弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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魔術の英雄1

 

満月ではないが、美しい月の下創名とアサシンが創名の持ってきたブルーシートに座って、これまた創名の持ってきた重箱の弁当を食べていた。

「かつての文豪は、I LOVE YOU を“月が綺麗ですね”って訳したそうだよ。」

「雅だな、狸、お主ならば何と訳す?」

「キャスターは女狐で、自分が狸なのは雅じゃないと思うよ。」

他愛ない会話、気を許してるのではなく、互い心底関心が無いからこその軽い会話だった。

「うーん、好きな人へってのは思い付かないけど、家族へのだったら思い付いた。」

「ほぅ、どんなものだ?」

「“泣かないで”どうしてかな、士郎(アイツ)の泣いたとこなんて想像も出来ないのに……」

“泣かないで”それは平行世界において、創名が自分を殺した家族(士郎)に最後に遺した言葉だとも知らず、創名は一人言のように呟く。

「来た。」

キャスターの使い魔が、柳洞寺に続く階段を士郎達が登って来ている事を知らせる。重箱を閉じ、箸を置いて立ち上がる。

アサシンも創名の数歩前に立つ。

「ようこそ、と言いたい所だけど、待ちくたびれたよ。士郎」

「……創名」

よれたコートを着て無機質に微笑む創名は、セイバーには衛宮切嗣と重なって見えた。しかし、平和を願い、その為なら“この世全ての悪”を担ってもいいと言った男。正義を求め、それ故に“ただ一人の為の絶対悪”となり得る彼。その理想は同じ『正義の味方』なのに、真逆とも言えるほどに違う道を歩んでいる。

そんなセイバーの考えなど知らず、創名は士郎が持っているチューニングに気付き、アーチャーをジト目で見つめていた。

「あ、セイバー。この弁当食べていいからね。せっかく作ったのに、先生とかちょっと食べただけだし、キャスターに到っては一口も食べないしさ。」

「遠慮します。貴方の料理には毒が有りそうだ。」

「えー、たっぷりの自己愛しか入ってないよ?」

きっぱりと断るセイバーに、創名は不満そうに言う。

「狸、お主は中へ行け。私の邪魔をしないようにな。」

「了解だよ。じゃあ、また後で。」

アサシンに言われ、創名はブルーシートと重箱を置いて、山門の内へと去って行った。

「士郎、私は手筈通りここで(アサシン)を討ちます。キャスターとキズナのことは任せました。」

「あぁ、分かった。」

士郎とセイバーが会話する間に、アサシンがさらに一歩踏み出した。

「斬り合う前に、一つ名乗ろうか。

アサシン、佐々木小次郎。推して参る。」

「セイバー、アルトリア・ウーサー・ペンドラゴン。相手になりましょう。」

殺気を放つアサシンに、騎士として名乗り返し、セイバーは不可視の剣で斬りかかった。

 

「アサシンじゃ、セイバーの足留めが精一杯だろうね。」

「あら、抗魔力が高いセイバーを足留め出来るなら、捨て駒として充分な働きだわ。」

「ありゃりゃ、アサシンは脱落決定?じゃあ、セイバーに倒されるまでに終らせなきゃね。」

既に半ば異界と化した柳洞寺の中で、キャスターと創名が話していた。正確にはキャスターのマスターである葛木宗一郎もいるが、彼は元々寡黙で会話には滅多に参加しない。

「今、セイバー以外には突破されたわ。」

「早いねー。いくらセイバーに集中しても良いって言われたからって、限度があるよね。」

創名の呆れたような言葉に、キャスターは薄い笑みで同意を示す。

「時間が有れば地雷埋めたり足留め出来たんだけどな。」

「物騒な物を使わないでちょうだい。貴方やアサシンはともかく万が一、宗一郎様に被害が出たらどうするの?」

二人の言葉は士郎達が目の前に来た事で止まる。

「帰るぞ創名。その後説教だ。」

「お前の目的、此処で絶たせて貰おう。」

「あは、気合い入りまくりだね。けど、自分も止まれないんでね。」

チューニングを構えた士郎、干将・莫耶を創名に向けるアーチャー。創名はアンコールを左手に、銀の砂塵を右腕に纏い相対する。

「お嬢ちゃんに、神代の魔術を見せてあげましょう。」

「望む所よ。現代の魔術師なめないでくれるかしら?」

神代の魔女と現代の魔女は、同時に魔力を高める。

「狩ります。」

「相手をしよう」

執行者と無感動な殺人者は、言葉少なに戦闘体勢を整える。

「それじゃ、始めよう。」

創名の言葉が全てを動かした。

そして、戦闘は開始される……

 




そこは、虎なししよーやロリでブルマな弟子が居る道場の真上から2つ隣の教室。今日も赤毛白衣な先生と、やる気の無い学ランなアヴェくんがいた。

「アンリ´Sきゅーあんどえー!!」
「いえーい。」
その後、黙る二人。
「今回、説明するとこ有ったか?」
「無いよね……アハハ、ハァ。」
沈黙し、気まずいようでから笑いをする。
「まぁ、繋ぎの話だからしょうがないよね」
「そーいうことにしとくか。」
「次回、
魔術の英雄2
お楽しみに、次回は説明するとこちゃんと有るからね!」

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