満月ではないが、美しい月の下創名とアサシンが創名の持ってきたブルーシートに座って、これまた創名の持ってきた重箱の弁当を食べていた。
「かつての文豪は、I LOVE YOU を“月が綺麗ですね”って訳したそうだよ。」
「雅だな、狸、お主ならば何と訳す?」
「キャスターは女狐で、自分が狸なのは雅じゃないと思うよ。」
他愛ない会話、気を許してるのではなく、互い心底関心が無いからこその軽い会話だった。
「うーん、好きな人へってのは思い付かないけど、家族へのだったら思い付いた。」
「ほぅ、どんなものだ?」
「“泣かないで”どうしてかな、
“泣かないで”それは平行世界において、創名が自分を殺した
「来た。」
キャスターの使い魔が、柳洞寺に続く階段を士郎達が登って来ている事を知らせる。重箱を閉じ、箸を置いて立ち上がる。
アサシンも創名の数歩前に立つ。
「ようこそ、と言いたい所だけど、待ちくたびれたよ。士郎」
「……創名」
よれたコートを着て無機質に微笑む創名は、セイバーには衛宮切嗣と重なって見えた。しかし、平和を願い、その為なら“この世全ての悪”を担ってもいいと言った男。正義を求め、それ故に“ただ一人の為の絶対悪”となり得る彼。その理想は同じ『正義の味方』なのに、真逆とも言えるほどに違う道を歩んでいる。
そんなセイバーの考えなど知らず、創名は士郎が持っているチューニングに気付き、アーチャーをジト目で見つめていた。
「あ、セイバー。この弁当食べていいからね。せっかく作ったのに、先生とかちょっと食べただけだし、キャスターに到っては一口も食べないしさ。」
「遠慮します。貴方の料理には毒が有りそうだ。」
「えー、たっぷりの自己愛しか入ってないよ?」
きっぱりと断るセイバーに、創名は不満そうに言う。
「狸、お主は中へ行け。私の邪魔をしないようにな。」
「了解だよ。じゃあ、また後で。」
アサシンに言われ、創名はブルーシートと重箱を置いて、山門の内へと去って行った。
「士郎、私は手筈通りここで
「あぁ、分かった。」
士郎とセイバーが会話する間に、アサシンがさらに一歩踏み出した。
「斬り合う前に、一つ名乗ろうか。
アサシン、佐々木小次郎。推して参る。」
「セイバー、アルトリア・ウーサー・ペンドラゴン。相手になりましょう。」
殺気を放つアサシンに、騎士として名乗り返し、セイバーは不可視の剣で斬りかかった。
「アサシンじゃ、セイバーの足留めが精一杯だろうね。」
「あら、抗魔力が高いセイバーを足留め出来るなら、捨て駒として充分な働きだわ。」
「ありゃりゃ、アサシンは脱落決定?じゃあ、セイバーに倒されるまでに終らせなきゃね。」
既に半ば異界と化した柳洞寺の中で、キャスターと創名が話していた。正確にはキャスターのマスターである葛木宗一郎もいるが、彼は元々寡黙で会話には滅多に参加しない。
「今、セイバー以外には突破されたわ。」
「早いねー。いくらセイバーに集中しても良いって言われたからって、限度があるよね。」
創名の呆れたような言葉に、キャスターは薄い笑みで同意を示す。
「時間が有れば地雷埋めたり足留め出来たんだけどな。」
「物騒な物を使わないでちょうだい。貴方やアサシンはともかく万が一、宗一郎様に被害が出たらどうするの?」
二人の言葉は士郎達が目の前に来た事で止まる。
「帰るぞ創名。その後説教だ。」
「お前の目的、此処で絶たせて貰おう。」
「あは、気合い入りまくりだね。けど、自分も止まれないんでね。」
チューニングを構えた士郎、干将・莫耶を創名に向けるアーチャー。創名はアンコールを左手に、銀の砂塵を右腕に纏い相対する。
「お嬢ちゃんに、神代の魔術を見せてあげましょう。」
「望む所よ。現代の魔術師なめないでくれるかしら?」
神代の魔女と現代の魔女は、同時に魔力を高める。
「狩ります。」
「相手をしよう」
執行者と無感動な殺人者は、言葉少なに戦闘体勢を整える。
「それじゃ、始めよう。」
創名の言葉が全てを動かした。
そして、戦闘は開始される……
そこは、虎なししよーやロリでブルマな弟子が居る道場の真上から2つ隣の教室。今日も赤毛白衣な先生と、やる気の無い学ランなアヴェくんがいた。
「アンリ´Sきゅーあんどえー!!」
「いえーい。」
その後、黙る二人。
「今回、説明するとこ有ったか?」
「無いよね……アハハ、ハァ。」
沈黙し、気まずいようでから笑いをする。
「まぁ、繋ぎの話だからしょうがないよね」
「そーいうことにしとくか。」
「次回、
魔術の英雄2
お楽しみに、次回は説明するとこちゃんと有るからね!」