生まれ変わったらめんどくさい種族になっていた   作:ラーカー

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お互いに一方的に知ってる関係みたいな。


魔王幼女降臨

sideゲント

 

 魔王。

 それは箱庭世界で己のギフトゲーム(ルール)を強要し、大多数の秩序を乱す存在。

 意志ある天災として

 そして必ず最後には滅ぼされる。

 

 そんな存在が現れたら弱者は逃げまどい、強者は弱者を守ったり戦ったりとお祭り騒ぎになる。

 そんな大騒ぎを俺は

 

「おーおー、よく逃げ回ってるなあ」

 

 壊れた建物の上でお祭り騒ぎを見物していた。

 

「ゲント様これからどうするので?」

「別に何も?つーか、だいちゃんどうしたの?」

 

 何か見に行きたいのかそわそわしているだいちゃんを見ると

 

「おぅん」

「気になるやつがいるのか?じゃあ行ってもいいけど手は出すなよ。邪魔しちゃ悪いからな」

 

 拾っておいた黒い契約書類(ギアスロール)をひらひら振る。

 これだけでも意味はきちんと伝わるだろう。

 

「おん」

 

 そう返事してだいちゃんは地面に沈んでいった。

 地面に潜るのは勝手だけど魔王連中にも”サラマンドラ”にもばれないように……だいちゃんなら心配ないか。

 

「ユーちゃんはどうすんの?」

「私はゲント様に従います」

「邪魔にならない範囲で好きにしろ」

「はい」

 

 さて、改めて人込みとかを眺めるとわかることもある。

 

「流石に混乱で誤魔化されてるけど上から見るとあからさますぎて笑えるなあ」

「なにがですか?」

「”サラマンドラ”の不自然さ」

「そこまで不自然ですか?避難誘導は問題ないようですが」

「問題ないのが問題なのさ」

 

 ここら辺は経験の差かな?

 性格の悪さかもしれないけど。

 

「というと?」

「そうだなあ。今までの経験からして魔王が現れた時って、魔王の直接脅威があるまで混乱で民衆は正しい行動1割、間違った行動2割、動けなくなるのが7割って割合で動きになる」

「そうなんですか?」

 

 ホントはなんかの心理学で読んだ気がするだけで、ホントかどうかは知らないけどな。

 

「そうだ。そしてそれは割合は変わっても階層支配者(フロアマスター)の組織も変わらない。そこで、改めて見てみろ。トップが変わって命令なんかがうまくいきにくい組織である”サラマンドラ”の動きはどうだ?」

「見事に組織だって動いてますね」

「そうだな。あらかじめ魔王襲来を知っていたとしても動きがスームーズすぎるんだよ。5桁から見物に来た奴も気づいてるみたいだな」

「有能って事では済まないんですか?」

「6桁に転がり落ちた無能が?本拠の6桁でなく7桁でしかこの祭りが開催できないほどなのにか?笑わせんな」

 

 そこまで有能なら人数減っても5桁を維持できるはずだ。

 本部が減っても協力コミュニティを使えば、それくらいは余裕のはずだ。少なくともサラ姉さんはそれをしようとしていたはずだ。

 

「お、金髪が悪魔と当たったな」

「女悪魔と久遠さんが相対しました」

 

 遠見の恩恵で見物していたが、序盤としてはまあまあの立ち上がりじゃないだろうか。

 

「幼女は――なんかこっち見てない?」

「見てるどころか向かってきてますね」

 

 面倒くさいなあ。ユーちゃんはなんかやる気になってて逃げる雰囲気じゃないし。

 

「逃げなかったの?」

「逃げてもいいなら逃げるけど――俺を参加者から外してくれよ」

「ダメよ。あなたのコミュニティを傘下にできたら私の目的に近づくもの」

 

 あの小娘何か吹き込んだみたいだなあ。

 後でお仕置きが必要かな。

 

「ユーちゃんは逃げな。ユーちゃんじゃそいつの死の恩恵(ギフト)をどうにもできないでしょ」

「しかし!」

「その言い草だと私がどんな存在かわかっているようね?」

「逆になんでわからないと思った?」

「悪いけどここであなたを潰しておかないとゲームに負けるからね。そもそも早めにいなくなると思っていたのに誤算だったわ」

 

 高評価だな。というより俺を過大評価しすぎているような気がする。

 こいつが俺の事を詳しいというより入れ知恵した奴の認識がそうなっているというのが正しいだろう。

 

「まったく。俺も適当に外で高みの見物するつもりだったんだけどねえ。お前が俺の子分になるならいい落としどころを見つけるけど?」

「私の目的は知らないわよね?」

「復讐ってことぐらいしか知らん」

「そう。でも私は、いえ私達(・・)私達(・・)の手で復讐しなければならないのよ。それは総体としての意思よ」

「ふーん。ユーちゃん邪魔」

 

 警戒しているユーちゃんは俺の動きを止められずにそのまま後ろへと放り投げられる。

 ありゃ完全に虚を突かれたな。

 もう少し考えろよ。

 逃げろって言ってんのに逃げないから俺が悪者みたいじゃん。

 

「あらいいの?護衛がなくなったみたいだけど」

「さっきも言ったけど邪魔だったからな。それにここでお前とやり合っとかないと下手な誤解生じるし」

「まさか自分が死なないとでも?」

 

 隠す気はないのか霊格を解放気味の幼女に俺は当然のことを言う。

 

「んなわけないだろう。俺はそこらへんに居るようなか弱くて、愚かで、無力なただの人間だぜ?自信があるのは生き残るための奇策ぐらいだ」

「最終勧告よ。私の下に着く気はない?」

「生憎、修羅神仏の下には着きたくないもので」

「ならいいわ。――死になさい」

 

 そして黒い風が幼女から巻き起こり、俺は黒い風に包まれた。




よく考えたら幼女(少女?)がリーダーってかなりヤバいですよねえ

マンドラを頭首にしてサンドラをサポートにして実力をつけさせてから交代が一番穏当のような

サンドラがリーダーにするにしてもマンドラが前面に出すぎててサンドラのお飾り感が強いので、罪を共有させて自覚させるのが次善ですかねえ

”サラマンドラ”は親の過保護で子がダメになってるみたいな印象がありますね

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