聖杯戦争が始まります。オリジナル展開なのでご注意ください。
それと、後書きに補足説明のコーナーが有ります。ご覧いただけると話しがわかりやすくなると思います。
間桐桜は魔術師である。衰退したマキリの魔術を次代に繋ぐため、遠坂から間桐へと養子に出され、マキリの魔術に馴染まされるための
身体のいたるところに刻印虫と言う蟲に巣食われ、心臓を人を喰らう妖怪にまで身を堕としたマキリ・ゾォルゲンの魂を抱える蟲に寄生された桜は逆らう事も出来ず、ただ心を閉ざす事で自分を守るほかなかった。
繰り返される
士郎に恋をして、自分は蟲とは違うのかもしれないと思えた。士郎と創名、大河のやり取りは見てるだけで笑顔になれた。桜にとって絶対の恐怖である間桐臓硯が、桜に
その結果は、長子の士郎は魔術の鍛練をするのにも命を掛けるような方法を取る程に無知。弟の創名は魔力がほとんど感じられず、魔術が使えるとは思えないと言う物だった。
しかし、士郎の魔術の異常性を見抜いた臓硯の命令で監視と言う名目で衛宮士郎と関わり続ける事が出来た。
それも、もうすぐ終わる。先日桜はサーヴァント、ライダーを召喚した。聖杯戦争が始まったのだ。
今は七騎が揃う前の前哨戦で、桜はマスター権を兄である慎二に預けているから衛宮家に訪れる事が出来ているが、数日の内にそれも叶わなくなるだろう。
「あ、桜ちゃんおはよー」
「おはようございます。創名先輩、今日は早起きですね。」
「士郎の通い妻やってる桜ちゃんほど早起きじゃないけどね。
こんな朝に身嗜み完璧とか何時起き?」
創名に茶化されて、桜は顔が熱くなるのを感じた。
創名は初めて会ったときからこうだ。『初めまして、君が未来の義姉?』と言われ、その後差し出された白い右手を今でも思い出す。
「来て貰っていきなりで悪いんだけど、士郎を起こしてきてくんないかな?アイツまた土蔵で寝てるみたいなんだ。全く、凍死でもしたいのかな?」
「はい、わかりました。」
「お願いね、自分はその間に朝御飯作ってるから。」
笑いながら言う創名に笑みを返し、桜は士郎が眠る土蔵へと足を向けた。
その後は何時ものように、創名の手抜きでも美味しい料理に士郎がダメ出しを食らわし、創名も士郎の料理にダメ出しをして、料理討論を繰り広げ、その隙を突こうとする大河を二人で同時に制止する、賑やかな食卓だ。それが終わった後は、双子並んで皿洗いをしている。桜も手伝おうとしたが、ゆっくりしてろと追い返されてしまった。
「だいたい、お前の料理には愛が無い!」
「愛ならあるよ、楽がしたいと言う自己愛が溢れんばかりに」
「俺が言いたいのはそれじゃない!……つ!」
創名と話していた士郎が、左手を押さえ洗っていた皿をを落として割ってしまった。
「先輩!?」
「大丈夫だ。どっかで打ったみたいだ」
心配する桜をよそに、創名は割れた皿をただ見詰めていた。その唇が僅かに動いたのに士郎も桜も気付けなかった。
『あーあ、始まった。』
「士郎、自分は今日休むから葛木先生に言っといて」
手当てを終え、士郎と桜が家を出ようとしたとき、創名が唐突にそう言った。
「お前なぁ、サボりはダメだって前から言ってるだろ?また、藤ねぇに連行されるぞ。」
「今日はホントにキツいんだって。」
またか、と言わんばかりに士郎が言うと創名もいつもと同じ言葉で返す。
「たく、程々にしとけよ。」
「ありがとね士郎、あ、桜ちゃんに聞きたい事有るから士郎は今日1人で登校な」
ため息混じりに言った士郎に礼を言ってから桜を止める。
「聞きたい事ですか?」
「……少しぐらいなら待ってるぞ?」
「大した事じゃないけどさ、てか士郎空気読めよ。そんなんだから鈍感だの馬鹿スパナとか言われんだよ」
