やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》   作:あぽくりふ

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更新遅くなりました。いや・・・ね?最近のダンまちラッシュにつられて新しいSS書いてたら楽しくなりまして。ダンまちは神ラノベ。リューさん可愛い。

ということで二話です。ちい短い。


二話 そして彼らは予想外の再会を果たす。

 

 

 

 

68層にある迷宮《ダイダロス》。隠しダンジョンというだけあって、出現条件やらフラグ立てが非常に面倒であり、突入までに2日もかかったのだが。

 

 

「......中身まで面倒だとはな」

 

 

俺はそう呟きつつ蝙蝠を切り落とす。ポリゴンとなって消滅するそれを見届けることなく振り向きつつ、回し蹴りを放つ。

顔面を蹴られて仰け反る豚人(オーク)。それに向かって、俺は《ホリゾンタル・スクエア》を叩きこんだ。

 

爆散するオークを尻目に一息つく。

 

そう、俺達は今―――

 

 

「ってなんでそんなに落ち着いていられるんですか!?」

 

「ばっかお前、全然落ち着いてねえよ。内心超焦ってるっつの」

 

「全然そうは見えないんですけど、ね!」

 

 

―――絶賛迷子中だった。

 

シリカは蝙蝠3体を瞬く間に青い欠片へと還し、俺の近くに寄ってくる。

 

 

「ちょっとこれ、本当にどうするんですか。出れなかったらヤバいですよ?」

 

「大丈夫だろ、多分。ほら、壁に手を当てて歩けば......」

 

 

俺は壁に手を置く。と同時にカチリという音が響いた。

 

―――俺の鼻先を、高速で打ち出された槍が掠めていく。槍は反対側の壁に突き刺さり、びぃぃん、という音とともに震えた。

 

 

「「..................」」

 

 

......無言の空気が、痛かった。

 

 

 

「......うん、そういうこともあるよな」

 

「ああ先に行かないで下さい、私が罠解除しますから―――ってなんでまた引っ掛かってるんですか!?」

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

ぴろりろりん、という間抜けな電子音が響く。ウィンドウを開くと、「LEVEL UP!」の文字があった。......大成功とかねえのかな、これ。

 

 

「あ、レベル上がったんですか?」

 

「まあな」

 

 

ステータスに表示されるのはLv89という無情な数字。かれこれ4時間ノンストップで狩り続けたが、いまだにこんな数字である。

 

 

「シリカは今いくつだ?」

 

「73です」

 

 

俺と違い、かなり上がっていた。

作業ゲーの辛さを痛感しながらも、俺は新たに現れた巨大な蜘蛛に向けてナイフを投擲。目から脳にかけて貫通し、急所を貫いたことによるクリティカル発生のおかげか、一発で蜘蛛は四散した。入手アイテムのメッセージが表示される。

 

 

「それにしても、かなり面倒な迷宮だな、ここは」

 

 

ある程度からくりはわかってきた。

 

基本的なシステムは《迷いの森》と同じだ。

数百のエリアに分けられたこの迷宮は、一定時間経過後、もしくはあるエリアに足を踏み入れた瞬間に隣接するエリアが切り替わるシステムとなっている。

最も、悪辣なのはそこだけではなく―――立体構造なのだ、ここは。

つまり、隣接する上下左右前後の6エリアがランダムで切り替わるということだ。エリア1つにしても階段、T字路、ゆったりとしたスロープなどを組み合わせたモノであるためとにかく方向感覚を狂わせてくる。おそらく出口に繋がるエリアに辿り着く確率は千分の一にも満たないだろう。

 

 

「............」

 

 

いや―――何処かに方法はあるはずだ。あの茅場(ヒースクリフ)が、出口のないダンジョンを作るはずがない。

 

 

「......ああ、くそ」

 

 

だが、全くわからない。フラグ立ての途中でヒントでもあったのだろうか。

切り替わるエリアを固定する手段でもあればいいんだが―――

呻きながら俺は頭をガリガリと掻く。

 

―――すると、きゅい、という声。アホ竜(ピナ)の声だ。同時に袖をぐいっ、と引っ張る感覚。

 

 

「ハチさん」

 

「んだよ?」

 

 

ぐいぐい、とピナが袖を引っ張ってくる。シリカが無言で指を指すその方向に目を向けると―――

 

 

「............人?」

 

「みたいです」

 

 

階段の下にある円形の部屋。そこで(うずくま)る人影―――おそらくプレイヤー。

PKプレイヤーである可能性がなきにしもあらず、ということで慎重に近付いていく。赤い髪に十字のような槍を持った女プレイヤー。

すると、あちらも足音に気付いたのか、顔を上げ―――目が合った。

 

 

「あ、あんた―――」

 

 

驚愕に見開かれる目。そうだ、こいつは―――

 

 

「ローズマリー?」

 

「ロザリアだよっ!」

 

 

あるぇ?と首を傾げる俺、キレるロザリア、唖然とするシリカ。

 

奇しくも殺しあった三人が、邂逅を果たすのだった。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

「で、なんでお前がこんなところにいるんだよ、ローゼンメイデン」

 

「それはこっちの台詞よ。あとあたしの名前はロザリアだ」

 

 

食い気味に答えるロザリア。そんなロザリアを俺の背後にいるシリカがじーっと見る。ロザリアは居心地が悪いのか、ふいっと視線を外す。

 

じー。

ふいっ。

じー。

ふいっ。

じー。

ふいっ。

じー。

 

 

