やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》   作:あぽくりふ

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二期もうすぐだぜヒャッフウということで、Fate/SN UBW編のアニメを見直しました。
―――作画パねえ。前期はSAOを差し置いて、バトルシーン等、圧倒的クオリティで圧勝でした。来期はようやく「行くぞ英雄王―――武器の貯蔵は十分か」が見れるぞ!あいあむざぼーんおぶまいそーどが見れるぞ!ヒャッハァ!



では、十一話です。ドゾー。





十一話 そして彼らはようやく友達になる。

 

「で、だ。―――どうしてこうなっているかはわかるな?」

 

「は、ハチマンさん....彼らも生きて戻ってきてくれたことだし.....」

 

「俺が居なきゃ死んでたぞ」

 

「う.....」

 

 

まあそうですけど、と俺の隣で頭を掻いている丸顔の男はケイタ。なんでも、ギルドホームを購入するためパーティーを離れていた、月夜の黒猫団のギルドリーダーらしい。

 

今俺がサチやキリトを含む五人を正座させているのはケイタが購入したギルドホーム。新しいギルドホームでまず行われたのは新築祝いでもなんでもなく、説教だということだ。SEKKYOUではない、説教だ。 ここ大事。

 

 

「まず、そこなシーフ」

 

「は、はい」

 

 

初めはこいつだ。というか一番の原因はこいつだろう。

 

 

「お前シーフでしょ?なんで真っ先に罠かどうか確認しないの?それともバカなの?死ぬの?」

 

 

まあ実際死にかけたんだけどな、と俺が呟くとシーフ野郎は「ごめんなさい......」と言いながらDOGEZAする。―――まあ、当然だろう。だいたい、八割くらいはこいつが悪い。シーフなら仕事くらいしろよ、俺でも必要最低限は仕事するぞ。そんでもって仕事追加されてエンドレス残業になるまである。ブラック企業マジ許すまじ。

 

 

「次にキリト―――お前だ」

 

「ッ、ああ....」

 

 

断罪されるのを待つ罪人のような顔をしているキリトを、他の三人とケイタは不思議そうに見る。ちなみに一人はまだDOGEZAだ。

 

 

「―――まあ俺が隠せとは言ったけど、(, , , , , , , , , , , , ,)罠の指摘くらいはしてやれよ」

 

「―――え?」

 

 

呆然とするキリトと他5名。まあそうだろうな。

 

 

「どういうことだい?キリト君は―――」

 

「キリトは攻略組のプレイヤーだ」

 

「なっ」

 

 

息を飲むケイタ。だがまだ終わらない。

 

 

「キリトは中層プレイヤーの育成を目的として送りこまれた奴等の一人だ。最近は攻略組も人員が足りなくてな、そういうことだ」

 

「え、ちょ、ハチマン」

 

 

我ながらよくもまあ、こんなに嘘がつらつらと出てくるものだ。話の展開について行けてないキリトを放置して俺は嘘を更に塗り固める。

 

「25層で軍が壊滅的な被害を受けたのは知ってるだろ?血盟騎士団(KOB)が新たに参戦した、つっても絶対数が足りないのが現状だ。そこで送りこまれたのがキリト達だな」

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ。それじゃなんでキリト君は僕達にそれを言ってくれなかったんだ?」

 

 

良い質問だねケイタくん。それじゃ、誰も傷付かない、優しい嘘を教えてやろう。

 

 

「説明してやるとだな。中層のプレイヤー育成、とは言っても教えられる―――というかレベリングを手伝える攻略組のプレイヤーの数は少ない。ボス攻略戦とかもあるしな」

 

「まあ、そうだね」

 

「まあそうすれば手が回らなかったギルドから苦情がきたり、下手すりゃギルド間で抗争が起きる。それを防ぐ意味で、まあできるだけ隠すように俺が言ったんだよ」

 

「.......成る程、筋は通ってるね。だけど、それは秘密にするようにギルドメンバーに言うようにすればよかったんじゃ?」

 

「こんな諺を知ってるか?人の口に戸は立てられぬ、ってな」

 

 

そうか、と納得したように頷くケイタくん。約1名を除いて、他のメンバーも一応納得しているようだ。

 

 

「ま、キリトももうちょい融通をきかせりゃよかったのかもな。―――一番の原因はお前だが」

 

「うっす....」

 

「あ、ああ」

 

 

