やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》 作:あぽくりふ
相変わらず駄文です。あとなんか独自解釈というか設定突っ込んでます。
ではドゾー。
拝啓、我が親愛なる―――クソキリトへ。
「うふふ―――キリトくんはどこへ行ったのかな.....?」
―――俺の隣に修羅がいるんですが。
「ね、ハチマンくんはキリトくんがどこに居るのか知らない?」
「シラナイデス」
「そっかあ.....ボス戦にもフィールドボス戦にも来ないなんて、キリトくんはどこで何をしてるのかなあ.....?」
アイエエエエエ!アシュラ!アシュラナンデ!?
いやなんかもうアスナさんがヤバいんですが。ほんとに。「OSHIOKIが必要かなあ」とか呟いてるし。アスナじゃなくて阿修羅だよ。
キリトがサチといちゃらぶしてるお陰で俺の胃がもうマッハ。ついでにキリトの寿命もマッハ。
これでサチと同棲してたとか知られたらキリトヤバくない?死ぬくない?―――いやむしろ死ね、というかなんで俺はもはや「
―――おいてめぇらなにこっち見てやがる。あ、なに?「どうにかしろ」だって?てめえがどーにかしやがれリンド。「御愁傷様」?よし、表出ろやエギル。あとクラインはイイ笑顔でサムズアップしてんじゃねえよ。殴ッッ血KILLぞ。「ハチマンのことは忘れないヨ、三分くらい」だって?喧嘩売ってるんだなアルゴ?そうだな?―――ヒースクリフ、てめえまで哀れみの目で見んな!やめて!俺をそんな目で見ないで!
どうしてこうなったんだろうか.......とどこか遠い目をしながら俺は考える。
キリト。黒の剣士、盾無しバーサーカー、変態機動戦士、童顔、
基本的にソロ、そしてボス攻略戦においてはLAを取りまくる片手剣士だったが.....最近キリトはめっきり攻略戦に現れなくなったのだ。
現在の最前線は31層。通算して26層以後の5層ぶんのボス戦、フィールドボス戦にも参戦していないことになる。
―――キリトが月夜の黒猫団の育成に励んでいるのを知ってるのは俺とアルゴだけだ。本人が秘密にしているから、という理由で攻略組の面子にはこの事実を伏せているが、恐らくここらが限界だ。
キリトを捜索しだす奴が現れる可能性もある。もしそれでゴシップ記事ばりにキリトとサチが一緒の部屋から出てきたところを見られたりしたらジ・エンド。キリトはアスナによってジ・エンドして俺も隠してたことがバレてジ・エンド。―――詰んだ。はーじめが肝心詰んだ詰んだ。
ダメだ.......!キリトがどうなろうとしったこっちゃねえがこれ以上俺が被害を受けることは断じて許せねえ!