創名の言葉に二人は首をかしげるが、結局押しきられてしまった。
「それで、話って何ですか?」
聖杯戦争がらみの事ではないか、自分が魔術師であると知られてしまったのではと僅かに怯えながら聞く。
「桜ちゃんの恋の進展について、と言いたい所だけど、慎二の事なんだ」
「兄さんの事ですか?」
「うん、最近様子がおかしいて言うか、前から他人を見下しがちだったけど、更に酷くなった気がしてさ。なんかあったのかな?って思ったんだよ」
桜は内心安堵した。気付かれていない、確かに兄が創名の言うようになったのは、聖杯戦争でのマスター権を借り物とはいえ手に入れたのが原因だろう。だが、これだけなら誤魔化せる。
「確かにそうかも知れませんが、私には分かりません…」
兄を友人として心配してくれる創名に感謝しながら、桜は嘘を吐く、ただ1つの自分の光を守るために…
「そっか、ゴメンね遅れさせちゃって、士郎が聞いたら慎二に突っ込んじゃうからさ。」
「はい、兄を心配して下さってありがとうございます。」
ライダーを得た兄は自分を問い詰めて来る士郎を容赦なく殺すだろう。再び安堵して創名に頭を下げる。
「ん、急げば追い付くかも、一緒に登校する連続記録更新出来るかも?」
「もう、創名先輩がそれを言いますか?」
朗らかに笑いあい、桜は玄関へ向かう為に後ろを向き、創名に背中を見せた。
「ゴメンね」
「え?」
ドンと言う衝撃、視線を下に向ければ、自分の胸から白い腕が生えていた。自分に差し出してくれた白い右腕だ。それが脈動する臓器を握りしめ、自分の体を貫いている。
ズブリ、
腕が引き抜かれ、自分の力で立っていられずに前のめりで倒れる。残りの力を振り絞り、顔を上げた時、見えたのは見知った少年の見たこともない表情。
右目からはハラハラと涙を流し、左目は愉快そうに細められ、唇の右側は嘲笑するように歪められ、左側は堪え忍ぶ如くに歯を食いしばっている。
まるで、様々な表情をツギハギしたかのような表情に桜は何故か安らいだ。
「(創名先輩も、壊れてるんですね)」
そして、桜の意識は闇に消えた。
「ごめんな、自分は士郎を『正義の味方』にするって約束したんだ。……だから『桜の味方』に成ってもらう訳にはいかないんだ。」
少女の心臓とそれに巣食う妖怪を握りしめながら、ツギハギの少年は呟いた。
そこは虎なししよーや、ロリでブルマな弟子の道場の真上から2つ横の教室、その教壇に二人の少年が立っていた。赤毛で白い右腕の少年は白衣を着て、赤毛白衣と同じ顔だが肌も髪も黒い少年は学ランを着ている。
「アンリ´Sきゅーあんどえー!!」
「いえー」
赤毛の叫びに棒読みで乗る黒毛
「ここは作者が文才と根性の無さのせいで、読者の皆様がアレ?と思ったであろうことを説明する、ナニコレイミフと読者様に捨てられると言う作者的バットエンドを回避するコーナーだよ。
担当は先生の自分と」
「生徒1号アヴェだ」
自己紹介もそこそこに、黒板に議題を書く先生。アヴェはその横で落書きを始める
「今回の疑問は桜が創名の魔力が少ないと誤認したことだね」
「あー、確かに変だな。設定じゃ創名の魔力は士郎の1.5倍あるんだろ?」
「うん、切嗣にくっついて実戦を積んでるからね。」
ニヤリと銃をちらつかせる先生
「簡単に言えば、創名は臓硯の事は知ってたんだ、だから初めましてからゴメンねまで、桜の前では魔力を隠蔽する礼装を身に付けてたんだね」
「おい、それだと初対面からハートキャッチを狙ってたように聞こえんですけどー?」
「じゃぁ、次話、聖杯戦争開催/表、お楽しみに……」
「え、マジで?この人……」
「アヴェくん後で体育館裏ね」