萎縮するシーフ野郎と戸惑うキリト。.....ま、シーフ野郎も反省はしているようだし、以後はこんなことにはならないだろう。今は結果的には生きて戻ってきている訳だし、これ以上責めてもメリットはない。

 

パン、と手を叩いて俺は空気を一新する。

 

「そんじゃ、俺はそろそろ戻る。あと、キリトをこれからどうするか決めたら俺に伝えてくれ。アルゴに言ってくれてもいい」

 

 

背後から「え、ちょ」という声が聞こえたが無視して月夜の黒猫団のギルドホームから外に出る。ここからどうなるかはキリト次第だろう、お膳立てはした。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

.....我ながら甘くなったものだ、と。電子で構成された月を見上げて俺は自嘲する。

 

今まで、というか一年前の俺ならばこんなことはしなかっただろう。むしろ修羅場的な展開を見て愉悦モードになっていたに違いない。内輪ノリは嫌いだが、内輪モメは俺は好きだ。―――何故ならその内輪に俺はいないからな!

 

まぁそんな自分が大好きな俺だが、今じゃすっかり丸くなったものだ。誰かさんに感化されたのだろうか。

 

嫁き遅れで男より漢な美人教師、団子頭でエセビッチのアホ、完璧主義者で孤高を貫く方向音痴なうちの部長。あと天使と、川...川...川なんとかさんもいたな。....ま、あの中二病患者もカウントしてやるか。

 

リアルでのことを考えて、そして苦笑した。高二になってからはなかなかに知り合いが増えている。人間強度が下がる、とは言わないが、孤高のぼっちを貫いていた俺は何処に行ったのか。

 

そこでふと考える。知り合いがいる、と言うことは。それだけ.......心配してくれたりするやつもいるのだろうか。

 

 

戸塚は心配してそうだ。テニススクール、まだ通っているのだろうか。

材木座はバカみたいに泣いてたりするかもしれない。というか俺がいないのに、体育の地獄のペア組みはどうしているのか。

川なんとかさんは興味ないふりして、案外考えてくれていたり。それ関連で言えば、あのシスコン弟もうちの高校志望してたな、と思い出す。

 

.....平塚先生は、溜め息を吐いてそうだ。由比ヶ浜は、俺と雪ノ下が消えて死ぬほど心配しているだろう。小町だってそうだ。俺に気を取られて受験失敗していたりしたら、お兄ちゃんは死んでも死にきれない。

 

 

そこまで考えて、まるで死亡フラグみたいだと思って思考を振り払う。だが僅かに頭の隅にこびりついた思考の残骸が纏わりつく。

 

―――もう、そこまで子供じゃない。俺は、他人からの無条件の好意というものを知っている。知らされている。純粋で、打算などなく、善意のみで構成されたそれを。

 

信じられるかは別だが、そういうモノがフィクションでない、欺瞞でも偽りでも錯覚でもなく、確かな本物として存在していることを教えられた。

 

 

この俺の変化が良いことなのかはわからない。変わることが良いことだとは言わないし、変わらないことが悪いことだとは言わせない。この俺の自論が変わることはないが、俺が明確に、良いか悪いかは別として変化したのは確かだろう。

 

―――俺が勘違いしているだけかもしれない。俺が見ているモノは錯覚かもしれない。

 

だが、まあ。

 

 

 

「少しくらい、信じてみるのも―――悪くはない、か」

 

 

 

俺は、必ず雪ノ下を連れてそっちに戻る。例え、どんなに時間が経とうとも。

 

 

煌々と輝く紛い物の月を見上げて―――俺は現実の誰かさん達に、改めてそう誓うのだった。

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

「―――ハチマン!」

 

「キリトか」

 

 

柄にも無くしんみりしてしまった俺は、28層の主街区で露店巡りしている所だった。

焼き鳥に似た別の何かを口に突っ込んでむぐむぐと咀嚼し、飲み込む。

 

うん。なんというか.......凄く、微妙です。

 

別に不味くはないんだけどなあ.....焼き鳥にデミグラスソースって、なあ。

 

俺が大量の食べ物を持ってるのを見て唖然としているキリトに、俺は焼き鳥モドキを一本キリトに差し出した。

 

「食うか?」

 

「あ、うん」

 

流れで焼き鳥を受け取ったキリト。それを引き連れて、俺とキリトは手近な所にあった木製ベンチに座りこんだ。

 

 

「んで、どうなった?」

 

 

