やはり俺のVRMMOは間違っている。《凍結》   作:あぽくりふ

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ようやく無駄に改行が加速してた話を修正しました。なんであんなに改行してたんだろう。自分でも謎だったり。


いつも通り内容が薄い九話です。ドゾー。



九話 27層ボス戦&やはり彼の迷宮探索は間違っている。

 

 

 

「全員構え―――撃発(ファイア)ッ」

 

 

俺の号令とともに合計12本の武器がエフェクトを纏いながら飛翔―――そして着弾。

 

俺は結果を見て思わず舌打ちした。全弾12のうち当たったのは4。そのうち羽に当たったのは俺が投げたやつだけだ。

 

 

再度装填(リロード)後、再び俺の号令の後に撃て!」

 

後ろからハッ!という声が返ってくるのを聞かずに俺は他のパーティーの様子を確認する。

 

俺が率いる3パーティー11人の大部隊の目的は遠距離攻撃によるボスの撃墜......だが、いかんせん当たらない。特定部位にいくつか当てれば簡単に墜ちるらしいが、なかなか難しいものだ。

 

 

ザ・ロード・オブ・ドラゴンフライ。名前の通り、まんま蜻蛉だ。いや、頭のほうが若干ドラゴンみたいにしてあるから普通の蜻蛉よりはキメラ感が増しているが。

 

このボスはめんどくさいことに、常時飛行型のボスなのだ。

正直超めんどくさい。今までのボスもフィールドボスにも常時飛行型は存在していなかったが、手が届かないというのは割とイライラするものである。

例えるなら常時飛んでいるリオレ○スかクシャ○ダオラみたいなものだ。しかも蜻蛉の王様というだけあってなかなかの速度で飛ぶもんだから当たらない。ときたまホバリングのような行動をするから、そこを狙って投げる.....くらいしかできない。

 

ダメージ自体は軽い、と言ってもいいため、空中を旋回した後に急転直下してプレイヤーの頭をマルカジリする技にさえ気をつければ死ぬ心配はないだろう。ただ手が届かずにイライラするだけだ。

 

 

「うお、危ねえ」

 

 

キシャー!と叫んでボスが羽から放ったソニックブームを慌てて避ける。こういう技はダメージは微妙でも出血判定があったりするのが厄介だ。あと出血状態は見た目がアレだったりする。血溜まりが出来たりするから、そういうのに耐性が無いヤツからしたら卒倒モノだ。

 

 

ボスの動きが止まったのを見計らって、俺は手で合図して投擲する。今回は着弾が9、ハズレ3、羽に当たったのは2。

 

―――溜め息が出るような結果だった。ボスは羽に一定以上ダメージを与えれば墜ちる。これはアルゴ情報だから確実だろう。

 

茅場は狂人だが鬼畜ではない。必要とされるダメージはそこまで高くはないはずだ。

だが当たらない。足とか複眼にはよく当たってるが、羽は薄いせいか当たりにくいらしい。ちなみに俺は今のところ全弾羽に当てている。実は空間把握能力が高かったりするのだろうか。確かに数学は図形なら比較的点を取れてたが.......

 

 

どうしたものかと考えこんでいるとアスナに声をかけられた。

 

 

「どうにかならないの?」

 

 

アスナも割とイラついているようだ。こいつ結構直情的なところあるしな、と納得しつつ俺は言葉を返す。

 

 

「当たらねえんだよ。―――キリトがいたら別だったかもしれないけどな」

 

 

そう、我らが黒の剣士ならどうにかできたかもしれない。あの変態機動なら、もしかすると.....と考えてしまう。

 

いやだって跳んだり跳ねたり壁走ったりしてボスの体によじ登るあのキリトさんだぜ?もう空中歩行とかしても別に違和感ない。そのうちライフル弾を発射された後に斬るレベルにまで到達するかもしれない。なにそれこわい。

 

あの壁走るのだって初めて見たときは度肝抜かれたものだ。体術スキルの効果だとはわかっていてもビビるもんはビビる。あの時は皆呆然としていたのをよく覚えている。

 

その我らがキリトさんも今回のボス攻略戦は不参加。恐らく月下の黒猫団が関連してるのだとは思うが。

 

体術.....俺も壁走りしたらあのボスまで届くだろうか。無理だ。俺にそんな驚異的なバランス感覚はない。―――と考えていたら、ふと一つの方法を思いついた。

 

 

「―――あ、やれるな」

 

「はい?」

 

 

アレは練習ほとんどしてないし、ぶっつけ本番だからどうなるかわからないが、やってみるだけの価値はある。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

 

