弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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本日4度目の更新です。読み飛ばしにご注意下さい。

本編中では明かせなかった設定の様な、後日談の様なものです。
そして、弟くんがラスボスルートは、これで一先ず完結となります。
ありがとうございましたm(_ _)m


蛇足あるいはネタバレ

ある人形師の事務所兼工房『伽藍の堂』、その乱雑に散らかった事務所に置かれたソファの上で、一人の少女が息を吹き返した。

いや、その表現は正しくない、その少女はその瞬間初めて息をしたのだ。

 

「あー、よく死んだ。おはようございます。橙子さん。」

「あぁ、おはよう。そしてはじめましてだな。」

 

所長である蒼崎橙子は、先程まで人形だった少女が動いているのを確認し、満足そうに頷いた。

 

「うん、ちゃんと定着しているな、便利だなぁお前の魂は。」

「そういうもんですからねぇ、てか、何で女性型なのか聞いてもいいですか?自分は男性型を頼みましたよね?」

「固いこと言うなよ。どうせお前は、条件を満たしておけば男女関係なく転生するんだ。ちょっとくらい趣味に走っても良いだろう。」

「素晴らしい開き直りですね。まぁいいですけど。」

 

少女はソファに座り直し、動作を確かめるように手を握ったり開いたりする。その正面、向かい合うように橙子も座った。

 

「早速だが、報酬を頂こう。第5次聖杯戦争の顛末を話してくれ。」

「勿論。」

 

そして、少女は終結したばかりの戦争を、まるで自身が体験してきたように語りだした。

 

「フッ、それで、自分のサーヴァントに聖杯を起源弾で撃ち抜かせたわけか。諦めが悪いというかブレないな。」

「そうですか?聖杯戦争では失敗しましたけど、次に繋がるようにするのは当たり前ですよ。」

「だからって、6騎のサーヴァントの魂が入ってた聖杯を『輪廻』の起源弾で撃ち抜くやつがいるか?英霊の分霊を輪廻に引き戻し、生まれ変わらせる。しかも、この世全ての悪(アンリ・マユ)の呪詛に汚染された聖杯に入っていた魂をだ。」

 

呆れたように言う初対面の友人に少女はごく普通に語る。

 

「まぁ、呪詛に染まって反転してるでしょうし、現代に転生してるなら大変な被害が起きるでしょうね。生まれ変わっても英霊は英霊、ただの人や魔術師じゃ相手にならない。」

「そこで、同じく英霊を持つ遠坂やお前の元兄が呼ばれることになる。そして、現代に生き返った英霊が悪逆を行っていればいるほど、倒したときの彼らの名声は上がっていく。それこそ、何かの英雄の様になるんじゃないか?」

「そうなれば良いですね。」

 

何でもない様に少女は前世から引き継いだ目的の達成を夢見て微笑んだ。

 

「さて、報酬を急ぎすぎて、大切なことを忘れていた。

 生まれ変わったキミを私はなんと言えば良いんだろうな?月の触覚?それともTYPE MOONか?」

「その言いようだと、本物に怒られるので止めてください。」

 

橙子の言葉を少女は笑って否定する。しかし、それは全否定では無かった。

 

「いつ気付きました?」

「お前に前世の話を聞いたときからだよ。」

 

少女の問いに当然のように答える橙子

 

「まず、生まれ変わる原因だ。神様?他人の心象風景を固有結界を複数展開し、尚且つそれを融合できる存在?そして、それが、ただの一般人だったはずのお前の起源を読み間違える?有り得るかそんなモノにそんなこと。」

「ごもっともですね。」

「次に違和感を感じたのは、月にあるという存在、この世界には存在せず、ある平行世界の月で、世界のあらゆる事象を記録する聖杯、ムーンセル・オートマトン。この神の瞳が、自身が存在しないからという理由で『自分が存在しない世界』の観測をしないわけがないという確信だ。」

 

煙草の煙を吸って、吐き出した後に橙子は続ける。

 

「観測を行うとしてどの様な手法を取るかだが、2パターン考えられる。自分で見に行く事と他人に見てきてもらう事だ。前者は言うまでもなく、次元に観測用の覗き穴でも開けて、そこから観測すること、これは観測される世界に結構な影響を与えるだろうから、そこまではしていないだろう。」

「では後者は?」

「それこそ言うまでもあるか?監視カメラの様に自身に記録を送る端末を世界に投げ込めばいい。多少の変化は出るが、世界単位ならたいした変化ではないさ。精々ゲームのルートが1つ増えた程度の差だ。」

 

ククッと自身の冗談が気に入ったように肩を震わせた。

 

「では、そんな監視カメラはどんなモノが良いだろうか?きっと生物だろうな、特に時代の中心とも言える人間が良いだろう。観測のノイズを少なくするには、観測者はどんな歴史でも一定であることが望ましい、例えば生まれ変わっても根本的な変化は滅多にしない『輪廻』の起源を持っている奴なんてぴったりじゃないか。」

「そうですね。」

「まぁ、遠回しに言うのもやめよう。お前は元々ムーンセルに作られた上級AIだな。」

「えぇ、観測と報告を主な業務とするAI、Kiー02です。最近まで自分も知らなかったのですが。」

 

少女の言葉にやっぱりかと橙子は頷く。

 

「それなら、チグハグな神の説明がつくな。お前は見たり感じた事象をムーンセルに報告する。その際お前の勘違いや錯覚はそのままムーンセルに伝わり、ムーンセルに記録されたことは真実であるという理によって、現実となる。

 お前の前々世が神と遭遇する前に起きた事故によって、お前の自己防衛機能が暴走した。それによって自身が死に行く運命だと悟り、それを無意識に回避しようとした。」

「そうして、偽物の神を自身の想像で作り上げ、それをムーンセルに伝達し、その虚実が真実となった。」

「自発的には使えないだろうが、アカシックレコードと繋がっているようなモノだな。」

 

関心したように言う橙子にそんなに良いものじゃないですよと少女が拗ねたように言う。前世が嫌っていた神が前々世のイメージによる産物だったというのが恥ずかしいらしい。

 

「さて、友人が月の住民だった事を祝して、少々出掛けよう。」

「何処にですか?」

「前世のお前の義姉の所だ。彼女の体の寿命を人並みにすることも契約に入っているんでね。」

 

少女の言葉に嘯いて、橙子は立ち上がり、鞄をとる。少女も立ち上がった。

 

「さて、行こうか。」

「その前に、私の名前決めませんか?」

「そんなの、前世と同じ、キズナで良いだろう。漢字は後で考えればいいさ。」

 

頷き、少女は歩き出す。完全なハッピーエンドを迎えるために・・・

 




注意タグに神様転生を入れてるのですけど、タグ詐欺なのかどうかがここ数年の気がかりでした(

この後の番外展開予想
転生した上にオルタ状態の英霊達と戦って行く、英雄誕生忌憚ルート
凛、士郎、元創名の3人で時計塔へ留学する、時計塔でもラスボスルート
ちっとも進展しない士郎とヒロイン達の関係に焦ったくなってちょっかいを出す、義妹ちゃんがラスボスルート

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