周囲から俺に突き刺さる「どーにかしろ」という視線と自己保身のため、俺はキリトを捕まえるべく作を練るのだった。
※※※※※※※※
「で、28層まで来ているわけだが」
フィールドボス攻略会議から二時間後、31層から5層下。俺は索敵スキルを駆使して28層の主街区からキリトの痕跡を追っていた。
俺はまずアルゴの人脈やらなんやらを使わせてキリトのいる層を把握。主街区を歩き回って索敵から派生した「追跡」スキルからのプレイヤーネームでキリトを検索したらビンゴ、街の通りに刻まれている緑色の足跡を発見して追っかけている最中なのだ。ちなみにアルゴにはしっかり金を搾られた。がめつい、さすがアルゴがめつい。
今度ホームに
ひゅおん、という音とともに俺は一気に塔の壁に張り付く。―――シュルシュルとワイヤーを回収する籠手を見て、たいしたものだ、と思わず舌を巻く。
―――そう、これはリズベットが作ったネタ武器の一つ、立体機動装置(仮)。ロマン武器ともいう。簡単に言えばナイフとワイヤーが溶接され、また籠手に内蔵された簡単な巻き取り機によってワイヤーを回収することができる武装である。
これもう武器じゃねえよ別のなにかだよ、と思うもののリズベット曰く「作れちゃったんだから、武器か防具に決まってんでしょ」とのこと。
他にも鉄糸を発射できるグローブやら蛇腹剣、回転式機械槍などのロマン武器などがリズベットの工房にはあり、三日前に訪ねた時はもはやお前はどこと戦争する気だという状態だった。
「遠距離武器以外はあらかた作れるわね。というかこれ全部、あんたからネタを仕入れて作ってみた子達よ?」とか言っていたが、俺は本気で作れるとは思っていなかった。なんせ所詮はシステムに乗っ取ったゲーム―――とか考えていた俺は甘かった。練乳三倍のマッカンより甘かった。
―――鍛冶スキルというのは、システムに乗っ取りながらもある程度プレイヤーによって介入可能な、なんとも奥深いスキルでもある。
システムに乗っ取った鍛治、というのは全てリーチや性能等は、インゴットによって決まるということだ。厳密にはハンマー叩く微妙な強さや金床の品質などの様々な要因が関与するらしいが、正直よくわからない。まあとにかく強いインゴット持ってくりゃ強い武器が打てるという、当然ながらゲーム的な鍛治になっている。
しかし、だ。あくまでシステムに乗っ取ったモノ―――とは言えども、製作者が同じだと武器によってある程度の共通点が見えてくるのだ。性能や外見の細かい部分は、全てランダムパラメータだというのに。
なんでも巷の噂だと、製作者の思念や思い入れ、といったモノが性能にも関与してくるとのことだ。―――有り得ない、と否定できないのが怖いところだ。これだけのクオリティの世界を創造した茅場昌彦のことだ、心などというあやふやなモノすらもシステムに組み入れてもおかしくはあるまい。
ともかく、だ。俺はネタとして武器同士の連結やら回転機構を組み込むだのをリズベットに言ってみたこともあったが―――俺との会話でインスピレーションを刺激されたリズベットがノリで作ってみたところ、これみたいなトンデモ兵器が誕☆生。耐久値の減りは激しいが......なんというかネタな武器の試作品を俺は押し付けられたのだった。
なんでも、鍛冶スキルと細工スキルと金属加工スキルを複合させて使用することで簡単な機械類も作れるのだという。ゲームのくせになんとも奥が深い。そのうちパワードスーツとか作れるようになるんじゃねえのか。
「お、外に向かってんな」
再度ワイヤーを射出し、壁を蹴る。数度そうして塔から塔へ張り付きながら高速で主街区を移動していく。
だが、さすがに街の外に出れば、まともに走らざるをえない。若干残念に思いつつ籠手をしまい、俺は門を出て緑色の足跡を追って走り出した。
「よりによってここかい」
いや、途中からわかってたんだけども、現実を見たくないというかなんというか。他のフィールドに行かんかい。
またかよ、と溜め息を吐きながら俺は石畳を踏んで迷宮区に入り――――――見事に落っこちたのだった。
※※※※※※※※
最初の落とし穴に引っ掛かったきり、今のところ罠にはかかっていない。というか、罠が俺のときより控え目だ。
.......もしかして難易度調整でもしたのか?俺が迷宮で罠に引っ掛かりまくってヤバいことになってるの見て「あ、これ難易度下げたほうがよくね?」とか考えて難易度下げたとか。―――有り得る。だってアスナやアルゴの時も「確かに罠は多かったけど、そこまでじゃなかったよ?」とか言ってたし。許すまじ。
俺はもはや恒例となりつつあるタライを直感だけで回避しつつ緑色のぺたぺたを追う。いや、なんとなくここで仕掛けてきそうだなーってのがわかるようになったのだ。経験則かしらん。
極限まで無駄なシステム外スキル「タライセンサー」と索敵スキルを駆使しながら罠を回避していく。
―――というかなんでみんなシステム外スキルって言うんだ?なんでもかんでもスキルスキルって言えばかっこいいってもんじゃねーぞ。むしろ端から見てたら痛い。主に俺の
「見ろ、これが俺のシステム外スキル.....!