「あの......本当にいいんですか?」

 

「ああ。今回あんたらは手を出さなくていい」

 

 

武器は貸して貰うけどな、と俺は内心呟いた。

 

軍でシンカーの副官をやっているらしい銀髪の美人さんになにやら心配されたが、手を出さないように注意しておく。どうやら鞭使いのようだが、ひょっとしてSだったりするのだろうか。

 

ぶんぶんと飛び回りながらソニックブームを撒き散らしている蜻蛉の王。それを見ながら、俺は合計7本のダガーを放るようにして重さを確かめる。―――恐らくやれる。

 

 

「フッ―――」

 

 

ロード・オブ・ドラゴンフライ。今までの行動からこいつが数秒後にホバリング状態になるのはわかっている。

 

タイミングを計算し、俺は一気に7本のダガーを空中に放る。そうだ、体術は他のスキルと組み合わせることが可能な、数少ないスキルの一つ。―――そして、体術はなにも片手剣とだけ組み合わせられるわけではない。

 

 

「―――ハッ!」

 

 

空中を回転しながら落ちてくるダガー。まずその一つを右手で掴み、俺は即座に投擲する。

 

 

―――投剣と体術の複合ソードスキル『ジャグリング・シュート』。

 

 

俺は次々と落下してくるダガーを右手と左手で交互に掴んで投擲していく。オレンジ色のエフェクトを纏う橙色の弾丸は寸分違わず連続して羽をぶち抜いていく。

 

 

 

墜ちろカトンボォとばかりに最後の一発がロード・オブ・ドラゴンフライの羽を貫き―――ピギィ!と蜻蛉の王様はタマゲタケのような声を出しながら墜落していく。

 

ワッと前衛隊のほうから歓声が上がるのに混じって、アスナがどこか達観した風に「やっぱりハチマンくんってキリトくんの同類よね....」と呟いていた気がするが聞こえない。あんな変態機動するヤツと一緒にしないでくれ。俺は一般ぴーぽーだ。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

 

結局、墜落した蜻蛉は羽を真っ先に切り落とされて飛べなくなったところで前衛隊によってめっこめこにされ、ボスは10分ほどしたらポリゴンとなって蒸発していった。南無三。内心若干可哀想だなあとか思ったのは内緒だ。墜としたの俺だし。

 

 

そして今の俺はというと.....

 

 

「ふっ」

 

「ぐッ!」

 

 

ユキノに特訓して貰っていた。

 

特訓と言っても、ただユキノと圏内でひたすら模擬戦闘を行うだけだ。命の危険もない。だが、

 

「はっ」

 

「うがッ!?」

 

 

俺は視界が轟音と赤色のエフェクトで埋めつくされ、思わず尻餅をついた。ユキノがパチンと刀を鞘に納める。

 

圏内ではアンチクリミナルコードが働いているため、いかなる攻撃もプレイヤーの体力を削ることはない。だが、その攻撃の速度や威力によって、警告の意味を込めて色とりどりのエフェクトと轟音が発生するのだ。

 

そのためどこにどう打ち込まれたかわかりやすいが、基本的に五月蝿い。よって、俺とユキノは解放されたばかりでプレイヤーの少ない28層で、模擬戦闘を行っていたのだった。

 

 

「それなりに良くはなってきてるわね。けれど、まだ少し上半身と下半身の動きにラグが見えるわ。もっと上手く動けるはずよ」

 

「うっす.......」

 

 

自分でもなかなか強くなってきた気がするが、やはりまだユキノには敵わない。まあそんな一朝一夕で成長できるなら苦労はしないだろうが。

 

ユキノ曰く、まだ俺は重心に若干のブレがあるらしい。そこを治せばさらに剣速が上がるとかなんとか。

 

 

「今日はここまでかしらね。また模擬戦闘がしたいなら、うちのギルドに寄って頂戴。ほら、立ちなさい」

 

「ああ」

 

 

ユキノの手を取って立ち上がる。―――と、そこでふと思った。俺は今、どのくらいの強さなのだろうか。

 

 

「なあ雪ノ下。俺って今、どのくらいの強さなんだ?」

 

「今はユキノと呼びなさい。.....そうね。アスナさんとならギリギリいい勝負ができる、といったところかしら」

 

「おお、あの閃光様とか」

 

「ええ。教えた身としては、なかなか飲み込みが早くて驚いてるわ」

 

 

近接戦闘のエキスパートでもあるアスナといい勝負ができる。これはなかなかの快挙ではないだろうか。

 

 

「けれど、うちの団長には勝てないでしょうね。.......私でも勝てないもの」

 

「......マジで?」

 

 

一瞬硬直してしまった俺は悪くないはず。え、マジ?ヒースクリフってそんなに強かったのん?

