かがコツンと足に辺り、下を向くと、そこには一冊の本があり、片づけ忘れたのかと手にとってみる

 

「んー………」

 

中身がなんとなく気になった俺はパラパラとページをめくる……そこには今日やったのとは比べものにならない位難しい術式や魔力の流し込み方等色々と書かれてあり、今の俺の知識ではできそうにもない……

 

「分かんないけど、やってみようかな…」

 

それは単なる好奇心だった。

俺はその魔法書に書かれている中で、最も複雑な術式が書かれてある所を見る、その魔法一つに何と10ページも使われており、こんなのまだできるわけないなと思いつつも右手を突き出し、初動キーを口ずさむ

 

「アイギル………」

 

魔法書を片手に術式を組み立てる……何十、何百といった式を、ゆっくりと一つに纏めていく……

 

「アルギガ……」

 

次に同じように頭に浮かんだ初動キーを新たに口ずさむと、術式のイメージがはっきりと浮かび、多少なりともやりすくなった術式を次々に組み立てる…

 

──術式……組み上げ

 

──魔力……流動……変化!

 

──術式工程………完了!

 

「アルヴァーナ!」

 

組み上げきった術式を発動させるため、最後のキーワードを口にする……

 

「『龍強化(ドラゴンエンチャント)

!』」

 

魔法が発動すると、その術式は風魔法や炎魔法のように、手に宿ったり、空中に出現する訳でもなく、俺の体の中に取り込まれた

 

「おしっ!」

 

魔法の発動に成功し、興奮してガッツポーズをとり、更にどや顔を決める。

たが、誰もいない所でどや顔してても虚しいだけである

 

「んー……難しい割には何にも起こんないな……もしかして失敗か?」

 

しかし、発動したはいいが何も起こらない、失敗したかと思い落ち込む。

でも、まだ諦めるには早い、強化

エンチャント

とついている位だ、それならば身体能力の強化が施されているかもしれないということで、俺は家の外へと向かう

 

「ここなら、何が起きても大丈夫だろ」

 

外にでて周りを見渡し、とりあえずは大丈夫だということを確認すると、俺は地面の部分に拳を叩きつけた……

 

───ドゴン!!

 

そんな轟音が響く。

……結果としてはジオリウスが思った通りで、身体強化は施されていたようだ。おかけで、自分の拳は思いっきり叩きつけたにもかかわらず痛みも全くない、しかもそれだけでは飽きたらず、自分の拳を叩きつけた所がひび割れ、2m

メートル

程の深さに陥没していた。

 

「お、おお……これは改良が必要かな……?」

 

2歳の体だというのにここまでの威力がでたことに、自分が起こしたことだというのに若干引いていた……まあ、それよりも……

 

「リウス!?大丈夫!?」

 

「おい!どうした!?……って」

 

家の外から轟音が聞こえたため慌てて出てきたのであろう、二人の額には多少汗が浮かんでいた。

二人の親……ジーナとフォウスはジオリウスの目の前が陥没しているため目を見開く。

 

「……今はこの親二人にどう説明するかだな」

 

 

結局この後めちゃくちゃ怒られた


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