」とか言ってるヤツを見てるといつもそう思う。いや名前つけたくなる気持ちはわからんでもないが.......いくらなんでもクラウチングスタートをシステム外スキルと言うには無理がある気がするんだ、クライン。
「――――――ッ、何処だ!」
そんなことを思考していると、いきなり俺の耳に
俺はアラームが鳴り響いてくる方向目掛けて走り出す。そしてその方向は奇しくもキリトの足跡が向かっている方向でもあり、俺の脳内を嫌な予感が走り抜ける。
「ああ、くそったれ」
嫌な予感ほどよく当たる。その法則は絶対なようだ。
キリトの足跡の向かった先であり、アラームが先程から響いてくる部屋の扉を、俺は蹴飛ばしながら部屋に浸入した。
※※※※※※※※
「キリトォッ!」
「は、ハチマン!?」
部屋に浸入して、まず俺がやったのはキリトへの呼び掛けとアラームトラップ自体の位置の把握。当然部屋中にMobが溢れかえっている。俺が二度ほど引っ掛かったものでもある。
「ひ、ひぃぃぃぃ!?」
いかにもシーフ、といった格好をした男が悲鳴をあげながら尻餅をついているのを見て、俺は舌打ちしながら骸骨型のMobに肉薄する。傍らに転移結晶が転がっているようだが、恐らく転移無効エリアであることを知らなかったのだろう。ここがこの迷宮区の悪辣なところだ。
抜刀する暇などないため体術のソードスキルである「エンブレイザー」を使用し、骸骨の胸を俺の抜き手が貫く。爆散するポリゴンを無視し、俺は抜刀を利用してもう一体の首を落とす。
「―――らぁッ!!!」
シーフ野郎の近くにあった宝箱型のアラームトラップ。それを俺は体術のソードスキル「震脚」で踏み砕く。―――まず最優先事項は終わった。アラームトラップは壊さない限り、延々とMobを呼び寄せる永久機関だ。あとは、キリト達を守りつつMobを掃討するだけ。
溢れかえる骸骨軍団を見た俺はやむを得まい、と腹をくくって手裏剣術のソードスキル「
俺のレベルの敏捷値+ユニークスキル+貫通というコンボによって、狭い部屋にごった返していた骸骨はそれなりに減り、俺は槍を持ってへたりこんでいる男に回復結晶を渡す。シーフ野郎は気絶していたため、ポーションをぶっかけておいた。
「ほら、これ使え」
「あ、ありがとう」
震えながらも礼を言う男に無言で俺は頷いて、残る骸骨を殲滅するべくキリト達のほうへと駆け出す。
「なにぼけっとしてやがる!」
「は、ハチマン.......お、俺は―――」
青ざめた表情で呆然としているキリト。俺はサチを横から襲おうとしている骸骨を蹴っ飛ばしながら、我ながら珍しく大声でキリトに言葉を叩きつける。
「キリト―――てめぇ、サチを死なせたいのかッッッ!!!」
「―――ッ!俺はッ!」
キリトの腑抜けた顔が、青いながらも現実に戻ったと判断した俺は「サチを守れ」とだけ言い捨ててメイサーの男の元へ向かう。
―――それから五分後。ようやく骸骨を殲滅して、俺達は迷宮区から脱出するのだった。
なんかこんなの八幡じゃないお....って感じですが、ご了承下さい。八幡だって人命関わると焦るのよ。
原作崩壊というのはこれです。サチ助かる→キリアスカップリング崩壊の、割りとシャレにならない崩壊です。だって、アニメとか見てるとサチ完全正妻ルートじゃん.....あんなとこで死ぬなんて.....
ということで、サチ救済回です。八幡がんばった。