 

 

「ええ。一度戦ってみたけれど、全て防がれたわ。異常なまでに防御が上手いのよ」

 

 

典型的なタンク、というわけか。ユキノにここまで言わせるとは相当な手練れなのだろう。今まで名前を聞いたことがなかったのが不思議だ。ソロだったのだろうか。

 

 

「あれを倒すには、私のような一撃必殺ではなく手数が必要ね。ひたすら攻めて隙に打ち込むしかないわ」

 

 

そこでユキノがじぃっとこちらを見てくるが、俺はぷるぷると首を横に振って否定する。いや無理だから。

 

 

「ソードスキルが無いと無理だろ......さすがに素の速さじゃあ」

 

「それもそうね。他に手段はないのかしら.....」

 

 

うんうんと唸るユキノを見て俺は溜め息を吐いた。この負けず嫌いさんめ。

 

どうやら結論がでたらしいユキノは顔を上げて言った。

 

 

「まあ、いいわ....そのうち勝ってみせるけれど。―――じゃあ、また」

 

「おう、じゃあな」

 

 

転移門を使い、下層へとユキノが帰るのを見送る。......結局この後どうしようか。

 

少し考えた後にちょろっと迷宮探索するかという結論に落ち着いた。そろそろ別の防具が欲しいし、索敵の熟練度も上げたい。ソロで探索は危険だが、レベルだけは無駄に.....ってことはないが、アホ高い俺のことだ。レベル制VRMMOである限りレベル差は絶対、ソロで万が一にも死ぬことはしないだろう。転移結晶もあることだし。

 

―――うん、なんか、クララが立った(フラグ建てちゃった)気がする。

 

少し嫌な予感がしつつも俺は28層の迷宮区に単身で乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

 

結論。俺の直感スキルは間違ってなかった。

 

 

「うおおおお!?」

 

 

横からびゅーんと矢が飛んできて、俺の脇腹をかするのを感じながら俺は迷宮区を爆走していた。

 

 

―――この迷宮区、やたら罠が多い!

 

 

最初こそ普通だったものの、途中から落とし穴は勿論横から矢(麻痺付き)が飛んでくるわ槍(毒付き)飛び出すわ宝箱かと思えばミミックだったりアラームトラップでMob大量に呼んだり好き放題やってくれるのだ。

.....まあそれを真正面から潰していってる俺も俺だが。レベルの暴力ってすごい。

 

しかも罠がある部屋に限って転移結晶無効地帯。これ、俺だから生きてるけど普通のレベル帯だとヤバくないか?プレイヤーの死角をつくような悪辣な罠が満載、容赦なんて母ちゃんの腹に置いてきたとかいうやつである。もうやだおうちにかえる。

 

まあ、罠やMobを警戒しまくるお陰でなんかバリバリ索敵スキルの熟練度が上がってるのは嬉しい誤算だ。索敵の派生スキルである「罠感知」である程度まで罠の位置などがわかるようになったため、比較的罠も回避できるようになったのもある。

 

......たまに予測不可能なタライが落ちてきたりするが。なんでタライ?しかもご丁寧に平仮名で「たらい」と書いてあった。なんでだよ。しかもドロップアイテム扱いだった。―――んなもんいるかッ!

 

 

うんざりしつつも巧妙に床に仕掛けてあるトラバサミ的な罠を華麗に回避し、

俺は通算何回目になるかわからない溜め息を吐いてあとどのくらいで入り口にたどり着けるかを考える。え、ボスは見ないのかって?めんどくさすぎて諦めた。

 

全ての始まりはワープ系落とし穴トラップの存在だった。宝箱を開けたら床が抜ける→落ちる→いつのまにか見たことない部屋→実はモンスターハウスでしたっ☆とかいう悪辣コンボから全ては始まったのだ。殺す気か。こんな殺意に溢れたアリスインワンダーランドはやめて欲しい。

 

 

 

俺、この迷宮から出たらラーメン食べるんだ......と呟きながらついに迷宮区から脱出できたのはまさかの午前1時。ちなみに迷宮区に突入したのは午後7時。通算五時間、そして日を跨いでいた。

 

 

結局俺はラーメンを食べることなく、28層にあった宿屋で倒れるようにして眠ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 





話進んでなくね.....?と考えたそこのあなた、その通りです。八幡の日常回みたいなもんです。

次話からは物語が進展します。そして原作大好きキリアス最高!というそこのあなた、諦めてください。―――普通に原作崩壊します。

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