やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》 作:あぽくりふ
おっす、オラハチマン!オラ迷宮さ行くだ!
というわけで今、俺は最前線の25層にいる。いや、別にキリトくんストーキング作戦をサボってるわけじゃないのよ?ほんとだよ?
俺がここにいる理由は至って真面目でレベリングだ。
......いや、それだけじゃないけどな。別にホームがある20層でもいい気もするが、端的に言えば虫モンスターが多いから嫌なのだ。ハチマン、ムシ、マジキライ。
というかブラック・Gってなんだよ。メガサイズのゴキじゃねえか。ネーミングセンスと見た目に悪意しか感じられなかった。
おそらく茅場は性格とか俺の目より腐ってるに違いない。
ついでにコーヒー豆を探すという目的もあるが、おそらくここにはないだろう。
アルゴにも色々聞いたりしているがコーヒー豆やコーヒーの木といった食材の情報は持ち合わせていなかった。
アルゴの情報網はSAOの中でもトップクラス。そのアルゴが知らないということはもうほぼ100%ないということだが、砂粒ほどの可能性を信じてこうして俺は最前線にやってきているのだった。......マッカン。
正直、よくここまでマッカン無しでもったものだと思う。さすがに禁断症状が出始めた感がある。
ちなみに禁断症状による主な外見的な変化には目の腐り度が跳ね上がることだ。なんでもアルゴ曰く、「メガ目が腐ってる」らしい。いや、目がメガ腐ってるのか?わかりにくい......
とまあ、そんなこんなで俺は25層の森でひたすらダガーを投げまくっていた。
いや、もう接近するのめんどくせえし投剣スキル使ったら倒せるかなーとか思ってひょいひょい投げてたら思いの他ダメージ通るのなんの。通常の部位には当ててもちょろっとしか削れないし完全に牽制か挑発向けだよな、とか思っていたのに急所に当ててクリティカル出せたらかなり削れることに気付いたのだ。
ついでに隠蔽を発動すればあら不思議。Mobからすればふえぇ.......死角から急所に剣が飛んでくるよぉ......ということになってしまう。やったこれで勝つる。
端から見たら外道極まりないが、かつて究極生物となった偉人もこう言っている。
どんな手を使おうと.....最終的に......
「勝てばよかろうなのだァーッ!」
同時に発動するシングルシュート。シューッ!超!エキサイティンッ!
我ながら綺麗に剣が首に突き刺さり、こちらを潤んだ目で見つめる狼はポリゴンとなって消えていった。ふぅ、またつまらぬものを斬ってしまった.........(斬ってません)。
と、そこで始めてヒッキーレーダーが反応していることに俺は気付いた。この視線......さてはキリトか!(被害妄想)
「あなた........何してるの?」
がさっという音をたてて森の奥から出てきたのは熊でもキリトでもなく、アスナだった。
※※※※※※※※
「..................」
「..................」
......気まずい。
というかさっきの見られたのか。ヤバい恥ずかしい。できることなら穴掘って入りたいどころかそのまま穴掘り続けてマントル突き抜けて天元突破した挙げ句ブラジルに出て骨を埋めたい。
―――いや待て落ち着け。どこかの神父さんがやっていたように素数を数えて落ち着くんだハチマン!
1..........................あれ?1って素数に入るんだっけ?ちくしょうプッチ神父役に立たねえ!
思わずorzのポーズで崩れ落ちていると、アスナが再び話しかけてきた。
「......ねえ、あなたさっきは何をしていたの?」
「いや、ちょっとした名言を叫んでただけであって決して俺の頭がアレになったわけではなくて」
「そっちじゃないわよ」
ギロリと睨んでくるアスナ。ふぇぇ、美人って睨むと恐いよぉ......というかそっちじゃなかったのね、ふーん。......え、アレ以外になんかあったっけ?
「.........あ、投剣スキルのことか?」
けどそれくらい知ってるはずだろうに、という視線をアスナに向けると逆に睨まれ返されて思わず目を反らしてしまった。こわい......
「それは知ってるわ。けど、何よあれ!?」
投剣スキルは牽制や挑発用のものであって、その性能は決して攻撃用のものではない。
そんなことをなぜか激おこなアスナに説明されてようやく分かった。......いや、それ自体はすでに知ってるんだけどね?情報屋(仮)なめんなよ?いやもう最近は情報屋ほぼ廃業しちゃってるけどね。アルゴがもう無双状態だし。
なるほど、だから俺がMobを容赦なく剣投げてぬっ殺しているのを見ていきなり話しかけてきたのか。俺の奇行は関係なかったのね。
「いや、あれクリティカル出せば結構簡単に倒せるぞ?」
「はぁ!?」
や、そんないきなり「破ァ!!」とか言われても。俺気とか使えないですし。あ、空気読むのは得意だけどな。
そんな感じで俺が内心ビビってると、アスナが少し声を落として話しかけてくる。
「......じゃあ、少し見せてくれない?」
「や、別にいいけど......あれでいいか?」
俺が指したのはトカゲが二足歩行しているようなやつだった。なんとかリザードマンとかいうやつだ。
こくりとアスナが頷くのを見て戦闘態勢に入る。
特別なことは何もしていないんだけどな、と思いながら隠蔽を発動。後ろでなにやら息を飲むような音がしたが無視してダガーを引き抜いて投剣スキルの基本技、シングルシュートを発動させる。
ダガーは青い燐光を放ちながらレーザーのごとく見事トカゲの首に突き刺さる。驚いたトカゲはこちらを振り向こうとするが、すでにこちらは二投目を放っている。
その後さくさく、と合計ダガー四本を首と眉間に刺したトカゲ男は無念そうな表情で消えていった。南無三。
ちなみにこの間にかかった時間は十秒より少し短いくらい。楽な仕事だぜ.........!
「大体こんな感じだ、けど.........」
振り向くとアスナは呆然とした表情をしてこちらを見ていた。え、なんでさ?
「嘘........」
「おーい」
反応なし。これもう帰ってよくね?
そそくさと横を通りすぎて帰ろうと足早に歩きさる......はずだったがいきなり首筋を捕まれて一気に喉が絞まってけぷこんけぷこんと咳き込んでしまった。材木座かよ。
「待ちなさい」
なんだよ......といつもの100倍くらい腐った目を向けるとアスナが仁王立ちしてこちらを見下ろしていた。
「ハチマンくん、少しレベリングに付き合いなさい」
「だが断r」
「い・い・わ・よ・ね?」
「うっす......」
なにこの人恐い。
そんなこんなで俺は何故かアスナのレベリングに付き合うことになったのだった。......なんでさ。