やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》   作:あぽくりふ

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四話 そしてハチマンは動き始める。

「なるほど、つまりキバオウとかいうのが悪いんだな」

 

「そういうことかナ」

 

 

ちなみに今アルゴが食べているのは俺が作ったナポリタンだ。うまいうまいと言いながら食べているのを見ていると少し和む。

 

「ハチマンはアレだナ。料理屋開いたほうがいいと思う」

 

......素直に誉められているのか、暗に情報屋やめろと言われているのか判断に迷う。

 

それはさておき、今のアルゴの話だと、

 

LA取るためディアベル突貫して死亡

→キバオウ曰くディアベルが死んだのはβテスターが見殺しにしたせいだ

→キリトがβテスターを守るためキバオウ煽る

→キリトぼっち←今ここ

 

「......正直言わせて貰うと、アホらしいな」

 

まず、ディアベルとやらが死んだのはどう考えても自業自得。安全マージンを捨ててまで突貫したそいつが悪いに決まっている。

 

.......LAボーナスの存在を知っていたことから、ディアベル自身もβテスターだったのは確定だ。

 

そしてβテスターのディアベルはボスの攻撃パターンを知っていた。残りHPバーは一本、そこで慢心したのだろう。あわよくばとLAボーナスを狙い、そこでβと仕様が変更されたボスの攻撃の餌食になった。

 

 

―――現時点での死者のうち、一般プレイヤーよりβテスターの死者のほうが多いという事実は意外と知られていない。

 

確かに、βテスターは一般プレイヤーと比べて比較的有利だ。ボスやMobの行動パターンを知っていることは大きなアドバンテージだ。

 

......だが、それをあの「茅場昌彦」が許容するだろうか。

 

 

答えは否だ。

 

自身が有利だと慢心したβテスターは、行動パターンや攻撃仕様が変更されたMobに狩られ、命を散らしたのだ。

冷静になって考えれば当然だろう。βのときの仕様がそのままこのゲームに引き継がれているとは限らない。もしその事実を頭の片隅にでも置いていたならば、死者はもっと減っていたはずだ。

 

そして、βテスターの多くが死んでいたこと。またその原因をディアベルが知っていたならば、死ぬことはなかったんじゃないだろうか。

 

つまりディアベルの死因は情報不足と慢心。この世界では気を抜いたものから死んでいく。

 

 

......正直、このキリトとかいう奴もアホだ。

わざわざ俺と似たやり方を取らなくとも、懇切丁寧にキバオウの主張を叩き潰せばよかった。

キリトのやり方は俺のやり方と似て非なるものだ。俺がこういうやり方を選択するのは俺自身に付加価値が全く無いからこそメリットのみ生じるからであって、キリトが行ったこれはデメリットしか生まれていない。

 

キリトのプレイヤースキルは隔絶している、らしい。そしてこれからの攻略に必要なのだとも。

そんな重要人物にヘイトを集めてどうする。キバオウが挙げた不特定多数の「βテスター」を庇うためだとしたら、アホとしか言い様がない。

そもそもβテスター達はそうした槍玉に挙げられることを避けてわざと下層で活動している奴等がほとんどだ。自分がβテスターだと開示しているような奴は皆無に等しい。

もとよりこのキバオウとかいうアホがアホな理論を展開してそれが仮に広まったとしても被害はなに一つない。

 

つまり、このキリトの行動は全て無意味で無価値。メリットどころかこれからの攻略を邪魔しかねない軋轢を産んだだけ。

 

......その行動が善意からきたものであることが余計にタチが悪い。

 

 

結局アホが死んでアホがアホな行動してその影響でアホが無駄にヘイト集めたアホスパイラルができただけだった、ということだ。なにこれ俺がアホみたい。ゲシュタルト崩壊するまである。

 

「......キー坊への風当たりは強いヨ。このままだと攻略に影響がでるかもしれない」

 

「だから俺にどうにかしろって言いたいのか」

 

「...........無理か?」

 

......どうだろうか。

正直、やりようはある。だが、ゲームオーバーイコール死を意味するこの世界では、俺のやり方はあまりにもリスキーすぎる。

 

 

―――『君のやり方では、本当に救いたいと思える人を救うことができないよ』

 

―――『あなたのやり方、嫌いだわ』

 

 

「ッ........」

 

今、あいつらは関係ない。

 

俺は、俺にできる範囲のことをやるだけだ。

 

 

「報酬は?」

 

「エクストラスキル・体術と下層最強の片手剣」

 

ふむ。どうだろうか。

 

「......足りんな」

 

「そう、か―――」

 

「貸し1だ」

 

俺の言葉を聞いてぽかん、と呆けた表情をしているアルゴ。うん、これ画像保存したらその筋に売れるんじゃね?

 

「..................恩に着るヨ、ハチマン」

 

「おう、しっかり着せられとけ」

 

そんな話をしながらも俺のぼっち脳はリスクを計算するためフル回転する。

 

おそらく、やれる。

 

「なあ、アルゴ。贖罪クエストっていつから受けられるか知ってるか?」

 


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