やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》   作:あぽくりふ

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リメイク版・プロローグ

 

 

「―――お、あったあった」

 

俺は『ポケットモンスター零式』を手に取ると、ひっくり返して裏面を見る。

『知性を持つ超自然生命体、POKEMONN―――それは、隕石とともにやってきた。

20##年、人類はポケモンの大侵攻によって生息領域をかつての15%にまで後退させ、文明が崩壊してしまう。そして七つの都市国家を作り上げた人類はそれぞれ防壁を築き、その中で100年の栄華を謳歌していた。―――だが、平和がそう続くわけもない。

破壊されるネオ・サイタマ、殺戮に継ぐ殺戮。全てが狂い、絶望した世界の中で、少年は始まりのポケモンと出会う。

―――これは、始まり(zero)へと至る物語』

 

「..................」

 

うん、なんかもう色々とアレだった。定価は5890円。妥当な値段だろうと判断し、レジに持っていく。......うん、Amazonのレビューも良かったし、大丈夫だよな?地雷臭半端ないんだが。これなら『モンスター狩人Ψ』のほうが良かったか。

 

―――と。そう考えながらレジに持っていく途中で、ふととあるゲームの広告が目に入った。

 

『ナーヴギア』

 

「VRゲーム、ね......」

 

ヴァーチャル・リアリティ。日本語で仮想現実と訳されるそれは、つい最近になって現れ始めたゲームジャンルだった。

とはいっても、VRが主に使われるのは医療などであり、そのついでなのだが......昔からの『夢』でもあったVRゲームを作るべく、色々と頑張った人達がいたらしい。本来はあと20年はかかるだろう、と言われていたVRゲームの実装が僅か3年で成されたとのこと。オタクって凄い。

 

......だが、まあ。実装されたとはいえ、それが一般市民に手の届く値段か―――と言われれば、そうでもないわけで。

 

「高ぇな、おい」

 

単価税抜で十万円。その値段を見た瞬間、ゲームにかける金じゃねえだろ、と俺はむしろ呆れてしまった。まあ、ネトゲやるためだけにノーパソ買うやつもいるし。その延長線上ということだろうか。うん、艦これ面白いしね!しょうがないね!

 

というわけであっさりとVRゲームへの夢を諦め、俺は店員の「あじゃじゃしたー」という声をバックにアニメイトから出た。ふと吹いた風にぶるりと身を震わせ、そう言えばもう11月だな......と今さらのことに思い当たる。

そろそろ炬燵なのか......いや早いな、うん。エアコンで十分。けど、この時期でもつけてたら母ちゃんに怒られるんだよな......。

 

―――と。そんなことを考えていたせいか、俺は気付かなかった。

 

「......へ?」

 

鳴らされるクラクションに横を向けば、眼前に迫る金属物体。スローモーションのように、妙に緩慢になった視界の中で、何故か唖然としているトラックの運ちゃんを見つけた俺は。

 

(......死ぬ前に、スマホ内の秘蔵フォルダ消しときゃ良かった)

 

と。そんなことを考えたのを最後に、この世から退場するのだった。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

嘘でした。生きてます。

 

「だから、いくらお兄ちゃんが悪くなくても、高二になる直前の春休みに入院しちゃうのはどうなのかなーって小町は小町は思うわけです」

「いや、どうしようもないししょうがないだろ......あと打ち止め(ラストオーダー)の真似はしなくていいから」

 

俺は枕を頭でボムボムしながら、マイリトルシスター小町にそう返す。柔いなおい。最近の病院のベッドはふかふかすぎて困る。

 

「だって、全治三ヶ月だよ!?そんなに経ってたらお兄ちゃんぼっち確定だよ!?ただでさえその腐った目のせいで人が寄り付かないのに!のに!」

「そっちの心配かよ......まあ、三ヶ月ですんで良かっただろ。直前でブレーキ踏んでたっつっても、大型トラックに轢かれたんだし」

「まあそうなんだけどー」

 

ギプスで固定された右腕と右足。それを爪でコツコツと叩きながら、小町はむぅー、と唸った。

 

「お兄ちゃんが入院したら小町を送ってくれる人がいなくなるし......歩いてくのめんどくさいし」

 

そっち目的だったのかよ。なんなの、俺の家族でまともに俺を心配してくれる人っていないの?母ちゃんは「ドンマイ!」とだけ言って何処か行っちまったし、親父に至っては「ふは、ざまあww」と言ってサムズアップしてくる始末だし。マジで1回死んでこいクソ親父。

 

「ご、ごほん。......まあ、小町にとってはお兄ちゃんが無事生きてたことが一番嬉しいよ!今の小町的にポイント高い!」

「直前の発言なけりゃ、素直に喜べたんだがなあ......」

 

はぁー、と俺は溜め息を吐く。すると、小町はむっと眉を斜めにして指を突きつけてきた。え、なんなの。

 

「そんなこと言ってると、折角お兄ちゃんのために持ってきたこれ渡さないよ?」

「え、なに?スイカ?」

 

そう尋ねると、小町は「ぶっぶー」と言って口を尖らせる。違ったか......nanacoかな?

 

「正解は―――じゃーん!」

 

てっれれれれってれー、とどこぞの青いタヌキみたく小町が鞄の中から取り出したその箱は―――

 

「ナーヴ、ギア!?」

 

俺は思わず唖然とした。―――ナーヴギア。ヴァーチャル・リアリティ―――VR世界に入るのに必須であるそのヘッドギアは、十万円という高価さも問題であるが―――なにより、非常に入手難度が高い代物でもある。なにせ、発売から30分で全国のナーヴギア全てが完売となったのだ。ヤフーオークションでも、恐ろしい値段がついていたはずだが―――

 

「ふふん、お父さんが三日前から並んでてにいれてくれたんだよ!」

「親父......!」

 

俺は左手で目頭を抑えた。親父、あんなこと言いながらもあんたは―――

 

「ホントは小町のために買ってきてくれたんだけど、お兄ちゃんに貸してあげるね」

「親父......」

 

いや、まあ、そんなことだろうと思ってたけどね。

俺は再度溜め息を吐き、小町が取り出した取扱説明書を、左手一つで四苦八苦しながら開く。......ふむ、これでぺたぺたするのか?割とめんどくせえのな、ナーヴギア。

 

「あ、ついでにこれも渡しとくね。じゃ、小町これから焼き肉食べてくるから!」

「おい、ちょま」

 

時計を見て慌てて出ていく小町。......って、焼き肉ってなんだよ。

とりあえず見てみるか、と俺は小町に渡されたパッケージを裏返す。

......VRMMORPG。そう刻印された下には、聞き覚えのある名前が刻まれていた。曰く、それは世界初のVRMMO。ネット上で話題となり、CMでもよく流れていた、その名前は―――

 

「ソードアート・オンライン......ね」

 

数日後―――俺の運命を大きく変えることになるそのゲームの名を、俺は呟くのだった。




といううわけで、リメイク版を始めたお知らせです。まだ少ししか書けていませんが、できれば読んでやってください。
申し訳ありませんが、こちらはもう更新しないつもりです。今まで読んで下さり、ありがとうございました。

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