弟くんがラスボスルート   作:潤雨

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去り行く日常/表

 

 

「やはり、こうなりましたか。」

「これは、外道神父の仕業じゃなくて、自分達の義姉の仕業ですよ。」

「ハーヴェスト、貴方の家系はどうなっているんですか?」

バーサーカーからセイバーを庇い、命に関わる傷を負った士郎は創名の部屋に運ばれた。

そして、眠る士郎の枕元で創名とバゼットは話していた。バゼットのルーンと部屋の工房としての機能により、この部屋の会話はキャスターほどでない限り盗み聞きは不可能だ。マスターの側にいると言い張ったセイバーは、秘術による治療と言われ引き下がった。

「自分の家系ですか?意外と暗いので黙秘します。」

「はぁ、記憶を覗いていたようですが、何か分かりましたか?」

「んー、言峰綺礼はまだ動かなそうって事と、アインツベルンのバーサーカーの真名がヘラクレスって事ぐらいです。」

バーサーカーの真名に絶句するバゼットを置いといて、創名は異なる事を思考していた。

「(アーチャーが、士郎を狙わなかった)」

創名の疑念はそこである。自分が知る通りに進行している中、アーチャーだけがイレギュラーだ。

「バゼットさん、お願いがあるんですけど、自分が魔術師殺しであること、貴方の左腕を奪ったのはだれか、士郎達には黙っていてもらえませんか?」

「……ハーヴェスト、貴方は一体何を考えているのですか?シロウくんを守りたいのかと思えば、知っていた方が良い事を隠そうとする。」

「最高の義手を用意します。」

問いかけに答えず、創名は追加報酬をもちかける。

パズルのピースの中から小型の電話機を取りだし、何処かへダイアルした。

「もしもし、橙子さん?創名です。義手を一個追加でお願いしたいんだけど、…自分のじゃないですよ。……はい、お願いします。」

バゼットの頭に、封印指定の赤がイタリアで赤毛の子どもと旅行していて、そこに奇襲をかけた執行者の部隊が片手間に全滅させられた。と言う情報が浮かぶ。赤毛と言われてハーヴェストを連想していたが、まさか当たっていたとは……

バゼットは頭を抱えたくなったが、蒼崎橙子は最高位の人形師、その作品が黙っているだけで手にはいると言うのは、酷く魅力的な話だった。

了解を伝えた所で、目覚ましがなる。記憶を覗く際、対象の精神に影響を与えないように掛けていた眠りの呪いのリミットである。

「ん、あぁ、創名?」

「おはよう、士郎。死に際からの生還した気分はどう?」

創名の言葉に士郎は、昨夜の事を思い出したのか、飛び起きて、セイバーは?と創名に聞く。そんな士郎をバゼットは、信じられない物を見る目で見つめる。昨日まで魔術など必要ない日常の中を生きていた少年が死にかけて、その遠因であるサーヴァントの少女を心配する。それは、バゼットの知る一般人から逸脱していた。

「落ち着いて、士郎。セイバーは怒っているけど、無事だよ。それより、藤ねぇが突撃して来る前に口裏合わせとかしなきゃね」

その後、凛とバーサーカーを倒すまでの同盟が決定した事が創名から士郎に伝えられ、凛をアーチャーに起こして来て貰い、不意討ちで令呪を奪われたランサーの元マスターだとバゼットを紹介した。凛やセイバーは追及を行ったが、創名によって全てかわされた。

その後、大河用の説明(言い訳)として、凛は原作通りに自宅の修繕工事、バゼットは切嗣の知り合いの骨董商で、創名から一部の遺産の扱いの相談を受けてやって来た。セイバーは最近事故で片手を失ったバゼットの補助、穴だらけの設定だが凛と創名がいればフォローは万全だ。