焼き鳥モドキを口に突っ込んで、微妙な表情をするキリト。そんなキリトに俺は結果を尋ねた。

 

 

「...ギルドには残ることになったよ」

 

 

焼き鳥を飲み込んで答えるキリト。まあ、良かったんじゃないか?俺が下手な芝居をした甲斐はあった、ということだろう。

 

 

「その、さ。ハチマン」

 

「あん?」

 

 

やけに歯切れの悪いキリトを俺は見る。近くでパチパチと松明の爆ぜる音がやけに響いた。

 

 

「今回はハチマンに助けて貰って、嘘までついて貰ってさ。俺はサチを守らなきゃ、いけないのに。.....だから―――ごめん」

 

「―――違うだろ?」

 

「え?」

 

 

此方をぼけっと見上げるキリトの童顔を間近で見て、俺は苦笑した。あのやたら強い黒の剣士も、まだ中学生のガキなんだってことを今更ながら再確認させられる。

 

 

「こういう時は、謝るんじゃなくて礼を言うもんじゃねえのか?........よく知らねえけど」

 

 

頭をがしがしと掻きながら、俺はそう言った。人に感謝されるなんて経験はほとんど無いからわからんが、そういうもんじゃねえの?

 

 

「....そうか、そうだな。うん―――ありがとう、ハチマン」

 

「どーいたしまして、ってな」

 

 

キリトの礼に俺はひらひらと手を振って応えて、俺は残る一本の焼き鳥モドキを口に突っ込んだ。相変わらず微妙な味で。

 

 

「ま、今度から気をつけろよ。今回はたまたま俺がいたから助かったが、次は無い」

 

「うん、肝に命じておくさ。―――俺は、サチだけは絶対に守らなきゃいけないんだ」

 

 

下を向いてそう呟くキリトを見て、俺は溜め息を吐いた。なんだかやたらサチに依存しているようだが.......今は俺には関係のないことだ。後々問題化しそうな気がしないでもないが。

 

 

「そーかい。まあ、後で攻略会議に顔出しとけよ?じゃ、俺は帰るわ」

 

「あ、待ってくれハチマン!」

 

 

さて、と立ち上がった俺をキリトが呼び止める。よく見ると、メニューウィンドウを立ち上げていた。

 

 

「―――その......フレンド登録、しとかないか?後で色々と便利だろうし、さ」

 

「.......そうだな、しとくか」

 

 

色々窓をいじくってキリトのフレンド登録を完了する。フレンド欄がアルゴだけだったのが、アルゴとキリトの二人になったのを確認して俺は窓を閉じた。

 

 

「じゃ、帰るわ」

 

「うん、また明日」

 

 

黒いコートの剣士に背を向けて俺は転移門目指して歩き出す。窓を再び開いてフレンド欄からアルゴという名前に触れて、「解決した」とだけ書いたメッセージを送って窓を閉じる。

 

 

そして、俺はホームがある20層にたどり着いてはたと気付くのだった。

 

 

「やべ、キリトに口止めしとくの忘れてた」

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

後日。

 

「で、5層もボス戦をスルーしといて何か言い訳はある?キリトくん」

 

「アリマセン」

 

「キリトくんが中層プレイヤーの育成をしていた―――ということを黙っていたハチマンくんは?」

 

「アリマセン」

 

「あのね.....二人とも、ひょっとして私をおちょくってるの?ねえそうなんでしょ?」

 

 

青筋を立てているアスナさんの美脚がダンッ!と俺達の目の前に突き刺さる。年下の女子にキレられてる高校生ってなかなかいないと思うんだよね、俺。

 

 

「―――ねえハチマンくん?私、キリトくんが何処に居るのか聞いたとき、知らないって言ったよね?」

 

「い、いやその時はキリトがいる場所までは知らなくてだな」

 

「うふふ―――私、屁理屈は聞きたくないんだあ」

 

「え、ちょ、殴るのはノー!」

 

 

デュフ。

 

 

 

ということで俺とキリトはアスナに一日ケーキを奢ることになりましたとさ、めでたしめでたし。

 

 

 

―――そしてサチとアスナによるキャットファイト?的なモノが勃発するのも、また後日の話である。

 




というわけで、八幡とキリトがお友達に。ちなみにアスナがこの時キリトが来ないことにキレてる理由は「攻略組でも最強格のくせに遊んでんじゃねーよ攻略遅れるだろーがテメエ」的な理由です。この頃から攻略の鬼なのよ。

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