「あっち向いてほいかよ」

 

 

思わず小声でツッコミを入れてしまう。同意するようにピナがぺちぺちと、尻尾で俺の頬を叩いた。降りろよ。

 

 

「......まあ、今お前と事を構える気はない。そう警戒するな」

 

 

俺はそう告げて、円形の部屋―――おそらく安全地帯(セーフティ・ポイント)なのだろう―――の片隅に腰を下ろす。武器は鞘に納め、シリカにも武器を納めるように手で合図する。未だにロザリアを凝視しながらも、シリカは俺の隣にすとん、と座った。

 

 

「......ちっ。あんたらもこの迷宮(ダンジョン)に放りこまれたクチか?」

 

「は?放りこまれた?」

 

 

俺は唖然としてロザリアを見る。ロザリアはしまった、という顔をしていた。

 

 

「違うならいい。さっさと何処かに行きなよ」

 

 

しっしっ、と手を振るロザリア。とは言っても―――

 

 

「いや、出口知らねえし」

 

「......ふぅん。知らないんだ」

 

 

す、と目を細めるロザリア。俺はしまった、と顔をしかめた。ピナはそんな俺を責めるように、がじがしと頭に噛みついてくる。痛い。

 

 

「ねぇ、取り引きしない?」

 

「......何をだ」

 

 

俺は聞き返す。ロザリアはふん、と笑った。―――案外美人なのな、こいつ。そう思った直後にシリカの肘が(あばら)に突き刺さる。超痛い。

 

 

「ここの出方を教えてやるわ。―――だから、あたしをパーティーに加えなさい」

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

「ダイダロス?」

 

「そ。知らないの?」

 

 

は、と鼻で笑ってくるロザリア。若干イラッとしたが我慢する。

 

 

「ダイダロス。ギリシャ神話に登場する老人よ。イカロスの父親でもあるわ」

 

「......誰?」

 

 

俺は首を傾げる。イカロス......イカ娘の仲間か?ゲソ?

 

 

「......もういいわ。ミノタウロス、これくらいならあんたも知ってるでしょ?」

 

「あー、牛人間のことか」

 

 

それなら知っている。というか、ちょくちょくMobでそんな名前のヤツが出てきた。ちなみにブリーフタウロスもいる。ミノタウロスのミノは腰ミノのミノ。ボクサータウロスもいた気がする。

 

 

「そ。で、そのミノタウロスってのはもとはギリシャ神話に登場する怪物の名前よ」

 

 

ミノタウロス。それはダイダロスが王の命により作った迷宮の最深に住まう怪物だった。

その迷宮には王女が閉じ込められており、最終的にはテセウスと呼ばれる英雄がミノタウロスを倒して王女を助け出したとかなんとか。

 

―――と。そこまで語って、ロザリアが一息吐く。

 

 

「......ここからがこの迷宮(ダンジョン)の攻略法よ」

 

 

テセウスはいかにして、ダイダロスの作り出した迷宮を攻略したのか。

その方法は至って簡単。王女から手渡された糸玉を迷宮の最初の入り口に固定し、それを垂らしながら迷わないようにして攻略したのだ。

 

 

「この迷宮も多分同じよ。糸かなんかを使って攻略するの」

 

「糸なんてないぞ」

 

 

もしその話が本当ならば、ここに来るプレイヤーは糸かロープでも持ってない限り、延々とさ迷うことになる。

 

 

「いらないわよ。ここに来るまでに、変な蜘蛛が出てきたでしょ?」

 

「あー、出てきたな。そういえば」

 

 

黒い蜘蛛。確か名前はスパイダー・オブ・アなんとかだった気がする。

 

 

「多分、それのドロップアイテムから作れるわ。貸してみなさい」

 

 

これか?と俺がストレージから蜘蛛からのドロップアイテムらしきモノを取り出す。ロザリアはそれを手に取ると、眉を跳ね上げた。

 

「......《アリアドネの糸繭》。ここのダンジョンを作ったヤツはよっぽどのギリシャ神話好きね」

 

 

そう言うが早いか、ロザリアはすっ、と糸繭から一本の細い糸を取り出す。しゅるしゅるとほどけたそれは瞬く間に一本の細い、非常に長い糸へと変わった。

 

 

「ほら、もっと寄越しなさい」

 

「あ、ああ」

 

 

五つほどロザリアに手渡すと、同じようにロザリアは細い糸に変えていく。そしてそれらを寄り合わせ―――

 

 

「はい、これ」

 

「ほう......」

 

 

数分後、ロザリアの手の中では立派な糸が完成していた。

 

薄い金色をしたそれを見ながら、俺は思わず凄いな、と呟く。

 

 

「《裁縫》のスキルツリーにある《製糸》スキルさえあれば作れるわよ」

 

「意外だな」

 

「うっさい」

 

 

さて、とロザリアは立ち上がった。続いて俺とシリカも立つ。

 

 

「連れていってくれるんでしょうね?」

 

「わかってるさ」

 

 

ぽーん、という音とともに表示されるパーティー申請を受諾し、俺は糸をロザリアに渡した。

 

 

「今さらお前を見殺しにしても意味ねえしな......いいか?シリカ」

 

「はい」

 

 

こくり、と頷くシリカ。ロザリアを警戒しているのか、借りてきた猫状態である。......そのかわりピナはさっきからびしばし尻尾を叩きつけるわ噛むわ、暴れまくっているが。シメるぞこの野郎。

 

 

―――というわけで。即席のパーティーが結成されたのだった。


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