「藤ねぇへの説明は分かったけど、桜にはどう言うんだ?」

「あれ、言ってなかったっけ?桜ちゃんは風邪引いたらしくて、しばらく来れないって」

ナイスタイミングだよねーと笑う創名と、それに何か思うところが有ったのか、凛は表情を固くしていた。

この同盟の拠点を衛宮家にするための唯一にして強大な障害である大河は、凛に論破され、創名にはぐらかされ、弟分達の一時的な同居人についてほとんど知ることが出来ず、その上に創名が彼女の祖父である雷画に手を回したお陰で、しばらくの衛宮家出入り禁止を申し渡された。

因みに、創名が雷画に行った説明は、士郎の嫁候補を見繕って一時同居させてみる事にしたが、大河が居ては見合いにならん。と言う物で、孫の様に可愛がっている創名の頼みで、同じく孫の様に可愛がっている士郎の為と言うことで快く引き受けてくれた。……士郎が駄目ならあの孫は嫁に行けるのか?と言う呟きが、創名の耳に残った。

「あ、士郎。自分は聖杯戦争の間学校休むから。」

「どういう事だ?」

「この家を拠点にする以上、此処は必ず誰かいなければならない、もし乗っ取られて、待ち伏せされたら一網打尽になる。それを防ぐにはこの家を工房化させて、防衛できる自分が適任なんだよ。」

だから、自分の単位が心配なら早めに聖杯戦争を終わらせてね。とうそぶく創名に凛が同意する。

「そうね、確かにそれがベストだわ。」

「それなら、セイバーを残して行けば……」

「サーヴァントを置いてくとか死ぬ気か、バカ野郎。」

聖杯戦争を舐めた事を言う士郎に凛のガントが炸裂し、創名はセイバーに向かって石を投げた。

「バゼットさんが秘匿のルーンを刻んで、自分が視線避けの術式を編んだ魔石。それを持ってれば視界に入っても意識されない。霊体化出来なくても学校に付いて行けるよ」

「感謝します、メイガス。」

セイバーレベルの存在感を完璧に隠蔽は出来ないから、都市伝説見たいに噂になるかも知れないと言うのは黙っておく創名だった……実際冬木にある都市伝説には、空を走る雷や、子どもを呑み込む下水道など、四次聖杯戦争のせいで出来たであろう物がある。

士郎と凛、彼らのサーヴァントが学校へ向かい、学校に張られた人を喰らう結界を発見する。

それとどう時刻、創名は自分が入れそうなほど大きなトランクを持って家から出掛けようとしていた。

「ハーヴェスト、あんなに言っといて、守りをほったらかして出歩く気ですか?」

「バゼットさんが居るだけでほぼ鉄壁ですよ。結界も起動しときますし。」

あくまでも出掛ける気らしい創名に、バゼットはため息を吐く。

「……何しに行く気ですか?」

 

「やましいことはないよ。

ただ、料理を教えにね」

 

聖杯戦争はすでに始まり、日常の裏で陰謀が蠢き出していた。

 





そこは、虎なししよーやロリでブルマな弟子が居る道場の真上から2つ隣の教室。今日も赤毛白衣な先生と、やる気の無い学ランなアヴェくんがいた。

「アンリ´Sきゅーあんどえー!!」
「いえーい、てか、はしょりすぎじゃね?手抜きじゃね?」
ねーねーと白衣を引っ張るアヴェくんの手を払う先生。
「更新速度を優先した結果らしいよ、時間が出来たら追加するらしいから…」
「予定は未定?」
気まずい沈黙に包まれる教室、アヴェくんが気を取り直すように声を上げる。
「所で、学校に張られた結界ってアレだろ?マスターがあんな事になったのにどうして派手に動けてるだ?」
「んー、それは追々分かる事だよー」
「え~」
先生の答えに不満気なアヴェくん
「赤の封印指定とか出てきたけど、どうなってんの?」
「あの人の登場は最初から決まってたんだよ。むしろダメットさんの登場が予定外だよ」
「マジで?」
アヴェくんの驚愕を流し先生は黒板にりれきしょ、と書かれた紙を貼り出す
「次回、補足説明(ネタバレ有り)です。本編去り行く日常/裏もお楽しみに」

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